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2006/07/27
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カテゴリ: 恋愛小説(連載)
【「きっと、二人なら…」を最初から読む】 【目次を見る】

 帰りの駅までの道のりを歩く間も、貴子の心の中では先ほどの梓の言葉が何度も何度も繰り返し木霊していた。
「…悔しかったの! どうしようもないくらいに悔しくてたまらなかったの!!」
胸底から込み上げる苦しみや痛みを溢れ出さないよう、なんとか心の奥に押し込めて必死に歩いた。
日はとっくに落ち、世話しなく流れる車のテールライトと10メートルごとくらいに設置された街灯の光だけが、辺りを薄暗く照らし出していた。
目を閉じると一気に涙が零れてきそうな気がして、貴子は目を見開いたまま灰色の歩道を歩く。
住宅街を抜けると、コンビニや本屋の灯りが白い光を放っていて、先ほどまでとは違い人気も多い。
向かいの歩道を小さな女の子が若い母親に手を引かれて楽しげに歩いて行く姿が目に入った。二つに結んだ柔らかそうな髪の毛が、その子が歩く度フワフワと弾む。
母親は片手にスーパーの袋を下げ、優しげな笑みを浮かべていた。
二人で何かしら会話しているようだったけれど、行きかう車の騒音にかき消されてそれが貴子の耳に届くことはなかった。
--…幸せそう…--そんなことをぼんやりと思いながら重い足を動かす。
 何となく視界の隅に映ったパン屋へ足を運び、店内をグルリと見回す。
こじんまりとした店内には人が2人、レジで支払いをしているくらいは、あまり活気はなく 閉店間際であることが窺える。
パンが陳列されているトレーも、ほとんどががらんとしていて、売れ残りのパン達が妙に浮いた存在に見え、何かしら寂しげだった。
入り口のところで重ねられていたトレーを1つ手に、貴子は店内をゆっくりと歩いた。
そして、それほどほしくもない売れ残りのクロワッサンやらライ麦パンやらカレーパンなどを手当たり次第にトングで掴んでは次々とトレーに乗せて行く。
どんなパンを見ても、食欲をそそることはなかったし、また別段美味しそうだとも思わなかった。
ただ何かをしていたかった。普通に歩いているだけでは、更に暗い気持ちに飲み込まれてしまいそうだったから--。
最後に食パンを1斤乗せると、トレーは隙間もないくらいいっぱいになった。
レジカウンタにトレーを置き、その隣の冷蔵陳列棚からカフェオレとグレープジュースと牛乳を取ると、それも一緒にカウンタに乗せた。
無意識的に財布から5千円札を取り出して支払いを済ませ、おつりを受け取るのも忘れそうになりながらパンの山ほど詰まった赤い袋を手にする。
「あの…おつり…」
店員の怪訝顔など余所に おつりを受け取ると貴子は身を翻して出口へと歩き出す。
貴子が大量に購入したお陰で、店内のトレーはもうすっかりがらんどう状態と化していた。
店員の「ありがとうございましたぁ」と言う事務的なセリフを背中で聞き流し、貴子は店を後にした。
 相変わらず重い足を引きずりながら、向こうに見えている駅を目指すけれど、一向に近づいている気がしない。
やっと駅の前の横断歩道まで辿りつくと、貴子は小さな嘆息を漏らした。
ほどなくして赤信号が青に変わると、周囲の人達数人が一斉に歩道のストライプへと足を踏み出す。
貴子も一足遅れてその波に乗った。
湿気を含んだ風が吹く度に、片手に下げていたパン屋の袋がバサバサとビニール音を立てるのが少し耳障りに思えた。
駅に入り、券売機で乗車券を買おうとしているとき、斜め向かいの電話ボックスの隣の壁にもたれて缶ジュースを飲みながら雑誌を読んでいる亜紀の姿に気が付く。
貴子は投入口に100円玉を入れながら はっと息を飲んだ。
--もしかして…待っててくれたの…?!
 券売機から出てきた乗車券を抜き取ると、貴子はすぐに彼の方へと駆け出す。--…でも、まさかね。だって、わざわざ何時間もあぁして待ってる訳…ないわ…。--と自分の心に言い聞かせながらも、貴子の足は真直ぐに亜紀の方へと向かっていた。
「あっちゃん!」
息を弾ませて貴子が呼びかけると、亜紀が雑誌から目を上げて
「あぁ、たかちゃん。たかちゃんも今帰り?」と爽やかな笑顔で問うてきた。
やはり亜紀は貴子を待っていてくれた訳ではないようだった。
--そうか…ただの偶然--不思議とがっかりしている自分に貴子は僅かな苦笑いを零した。
~To be continued~




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最終更新日  2006/07/27 10:28:57 PM
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