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足立尚彦第三歌集『ねばならず』が上梓された。 先にウェブ上で発表されたものだが、「やはり短歌は紙の上に縦書きで印刷されたもののほうが読みやすい。(あとがき)」と出版されたのだが、私は読みやすさよりも、形あるものとして世にでてくれたことが嬉しい。 初出はほとんどウェブ上の歌会であり、幸いにも私はその瞬間を目にすることができた。パソコンの画面上に、パッっとすばらしい歌が出てきた時の感動は、おそらくネット歌会を経験したものでなければわからないであろう。しかし今回歌集となったものを手にして、不思議な感覚を得た。表紙の色、紙の手触りや匂い、ページを繰る音、活字のかたち。そういったものが歌に寄り添っている。ほとんど諳んじるほどに知っている歌たちが、まるで初対面のようだ。やはりニンゲンは五感をフルに使ったほうがよいのかもしれない。 今、久しぶりに氏の歌と再会すると、冷めていて実は熱い、中年の顔をした寂しい少年の歌であるのかもしれないと思った。行き先を確認しつつバスに乗る行き先まではいかないけれど人生は旅ではないぞ旅ならば財布があればなんとかなるぞ造花かと見粉うほどに傷のなき花の花屋に売られていたる二首目などクスリと笑ってしまうが、そのあとじんわりと来る。さりげなく、深く、やや斜めの視点から歌われると、寂しさがこみ上げる。大量の水を抱えてかるがると雲はそれなりに不自由である水彩画のみずのゆくえを追いながら画廊の奥をうかがう微風ぬいぐるみ洗えばずんと重くなりとても似ている命に水は雲の水もぬいぐるみの水も、視点が個性的である。水彩画の水は神秘的で美しい。どんなものにも命を発見してしまう瑞々しさと苦しさ。それはときおり言葉の迷路となって、読むものに宿題をだす。時間のずれ、言葉のずれ、感覚のずれ。ずれや歪みにこそ美しさがあると言う。苦しみと苦しむ暇との両方が同時にあって苦しんでいるそらいろのそらとはなんじゃいっかいもそらにとことんせまらんでおるふたしかな未来を過去となすためにセットしている目覚まし時計濁点を打てばカラスはガラスなり濁りはときに透明を生む言葉の迷路のなかを自由自在に走り回りながら、空を睨み、花を横目でチラリと眺め、隣家の犬(の歌がキーワードのように顔をだすのが楽しい)にひとりごとを言っているような歌集『ねばならず』大変個性的な優しさである。アラザル派と言ったら怒られてしまうだろうか。その色も形も価値もあきらかで模様が思い出せない五円十年後を夢想しながら納豆の賞味期限の過ぎたるを食う分度器の存在知りしあの頃の90は天の不思議な数字深深と帽子をかぶり直すたび記憶がこぼれゆく八月は台風の後の晴天 照れつつも明るい男になってしまえり早朝に米研ぎいたり眠たさも生きたさもみなざらつかせつつ本当と嘘との間に真実が実はあるのだゆらり老いゆく
Apr 15, 2008
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五月の風に吹かれながら、ベランダで読んだ『銀河最終便』望月祥世氏の第一歌集である。一ページに八首。読み応えがある。氏は『開放区』の同人であり、またネット上で活躍されている。私はよく氏のホームページ上で氏の短歌を読ませてもらい、たくさんの勇気と感動をもらってきた。クレッシェンド・デクレッシェンドどうしろというのだ降ったりやんだり雨はバルトーク・ベラ、ベラ・バルトークいずれでもいずれにしても生き難き生覚悟の破調と、感覚を研ぎ澄ませて直感的に選択された言葉の響きが、氏の歌のなかで光る。致死量の愛を点滴するように深夜に雫する雨の音遠く去る鳥には鳥の歌があり水没樹林に降る雨がある「致死量の愛」 この言葉には参ったな。氏の相聞はあるときは雨、あるときは花や音楽、そして宇宙といった姿で詠まれているが、そんななか、この一首は珍しく熱い血を感じた。それも地球に致死量の愛を点滴している。すごい。接線を一本引けば現れる まだ生傷の絶えない地球眠ろうとしてもなんだか眠れない ふつうに戦争している時代仰ぎ見る文月の空の流れ星 戦場に人は撃たれていたり失って滅びていつか消えてゆくそれでも人は夢見るさくら日常はそんなときにも日常であったであろう投下直前野のはてにタンポポ枯れて綿毛飛ぶ 日本に帰りたいしゃれこうべ女性歌人にとって難しいテーマを、氏はまっすぐに見据えている。この勇気と力が私にはない。致死量の愛とは、自分という小さなものを突き破って地球規模、いや宇宙規模の愛の量なのだろう。この歌集の意味がだんだん見えてくる。しかし、氏の目は遠くばかりを見ているのではない。華麗なる変奏曲を聴くように春の逃げ水走る野火止野火止の鴨の平穏確かめて小さな橋のたもとを通る今日の日が無事に過ぎたということの続きに咲いて深山苧環もっこりとふくらむ鴨が水を掻く 冬がきている野火止用水通り過ぎてしまいそうだが、ふと心惹かれる。日常こそが詩なのだと思う。思ったときにとどめのように現れた次の一首。究極のシュールは写実であるというダリの直感的なパンの絵私はやっぱり短歌に恋をしている!再認識させられてしまった『銀河最終便』を閉じたとき、裏表紙にやられた。そこにあったのは、表紙の銀河を遠く眺めているガリレオ。その望遠鏡。はらはらとある歌が胸に落ちてきた。あはれしづかな東洋の春ガリレオの望遠鏡にはなびらながれ/永井陽子そうか、そうだったのか。わが影をしたがへ冬の街に来ぬ 小さなバイオリンが欲しくて/永井陽子ソノヒトガモウイナイコト 秋の日に不思議な楽器空にあること大それた発見のように、本当はこんなことは書かないほうがよいのかもしれない。が、あえてお許しをいただこう。この歌集の底にながれている哀しみをともなった致死量の愛は、ひと、花、地球、宇宙、そして未来への挽歌なのかもしれない。ライラック苦しきことを忘れんと買い求めくる水無月の花大切な一日のため雨よ降れ しずかにひらいてゆく花があるあの貨車は今どのあたり過ぎている 遠い銀河をゆく夏燕千年を眠るためには千年を眠れる言葉が必要であり一日の終わりは早い 散り急ぐ花であったと時間を思う
May 25, 2007
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これは私が経験的に感じたことなのだけれど、犬は飼い主の身代わりになることがある。切ないくらい家族を思い、また家族に思われる彼らは、自然にそんなチカラを持ってしまうのかもしれない。 親しい友人Iさんの息子さんが、自打球を目にあててしまい、網膜剥離という不幸に襲われたことがある。すると飼い犬の柴の老犬が、まもなくしてまったく同じほうの目を失明してしまった。 なぜこのようなことばかりとIさんはひどく落ち込んでしまったが、私が身代わりかもしれないよと言うと、Iさんは頷いた。その後老犬は見えないまま亡くなり、息子さんは見えるようになった。 Iさんのコロと私のポリーは数ヶ月違いで天国へゆき、偶然同じ場所のお墓に眠っている。そして今Iさんと私は元気に犬の仕事をしている。 今日はくるみの誕生日。息子のアトピーを引き受けて、ボリボリ体を掻きながら、すくすくと3歳になった。 お誕生日おめでとう、くるみ。
Feb 20, 2007
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「今度妹がくるのでよろしく」昨年の暮れに先輩のIさんから言われた。「兄弟でトリマーっていいですね。お兄さんの影響ですか?」「いや、僕ではなくてKちゃん。うちにKちゃん(プードル)が来てからすっかり犬が好きになって。10年勤めた仕事をやめちゃうんですよ。仕事まで変えさせるんだから、犬の力ってすごいですね。」(イヌノチカラ)その日は一日Iさんのこの言葉が響いていた。犬の力ってあるなあ。それはなんだろうと、ふいに思う。わからないけれど、感じる。犬の力。言葉の力。犬は言葉を話さないけれど、言葉と同じようなちからがある。言葉は犬に負けてしまうのかな。けれど、私に犬の仕事につく最終的な決心をさせてくれたのは言葉だった。空を陽にすかしていると無のもつ色が美しい時が私に優しく訊ねるが私は黙っている昨日の朝を私に返せ失われてしまった風景のために私は何もしてやることも出来ないただ弔うことのほかに今日 期待は明日に似ているだが明日になると期待は今日にすぎないしかし私のまわりに晴天の一日がある子供の時から私は何が好きで生きてきたか?ふと私に近く何かのよみがえる気配がする 谷川俊太郎『六十二のソネット』より子供の時から私は何が好きで生きてきたか?犬と本が好きだったなあ。スロースタートだけれど、それが私の答えなのだろう。犬の仕事をするようになって、疲れてもちっとも疲れていない。これは不思議。犬のチカラと一緒に暮らせるしあわせ。歌を読み詠める幸せ。私は欲張りだな。犬の名を呼べばゆたかな我になるたったひとつの犬の名前を / よもぎ
Feb 7, 2007
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「あなたの歌はナマね」と食事をともにしながら言われた。「そうだな」と思う。「もっと女らしくしなさいよ。それじゃダメ。私恥ずかしい」と旅行先で言われた。「悪いな」と思う。前後の場面を抜いてここだけを書くと、大変印象くなるが、二人とも私の大切な友人で、楽しく過ごした時間の一場面だ。週刊誌の記事の構成も、こんな感じなのかもしれない。今日はどんよりとして寒い日曜日。久しぶりに予定がないので、あれやこれやと片づけようと決めていたのに片づかない。こういう時は歌集を読もう!あ・・・出会ってしまった。汚したくなきもの何かわからねど 十一月の白い石けん/小島ゆかり『エトピリカ』後ろには時間、前には空間あり 一分間の信号待ちすふりかへるわたしのなかに紅葉ちる 人に深入りしてはいけない言葉はやはり愛すべきものだ。いい歌に出会えるのはいいひとに出会うより嬉しい。いいひとだと思っても嫌なひとになることがあるけれど、いい歌はずっといい歌だ。こういう曇った日は外へでないでナマな歌を詠むことに決めた。 秋ごとに足裏の紅葉けちらしてつまらぬ女とつひになりたり/yomogi
Nov 19, 2006
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「ネット上に浮遊させることに。」「だんだん地味になってきました。」(あとがきより)というアラン・タカピ(本名足立尚彦)氏の第三歌集、『ねばならず』は少しも地味な内容ではない。新しく橋がかかってこの町に増えるものあり減るものもあり平和台線がど真ん中を走る宮崎は淋し過ぎる街なり小京都の小のほどよき健気さを保ち続けているのもだるい八月の大淀川の青の濃き淡きにまぎれ我が若さあり 氏は宮崎県在住である。家族や友人といった生活臭を、ほとんど見せない氏の歌のなかで、川のある町を愛する横顔がかいま見られ、しみじみとなった。作者と作品との関係うんぬんは置くとして、作者の見える歌というのは立ち止まらされる。惚けたる母の眠りに秋風のやさしく過ぎる真昼あるべししかしこれらの歌を取り上げるのは、氏にとっては不本意であるかもしれない。その色も形も価値もあきらかで模様が思い出せない五円十年後を夢想しながら納豆の賞味期限の過ぎたるを食う氏の歌の世界にあるとき、小さな五円玉や賞味期限の切れた納豆は人生となる。そらいろのそらとはなんじゃいっかいもそらにとことんせまらんでおる大量の水を抱えてかるがると雲はそれなりに不自由である氏の視点は、遙かなものもぐいとわしづかみにして引き寄せる。そして私を短歌に目覚めさせてくれた一首、あの日君に海の話をしたよ君は君の帽子をかぶって少女だったよこの歌はNHK学園ネット短歌コンクールで、小島ゆかり氏の特選となった。今その評を引用しようと検索してみたが、URLが見あたらない。残念でもあるが、それはそれでよいと言われそうである。短歌をなぜ詠むか、短歌は自分にとって何なのか、とことんせまったことのないわたしは、どうも嫌らしいことを書いてしまうが、短歌研究新人賞最終選考に残った一連も入っていることを、付け加える。濁点を打てばカラスはガラスなり濁りはときに透明を生む氏の第三歌集『ねばならず』。ひとりでも多くのひとに読まれ、一冊の本となることを願わずにはいられなかつた。地味ではありません。☆アラン・タカピ氏HP <アラン・タカピの、余剰半。>☆歌集『ねばならず』
Nov 1, 2006
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題詠100首blog,締切りまで6時間というところで、今日なんとかゴールできました。いつもどうしてこうぎりぎり病。。。。でもよかった。だんだん嬉しくなってきた。 題詠100首blog 会場blog風見鶏 001:風 目に見えぬものがうごかす日常にからからからと風見の鶏よ002:指指をさす空の手前の風見鶏 うしろはまへでまへはうしろで003:手紙 えんぴつで手紙を書かう森の風吹くやもしれず吹かずともよし004:キッチン 白妙のキッチンペーパー広げてはあした手紙が届くと思ふ005:並 シオコショウ並ぶしづけさ 肘高く新玉葱に塩をふりたり006:自転車 自転車のブレーキ音をひびかせておかへりよまだわたしの少年007:揺 題名に「おやすみなさい」と打つたまま揺らしてるケータイストラップ 008:親 親指で打つ文字データーktktと鳥が木の実をついばむ音に009:椅子 食卓の揃ひの椅子はそれぞれに不在をのせて存在してをり 010:桜 花の数増やしてみても秋桜はさびしい色の花束であるよ011:からっぽ 空箱をソラバコと読めば風が吹く 秋の青空からつぽの空012:噛 犬の歯が我にも四本あることを思へりヌガーチョコを噛みつつ013:クリーム 明日から会へないひとは窓際でクリーム色の子犬と遊ぶ014:刻 秒針を持たねど時を刻むごとことことと鳴る夜のキーボード015:秘密 始まりと終はりは同じであるといふ秘密を残す君のくちづけ016:せせらぎ 雲ながれ水ながれ時ながれゆくそのせせらぎに耳すますべし017:医 脈をとる医師の指先感じつつまぶたの裏の夕焼けを見る018:スカート カーテンを揺らす風には負けまいと数年ぶりのタイトスカート019:雨 海に降る雨を見たくて歌ふうた けふは水の日あしたは木の日020:信号 信号の青のむかうの青空へ階ひとつ架けむとすれど021:美 美しい朝ゆゑに痛む歯のことを言いかねてをり歯科医師の夫に022:レントゲン 新しいものはまだある、レントゲン写真に写るわが親不知023:結 職業を言訳としてお互ひの指に飾らぬ結婚指輪024:牛乳 水色の切り子硝子のおほきめのカップにゆるく牛乳をそそぐ 025:とんぼ 透明な音だけ食べて飛ぶやうなとんぼよ空はさびしくないか026:垂 垂線や平行線をひく羽の曲がつたことは嫌ひかとんぼ027:嘘 嘘をつくニンゲンの目はまたたくよ きのふもけふもシジミチョウ見つ028:おたく おたくにもちやんと届けておきますと夕焼けてゐる十月の空029:草 秋草は春の草より丈高く夏草よりも音を奏でる030:政治 風見鶏風を知らせてゐるだけの鳥なれど比喩にかなしき政治031:寂 寂しさもなれ親しめば穏やかな花咲くときの気配と似たり032:上海 ありふれた家族であるがしみじみと地上海上路上天上033:鍵 ひとりまたひとりと違ふ鍵を持つその朝までの白いマグカップ034:シャンプー まだ同じ香りの家族 資生堂椿のボトルシャンプーたてて035:株 歳月は寡黙なれども切り株にとほき伝言残してゆけり036:組 ふたたびを願ふふたりの組曲にクラリネットのはつかながるる 037:花びら ふるものに隠されて洗ひ流されて 雨、雪、時間、さくら花びら038:灯 灯台のとほき灯りを見るやうな浮かぶこと消えることのひかりよ039:乙女 乙女とふ名をもつ苺きらきらと冬のデパ地下のショートケーキは040:道 この道をゆくほかはなく君の背の見え隠れする雑踏である041:こだま 傍らに立つとき樹木のかをりして日に幾たびもこだまが返へる042:豆 途切れたる言葉の先の句読点と豆科の花を花舗にさがせり043:曲線 ひらがなの曲線のもつやさしさをのせた言葉もまたちりぬるを044:飛 飛ぶ鳥と飛ばない鳥の両方に羽はなぜある 風見鶏飛べ045:コピー機 晩秋のセブンイレブン コピー機のひかりの傍にたたずみてをり046:凍 並びゐるあれやこれやと冷凍庫のひかりの前にたたずみてをり 047:辞書 いつどこでなにが解るかわからない 肌身離さず持つ電子辞書048:アイドル アイドルもやがては死語となるらむか水惑星に水仙溢れ049:戦争 戦争の傷ある国に生れたれば迷彩服は纏はずにをり050:萌 戦争を知らずに生きて春ごとに萌ゆる草見き散るさくら見き051:しずく ひとの妻となりし日の雨ひとの母となりし日の露 しづく連なる 052:舞 こころから嬉しく思ふもののあり たとへば山の奥の舞茸053:ブログ いつの日かゆたかな山の中腹に住みたしブログきちんと揃へ054:虫 一生を虫の時間で歩く蟻 人の時間にわれは佇む055:頬 ギィギィと椅子を鳴らして頬杖をしばしつきたり学習机に056:とおせんぼ とほせんぼ小径も今は広がりて犬を伴ひ坂をくだりぬ057:鏡 波風もほんの少しは知りたからう鏡のうへの硝子のアヒルよ 058:抵抗 抵抗をせぬ飼ひ犬はせつなくも獣の白き牙をもちたり059:くちびる くちびるの動き少なき言語もて成田を発ちぬ秋分の日に060:韓 子午線を思へり機上ひとり見る韓国映画の終はりになれば061:注射 英会話、時差、ドル紙幣、予防注射、とりとめもなく我は旅行者062:竹 広すぎる国からは見えぬふるさとは竹のみどりの列島である063:オペラ 多すぎて広すぎて大きすぎるゆゑオペラグラスを持ち歩く旅064:百合 数日を空けて戻ればみづみづし出窓に百合は高く開きぬ065:鳴 円とドルを持てばにはかに共鳴す「異文化交流」「国際社会」066:ふたり ふたりから始まり四人の季(とき)は過ぎひとりひとりに生れしその空067:事務 人生の節目節目の事務処理は若竹色のクリアケースで068:報 朗報を得たるここちすどつさりと山のきのこが届いた朝は069:カフェ 山奥にカフェあり山の清水もて寡黙な友の淹れるエスプレッソ070:章 第二章あたりで登場せし友のカフェの屋根には古き風見鶏071:老人 老人の集へるカフェの風見鶏やや傾きてゆるゆるまはる072:箱 山の実ときのこと赤きからすうり木箱にしんと収まりて届く073:トランプ トランプに遠くのひとを尋ねても凶でも吉でも占いはさびし074:水晶 水晶に遠くのひとを尋ねても透る答への石はさびしい075:打 打たれれば打たれた数のしづけさに鳴り響きたる冬の打楽器076:あくび 日だまりにあくびを置きて去る猫は振り向きざまに「余韻」と鳴けり077:針 ゆるやかに午前が過ぎて今午後へ時計は丸く針を運べり078:予想 誕生日前後にいつも止めること 暴飲暴食、予想、後悔079:芽 冬の日は部家のどこかに発芽する色鉛筆があるやもしれず080:響 父の名は「ヴォイス」母の名は「響」(ひびき)生れしホワイトプードルの「奏」(かなで)081:硝子 プードルの子犬の眠る昼下がり硝子越しなる冬の陽はのぶ082:整 誕生日前後にいつも思ふこと 整理整頓、美人薄命083:拝 来年の春を思つて蒔く種の拝むかたちに双葉出揃ふ084:世紀 半世紀生きたれば西に旅せむと友と始める郵便貯金085:富 新しき通帳もてばきのふより富みて師走を迎へむとせり086:メイド モスジーバーもメイドカフェでも働けぬ中途半端な齢であるよ087:朗読 朗読の声もやみたり一泊で返せなかつたレンタルビデオ088:銀 長身の影に隠るるわれの影 金の木犀、銀の木犀089:無理 あたためて与へて明日を待たうとも無理な季節に咲かぬひまはり090:匂 ラベンダーの匂ふ枕にしみじみと沈めてをりぬ明日はいかに091:砂糖 砂糖菓子冬のひかりを浴びたればここにも冬の音楽流れ092:滑 プッチンをせずにスプーンを滑らせたプリンカップに残るカラメル093:落 ホームランボールが落ちてゆくまでと今日のひと日とひとの一世と094:流行 移りゆく季節を購ふことに似て花にも犬にも流行のあり095:誤 傍らの犬はわたしの誤字などは見向きもせずに尾を振りてをり096:器 記念日の真つ赤な薔薇を切りもどし花器を選ばぬ水をそそぎぬ097:告白 一行の告白を百寄せしのち暮れてゆく空の色をかなしむ098:テレビ 花と木とテレビと犬と空と詩と風見の鶏と暮してゐます099:刺 折折の季節の花に囲まれて薔薇は刺ごと飾られてをり100:題 目に見えぬ課題に足の止まるとき空の手前の風見鶏仰ぐ2006/10/31/Tue. up
Oct 31, 2006
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幸せなことに大工さんも大の犬好きで、私のわがままを聞いてくれた。杉の木がいい香りを放ってくれる。犬の臭覚は人間の約100万倍と言われるから、もしこの部家が化学薬品臭かったらたまらないだろう。第一号にくるみをシャンプーした。相変わらず水嫌いの柴犬は、迷惑そうに我慢をしつつ、すきを見ては派手にぶるぶるっとやる。頭から水をかぶりながら、あはははと笑った。私が笑うと、くるみが見てまたぶるぶるっとやる。時間を忘れて水遊びをしてしまった。ちいさな夢がひとつ叶って、そしてちいさくもない借金もひとつかかえて、楽しい。先日、大工さんのワンちゃんポメラニアンのアポロ君が、お客さんとして来てくれた。パパのつくってくれたお部屋だよ、と話したけれど、きょとんとしていた。グルーミングハウス 「ポリー」 2006年10月 OPEN ポリーのいたお庭です。秋の日の庭に木の実が落ちてきた ポリーという名の犬がいたっけ/yomogi
Oct 22, 2006
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この夏、両親と岩手へ小旅行する機会があった。昨年骨折をしてから足腰の弱ってきた父。父を気遣って、本来はわがままなひとなのに、かいがいしくしている母。温泉の効果や気持ち的なものもあってか、この旅行で杖をつかないで歩いた父を見るのは嬉しかった。母は私たちに気を遣いながら、くつろいでいた。久しぶりに長い時間一緒にすごしていると、楽しくもあり、寂しくもある。家族と、自分と。時はどんどん流れている。時間には限りがあることを肌で感じるようになったのはいつからだろう。何気なく写メったら、涙がでそうになった。いつもまわりのことばかり心配している父と母。そんなに心配しないでよ。普通のなんでもない日日が、こころから嬉しいと思う。いたずらをして怒られても「ごめんなさい」の一言を誰かに言えばそれでよかったあの頃にはもう戻れない 「PENGUIN」 by 槇原敬之
Aug 19, 2006
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昨夜、眠る前のほんの少しの時間に、とても綺麗な月を見た。 薄い雲に虹のような月の光がにじんでいた。 半月でも明るくて、ちょうど小窓から入った光が畳のうえへさしていたので、その位置まで布団をずらした。月明かりを被って、いつのまにか眠ってしまったら、ちょっといい夢を見た。 東京のあまり星の見えない夜空でも、月は毎晩楽しみに眺めることが出来る。雲に隠れていてもそれはそれで楽しい。 季節の変わり目にいつも思うのだけれど、旧暦のほうがどことなくしっくり来るような気がする。 今日は旧暦だと7月22日。得をしたような気もする。
Aug 15, 2006
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ひと月ほど体調がすぐれない。最初は風邪のようだったが、熱が40度近くなったり、微熱になったりとしんどい。無欠席だった学校をついに今日は休んでしまい、悔しさから朦朧としながらパソコンに向かう。無理をして行った日に、犬に怪我をさせてしまった。うっかりならともかくも、注意をしていたのにかかわらずスリッカーブラシですり傷を付けてしまった自分を許せない。ごめんね、ごめんね。自分は変なやせ我慢をするところがあって、負の部分を隠そうとする。回りに心配をかけたくない気持ちと言えば聞こえがいいが、結局負けず嫌いと自意識過剰なのだろう。取り返すことの出来るミスとそうでないことがある。「みんな自信なんてないんだよ。自分との戦いだよ」と先生はおっしゃってくれたけれど、今回のことで命あるものを相手にする怖さが身にしみた。たとえ自分が傷ついても、犬に怪我をさせてはいけない!言訳をせず、自分に厳しく、そして仕事を楽しみたいものだ。夢かなう日はいつだろう。囀りはあかるき挫折 思ひより遠くひろがる鳥の浮彫(レリーフ)/山中智恵子巣を高くたもたむために十月の風にむかひて髪を編みたり
Jun 8, 2006
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歌人 森川菜月氏の第二歌集『空は卑怯だ』をご紹介。真っ正直な生き様が歌の向こう側に見えて、自分の生ぬるさが嫌になる。・空色のみかんは嫌だ夕焼けてみかん色する空は卑怯だ・東京のひとは知るまい地方では「地方では」とは言わないことを・静物画の右上隅に描かれゆくここになき窓そのなかの空WEB出版です。こちらからどうぞ。森川菜月第二歌集『空は卑怯だ』
Jun 2, 2006
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「風見鶏」 題詠100首blog参加作品001:風 目に見えぬものがうごかす日常にからからからと風見の鶏よ 002:指 指をさす空の手前の風見鶏 うしろはまへでまへはうしろで003:手紙 えんぴつで手紙を書かう森の風吹くやもしれぬ吹かずともよし004:キッチン 白妙のキッチンペーパー広げてはあした手紙が届くと思ふ005:並 シオコショウ並ぶしづけさ 肘高く新玉葱に塩をふりたり006:自転車 自転車のブレーキ音をひびかせておかへりよまだわたしの少年007:揺 題名に「おやすみなさい」と打つたまま揺らしてるケータイストラップ 008:親 親指で打つ文字データーktktと鳥が木の実をついばむ音に
May 28, 2006
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大好きな薔薇が咲く時期となって嬉しい。今年はちょっと頑張ったので、つぼみの数もすごい。薔薇は正直だ。ハーブや野菜も順調。真っ赤なバラの手前に絹さやが揺れている。ミスマッチだけれど、おみそ汁や煮物に重宝で、これも嬉しい。絹さやは野菜の中で一番好きな色。ちょうど今の季節のようだ。花もかわいらしくて毎朝眺めている。花のしぼんだあとにすでにふくらんでいる実がそだつのは早い。パセリもだんだん森のようになって、こちらは逆に困ってきた。刻んで冷凍にしたものも山盛りだし、自分で育てると付け合わせだけで捨てるのがかわいそうになって、また洗って刻んで冷凍庫へということになる。なにかパセリのいい利用法はないかな。ついでにイタリアンパセリもすごい。ハーブや絹さやのみどりはやさしい。今日の雨に濡れているのもいい。花も好きだけれど、最近野菜の色がとても楽しいと思う。花より団子か。退院後まづ買ひに行く夕食の素材 絹さや さやさやさやさや/永井陽子絹さやを目にすると思い出すこの歌。永井陽子さんの歌はときおり風のようにそよいで来る。嫌はれてゐるやもしれずしかれどもグラジオラスは丈たかき花今朝も洗濯機を覗き込んだ瞬間にこの歌がふいに浮かんできて、そうしたら涙が流れて困った。なぜなのかわからないけれど、不思議な瞬間だった。
May 16, 2006
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つづいて柴田さんの歌集から。さくら大樹の花散る下に口あけて仰ぐわれはも土偶のをんな/『土偶のをんな』柴田典子田の神の憑(よ)るとふ桜見上ぐれば神はしづかに花を散らせり歌集のタイトルとなった一首をふくむ桜の歌は、今年の桜をながめながらしみじみと読んだ。そうして次の一首は私にとってとても思い出がある。サークルへ来て間もない春の日に、初出のこの歌を目にして「うわ、すごいとこへ来ちゃったな。私は場違いかもしれない・・」と感じた。それから早いもので三回目の春、歌集でこの歌に再会出来て嬉しく思う。いつの世の約束ならむ桜咲く無人の駅にひそと降り立つ身の丈でいいのよと笑ふ友ありてさくら咲くなり中年の春に/よもぎ
Apr 19, 2006
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サークルの友人・・・といっても人生においては大先輩。「ね、春村さん」とおだやかに笑ってくれるかたの歌集から。「楽」の字はどう書いてみても楽しい字淋しい時に書いてみても/『土偶のをんな』柴田典子いつも犬達と接していると、彼(彼女)たちのあるがままの潔さに心がしんとしてくるときがある。ポリーが死を迎えた時。くるみが体調悪くして全身が震えているのに、眼だけはおだやかな色だった時。そんな時、私といえば、まったくちっぽけにうろたえていて、後日何もわかってなかったことに気が付く。そうしてますます落ち込んで、どつぼにはまって行くけれど、犬達は何も変らない。うつむいていると首が疲れるので、今度は上を見ることになる。上を見ると、空が目に入る。空もいつもと変らない。自分の小さいことに気が付くと、空が綺麗に見える。もしかして、ちっぽけなこともそう悪くないのかもしれない。
Mar 20, 2006
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053:髪 青山みのり 2005年10月21日 (金) 02時08分愛されるためにすすきの野の色に髪をそめてもさみしいタカシ題詠マラソン2005 青山みのりさんの歌。同じ男の子を持つ身として共感の多かった一連だった。「髪型や色、服装等が極端に変ったら、それはなにかのシグナルです。」などと言われると、母親としてはびりびりしてしまう。子供の歌は類型的になりがちで難しいが、「すすきの野の色」が詩を呼んでいる。「愛」「さみしい」は、歌会などでは叩かれそうな言葉だが、力のある作者だから、分かっていて使われているのだろう。「愛<さ>れる」「<すす>き」「<そ>める」「<さ>みしい」のサ音の響きも、逆立っている心理に効果的だ。・・・と、ここからわたくしごとですが、息子の髪の色が突然変った。「すすきの野」というよりは「栗のイガイガ」ウーーーン。。。自分も染めた経験あるし、言いいたいことはないけれど、青山さんの歌がぐるぐると頭の中を回っていた。さみしそうには見えないぞ。。。と、びみょーに揺れる母心。ま・いっか。明日は七五三。晴れますように。*題詠マラソン2005 青山みのりさんの歌・十首選007:発見 百万回生きて発見することを一期一会の子らへ語りぬ010:線路 通らねばならぬ線路があるならばたんぽぽ揺るる春にゆくべし025:泳 泳いではわたれぬ川をあまたもつふたりしじみをそだててゆかな039:紫 まっさらの貸し出しカードを抱きつつ棚に眠れる紫式部033:魚 魚など金魚以外はみたことのない子の歩くスクールゾーン053:髪 愛されるためにすすきの野の色に髪をそめてもさみしいタカシ055:ラーメン ラーメンにスープを入れる指先は(オトコダ)十三歳の寡黙さ068:四 椅子キリン我の家族も四本の足で立つのだ てるてる坊主082:罠 不覚にも罠にはまりし野うさぎは音大卒の学歴をもつ095:翼 <嘘をつけ><嘘をつくな>が同意語のふしぎ 翼の種を売ります
Nov 14, 2005
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ポリーの命日に題詠マラソンなんとかかんとか完走。やったよ、ポリー。曇っているね。今年は日記も歌もほったらかしで、長い長いひきこもり中。それでも先週、ずっと会いたかったひとに会えた。マッキー!!日本武道館と代々木体育館を間違えてしまったけれど、時間よりずっと早かったのでセーフ。原宿の改札をでたら「ケツメイシのチケットゆずってください」と書いた紙をもったひとがいるので、なんでケツメイシ?などとばかだった。日本武道館は九段下。まだコンサートの余韻にひたりながらの日日だ。みのりーん、あと少しだね。はすみーん、いつー? みなさん頑張っています。題詠マラソン。
Oct 29, 2005
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学校には沢山のプードルがいて、それはそれはにぎやか。鞠のようにぴょんぴょん跳ねる子、ものすごい速さで回る子、みんなわんわんきゃんきゃんとはっきり言ってうるさい。優雅に可愛がられているペットでも、プードルはよく吠えるので、あまり好きではなかったけれど、最近それが間違えだと知った。いったんトリミング台に乗ると、彼あるいは彼女たちはプロの犬になる。ブラッシングされる場所もちゃんとわかっていて、こちらの動きに合わせているのがわかる。驚いた。自分の経験不足を犬に思い知らされる。白いプードルの毛は本当に美しい。丁寧にブラシをかけていくとまるで生クリームやメレンゲのようだ。「その子はショーにでているから、もっと短く爪を切っても大丈夫です」私はまだドッグショーを見たことがない。友達の話だと素晴らしいらしい。どんなに長い時間でも、きちんとステイをしているのをみると、サークルのなかで飛び跳ねている犬と同じとは思えない。不思議だ。「プードルはこれが仕事」いつだったか、ショップのオーナーが言っていた。犬もプロは違うものだ。うちのくるみさんは、寝るのが仕事のようだ。それはそれでいい。シャンプーはどの犬よりも大変だ。それもそれでいい。飼い主に似てちびなくるみと、ぽこぽこ歩きながらプードルの話しをする。「それでね、すごいんだよ。ふわふわの雲みたいだよ。」「・・・・・」「でもさ、うるさくてね。パパもお兄ちゃんもきっと怒るよ。くるみが一番!」「・・・・・」無口だ。指にふるるその毛はすべて言葉なりさびしき犬よかなしきゆふべよ/若山牧水
Sep 12, 2005
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071:次元 五十嵐きよみ 2005年07月02日 (土) 23時20分淋しさはべつの次元の問題で生きていくしかないし、生きてる久しぶりにもらった友人のメールで、体調の悪いことを知り心配になりました。夏は嫌いではないけれど、昨年の今頃幼なじみを突然亡くしてから、暑さを寂しく感じるときがあるようになってしまった。ああ、そうだよね、そういうことだよね、わかるなあ、と心惹かれた歌。作者が五十嵐さんだったのに少し驚く。あまりなかったような直球で、すとんとやってきた。見えないところできゅっと歯をくいしばっているのを、偶然鏡越しに見かけてしまったような気持ち。五十嵐さんの普段と違うカラーの一首が、ふと萎えそうになったこの夏の暑さに、水を振りかけてくれました。自分の現在にぴたりと合った一首。013:焦 百田きりん 2005年05月26日 (木) 23時06分たくさんの正しいことに囲まれてカラメルを焦がしすぎたのかしら百田きりんさんの歌、いいと思います。いいという簡単な言葉で申し訳ないのだけれど、あまりごちゃごちゃいうよりも、匂いが好きだ、このかたの歌の。自分の過去が鮮やかに見えた一首。未来のことはあまり考えない主義。暑いしね。007:発見 うつくしくほこり積れる古書店に岩波新書の『ゼロの発見』008:鞄 すれ違ふ学生鞄に揺れてゐるくまのプーさん きみも頑張れ009:眠 雨ですと告げたきひともおそらくは相聞のそとに眠りたるころ
Aug 27, 2005
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素敵なお茶を戴きました。お茶は365日飲まない日はないので嬉しくなり、そそくさ箱を開けると、かすかに鈴の音がします。蓋の裏側に小さな鈴が付けてあるのを発見。ちょっと驚いていると、ころころと可愛らしい実がふたつぶでてきました。この実はなにか懐かしい感じがして、しばらく掌のうえで眺めていました。そうだ、この実を集めてままごとをした記憶。お茶の実です。今はお茶の木の生け垣はほとんどなくなってしまいました。久しぶりに見たお茶の実。いつもより丁寧に入れて味わうお茶は、くださったかたの笑顔のようで、しみじみといただきました。このお茶の実、鉢に植よう。いつか懐かしいお茶の花の咲くのが楽しみです。題詠マラソン2005004:淡 ゆいいつのとほい時間をまきこんで雨にふくらむ淡水ぱある005:サラダ 夢よりも大事と思ふ朝食のサラダボールにあふるるハーブ006:時 飛ぶ鳥の一瞬の影、屋久杉の千年の影、時は影をひく
Jul 18, 2005
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遅いスタートをきりました。ひたすらゴールをめざそ。題詠マラソン2005001:声 聞こえるよ振り返るとき待つときに「よもぎよもぎ」こひびとの声が002:色 どのやうな色でも冬の終はりにはかたいつぱうが褪せる手袋003:つぼみ 春だろか秋なのだろか待つてゐるつぼみは今のこころに痛い
Jul 7, 2005
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044:香 久哲 2005年07月05日 (火) 23時45分 成金になるのはおよしおまえなら盤の外まで行けるよ香車 ふらりと立ち寄った題詠マラソン会場。いいなあ、久哲さん。ヘンテコな歌もあるけれど(失礼!)限りなく優しい。久哲さんの歌のバリエーションは広いです。そういえば将棋の駒の中で「香車」が一番好きです。単純で潔くて、しかもこの美しい名。「桂馬の早飛び歩のえじき」なんて言われながら父と将棋で遊んでもらった頃を思い出しました。「銀」の動きはいまだによく分かりません。040:おとうと 久哲 2005年07月05日 (火) 23時42分 おとうとの立場で見ている弟が出たり入ったりしている掲示板 あはは!師匠の掲示板で一緒に歌会をしていた頃、私は勝手に久哲さんを「弟」にしていましたっけ。でも久哲さんには教わることばかりで、情けない「おねいちゃん」でした。018:泣く 風中を走りつづける弟の絵葉書に泣く「僕はここだよ」/よもぎ第一回題詠マラソンの「018:泣く」はそんな弟のおかげで出来ました。久ちゃんありがとう。がんばってください。あ、おねいちゃんも頑張らなくては。。。とほほ。
Jul 6, 2005
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時間のあるとき、相変わらず散歩嫌いのくるみを連れ出して気ままに歩いています。かわいらしいラブの赤ちゃんと出会いました。その赤ちゃんは将来盲導犬になる子でした。ということは飼い主さんはパピーワォーカーさん。お話をしていると、なんと11頭目ということでびっくりしてしまいました。兄弟から離れたばかりなので、他の犬に会うと嬉しくて仕方ないそうです。ほんとだ。全身嬉しさのかたまりになって、私の髪をひっぱったり、くるみに飛びつこうとしたり。「○○、Sit.」おお~!まだ二ヶ月だというのにドタッとお座りしました。飼い主さんも、ワンちゃんもさすが。。くるみはぼーっとしていて無愛想ですが、「やさしいですねえ」とほめていただきました。優しいのはこのかたのほう。コギーを二頭連れたお姉さんと一緒にしばらく遊びました。こういう出会いは嬉しいです。お姉さんが「大変でしょう」と言うと「いいえ。犬が私を成長させてくれるんです」帰り道、また遊びに行こうねえとくるみに話しかけながら、今の言葉をかみしめていました。犬たちの名を、限りない愛情と責任感を持って呼びつづけているひとの声は、本当に素敵な声だったなあと思いました。あ、今日は私の可愛い姪の誕生日です。おめでとう!*感賞 題詠マラソン2005002:色 ひぐらしひなつ 2005年03月07日 (月) 02時14分冬の陽に色をほどこすさみしさで階段に置くきみのevian004:淡 ひぐらしひなつ 2005年03月08日 (火) 01時29分淡水魚逃げる迅さを話しつつ溺れる、春の、水のひかりにひぐらしひなつさんの歌はパステル画のようです。透明な光と風を感じます。きれいだな。。014:主義 こはく 2005年03月07日 (月) 13時59分居心地の良さを確認するために片っ端から接尾辞は主義主義という固い言葉に隠されている弱さの発見。なるほどと思いました。054:靴下 春畑 茜 2005年03月07日 (月) 16時10分靴下を春のひかりに吊るしやるひゃくねんせんねんゆめみるがよきどうしても歌のほうから目に飛び込んできてしまう春畑さん。下の句の表記も上手いです。靴下からもこういった詩の世界へ飛べてしまうのですね。005:サラダ 伊波虎英 2005年03月07日 (月) 17時46分しやきしやきとサラダすなはち北原白秋(はくしう)のさびしみを食む四月昼なかルビがこういう形でしかふれないのが不利ですが、北原白秋とサラダ、そうそう、結びつきます。「サラド」でもいいななんて思いました。サ音の響きも的確。
Jun 22, 2005
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一本の樹のはじまりほつといふ口のかたちに梅は咲き今年の春が肩に落ちてきたエアコンの無色の風に運ばれて岩波文庫のパラフィンの音北風と太陽ならば目的はひとつであるが あなたは風だ夕闇に吸はれる記憶ありつたけの画集開いてあなたを呼ばう窓外は海であるのにこのロゼは中途半端な甘さであるよきつちりと並ぶ苺を手に取れば別のパックがたちまち香るまだ硬き蕾のなかに遠景をひとつ隠してゐるチューリップはいといふ全肯定に咲く花を恐れつつ雨の朝を待ちぬどんぐりが芽をだしてをり一本の樹のはじまりはこんなに軽い『眩』第六十四号 2005/5
Jun 3, 2005
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本当はそうではないのに誤解されてしまう不器用な生き方。そんな生き方しか出来ないヒトがいるけれどイヌも同じなのですね。子犬は皆尾を振って、だっこが大好き。そんな先入観は間違えだということをわわちは教えてくれました。「やだ、このチワワ震えてる・・・」(慣れれば大丈夫なんですよ)「怖がってるよ、気が小さい」(抱き方が下手なんです)言いたいことを飲み込んで、そっとわわちを部屋へ返すときの悔しさ。手の空いた時間にわわちをだっこして、ショップ内を散歩することにしました。ミドリフグが大好きで、亀に興味なし。ドライフードの袋を見てはぺろぺろ舌なめずり。わわち、わわち、ガンバロウ。お前は本当にいい子だよ。 そうしてとうとうその日はやって来ました。「かわいい。。。」綺麗で優しそうなお姉さんがわわちをだっこです。「仕事から帰って来てこんな子がいたら幸せでしょうね。」「はい!」やったね、わわち。トリミングルームから嬉しそうに帰る犬たちをじっとみつめていた、わわち。私が帰るとき、振り向くと見えなくなるまでじっと立っていた、わわち。わわちの出発の時、今度は私がずっと見送ってあげました。段ボールの箱の穴から鼻だけが見えました。その小さな鼻が見えなくなるまで見送りました。わわちのいなくなった部屋を掃除するとき、かすかにわわちの匂いがして、涙がとまらなくなってしまいました。「これくらいのことで泣いているようでは、この仕事は出来ませんよ」叱られてしまいましたが、それでも私はいいやと思って泣いていました。クールになることがプロならば、私は素人のままの生き方でかまわない。不器用なままでかまわない。わわち、わわち、ありがとう。もう「わわち」という名も私のことも忘れて幸せになるんだよ。そうして、胸をはってトリミングにおいでね。BE HAPPY! わわち。*鑑賞 題詠マラソン2005007:発見 足立尚彦 2005年03月03日 (木) 11時33分発見の前からそれは在ったのに在り続けるというだらしなさ「彼が日常を、ゴミや造花や微生物を詠うとき、それは世界の欠けている部分を必死に埋めようとする作業にも思える。 彼はきっと詠うことすらどこかで恥じているのに違いない。そして、その恥じらいゆえに、足立尚彦の歌は信頼できると思うのだ。(『遊子』第十二号 一首燦燦 久野はすみ より抜粋)」歌論に感動でした。久野さんは明確に足立尚彦の歌の本質を見抜いていると思います。「歌を書くことは恥じをかくことだ」「照れ照れ坊主は乾かない」上手く詠おうなどと考えてしまったり、苦し紛れに小細工をしそうになるとき、いつも師匠のこの言葉を思い出します。ギョッとするほど大胆であり、またある時はこころが震えてしまうほど繊細でもある師匠の視点。いかに自分に目が曇っているのかを思い知らされます。例年のごとく、あっというまに百首走って行かれてしまいました。次はいったいどこへ行ってしまうのか。そんな感じのする今年の題詠マラソン百首でした。五首選001:声 牧水の、一彦の、康敬の声ニモマケズまだ宮崎に棲む018:教室 教室の真昼 みんなに影はあり影に重さがあったみたいだ022:弓 弓を引くその一瞬が殺意ならその湾曲に殺されるべし070:曲 曲がるのは正しいことでありますが「曲」という字の曲がりやすさよ098:未来 ふたしかな未来を過去となすためにセットしている目覚し時計番外(爆笑しました)037:汗 ペット屋の子犬の数が客の数より多いことに気づいて、冷や汗
May 27, 2005
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春休みに入って子供が沢山来るようになりました。油断すると子供達はガラスをバンバン叩きます。注意書きを読んで叱ってくれるお母さんは一割もいないので、後ろから目隠しをしたり、「こらぁー」と捕まえてやんわりと止めさせます。子供は素直に言うことを聞いてくれますが、目くじらをたてるお母さんもいるので大変。気を遣わなくちゃね。ジャックラッセルのように元気な犬はいいのですが、気弱なわわちはその音にとても怖がり、だっこしてあげても震えています。犬の聴力を思えば無理もないことです。心配でついわわちばかりに目が行ってしまい、大きな目から涙を落としているのには私も泣きそうになりました。チワワの子犬もやってきてますますわわちが心配な朝、ショップへ入ると床にサークルが広げてあり、おもちゃやクッション、トイレもちゃんとあるかわいいお部屋が出来ていました。夜のうちにオーナーがつくってくれた遊び場でした。走るのが大好きなミニチュアピンシャーと交代に、ここで遊ぶわわちはとても嬉しそう。ぴょんぴょん跳ねて、笑っています。遊び疲れた頃に自分のお部屋へ戻しても、もうおびえていません。ガラス越しに私へお気に入りのガムを見せてくれました。目をくりくりさせて、満面の笑みです。わわちぃ、よかったねぇ。。。さあ、みんな、明日もガンバロウね。子供も子犬も笑顔が一番似合います。 *鑑賞 題詠マラソン2005001:声 久哲 2005年03月01日 (火) 21時19分聞きなれた声につまずく 恥骨から痛み出すのが春と言うこと016:たそがれ 春畑 茜 2005年03月02日 (水) 14時26分さくら花あわれ定家の身めぐりにしらしら降(くだ)る遠きたそがれ短歌の面白さを感じます。久哲さんのぶっとんだ春の定義。春畑さんの美しい韻律。どちらも確かに春であり、歌の世界がきちんと創られていることを思います。私の歌の好みは春畑さんですが、自分と違う次元にある久哲さんの感性にも大変惹かれます。003:つぼみ 久哲 2005年03月01日 (火) 21時22分グラム売りされる乾いたつぼみにも宿命ほどの愛はそれなりこの「それなり」をどう理解すればよいのか苦しむのですが納得出来てしまう。春畑さんの結句の「たそがれ」に似たイメージがこぼれてくるのですね。不思議です。
Mar 30, 2005
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ちょっと気の弱いチワワですが、お父さんはチャンピオン犬です。トロフィーと一緒に晴れがましく映っているお父さんの写真も知らず、大きな目で窓越しに遠くを見ています。私は飼い主ではないので子犬達に名前をつけることは出来ませんが、とりあえずその犬種の名の一部で呼んであげます。で、チワワは「わわ」または「わわち」。わわちは兄弟二匹で来ましたが、片方はすぐに飼い主が決まりました。運命ですね。もう八ヶ月になりますが、最初の値段の半分近くになっても、まだ家が決まりません。わわちはおとなしくて、たまに存在を忘れられてしまうほどです。餌を食べ終わってもお皿をひっくり返したりしません。早くだしてくれと吠えたりもしません。近寄るとお腹をだすので、なでであげると大喜びです。お気に入りのキューピー人形で一人遊びするとき、ピーピーと鳴る音で「あ、わわちが遊んでる」と気づかれます。「もうすぐチワワの子犬がくるから、わわちは引退」オーナーの言葉でびっくりしました。私が密かにわわちを可愛いと思っていたのが、バレバレだったようです。「わわちは何処へいくんですか?」「何処へいくんだろうね」心臓が痛くなりました。「こちらで飼うしかないね」オーナーの犬舎へ行くらしいです。なんとかわわちに家を見つけてあげたくて頑張ってみましたが、育ってしまった子犬は難しいです。こんなにいい子なのになあ。明日の夕方からラストまでショップへ来られないかという時間変更の電話がありました。オーナーが子犬を引き取りに行くのでしょう。わわちと過ごせる時間が残り少なくなったようです。わわち、わわち、頑張れよ。私も頑張るからね。仕事なのですから子犬の可愛さに負けてはいけないのですが、まだまだ私は甘い生き方しか出来ません。どんな世界でもプロは大変なものです。*鑑賞 題詠マラソン2005004:淡 武田ますみ 2005年03月01日 (火) 00時10分初夏(はつなつ)の匂いのしている冷蔵庫「淡色野菜」と声に出すとき001:声 春畑 茜 2005年03月01日 (火) 00時27分音にさえ母と子のあるさびしさに子音母音を声に鳴らせりスタートしてわずかな時間でこのような歌を目にすると、瞬発力のある作者がうらやましくもあります。今年こそ余裕を持ってゴールしたいものです。武田ますみさんの歌、「淡色野菜」の色、冷蔵庫の冷気の匂いが初夏と微妙に重なって、五感に訴えてきます。春畑 茜さんの発見にもはっとしました。「声に鳴らせり」が上手いです。「音」なのですから。「母と子のあるさびしさ」共感しました。生まれたばかりの自分の子供を抱いたとき、喜びと同時にさびしさも確かにありましたし、そこからの成長も喜びでありさびしさでもあります。また、自分と自分の母親とのあいだにもさびしさはあります。母と子の普遍的な関係なのでしょう。
Mar 9, 2005
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ペットショップ定位置で定刻告ぐる鳩時計 母に呼ばれし朝のありきカーテンを開けてもよいがこの部屋の出窓はどれも結露してゐる免許証、履歴書、願書、パスポート、背景のない我に貼り付くおだやかに子の名を呼びて行かむとす鳥の名のつく最寄り駅までマルチーズ、チワワ、パピヨン、ポメラニアン、我に懐くな買はれてゆけよ入荷した子犬を洗ふ両の手にしばし残れる子犬の震へ階段の中程にをりこの上はまだ何もない何もないはずありふれた街の歩道に影のびて祈りのやうなひとの足音『眩』第六十三号 2005.3
Feb 20, 2005
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今年も始まりました。第三回目です。一年が早いなあ。。。========================================================「題詠マラソン2005」開催のお知らせ今年も「題詠マラソン2005」を開催します。ただいま、参加のお申し込みを受付中です(2月28日正午まで)。どうぞ、ふるってご参加くださいませ。2003年にスタートした題詠マラソンも、今回で3回(年)目を迎えました。今年も大勢の方と、100首の道のりを一緒に走れたらうれしいです。100首を完走する意気込みのある方なら、どなたでも自由にご参加いただけます。くわしくは、以下のURLにアクセスして、ご案内をご覧ください。(題詠マラソン2005の会場)http://www.sweetswan.com/daiei-2005/index.html=======================================================*梨の実通信BBSより。もうすぐ新学期、という感じがします。とある日の風であったか春の日の夢であったかすれ違う影/風間 祥いいですね、風間さんのこの歌。一読、暗唱してしまいました。いい歌に出会うと幸せな気持ちになって、ああ、ガンバロウと思えます。今年はどんな歌に出会えるのかな。そう風を歌うひとなら見るだろう流れる雲も流れぬ雲も/よもぎ
Feb 1, 2005
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ペットショップでバイトをするようになって、2ヶ月。やっと慣れて来ました。子犬はいくら見ても見飽きません。見ているだけで嬉しくなってきて、小さな命が私に力を与えてくれるようです。沢山の犬に触れるので、帰ったらすぐシャワーを浴びて全部着替えるのですが、それでも犬の臭覚はすごいものですね。くるみは私を嗅ぎ回って、「ナニシテキタノ?」という目で見ます。「お仕事よ、お仕事。くるみが一番可愛いよお」仕事用のスニーカーも疑わしく嗅がれてしまいます。いけないことをしてきて奥さんに言訳をしている男性ってこんな感じなのかな?あは。小さいのに犬達はすぐに環境に適応して、「今が一番幸せ」というように尾を振り、食べて、出して、寝ています。健気です。子猫は本当にマイペース。お世話させて戴きます、とこちらが思ってしまいます。さ、また頑張ろう。みんないい飼い主さんに出会えますように。犬もまた切なき家族こいぬ子犬ごめんよお前はあたたかすぎる/よもぎ
Jan 28, 2005
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★★「ネット短歌」に関するアンケート★★「ネット短歌」に関するアンケートは、インターネットをご利用で、かつ短歌に親しまれている方を対象に、いわゆる「ネット短歌」に対する実態を調査する目的で行うのものです。どうぞご協力くださいますようお願いします。【実施期間】2005年4月末まで(予定)【回答資格】特にありませんが、お1人様につき1回でお願いします【集計結果】選択項目については、その場で結果をご覧いただけますまた、すべてのアンケート結果について、文章中に引用するなど、二次使用させていただく予定がありますので、あらかじめご了承ください(ただし、お断わりなく回答者のお名前を出すことはありません)【実施場所】会場【調査人】五十嵐きよみ【問合せ先】 (梨の実通信BBS)五十嵐きよみの掲示板です。何かご不明の点がございましたら、遠慮なくおたずねください======================================================歌会、勉強会、そして「題詠マラソン」でお世話になっている五十嵐きよみさんのアンケートです。今日、答えながら、自分の歌について考えてみました。考えましたが、よくわかりませんでした。ネットも歌も、私にとっては呼吸したり食事したりすることと同じく、そうかまえることでもなく自然なことで、食べたいときもあり、食べたくないときもあり、けれど呼吸できなかったら苦しい・・・そんな感じです。こんなんでよいのかなあ。好きなことなので、ずっと好きでいられて、元気なおばあちゃんになって、それでも歌がそばにあったらいいなあ。始まりはネットでした。けれど「ネット短歌」という名はありませんでした。いつ、どなたが付けた名称なのか、不思議です。今はネットだけが勉強の場ではありませんが、キーボードを叩きながら推考している私の歌は、「ネット短歌」なのかなあ。ますますわからなくなりました。そういえばサークルの友人達や父に言われます。「蓬さんの歌って、よくわからないわ」「はあ。」「こういう歌もあるのよ、ね?」「はあ。」「お前の歌は変だな」「遺伝でしょ!」「俺は俳句だ」「はい、はい」きっと、たぶん、ずっと分からないままなのでしょう。けれどいつも頭をよぎるのは、結社の先輩に始めてお会いした折りのこと、「蓬さん、長く短歌をやっているとね、歌を一目見るとこのひとが勉強しているかどうかわかるものなのよ。長くやっていて自信があるのはこのことだけかもしれないけれど・・」爽やかな笑顔に、心底恥かしいと思いました。
Jan 10, 2005
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今年の干支のことを考えていたところ、ある偶然に気がついて父に電話をしました。「驚いちゃった。パパたちずっと鳥にちなんだ場所に住んでるよ」「ほんとうだ。そういえばそうだなあ、今頃気がついた。鳥の足に引っかけられたんだな」「あはは・・」母は酉年生まれ。私も酉、おばあちゃんも酉でした。父も母も、単線の終点にある静かな城下町の出身です。その町の名は「烏山・からすやま」私にとっては懐かしい響きです。そこから東京へでてきて住んだのが「飛鳥山・あすかやま」ここにも「鳥」がつきますが、幼かったので断片的な記憶しかありません。それでもやはり懐かしい響きです。そして今は東京のはしっこの小さな街に住んでいますが、すぐそばの駅の名が「ひばりが丘」。山から丘に降りてしまいましたが、父はこの駅名が気に入って、ここへ越してきたと言ってました。名前の通り、子供の頃はひばりが沢山鳴いていましたが、今はまったくいません。「烏山」から「飛鳥山」そして「ひばりが丘」へ。酉年生まれの母を連れて、父は私と妹を育ててくれました。私も妹も、またそれぞれ巣をつくって雛を育てています。雛もだいぶ大きくなってきました。いつの日か巣立ったら、もしかして誰かひとりくらい鳥の名前のつく街に住むかもしれない。ふんわかと夢がふくらんだ年の始まりでした。飛ぶための羽だよそれは鶏よ飛んでごらんよ夢でもいいから/足立尚彦
Jan 5, 2005
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どうにもならぬ午前九時さあて自分の時間だが散歩にでてもたぶん近道ゴムの木に歌を聞かせるそのひとは「いいね」とたまに笑つてくれた詩人にはなれさうもなく汗をかくことも嫌ひだへのへのもへじつめを切り前髪も切り風をきる ふゆの朝にひかる自転車一本の樹木のやうに立つてみる小鳥のやうなひとに会ひたくて雨音に囲まれてゐる静けさと『いま長靴をはいてゐること』アルバムのどこを開けても犬と子とわたしが明日を知らず笑まへる降るならば降ればよからう開かれて傘はひとりの虚空をつくる『眩』第六十二号 2005.1*『いま長靴をはいてゐること』 浜 守 第五歌集読むでなく書くでもなくて元旦の夜ふけかがまり足の爪きる柿の木の伐り株見つつ意識せりいま長靴をはいてゐること地に着きて消ゆる楽しさあるやうに次からつぎへ降る牡丹雪
Dec 31, 2004
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小さな教会での、ソロと合唱によるクリスマスコンサートでした。日本のうた、クリスマスにちなんだ名曲の数々に挟まって、歌人の小島ゆかりさんが特別ゲストで、一部の終わりに出演されました。題して「小島ゆかりの世界」 いったいどんな世界なのか想像が膨らみます。いつも賛美歌が流れているのであろうこの空間にはおごそかな空気が流れていて、それだけでもうドキドキしながら座っていました。小島ゆかりさんは、ひっそりと舞台下手の椅子に腰掛けて、ごく普通に御自分の歌を朗読されました。バックに流れたのはピアノと女声合唱団によるその短歌につけられたメロディー。宮崎在住の勢井由美子さんというかたの作曲でした。演奏の最初に、あるいは間に、指揮者の指示を受けながらゆっくりと朗読された小島ゆかりさんの声と短歌は、合唱をじゃまするでもなく、負けるでもなく、静かに、静かにこころへ沁みてくる自然なものでした。「小島ゆかりの世界」ストローでまはしてごらん透きとほるソーダの中のおまへの空を鐘りんごん林檎ぎんごん霜の夜は林檎のなかに鐘がなるなりひとつだけあげたいものはこの母が転んだときに見えた青空雨が降るやうにしぜんに泣けばいいおまへの顔が傘で見えない大人には大人の不思議あるゆゑに行きたし冬の動物園へ反抗期の子はぎしぎしと揺らぐ楡 千年のちもおまへを愛す団栗はまあるい実だよ樫の実は帽子があるよ大事なことだよどんぶりに顔を呑まれて下の子がうどんを食べる、食べるよろこび白(しろ)湯気に鼻けぶらせて上の子がうどんを食べる、食べるかなしみ希望ありかつては虹を待つ空にいまはその虹消えたる空にもう二週間近くも前のことですが、今でもまだ声が耳の底に残っていて、繰り返し思い出しては、あたたかくて、そして泣きたくなるような気持ちになっています。友人と妹と三人で、終電めがげて走ったおかしさと一緒に。とてもいい、小さなクリスマスコンサートでした。 *題詠マラソン 五首選会
Dec 21, 2004
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・・を起こしてしまいました。こんなことを日記に書くのはためらいがありましたが、この師走のあわただしい時期、どうか気を付けてくださいという気持ちいっぱいです。毎日TVのニュースで目にしていることは、決して他人事ではないということを、今、重く重く、感じています。 幸いなことにかすり傷程度ですみましたが、今後のことはまだ心配ですし、また沢山のかたにも迷惑をかけてしまいました。毎朝「気を付けてね」と家族を送り出している自分が、ひとを傷つけてしまうことにもなるという現実。自分の不注意に恥入るばかりです。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嬉しいことがあればきっとその前に嬉しいことを誰かにしたのでしょう辛いことがあればきっとその前に誰かに辛い思いをさせてしまったのでしょう残念ながら 僕らはこんな風に色々抱えて生まれてきたんですそのままが特に美しいモノじゃないんです・・・・・・・・・・・・・・・「Happy Birthday Song」 by槇原敬之*題詠マラソン2004 こころに残った歌100:ネット 杉森多佳子 2004年10月27日 (水) 14時57分師の訃報ネット上にて知る夜を永く忘れず忘れずにいる081:イラク 田中槐 2004年10月27日 (水) 16時45分愛という花言葉もつ花たちをイラクの空より降らせてみたし061:高台 青山みのり 2004年10月27日 (水) 23時20分だれもだれもわるくないのに高台の屋根のひかりがこんなに痛い
Dec 8, 2004
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ドライレーズンどの花も自分の意志で咲くものと気づき始めてもう若くない叶ふまでそつとしておく夢ひとつ 新規フォルダぽつりとつくる適量のバニラエッセンスを落とし焼きあがるまで不安な「適量」離れ住む子の帰りきて卓上に剥いた蜜柑の皮を咲かせり甘いほど焦げつきやすくパン生地の奥へ練り込むドライレーズン君と見る打ち上げ花火 人生に沸騰点はあるのだらうか薔薇園に迷ひ込みたる蜻蛉の消えゆくまでに等し 恋など『眩』第六十一号 2004.11 *題詠マラソン2004 こころに残った歌027:天国 沓澤誠一郎 2004年10月26日 (火) 17時47分天国の駅をいくつか乗り過ごしまどろみの果てに待つものを待つ075:あさがお 魚柳志野 2004年10月26日 (火) 22時56分もどかしさなんてなかった蒔けば芽が出るあさがおしか知らなかったし013:彩 小林真紀子 2004年10月26日 (火) 23時36分そこにまた重ねられたら滲むだろう水彩絵の具のようなやさしさ036:流 西橋 美保 2004年10月26日 (火) 23時44分髪ながく風に流して名前なき女として立つカインの妻は075:あさがお 田中槐 2004年10月27日 (水) 00時25分秋の朝しょぼくれて咲くあさがおにひとつ区切りとさわだつ思い100:ネット みうらしんじ 2004年10月27日 (水) 00時38分ネットから遠く離れているときのわたしは歌をうたわなかった085:再会 よごろうざ 2004年10月27日 (水) 01時19分この生は再会だからしばらくは君とままごとみたいに暮らそう088:句 よごろうざ 2004年10月27日 (水) 01時22分言い過ぎることも言い足りないことも怖くて句点をやたらとうった035:二重 久野はすみ 2004年10月27日 (水) 01時55分二重橋飾電燈のあめふればあめふるままにけぶれる明治
Nov 27, 2004
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某番組の口約束から生まれた『チキンライス』はい、THUTAYAへ予約して発売日の前日に購入という、マッキーファンの走りをしてしまいましたが、正直、この詩によくまあこんな綺麗な曲をつけて・・そして浜ちゃんの下手くそな歌によくまあ綺麗にハモって・・・マッキー頑張ったねえ(涙)と、ダウンタウンのファンのかたには袋だたきに合いそうな感想。でもね、いい曲ですよ、とても。七面鳥はまだ食べたことないし、この詩で松本さんが言いたかったこともよく分かります。♪ 今日はクリスマス街はにぎやか お祭り騒ぎ七面鳥はやっぱり照れる俺はまだまだチキンライスでいいや ♪うーん・・・ちょっと複雑なのは、私の子供の頃、チキンライスってごちそうだったんだけれどなあ。鶏肉なんて入ってなくて、ハムだったような気もします。ケチャップの赤いご飯はとてもお洒落だったし、お子さまランチのチキンライスの旗は大事に持って帰ったし。時代の差でしょうか。まあ、深く考えるのはやめて、チキンライスを久しぶりに息子と食べました。そういえば私より妹が大好きだったっけ。「ケチャップだけじゃなくて、ウスターソースか醤油入れたら美味しいかもよ」「え?お砂糖入れて甘いのが好きだったでしょ?」「甘くないほうがいいな」「ふーん・・・・」「粒コショウもきかせてね。あ・友達に『チキンライス』聞かせたら、みんないいねって言ってたよ」「そう、よかった。ヒットかな」「それはビミョ~」「ふん!」確かにウスターソースを入れたらドミグラソース風で美味しくなりましたが、ちょっぴり寂しい味のするチキンライスでした。おかずのブリの照り焼きも、最高にミスマッチでした。『チキンライス』売れるといいです。*題詠マラソン2004 こころに残った歌056:磨 村田 馨 2004年10月24日 (日) 22時41分絵日記を描きし日々よかつてかく磨きあげたる表情をして076:降 村田 馨 2004年10月24日 (日) 22時48分あさがおの花降下するまっすぐに信楽焼の坩堝めがけて094:遠 田外茗子 2004年10月25日 (月) 10時04分遠慮がちに言い逃れられているらしくソフトクリームが崩れ始むる045:家元 青山みのり 2004年10月25日 (月) 15時52分青山家元気でいますこの街は濁音ばかり流れています075:あさがお なかはられいこ 2004年10月25日 (月) 16時21分「あさがお」ときみが発音するときの空いっぱいにひらく朝顔001:空 西橋 美保 2004年10月25日 (月) 21時10分安全な空からやつらは見おろしてゐるのか神もヘリコプターも068:傘 魚柳志野 2004年10月25日 (月) 22時51分傘という不自由も含め雨の日に会えない理由を考えている090:木琴 吉田ともき 2004年10月26日 (火) 16時30分詩心のないぼくだけど君のため木琴だけは練習するね
Nov 19, 2004
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「すみません、車が追突しました・・」「えー?!」もう心臓がとまるかと思いました。娘の携帯からなのにキャプテンの声。てっきり娘が事故を起こしたのかと動転してしまいましたが、遠征に車が足りないので貸して欲しいと言われて、その車を運転していた子が、信号待ちでよそ見をしてしまったとのこと。 幸いなことに誰の怪我もなく、車もそんなにひどくはないようですが、何しろ離れているので分かりません。とりあえず明日は遠征先へ様子を見に日帰りをしようかと思います。何でもない日が一番いいですね。来るときはいつも不意打ち玄関に恥づかしさうに秋が立つてる/岩尾淳子『眩』第六十一号*題詠マラソン2004 こころに残った歌070:にせもの 涼 2004年10月22日 (金) 22時10分にせもののコーラの方が美味しくて三角形の日曜の午後083:皮 shion 2004年10月23日 (土) 08時37分備長で鶏肉(かしわ)の皮を炙りつつまだテ二ヲハを迷つてをりぬ078:洋 コメット 2004年10月23日 (土) 11時58分それとなく君に拒まれて太平洋ひとりぽっちの老ヨットマン075:あさがお 涼 2004年10月23日 (土) 20時35分あさがおの双葉のさきがすこしだけ縮んでいてさ泣きたかったよ060:とかげ 魚柳志野 2004年10月23日 (土) 20時50分ゆっくりと思い出すから道順や雑草に消えたあおとかげとか093:列 月読亭羽音 2004年10月24日 (日) 06時24分参列は出来なかったが通りざま目配をするらしい別れだ096:類 杉田加代子 2004年10月24日 (日) 12時34分わづかだが違和感のある風がふく旧人類のわが言語野に053:墨 ざんくろー 2004年10月24日 (日) 15時52分夕暮れの薄墨桜傾いてかくれんぼうの鬼をしている056:磨 なかはられいこ 2004年10月24日 (日) 18時11分磨かれたガラスさみしいくっきりと町の輪郭透けてさみしい093:列 コメット 2004年10月24日 (日) 21時51分水色の時の鉄柵跳び越えてひつじの列は未だ途切れない
Nov 5, 2004
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今年の題詠マラソンの詠草受付がついに終わりました。去年の反省をちっとも生かすことが出来ませんでしたが、マラソンの名の通り、自分との戦いだなあとしみじみ思います。沢山の思いがあって、何から書いてよいのやらわかりませんが、今一番感じているのは、さて、新しいスタートだぞ。かな。 スタッフの皆さんへ言葉にならないほどの感謝を込めて、花束を。。。 。☆。.:*:・'゜ i * ∴ ゜'・:*:.。☆。.:。 *∴i ..:.。: * ⌒∴ ★ 。.: * i~~`--..。* ☆。.:*:・'゜題詠マラソン2004 終了!゜'・☆。* .. ∴∴ 。~` * .. ∴∴ 。 *.. .∴ *..∴ ** * .*.∴ *.おめでとうございます。 。☆。.:*::.。・'゜ i * ∴ ゜'・:*:.。:.。☆。.:。 ☆。.:*:・'゜★゜'・:*:.。☆。*題詠マラソン2004 こころに残った歌006:土 合田千鶴 2004年10月18日 (月) 07時15分ささやかな春の菜園耕せばに土にかすかな乳のかをりす056:磨 合田千鶴 2004年10月18日 (月) 07時59分十月になれば水冷ゆスピノザのレンズ研磨の技冴ゆるころ071:追 合田千鶴 2004年10月18日 (月) 08時10分くらぐらと道狭まりてやうやくに深追ひと知る無音のなかを072:海老 合田千鶴 2004年10月18日 (月) 08時11分深海に生れしづかに透きとほる海老わが夢の砂にすみゐる094:遠 合田千鶴 2004年10月18日 (月) 08時28分月の砂の遠鳴りだらうこの夜更けかすかに空のきしむ音きこゆ096:類 合田千鶴 2004年10月18日 (月) 08時30分みちたりた倒木といはむ小夜ふけて菌類あまた発光をせり060:とかげ 武田ますみ 2004年10月18日 (月) 10時26分ひとり居の真昼間の部屋の片隅のあるいは座敷ぼっこのひとかげ091:埋 阿部定一郎 2004年10月18日 (月) 12時07分病葉に埋もれる秋の陽を探す風のからだはだいぶつめたい074:キリン 笹田かなえ 2004年10月18日 (月) 16時21分近くより遠くから見ていたほうがずっとキリンも好きでいられる045:家元 中村安伸 2004年10月18日 (月) 23時34分家元が家元を産むぬばたまの闇夜は光合成も休みで067:ビデオ ひぐらしひなつ 2004年10月18日 (月) 23時40分愛されていたのだった 亡き人の視界とどめてビデオはまわる065:水色 大江ケンジ 2004年10月19日 (火) 02時21分水色で水を表現できなくてあなたをいつも苦しめていた081:イラク 江村彩 2004年10月19日 (火) 11時10分「戦」の文字が接尾辞のごとついてくるただにイラクと呼びたきものを083:皮 杉森多佳子 2004年10月19日 (火) 12時24分玉葱の薄茶の皮を剥ぎおれば薄きもの脱ぐさびしさつのる074:キリン 都築直子 2004年10月19日 (火) 14時28分ねえ、キリンときにはきみもまつ青な空に浮かんでみたくはないか095:油 みに 2004年10月19日 (火) 16時22分混ざり合うことはなくても寄り添っていけると思う水と油は021:胃 ことら 2004年10月19日 (火) 19時22分昼時の喫茶七十席ありて七十の胃が並ぶスツール026:芝 コメット 2004年10月19日 (火) 20時39分初めての駅に降り立てばひっそりと紅芝桜の駅名がある086:チョーク 丸山 進 2004年10月19日 (火) 21時40分チョークから花でも蝶でも飛び出した花粉まみれの青春だった097:曖昧 日向寺みづほ 2004年10月19日 (火) 22時58分曖昧な日々は望んだ結果です。だってこんなに明るい夜空050:おんな 加藤苑三 2004年10月20日 (水) 00時43分おんなとして。おんなとして。って、鉄棒はずっと苦手だったんだよ。079:整形 水島修 2004年10月20日 (水) 02時15分バス停の整形外科の広告を見ているあなたに今日も待たされ073:廊 コズエ 2004年10月20日 (水) 09時30分放課後の廊下に響く自らの音におびえた自意識過剰026:芝 魅弥華韻 2004年10月20日 (水) 16時22分はつなつの風が吹くから芝草の戸惑いとしてくちづけており074:キリン ひぐらしひなつ 2004年10月21日 (木) 01時23分空色の回収車へと吸われつつキリンビールの麒麟は駆ける085:再会 水島修 2004年10月21日 (木) 09時23分何一つ過去に誇りのあらざれば再会などはあってはならぬ023:望 林 ゆみ 2004年10月21日 (木) 17時53分履歴書の志望動機をうめている昨夜のカレーがまだ匂う朝005:名前 良子 2004年10月21日 (木) 20時44分先生のシャツブラウスに咲いているスミレのひとつに名前をつけた078:洋 ひぐらしひなつ 2004年10月22日 (金) 00時31分きんいろに西洋菓子は焼きあがり老パティシエの美しい庭079:整形 ひぐらしひなつ 2004年10月22日 (金) 00時49分モディリアニたそがれながら部屋にあり整形外科医はやさしく睡る090:木琴 村上きわみ 2004年10月22日 (金) 01時40分前列に木琴係ならばせてうんとしずかに叱ってあげる100:ネット 水島修 2004年10月22日 (金) 01時40分冗談じゃなくてアララギ傍系の意地をネットに見せんと思う030:捨て台詞 青山みのり 2004年10月22日 (金) 14時43分捨て台詞のようにフェンスを軽々と越えてみえなくなった白球033:半 青山みのり 2004年10月22日 (金) 14時45分半分に折りたたまれた秋空の短い辺がぼくたちの距離077:坩堝 五華 2004年10月22日 (金) 22時02分情報の坩堝で溺れぬ訓練と毎日くだらぬ事を調べる
Nov 1, 2004
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白梅がほつ、ほつと咲いていて、びっくりしてしまいました。ちょっと弱々しい花ですが、確かに咲いています。気づいたのは2,3日前。今朝もまたひとつ咲いてます。どうしちゃったのでしょうね。 この一年はとても早く感じます。今日はポリーの命日でした。妹の家で車をだしてくれて、お墓参り。ポリーの好きだった公園はちょうど草刈りの終わってしまったところで何も咲いていません。よく食べていた草を少しみつけて持っていってあげました。 去年と同じように秋晴れです。「犬って何年生きるんだ?」「長くて15年くらいかなあ。大型犬はもっと短いよ」「そんな早く別れて、何回も悲しい思いをするのに、どうしてまた飼うんだ?」「うーん・・・なんでだろうね。死んでしまったときはもう二度と飼わないって思うんだけれどね」ほんとうにどうしてかな。ばかだよなあ。犬は飼い主を選べない。ポリーは幸せだったろうか。くるみは今、幸せなのだろうか。そんなことぼんやり考えながら、今日二つ目のチーズケーキを焼きました。ひとつは妹の家へ。もうひとつは常に腹ぺこな息子へ。焼き上がるケーキは思い出の匂いがします。ああ、もしかしてあの梅はポリーがいたずらをして咲かせたのかもしれないなあと、ちょっと思いました。*題詠マラソン2004 こころに残った歌069:奴隷 笹田かなえ 2004年10月13日 (水) 14時21分見て見ないふりはできないでも奴隷どうして奴隷小さく叫ぶ045:家元 コズエ 2004年10月13日 (水) 14時32分家元と呼ばれる人に接点のない生活を今朝もはじめる043:濃 武田ますみ 2004年10月14日 (木) 21時24分濃紺の桔梗抱えて行く人とすれ違うとき湧く歌ことば050:おんな 武田ますみ 2004年10月14日 (木) 21時29分おんなにあるべきものひとつうしなって今日の朝日は少しまぶしい034:ゴンドラ 兵庫ユカ 2004年10月14日 (木) 23時46分木犀の沸きかえる夜ゴンドラの止まるところが見たかっただけ079:整形 杉山理紀 2004年10月15日 (金) 04時21分全身整形以後あまり感じないあつささむさも彼岸のむこう077:坩堝 門哉彗遥 2004年10月15日 (金) 22時56分干乾びた絵の具の坩堝抱きしめて風のない丘描き始める075:あさがお nagi 2004年10月16日 (土) 20時57分本日の空は完全なる半球ゼリーの海にあさがおが咲く042:映画 よごろうざ 2004年10月17日 (日) 02時32分泣くための映画は少し遠出して優しい男友達と観る026:芝 久野はすみ 2004年10月17日 (日) 11時54分美しき乳房をさらす人のいてテント芝居に降る桜花027:天国 久野はすみ 2004年10月17日 (日) 12時57分天国のふちからこぼれおちてくるひかり、良くないことをしたのに099:絶唱 藤原龍一郎 2004年10月17日 (日) 18時39分流行を不易を離れ塚本の絶唱としてウマヲアラハバ095:油 渡部光一郎 2004年10月17日 (日) 21時30分油田から上がる火あれはなんでしょうあれをめがけて歩くのでしょう072:海老 村上きわみ 2004年10月18日 (月) 01時47分おがくずにまみれて眠る海老たちのやさしさなども思うゆうぐれ
Oct 29, 2004
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TVの画面に釘付けになってしまいました。ああ、坊やが生きていた!むき出しの足が寒そうで痛々しくて、抱きしめてあげたくなりました。お母さんの生存も信じていたのですが、悲しい結果でした。怖かったでしょう、痛かったでしょう。。。 一夜明けるごとに明らかになってくる被害、そしてまだつづく余震。こちらも揺れました。色々な価値観のかわってしまう、ここ数日です。 題詠マラソンもいよいよラストスパート。昨日なんとかゴール出来ましたが、幸せなことです。最後が苦しいのですよね。走っていらっしゃる方々、頑張ってください。 +題詠マラソン2004 こころに残った歌076:降 遠山那由 2004年10月09日 (土) 13時00分連日の通勤電車を永遠に降りる夕方 今夜は長い057:表情 島田牙城 2004年10月09日 (土) 14時29分海図を褒めよ表情を和らげよマゼラン死すともその後のするめ100:ネット 飛永京 2004年10月09日 (土) 18時01分言の葉をリリースすれば微動する蜘蛛の糸なるネットの空は063:雷 石川美南 2004年10月09日 (土) 20時45分そろそろ何か始めたいよねニョロニョロは雷の夜に育つとぞ聞く098:溺 島田牙城 2004年10月09日 (土) 23時35分溺るるか溺れるかを考へてゐるから藁は流されていく005:名前 石井建雄 2004年10月10日 (日) 00時35分それぞれの名前を胸に縫いつけた集団なんだ中学生は025:怪談 兵庫ユカ 2004年10月10日 (日) 04時36分言い含められそうで目を閉じている「もしも」と言えば長い怪談074:キリン 藤原龍一郎 2004年10月10日 (日) 22時19分使徒としてデューク更家降臨しキリン千頭画面を過ぎる056:磨 ハル 2004年10月10日 (日) 23時35分悲しいと母が言うたび悲しくて長女の私はバスタブ磨く017:免許 よごろうざ 2004年10月12日 (火) 18時14分つくづくと免許の写真は理不尽だ私が何をしたというのだ082:軟 和良珠子 2004年10月12日 (火) 22時34分ぬるぬるの軟体動物の手ざわりで今日もウィルスメールが届く023:望 岩崎恵 2004年10月13日 (水) 11時05分望まないブロックばかりが落ちてきてゲームオーバー近づく 助けて
Oct 27, 2004
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十時頃まですごい雨だったのですが、急に静かになりました。ニュースによるとまだこちらへは来ていないとのこと。被害もすごいですね。胸が痛みます。友人の住む県の名がでるたびにドキリとしています。 ドームだから大丈夫かなと思っていたら日本シリーズまで中止です。次の試合はどうかと思いつつ、ふと思い出して見つけました!089:歩 伊波虎英 2004年05月06日 (木) 00時10分マウンドに微笑みながら歩み寄る落合博満みたいな死神伊波さんはもうとっくに題詠マラソンを完走されていますが、この頃はまだ中日の優勝はもちろん決まっていません。今読むと面白いです。確かにね、落合監督の微笑みはちょっと怖いです。西武は「レオ流」中日は「オレ流」っていったい誰が最初に思いついたのでしょう。一昨年の日本シリーズ巨人対西武は「原、セ! 伊原、パ!」これも考えた人を知りたくなります。で、伊波さんの100首、改めて読ませて戴いて、もう一首驚いてしまったのが、009:圏外 伊波虎英 2004年03月01日 (月) 22時33分陽炎(かぎろひ)の春日井建や 圏外にゐてケータイは言の葉拒む枕言葉の使い方が上手いな、とこの時は思ったのですが、日付は3月。春日井さんの亡くなられたのは5月。予知能力があるのかと思ってしまいました。驚きです。他にも、ああ、すごい歌を詠んでいらっしゃったのだなあと、改めて感じました。題詠マラソンも締切りが迫り、すごいことになって来ました。主催の五十嵐さんが掲示板で心配なさっていますが、これもまた伊波さんは予知!023:望 伊波虎英 2004年03月05日 (金) 16時02分「こら!こら!こら!ルールをちやんと読まんかい!」五十嵐きよみの怒りと祈望この歌はよく覚えています。お腹をかかえてしまいました(五十嵐さん、ごめんなさい)・・・と感心している場合ではない私なのですが、020:遊 伊波虎英 2004年03月04日 (木) 16時37分枯野ゆく夢遊病者か春なれど松尾芭蕉を恋ふる我なり028:着 伊波虎英 2004年03月08日 (月) 00時55分着ぐるみを脱ぎてあなたに語れども北野武のやうにはいかぬ030:捨て台詞 伊波虎英 2004年03月09日 (火) 00時41分エミネムのラップみたいに捨て台詞吐きてもみたし < Lose Myself >040:ねずみ 伊波虎英 2004年03月16日 (火) 23時06分天竺ねずみ(モルモット)だ!天寿奪はれ永遠にミッキーマウスは生きねばならぬ092:家族 伊波虎英 2004年05月12日 (水) 00時24分聖家族ヨセフの思ひに突きあたる三十七歳独り身われは五首選。ちらりと影の横切る歌、いいなと思いました。*題詠マラソン2004 こころに残った歌032:薬 なかはられいこ 2004年10月06日 (水) 01時36分粉薬のむとき上を向く顎にダンディライオン触れておくれよ055:日記 ひぐらしひなつ 2004年10月06日 (水) 03時41分ここから先は雪 で途切れるその先の来ない日記をいつまでも抱く053:墨 杉森多佳子 2004年10月06日 (水) 13時24分眉墨のアーチの端を書き足して濃く生きること手放せばいい040:ねずみ なかはられいこ 2004年10月06日 (水) 23時26分はねねずみ、いたずらねずみ、こまねずみ、君が子を語るときひらがな099:絶唱 大辻隆弘 2004年10月06日 (水) 23時33分夜のあめは木の間をとほく移り降り誰が絶唱のこゑごゑはるか097:曖昧 牧野芝草 2004年10月07日 (木) 12時46分化けるより早く相手が化けたから曖昧模糊としてきてしまった021:胃 林 ゆみ 2004年10月07日 (木) 15時55分頭痛薬飲むために飲む胃薬の冷たく苦く白いさらさら077:坩堝 千坂麻緒 2004年10月07日 (木) 19時04分ル・クルーゼ坩堝という名の鍋なればみんなまとめておいしくなーる043:濃 郁迪 2004年10月07日 (木) 22時18分重たくてよどむ暗さが色濃くて君はこれから何を始める088:句 椎名時慈 2004年10月08日 (金) 21時18分「モーニング娘。」についた句点には開き直った正しさがある090:木琴 千坂麻緒 2004年10月08日 (金) 22時26分木琴のリズムで駆けてくるにゃんこすりすりとしてごはんをねだる018:ロビー 兵庫ユカ 2004年10月09日 (土) 02時04分ロビーには入り込まない飢餓のこと 日傘の骨を外側に折る087:混沌 阿部定一郎 2004年10月09日 (土) 06時09分混沌に浮かぶは豆腐・葱・若布・顔だけ思い出せぬ母親
Oct 20, 2004
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「アハハ、くるみかわいいなあ」息子の笑い声で眼が覚めました。「え?くるみ?くるみはゲージにいるはずだよ・・あれれ?」くるみがちょこんと足元に寝ています。いつもより早い時間だし、どうなっているのか。「朝練。」う~眠っ。時間がないらしく、クッキーをバリバリと囓って飛び出して行ってしまいました。なんで早く出ると昨日のうちに言わないのか、と腹を立てて起き出しながら段々思い出しました。昨夜、お布団に横になってくるみと話をしているうちに、そのまま私が寝てしまったようです。困ったくるみは私の足元に寝たのでしょう。あーそうか。寝ぼけ眼がほどけていくうちに、記憶が戻りました。「金木犀は不思議だね。どの木も同じ日に香って、同じ日に散るよ。ほら、あそこと、あそこと・・オレンジ゙色だったでしょ?今年は短かったねえ。あ・くるみははじめてだね。ポリーは金木犀の好きだったんだよ。くんくんて、空気を嗅いでいたよ。ポリーに会いたいよお、くるみ~・・・くるみもかわいいけれどね・・ズズ・・」馬鹿みたいに泣き寝入りをしたのでした。うー頭がずきずきする。ちょっとワインを飲み過ぎてしまいました。反省。いい迷惑だよね、くるみ、ごめん、ごめん。なーんにも言わないで尻尾を振ってお座りをされると、訳もなくまた涙がでちゃいます。犬は犬、我は我にて果つべきを命触りつつ睦ぶかなしさ/平岩米吉動物文学者でもあるこの作者の歌集『犬の歌』捜しているのですがなかなか見つかりません。読みたいです。*題詠マラソン2004 こころに残った歌021:胃 なかはられいこ 2004年10月01日 (金) 02時51分「このへんが肺、このへんが胃」べつべつの器のなかにいくつもの月083:皮 立花るつ 2004年10月01日 (金) 19時58分子を抱けぬ女が抱く蛇皮の二胡は哀しき啼き声をあぐ048:熱 桑原憂太郎 2004年10月01日 (金) 20時32分少年の頃の感覚ちよつとした発熱をして思ひ出したり069:奴隷 佐藤りえ 2004年10月01日 (金) 22時09分尽日の奴隷解放 学校の兎小屋から兎が消える014:オルゴール よごろうざ 2004年10月02日 (土) 22時53分鼻声でナ行がうまく歌えないオルゴールならそれ、僕のです053:墨 石川美南 2004年10月03日 (日) 02時48分墨を吐く生き物たちが赤外線くぐりて盗み出す『土左日記』075:あさがお 遠山那由 2004年10月03日 (日) 22時36分誰からも忘れられても咲く意志よ肌寒い日の青いあさがお084:抱き枕 田丸まひる 2004年10月03日 (日) 23時21分抱き枕けとばして寝る なんでみんなあなたを好きにならないんだろう046:練 藤原龍一郎 2004年10月04日 (月) 20時09分予科練の名簿にスズキイチローの名はありて来世は如何なる花ぞ090:木琴 佐藤りえ 2004年10月04日 (月) 22時13分たいらなるむくろのように木琴をたてかけている骨董店舗032:薬 高見里香 2004年10月05日 (火) 11時26分甘いから好きと言う子に複雑な気持ちのままに薬与える
Oct 15, 2004
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「わぁ、いいにおい!」と喜ぶ声が嬉しくて、幼稚園バスの着く時間に合わせてお菓子やパンを焼いていた頃がありました。実家や妹のところへも出来不出来関係なく押しつけて、ついには飽きられてしみましたが、どうしても思う通りに行かなかったのがバナナケーキ。沖縄で焼きバナナを食べてから、加熱したバナナの美味しさに夢中になり、ある理想のバナナケーキを思い描いていました。食いしん坊なもので。アンナミラーズの生クリームたっぷりも好きなのですが、違うタイプの素朴なもの。生地がバナナの甘さと風味をじゃましないで、サクサクほろほろとしてて、もちろんエッセンスは無しで・・沢山のレシピを試したり、お店のものを食べまくったりしましたが、なかなかないものです。そしてとうとう出会えたのが、「忘れん坊のバナナケーキ」森村桂さんの本にあったお菓子でした。軽井沢のアリスの丘で本物を食べた時の感動は忘れられません。小さかった息子がもっともっとと沢山食べて、売り切れにしてしまい、たいそう恥ずかしかったです。ある時、帰り際にご本人を見かけたことがあります。主人に「サインもらったら?」と言われましたが、真綿のようなオーラに包まれていて、私は車から降りることが出来ませんでした。今思うと残念ですが、でもそれでよかったとも思います。 先日、亡くなる少し前の映像でしょうか、ケーキを作っていらっしゃる姿を偶然目にし、あ!っと驚きました。粉をボールに入れるとき、自分の頭よりもずっと高い所から雪のように降らせています。森村さんのお菓子は、粉振るいや特殊な機械は使いません。でもこうすることによって、自然に粉をふんわりとさせていたのですね。 悲しいことを忘れてしまうようにと名付けられた「忘れん坊のバナナケーキ」ご冥福を祈りながら、久しぶりに焼いて見ようと思います。雪のように粉を降らせて、子供達の小さい頃の声を思い出して。気がつけばもう十月で閉じられた頁のように私がいる/風間 祥「Gの裏庭」*題詠マラソン2004 こころに残ったうた067:ビデオ ももか 2004年09月22日 (水) 11時08分人の世のひと日をビデオいく度も塔を崩せりふたつの塔を068:傘 渡辺百絵 2004年09月22日 (水) 17時32分ビニールの傘越しに見るローソンの雨に滲んだ青の淋しさ019:沸 藤原龍一郎 2004年09月22日 (水) 22時19分或る夜の底に吉増剛造は詩の沸点を高め尽くして074:キリン 池 まさよ 2004年09月23日 (木) 23時49分ほんとうの空はなにいろ東京のキリンは稀になくことがある070:にせもの 遠山那由 2004年09月24日 (金) 15時21分上品なほんものよりも欲望でぎらぎら光るにせものが好き082:軟 ベティ 2004年09月25日 (土) 17時26分白ばかり干す庭先の嘘っぽさ柔軟剤の広告に似た086:チョーク 井上佳香 2004年09月27日 (月) 17時13分細胞の死をまきちらし助教授がチョークだらけの白衣をはらう071:追 竹田正史 2004年09月27日 (月) 20時49分どこまでも長き僕らの影のさき 追いつかぬ間に闇に紛れぬ051:痛 佐藤りえ 2004年09月27日 (月) 22時22分痛むほどその存在を主張する傷のある実は甘さを増して074:キリン 川田一路 2004年09月28日 (火) 11時55分過去をみるカバと未来をみるキリン檻に並んで背を向け合って023:望 田中槐 2004年09月28日 (火) 12時28分次に逢う約束のないやさしさよこの望月を眺めて飽かず038:連 日向寺みづほ 2004年09月28日 (火) 23時57分連弾という響きだけすきだった 月がたったひとつでよかった092:家族 飛永京 2004年09月30日 (木) 05時50分残されて最後の家族として老いる迷いの森に小夜鳴(さよなき)鳥は
Oct 6, 2004
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箱を開けると、ゆるく巻かれたあけびの蔦のしたに野菜が並んでいました。その様子があまりにも綺麗なので、わぁ・・とため息をついて、しばらくそのまま眺めてしまいました。じゃがいもじゃなくて、これは馬鈴薯。そして紫玉葱。つやつやとした大小の茄子は、やさしい和紙にくるまれていました。まるで一枚の絵のようです。野菜がこんなに綺麗だなんてはじめて思いました。お人柄がしのばれます。お礼の電話に、大好きな柔らかい声が聞こえてきました。以前にいただいて、三粒だけ食べないでおいた鬼胡桃と一緒にあけびを飾ってみると、そこだけ秋の雑木林になりました。嬉しいな。「今日の茄子、美味しいね!」炒めて鰹節と醤油で味付けしただけなのに、息子が言いました。茄子は茄子の味。馬鈴薯は馬鈴薯の味。まるで彼女の歌のよう。本当にありがとうございました。美味しく戴きます。あけび、むべ、そしてからすうり。とても好きです。此のものもたつた一人の詩を書くか 採る人も無き朱の烏瓜/斉藤 史*題詠マラソン2004 こころに残った歌061:高台 ほそかわゆーすけ 2004年09月12日 (日) 22時06分「夢」ってのはそれは例えば高台で菓子パン食うときちょっと膨らむ063:雷 しんくわ 2004年09月12日 (日) 23時33分秋の空の避雷針を見つめてる 猫のいない日々にも慣れた055:日記 村上きわみ 2004年09月13日 (月) 13時40分ふるいふるい父の日記に咲いていた蓮(はちす)の花を盗んでしまう042:映画 杉森多佳子 2004年09月14日 (火) 13時20分今日一日無声映画にまぎれ込み発語忘れて暮らすがよかろ076:降 井上佳香 2004年09月14日 (火) 15時43分あまやかに匂う降水はてもなく私は私の時間を生きる075:あさがお 長瀬大 2004年09月14日 (火) 23時14分戦争はつづいています 今日庭にようやくあさがおが咲きました078:洋 鳴井 有葉 2004年09月15日 (水) 05時04分洋、君の名前の意味を思うとき海の深さは優しさに似る017:免許 キタダヒロヒコ 2004年09月15日 (水) 17時59分あかねさす朝日新聞配るキミはとつたばかりの免許携へ099:絶唱 佐藤理江 2004年09月17日 (金) 00時48分絶唱を二度も三度も試みるみつともなさに生きたいと思ふ051:痛 ひぐらしひなつ 2004年09月20日 (月) 01時14分かなしみの川に浸してひとすじの遠い痛みを知るゆびであれ043:濃 荻原裕幸 2004年09月20日 (月) 20時10分ふたりしてまざりあつても濃くならぬ秋の路上に影を見つめる
Sep 28, 2004
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我慢強くて無駄吠えはしないし、とてもいい犬なのですが。。。今までのなかで、くるみには一番びっくりさせられました。なんと散歩嫌い。そんな犬がいるとは夢にも思いませんでしたが、いましたね。リードを見ると逃げ回ってしまい大騒ぎ。やっと出たかと思うと座り込んだり帰ろうとしたりします。最近は観念したらしいのですが、もう「早く帰る~」が背中ににじみでいて、スタスタと散歩コースをひたすら早足で進み、寄り道したり違う道を行こうものなら、また座り込み情けない顔をします。参りました。そのくせ家に着いて足を洗ってもらうと、おおはしゃぎで走り回っています。くるみが来て一番楽しみにしていたお散歩なのに、ああ、ため息。お前、本当に犬?ポリー!助けてえ!と空を見上げ、ゆっくり見たい花を振り返り振り返り、世にも不思議な散歩をしています。いくら私が出不精だからと言って、ここまでひどくないぞ。他にもいるのでしょうか、こんな犬。*題詠マラソン2004 こころに残った歌089:歩 落合和男 2004年08月30日 (月) 23時28分空を捨て歩める鳥をおもうときわれに捨て得るプライドありや049:潮騒 村上きわみ 2004年08月31日 (火) 10時13分海の家のよごれた床にねころんで潮騒なんてうるさいだけだ094:遠 近藤かすみ 2004年09月02日 (木) 01時14分遠つ国へゆくエアメールにさくら咲く アラビア糊のほのかな甘み077:坩堝 内田誠 2004年09月04日 (土) 16時30分 平坦な営みだけを繰り返す国の辞書から「坩堝」が消える 089:歩 水須ゆき子 2004年09月04日 (土) 23時51分にんげんが平たく見えるゆうぐれの歩道にススキ群れて手を振る045:家元 ひぐらしひなつ 2004年09月07日 (火) 01時01分鈍色のひかりを放ち家元の鋏しずかに椿をさらう034:ゴンドラ 荻原裕幸 2004年09月07日 (火) 11時11分ひとりひとりゴンドラに乗る薄闇のそこをこころと呼ぶのか迷ふ099:絶唱 翔子 2004年09月08日 (水) 03時02分散骨をお願いしたく絶唱す北岳の峰抜ける蒼さに055:日記 渡部光一郎 2004年09月12日 (日) 02時06分秋の陽のようなあなたよ のこされた秋のすべてを日記へ閉ざし
Sep 20, 2004
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キュンと鳴く鳥 きつかけを待つてゐたのかすれ違ひざまに落ちたる凌霄花 級友の喪主の挨拶ひつそりと 天気予報の雨は外れて 制服を着てをりし身と歳月を喪服につつみ再会したり 算数が数学となりし春の日にとほく飛ばしたタンポポの種 キュンと鳴く小鳥の一羽迷ひ来て忘れた頃にまたキュンと鳴く 新宿で別れゆきたり 校門を出でて振る手のかたちのままに 『眩』第六十号 2004.9 この歌を詠んだ時は、高校時代からの友人のお父様が亡くなられて彼女のことを思っていました。この歌が印刷されて届く月、まるで凌霄花が音もなく落ちるように、今度は級友が突然逝ってしまいました。制服が喪服に変わって、再び集まることになるとは。自分の歌を読みながら、唖然としてしまいました。偶然といえば偶然が重なっただけなのですが、ずっと彼女のことが頭から離れません。自転車に乗ったまま、工事中のビルの青いビニールシートによりかかり・・・蜘蛛膜下でした。何を買おうとしていたのかな。その道を通ることも、彼女が行こうとしていたスーパーへ行くことも、当分出来そうにありません。そういえば、いつも忙しそうに自転車を漕いでいる彼女と、たまにすれ違ったっけ。「元気?」「元気よ」「近い内に連絡するから」「うん」そんな感じで別れたままで。今もまだ沢山の用事を抱えて、自転車に乗っているような気がします。いつか一緒に踊ろうねという約束は、とうとう果たせないままに終わってしまいました。ごめんね。とっても疲れちゃったんだね。私は逃げてしまったけれど、貴方は最後まで頑張ったね。まだ中学生の貴方の最愛のNちゃんに、いつか貴方の話を沢山してあげる。そういえば私たちが出会った日も、みんな中学生だったね。算数が数学になった遠い春は、まるで昨日のことのようです。*題詠マラソン2004 こころに残った歌076:降 高澤志帆 2004年08月24日 (火) 02時14分龍田姫けさらんぱさらんひきつれて降りみ降らずみの秋のゑんそく052:部屋 資延英樹 2004年08月25日 (水) 23時05分 言ひ訳はあとで聞かうかこの部屋は知つてのとほり窓がないのだ 081:イラク 佐藤理江 2004年08月26日 (木) 08時22分 死者なくて日本のメディア静かなりイラク南部に着弾の穴 094:遠 村本希理子 2004年08月26日 (木) 15時25分「遠からず待ち人来たる」 さういへば誰かを待つていたんだつたな031:肌 岩崎一恵 2004年08月26日 (木) 18時19分鉛筆画の少女の肌の陰影の上にうつろう晩夏のひかり047:機械 江村彩 2004年08月27日 (金) 21時08分てのひらの機械のなかのはずだった戦争ゲームが手からはみ出す036:流 村上きわみ 2004年08月28日 (土) 02時22分よく振って流しておいた ひとりへの水のにおいの挨拶でした022:上野 久野はすみ 2004年08月28日 (土) 06時12分上野から谷中千駄木ひょうひょうと祖父の帽子がやってきそうな022:上野 星川郁乃 2004年08月29日 (日) 00時52分飛ぶこともあるのだろうか踏まれない距離だけ保つ上野の鳩は039:モザイク ひぐらしひなつ 2004年08月29日 (日) 02時50分この雨が聞こえませんかいくたびも描きなおした青いモザイク030:捨て台詞 氏橋奈津子 2004年08月29日 (日) 07時36分じゃあまた、とひらいた傘の折り皺がどんな種類の捨て台詞より082:軟 飛永京 2004年08月30日 (月) 03時05分陽に透ける耳の軟骨もも色で胎児の頃の君かと思う080:縫い目 翔子 2004年08月30日 (月) 16時17分嫁ぐ娘が残していった白い犬ほつれた縫い目かがる夏の日
Sep 6, 2004
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薔薇の花たち敗北を認めてしまふ 陽の下にただくれなゐの薔薇の咲(ひら)けば四季咲きの薔薇の絡まる隣家には何も語らぬ若者がゐるセピア色の暮しのなかの華としてコンソメスープに浮かぶ絹さや地球儀に捜すこの街はろばろし空のこころで人を思へばサイレンで始る九月 東京は寒天のうへの暮しのやうだどのやうに歩いてみてもゼロとなる運命なのか 風に向き合ふ平等にひとつの心臓もちながら空を飛ぶ鳥、地を歩むわれ鷺草もヲリヅルランも花時はあるかなきかの風にあかるし明日ひとに逢ふと約しぬ二番目に咲く薔薇のやや小さき蕾ジョセフィーヌ 蕾の薔薇を編みながら次の庭師の生誕を待つ『眩』第六十号 2004.9 *題詠マラソン2004 こころに残った歌088:句 篠田 美也 2004年08月14日 (土) 22時51分迷はずに蕪村の句集を選びたるその過不足のなき指のかたちを065:水色 多喜エリ 2004年08月16日 (月) 01時17分水色の範囲内には収まっているはず君に吐いた嘘、嘘012:裸足 藤原龍一郎 2004年08月16日 (月) 11時15分国のためなる官能の絶頂の記憶の底のアベベの裸足065:水色 落合和男 2004年08月17日 (火) 00時05分正しさはつね明朗なひとのもの水色の空よいまに見ておれ095:油 萩原留衣 2004年08月19日 (木) 08時56分揺れることで丈夫に育つ植物のその逞しさを油絵にする098:溺 原田 町 2004年08月20日 (金) 11時16分八重洲ブックセンター万巻の書の海にカナヅチのわれは溺れてしまう020:遊 コズエ 2004年08月20日 (金) 19時44分水槽の回遊魚たちいつまでも同じ場所とは知らずに死んだ083:皮 遊木 2004年08月21日 (土) 11時07分 この星はどこへ行くのか薄皮の上を走ってランナー一人 073:廊 高澤志帆 2004年08月21日 (土) 18時17分恋人に会ふやう退社後かよひたりまだ売れてない画廊の裸婦に
Aug 28, 2004
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マッキーの新しいアルバムは、こころに沁みるものでした。歌詞をじっくり読んでいると、どんなにか苦しかっただろうと思います。ふっきれたような最近の活躍が嬉しい。夏の草をかき分けながら川の石をどかしながら何かを探す子供達に夏は日を長くしてくれる・・・・・・・・・・・例えどんな場所にいても自分で探さなければ何も見つけられない僕が忘れていただけでどの年にいた子供の顔も夏は覚えている「夏は覚えている」by 槇原敬之暑さも少し和らいできたようです。久しぶりに家族四人と一匹の揃った旅行も終わり、またそれぞれの生活が始りました。*題詠マラソン2004 こころに残った歌076:降 飛永京 2004年08月09日 (月) 15時46分風琴のフーガの雪に降られたら膨れて萎む鞴(ふいご)になろう075:あさがお 牧野芝草 2004年08月09日 (月) 19時07分あさがおを抱えて帰る七月の短い影と折り紙の山085:再会 鈴木貴彰 2004年08月09日 (月) 22時56分再会を切り出せぬまま影伸びてペダル逆さに回し続ける055:日記 落合和男 2004年08月09日 (月) 23時19分君の焼く日記のけむりうわうわと文字も余白も昇天をせり089:歩 芳井 奏 2004年08月11日 (水) 17時23分ここはまだ旅の途中と言いながら歩行者専用道路を進む053:墨 渡部光一郎 2004年08月12日 (木) 01時58分 盆なれば墨染めの衣ひるがえし天翔けるかな和尚の原付 002:安心 藤原龍一郎 2004年08月12日 (木) 17時19分永遠に安心の日を乞うごとく一青窈その繊き歌声058:八 内田誠 2004年08月13日 (金) 17時25分もう一度やり直したい八月が繰り返されて青春となる
Aug 21, 2004
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