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2020.10.18
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「ねーむれー、ねーむれー。はーはーのーむーねーにー。」
ハサミ虫母さんは今日もかいがいしく子供達のお世話をしていた。子供達といってもまだ卵だが。
胎教のためにこうして歌いながら、周りのゴミ掃除をし、卵を磨き、お尻の大きなハサミのお手入れに余念がなかった。
子供達が生まれて来たらどんなお話をしてあげようかしら。どんな歌を歌ってあげようかしら。すべては子供中心に、子供の事ばかり考えて、その日を待ちわびていた。
「明日はいよいよ卵の孵化予定日。私の腕白さんにお転婆さん、明日は安心して出ておいで。私がきっと守るから。」ハサミ虫の肝っ玉母さんは今日も卵達に語りかけながら、熱心にハサミの手入れをしていた。
しかしその時、背後から黒い影が広がり、氷で背中をなぞられる様な悪寒と共に殺気を感じた。ハサミ虫母さんは恐る恐る振り返ると、太陽を背にそそり立つオオアリの姿に愕然とした。
「よりにもよってこんな大事な時に、しかも卵じゃ呼び集めて、背中におぶって逃げ出すことも出来やしない。いよいよ明日という時に。」
ハサミ虫母さんは絶望の溜め息をついた。
「いいえ。こんな時こそ戦うの。私のこの自慢の大ハサミで可愛い子供達を守るの。」
ハサミ虫母さんそう決心して、卵が見つからない様に移動しながら、オオアリに向かって大ハサミを振りかざした。
「オオアリめ、また来たね。今日こそはあんたの頭をこのハサミで切り落として上げるから覚悟するんだね。そんときゃ転がった自分の首の目から出る涙、自分で拭いなよ。」
オオアリはニヤリと笑い、
「ハサミ虫のおばさん相変わらず威勢がいいじゃねえか。他人の台詞を横取りするんじゃねえぞ。あんたのそのぷりぷりのお肉を今日こそは頂くぜ。まああんたの卵か子供達を差し出せば、助けてやらんとも限らねえけどな。」
ハサミ虫母さんはドキッとしながら、オオアリの足元の向こうに見える茂みに目をやり、
「まだ出て来るんじゃないよ。じっとしていなよ。」
ハサミ虫母さんはそう心の中で語りかけ、更にその場から離れた。
やがてハサミ虫母さんとオオアリの激しい戦いが始まった。
ハサミ虫がオオアリの首をハサミで狙えば、オオアリはハサミ虫の腹に食らいつこうと、まさに死闘が繰り広げられた。
30分後、ハサミ虫のハサミは片方が折れ、オオアリの足が1本切り落とされていた。両者とも荒い息をしながら立ち尽くしていたものの、形勢は圧倒的にオオアリが有利だった。
ハサミ虫母さんは傷だらけの体に鞭打って最後の攻撃に出た。猛烈な反撃にオオアリもついに本気になった時、ハサミ虫は突然逃げ出した。しかし完全に怒りまくったオオアリはすかさず追いかけ始めたが、その日はそれっきり2匹とも戻らなかった。
よく晴れた翌朝、ハサミ虫母さんの子供達が、誰もいない巣の中でかえり始めた。そして母さんを探し始めた頃、背後から黒い影が近寄って来た。気づかない子供達はまだ母さんを探していた。その時、最後のお寝坊さんが卵から顔を出し、黒い影を見つけて叫んだ。
「母さん!」
子供達は一斉に振り向き駆け寄って来た。
そこにはハサミが片方折れた、ハサミ虫母さんが立っていた。
ハサミ虫母さんは優しく言った。
「もう大丈夫。オオアリはまいてやったからね。ハサミは1本になっちまったけど、きっとお前達を守ってやるからね。」





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最終更新日  2020.10.18 01:50:18
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