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2006.07.22
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カテゴリ: ダイビング
パニック

暗闇

その日は潜る前から不安がよぎった。鉛色の空。海上は3~4メートルほどの波がうねっていた。しかもダイビング地点の近くには目標物がない。陸地から離れた大海の真ん中という雰囲気である。



モルジブではよくあるポイントで、水深10~15メートルほどのところにある珊瑚礁の小山を目標に潜るのだ。晴れて波が穏やかであれば、船の上からでもポイントを確認できただろう。

ところがその日は、海は濁っており船の上からでは確認できない。そこでインストラクターが先に潜ることになったのだ。5分ぐらいして、インストラクターが30~40メートルほど離れた海面に浮上してきた。波がうねっているので、ときどき波の底で姿が見えなくなる。インストラクターがポイントを見つけ、その場所に浮上したのだ。船の方から近づいて、インストラクターをピックアップした。

場所がわったのだから、今度は私たち全員が潜行する番である。海面が荒れているので、飛び込む前にBCDのエアを抜いてすぐに潜行、一目散にポイントを目指すことになった。

皆、次々とボートから海に飛び込んでいく。私も彼らに続いたが、私はカメラを船上の人に預けて(注:カメラを持って飛び込むとカメラが壊れてしまうため、通常は飛び込むときにカメラを預ける)飛び込んだので、飛び込んだ後、浮上してボートに近寄りカメラを受け取らなければならなかった。

カメラを受け取って、振り向くとすでに皆は潜行して海面には誰もいない。
「これはまずい。すぐに潜行して後を追わなければ」と焦ったのがいけなかった。慌てて潜ったので海水を飲んでしまったのだ。規則正しくできるはずの呼吸が、気管に入った水を吐き出そうとする咳で乱される。苦しい。飛び込んだときにずれたマスクからは水も入ってきてしまった。

どうすべきか。再び海面に上がって呼吸を整えていたのでは、完全にはぐれてしまう。インストラクターを含む皆は、かなり前方を一目散に紺色に包まれた海の底に向かって潜行している。ポイントがどこにあるか一人ではわかりそうにない。「これ以上、離されるわけにはいかない」と、私も必死でついていくことにした。

そのときだ。自分の呼吸が反乱を起こしはじめた。水を飲んだことによる呼吸の乱れと、海の中で迷子になるのではないかという言い知れぬ不安、うねりのある海上と濁った海中――。これらが心理的な圧迫感をもたらして強度のストレスとなり、過呼吸状態になってしまったのだ。

何ということか。海の中でパニックだ。このとき選択肢は二つあった。自分だけ海面に戻って船にピックアップしてもらうというのが一つ。もう一つは、そのままついていって何とかパニックを克服するというもの。そのときの私の判断は、後者であった。とにかく、あの荒れたうねりのある海面に一人で戻るのは、避けたかった。シグナルフロートを持っているとはいえ、あまりにも早い浮上にボートの人が気づかず、荒海の中で一人漂流することになるかもしれない。私にとっては、皆といる海の中のほうがまだ安心であった。

しかし、この過呼吸をなんとかしなければならない。私の理性とは別に、私の無意識はとにかくレギュレーターから供給されるエアを吸おうとする。その間にも皆、全速力で潜行しているので、私も遅れまいとフィンを目一杯キックしなければならない。

この困難な状況で、私の意識は自分に何度も言い聞かせた。「落ち着け。そんなに呼吸をする必要はない。エアは十分に足りている」。そして私は静かに目を閉じた。頭脳は冷静に分析を始める。まずマスクの中に入った水を、マスククリアと呼ばれる技術によって外に出した。視界は確保した。次に再び目を閉じて、できる限りゆっくりと大きく息を吐いてみた。

不思議なことに、次第に呼吸はゆっくりとなってくる。とくに目を閉じたのが良かったのかもしれない。目から入ってくる、不安につながる情報を遮断できたからだ。過呼吸の状態からは脱することができた。

幸いなことに、珊瑚礁の小山も視界に入ってきた。方向も方角もわからない暗い海の中からは脱出できたわけだ。少なくとも自分の位置を知ることのできる目標物を手に入れた。私は小山の岩礁に手を触れた。確固たる土台ができた気分である。ここまで潜れば、波の影響もほとんどない。かなりエアを消費してしまったようだが、それでもほぼ規則的な呼吸がよみがえってきた。

いつものダイビングにようやく戻ることができた。周りをキョロキョロすると、頭上にはトビエイが二匹、スイスイ泳いでいくのが見えた。まるでパニックがウソだったかのように、私は手首にくくりつけられたカメラに手を伸ばしていた。

マンタ





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最終更新日  2006.07.22 11:32:50
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