SAM COOKE / BRING IT ON HOME TO ME (LIVE AT THE HARLEM SQUARE CLUB 1963バージョン)
ソウルの創始者と言っても過言ではないサムクックが1963年に行ったライブ録音がその22年後の1985年になって「LIVE AT THE HARLEM SQUARE CLUB 1963」として発売されました。当時白人相手の大人しいパフォーマンスを余儀なくされた不遇の時代をも過ごしたサムですが、このハーレム・スクエア・クラブで、恐らくは黒人を中心とした観衆を相手に黒人らしさ、ソウルを強く押し出した、まるで水を得た魚のように活き活き、伸び伸びとした素晴らしいパフォーマンスをみせてくれます。発売当時山下達郎がサウンドストリートで「あまりの素晴らしい出来」故にアルバム全曲オンエアしたという快挙も。
この「BRING IT ON HOME TO ME」のライブバージョンは、そのアルバムの中でも一番盛り上がる曲の一つ。オリジナルはピアノをバックにしっとりと歌われるバラードという感じだけれども、この日のライブではアップテンポに大変貌。実にソウルフルに激しく、ディープに歌いこみます。笑い声を入れたり、シャウトしたり、コール&レスポンスを入れたりと自由度の高い即興的パフォーマンスはライブの楽しさが伝わる素晴らしい内容。この曲の真の姿ここにあり!って感じですね。このアルバムは個人的に全音楽ジャンルのライブ・パフォーマンスの中でもベスト中のベスト。黒人音楽・ソウル好きを自称する人でこのアルバムを聴いたことが無いという人はいないよね?
日本編集盤の「SWEET THING LP(VIVID VS-1025)'81」にも「JUST ENOUGH TO KEEP ME HANGIN' ON」と曲名を変えて収録。このLPは甘茶ソウル百科事典MOONY'S SELLECT 075で取り上げられているし、U.S.BDG #104でも少し触れられている。然しながらこの傑作甘茶曲についてはどちらも一切コメントなし(ていうか無視?)です。更にこの曲が無性に好きという甘茶ファンにも出会った記憶がない。なんでやねん?個人的にこの曲は、「WALK AWAY FROM LOVE」、「SOMETIMES WHEN WE TOUCH」と並んでカバーバージョンの多い世界三大黄金旋律曲の一つだと思っているのですが、こんな状況では無条件に「みんな大好き!YOU KEEP ME HANGING ON」と断言出来ないではないですか。この曲が三度の飯より好きという方、いらっしゃいませんか?
このオヴェイションズの傑作カバーのオリジナルは、1964年のRay Sanders & Irene Bell。作詞作曲はBuddy Mize/Ira Allen。「It's true you have me twisted round your finger」と歌いだす曲です。ソウルファンにはJoe Simon 版が御馴染みですね。(VANILLA FUDGE版やSUPREMES版とは違いますのでお間違いなく。)この曲には多くのカバー曲が存在しますが、その中でも素晴らしい出来なのが、レゲエ/ラヴァーズロックもので、「JUNIOR SOUL / YOU KEEP ME HANGING ON 12"(ROHIT 531)'87?」。OVATIONS版に負けず劣らずの素晴らしい内容で近々レビュー予定です。他にもある20曲ほどのカバーを 「甘茶ソウル百科事典の世界(3)」
のページで一覧にしてありますので、ご参照下さい。
【 ディープ偏差値 73
】
SISTERS LOVE / ARE YOU LONELY ? (A&M 8581)'71
シスターズ・ラブの1971年のシングル曲。当時結構ヒットしたみたいですね。プロデュースはGENE CHANDLERでアレンジはTOM TOM。甘茶ソウル百科事典 TERRY'S SELLECT 009で、かなりディープな歌声なのに何故かテリー氏はセレクト。コーラスや全体の曲調は明るく軽やかでポップとさえ言えますね。メロディは甘いと言えば甘いけど、甘い辛い云々というよりも何より素晴らしく良く出来たメロディです。そして更に特筆すべきなのはリードの女性のド・ディープな歌声。情感たっぷりに歌い上げ、起伏は激しく、感情表現も豊か。特に盛り上がり部分の絶唱ぶりは鳥肌ものでグレイト!彼女達はクラブシーンでも「GIVE ME YOUR LOVE」 (FREE SOUL PARADE収録)が人気のようですが、この「ARE YOU LONELY ?」の方が音楽史的には圧倒的に重要だと思います。なお、元はRaelettesというグループが母体となってできたグループの模様。出来は良く無いけれど「YOU TUBE」には1995年のライブ映像が上げられています。
CLIFF NOBLES / THIS FEELING OF LONELINESS (ROULETTE 7142)'73
「THE HORSE (PHIL. L.A. OF SOUL 313)'68」の景気のいいアップテンポ・ダンサーで有名なディープ系シンガーのクリフ・ノーブルズ。そのイメージからは相当かけ離れた実に甘いバラード名曲をシングル・オンリーで残しています。控えめで上品なトラックに超極甘と言っていい、なだらかで優雅な旋律。それをしゃがれぎみの歌声で終始泣きを入れて情感たっぷりに歌いこみます。シンガーとしてどうこう言われる人ではないけど結果的に曲調ともうまくマッチし、ソウル史上に燦然と輝く至極の名曲を残せたということでしょうね。日本人の琴線を撫でまくる内容で、ディープ/甘茶にかかわらずソウルファンなら誰でも好きになることでしょう。U.S.BDG #76では高沢仁氏に「シングル盤中のシングル盤」と言わしめたものの、甘茶ソウル百科事典、楽ソウルでの言及が無いのは残念。
TROY / AND TOMORROW MEANS ANOTHER DAY WE'RE APART (COLUMBIA 4-45748)'72
この曲は多くのソウルファンにはどう位置づけられているのだろう?甘茶ソウル?ディープソウル?ヴォーカルだけ聴けば絶唱タイプでスウィートというよりはディープ風。ただし制作はフィリー、アレンジはBOBBY MARTINなので、サウンドは甘茶ソウル仕立て。然しながらこれだけの名曲にもかかわらず甘茶ソウル百科事典には未掲載。コンピで言うと「SOUL FROM THE VAULT RARE SWEET DYNAMITE VOL.1 SILVER BLUE COLLECTIONS」に収録。スウィートとタイトルでは言ってても一応シルバーブルー・コレクションの一環なのでディープソウルだよという言い訳も通用するか。「MASKMAN PRESENTS THE CITY OF BROTHERLY LOVE 2」のマスクマン氏のライナーでは、「フィリーのバラード」、「デルズのマーヴィン・ジュニア」なんて表現されている。「THE LOST SOUL GEMS」で鈴木啓志氏は「スウィートなバラード」と。(ここではTROYの正体は66年にMUSICORからシングルを二枚出しているJEFF B.TROYだと推測されている。因みにそれを受けて収録された「THE SPIRIT OF PHILADELPHIA 3」では、単に正体不明と書かれているだけ。)
絶唱系甘茶ソウルの傑作として知られる「AND TOMORROW MEANS ANOTHER DAY WE'RE APART (COLUMBIA 4-45748)'72」の歌手TROYは正体不明の人物ということで長らくソウルファンの謎だった訳ですが、この度彼の正体が判明しました。TROYは1980年に「Into the Night」というヒットを出したBenny Mardonesという白人歌手で、事情により変名で活動していたようです。いわゆるブルーアイドソウルだったってことになりますね。
Eddie "Buster" Forehand (LITTLE BUSTER) / Young Boy Blues (Josie45-993)'68
61年の Ben E. King
の曲をディープ歌手リトル・バスターがカバーしたディープソウル。オリジナルはフィルスペクターによるものでウォール・オブ・サウンドを本格的にやり始める前の作品。有名な彼の作品集「BACK TO MONO」には収められなかった曲なので隠れた名曲とも言えるでしょう。ストリングスなども入った品の良さを感じさせる内容です。
JOHNNIE TAYLOR / LADY, MY WHOLE WORLD IS YOU '84 「THIS IS YOUR NIGHT」
U.S.BDG #350 #745掲載の70年代のサザン/ディープソウルを代表する歌手ジョニーテイラーが80年代になってMALACOから発表したアルバム「THIS IS YOUR NIGHT」収録曲。如何にも南部といった趣の平和でのんびりしたムードに暖かい空気を感じさせる曲。ちょっと感傷的だけど甘く切ないメロディを大御所ジョニーテイラーが自由気ままに歌い上げます。作曲はU.S.BDG #378のPAUL KELLYで心を優しく温めてくれるキャッチーなメロディの出来は実に素晴らしい。トロリとしたギターに品の良いストリングスなどサウンドもいいね。派手さが無い分かなり聴き易い内容で、サザン/ディープソウルの代表的かつ入門編としても最適な曲の一つだと思います。
DEBBIE TAYLOR / I DON'T WANNA LEAVE YOU (ARISTA 0144)'75
甘茶ソウル百科事典には未掲載で、U.S.BDG #418の女性シンガーのNOT ON LPのバラード大作。その唱法からディープソウルと言っても差し支えない感じですが、全体に漂う甘い雰囲気は甘茶ソウルのそれ。75年作で「A TOM MOULTON MIX」とあるから、おそらくフィリー録音なんでしょうね。流麗かつ高潔なストリングスに包まれ、咽るように濃厚なフィリー臭に思わず胸がキュンと締め付けられます。別れを惜しむ悲しげな女性の気持ちを表現したメロディも、出だしからサビに到るまで実に情感深く、ダイナミックなラインを描いています。
1950年のカントリー系ヒット曲のカバーでオリジナルは Red Perkins
版。カバーは多いですが、やはり主にカントリー系のカバーが多いです。ソウル系だと1962年の Little Willie John
や1967年の Little Johnny Taylor
、 Percy Sledge
などもやってます。でもソウル的にはやはりこの1966年のTOMMY TATE版がサウンドも歌もディープソウルしていて良い。元々のメロディの良さもありますが、特にサビを伸び伸びと劇的に歌い上げる仕様が素晴らしいですね。オリジナルの牧歌的雰囲気を薄めほのかな傷みや緊迫感が増している感じ。元々のカントリー系の良さとディープソウルの要素が上手く融合して出来たナイスカバーという感じです。
OTIS CLAY / YOU HURT ME FOR THE LAST TIME '69(DAKAR 45-610)
オーティス・クレイというと『ド』ディープな歌手ということで一般のソウルファンにはなかなか敷居が高い。然しながらフリーソウル指数の高い 『THE ONLY WAY IS UP』
はかなり聴きやすいし、この69年のシングル曲もメロディの良さもあって馴染みやすいのではないかな。シカゴのDAKARから出たこの曲はWILLIE HENDERSONのプロデュース。明るく肯定感に満ちた雰囲気の曲でオーティスも明朗・快活に歌い上げます。終始力が入っていてその熱のこもった唱法は圧巻ですが、特にサビで『YOU HURT ME ~』と気合を込める瞬間が聴き所。『THE ONLY WAY IS UP』もそうだけどメロディの出来が良いとディープ歌手も更に輝きが増しますね。
C.L.BLAST / 50/50 LOVE (FIFTY-FIFTY LOVE) (PARK PLACE 104-7)'84
60年代初頭から活躍していたアラバマ出身のディープソウル歌手、CLブラストが晩年になって出したヒット曲。CLというのは本名のClarence Lewis Jr.からとったみたいですね。84年のマッスル・ショールズ録音のサードアルバムに収録されていて、この曲はFREDRICK KNIGHTが作曲/プロデュースをしています。流石の作曲能力という感じですが、ギャンブル&ハフによる 「Teddy Pendergrass / Turn Off The Lights」
に激似(笑)。でも、そちらが甘茶ソウルど真ん中であるのに、こちらがディープに感じられるのですから不思議です。まあ、それだけCLブラストの唱法、声質がディープど真ん中だということでしょうね。大掛かりな曲の作りにメロディの良さ、それに負けない彼の迫力のある歌い込みが魅力的です。時折ファルセットや笑い声を散りばめたりと縦横無尽に歌いこなすセンスと力量も素晴らしい。
BOBBY PATTERSON / IF HE HADN'T SLIPPED UP AND GOT CAUGHT (CONTEMPO 7006)'77
サザンソウルのプロデューサー、ボビー・パターソンの名曲。タイトルは仮定法過去完了ですね。「もしも彼が失敗しないで、捕えられていなかったならば・・・」ってところでしょうか、ちょっと刺激的な意表を突いたタイトルです。(GRATINE 536)'76では「IF I HADN'T SLIPPED UP AND GOT CAUGHT 」となって出てますが、実際は主語がIではなくHEと歌っているので、後にタイトルを修正して出しなおしたのかも知れません。
そんなバック・サウンドだけを聴いてても十分楽しめる内容なんですけど、複雑に展開するメロディも凝っているし、更にどのメロディ・パートも感動的で味わい深い。特にサビに向けてストリングスを伴って徐々に盛り上げていく箇所など「こみ上げ感」抜群です。こんな感動的なサザン/ディープ風味の甘茶曲をもっと知りたいものです。甘茶ソウル百科事典 BILLY'S 091でセレクト。「SINGING A NEW SONG」というCDにも収録されているようです。
TIP WATKIN / WRAPPED UP IN YOUR WARM AND TENDER LOVE (PLAY ME 1943)
Tyrone Davisの72年のアルバム「Without You In My Life」収録曲のおそらくカバー・バージョン。ゆったりとした曲調の甘めのディープソウルで、タイトルの「暖かく優しい」という台詞がそのまま具現化した曲という感じ。メロディも良く出来ていて心に沁みる良曲ですねえ。タイロン版は安定のディープ唱法ということで万人向けという感じだけど、私の好きなのはティップ版。ひょうきんな雄たけびから入り、語り風唱法、笑い声などが入ったりと様々な表情をみせてくれ飽きさせない。女性コーラスも入って全体的に幾分ポップな仕上がりなのもいい。最後に「Hey! Tyrone Davis!」と掛け声を入れているのはどういう意味合いなんだろうか。なお、作者自らが歌うRICHARD PARKER版も73年に出ていて、これも出来は悪くない。歌声にディープ成分が薄れている分、タイロン版よりも聴き易いかも。それぞれ「YOU TUBE」で聴けます。
TRUTH / COME BACK HOME (SOUNDS OF CLEVELAND 11711)
U.S.BDG #684のTRUTH。「究極の、、、」で有名なLARRY HANCOCKが在籍したことでも有名。甘茶ソウル百科事典での記載はないし、「THE DEEPEST SOUL VOL.2 (GOLDMINE GSCD41)」に収録されているから一般的にはディープ扱い?でも、このムードなら甘茶ソウルだよねえ。U.S.BDGの久保田泰広氏によると、この「COME BACK HOME」が彼等の初レコードでここで聴けるツインリードはラリーハンコックとリオグリーン。「ソウルトレインでの映像は脳裏に焼き付いて離れない人が多い」とのことなので、もしやと思い「YOU TUBE」検索してみると、なんとその 伝説の映像
がありました。で、出来の方がこれまたグレイト。鳥肌ものですね、興奮しました。私、個人的に初めてソウル関連の映像を保存しました。これを見ると確かに途中でリードは交代していますねえ。ここでの映像は2分弱ですが、シングルでは延々7分も金太郎飴的にこの調子です。「IF YOU COME BACK HOME」という甘いコーラス、エレキシタール、ハープ?グロッケンなどの煌びやかな甘ーいバックに二人のリードの実に素晴らしい絶唱合戦。甘いメロディも最高ですね。
1961年の Jerry Butlerの軽めのソウル
のディープ・カバー。フロリダ録音なので南部の歌手みたいけどdiscogsを見てみると、この一枚しか録音を残していないみたい。曲はCurtis MayfieldとJerry Butlerによる大人しい曲調だったオリジナルをかなり快活に変貌させてます。威勢のいいホーンが特徴的で行進曲テンポのリズムと相まって元気いっぱいといった感じ。ストリングスも効果的に配置されていて、なかなか凝ったアレンジでインストでも楽しめるレベルかも。ヴォーカルは明るく快活で瑞々しく声質もなかなかのもの。そして後半に入る雄たけびが最大の聴き所で、ディープソウルの醍醐味といった感じ。プロデュースは「James & Bobby Purify / I'm Your Puppet」などで知られるPapa Don Schroederで、如何にしてこの曲が生まれたのかよく分からないけれど、明るく快活な絶唱系ディープの傑作ですね。
PHILLIP MITCHELL / THERE'S ANOTHER IN MY LIFE (EVENT 223)'75
甘茶ソウル百科事典未掲載でU.S.BDG #761のフィリップ・ミッチェルのNOT ON LP曲。U.S.BDGでもほとんどこの曲について触れられていないけど、甘茶ファンにとっては彼のアルバムよりも遥かに重要な作品と言えるでしょう。彼のインタビューが掲載されている こちら
のページによるとビルボードのR&Bチャートで58位を記録したらしいです。海賊コンピ 「SOUL FROM THE VAULT RARE SWEET DYNAMITE VOL.5」
にも収録されており、マニアにも昔から人気だったようですね。
JOHNNIE TAYLOR / GAMES PEOPLE PLAY 「The Johnnie Taylor Philosophy Continues」'69
1972年の「Lynn Anderson / Rose Garden」の作曲家としても知られるシンガーソングライターのJoe Southが1968年に自身で歌って後にグラミー賞を受賞したヒット曲のディープソウル・カバー。歌うはディープの大御所ジョニー・テイラーで当ブログでは、 サザンソウル代表曲の温かさ JOHNNIE TAYLOR / LADY, MY WHOLE WORLD IS YOU
を取り上げ済みです。ジョーサウス自体南部ジョージア州出身ということで、温かみのある南部っぽい雰囲気を持ったこの曲は、やはり南部中心に活躍したジョニー・テイラーとの親和性は高く将にドンピシャと嵌ったカバーという感じ。「ラララーララ♪」と親しみ易いスキャットを多用し、平和でのんびりとした雰囲気に温かい陽射しをたっぷり浴びた牧歌的なメロディは流石の曲づくりで実にキャッチー。それをディープにねっとりと歌いこんだことでソウルファンにより訴求する内容になりましたね。
デトロイトのディープ歌手、ウィリー・ハッチャーの1967年のディープソウル。プロデュースは同じくデトロイトの重鎮ドン・ディヴィス。マスクマン氏のCDRやお宝満載の世紀の傑作コンピCD「THE LOST SOUL GEMS」にも収録された。歌唱を最重視するディープソウルにおいてサウンドが際立つ作品というのはあまり無いけれど、この曲で聴けるギターの音色は別次元的に素晴らしいですね。黒人的グルーヴとバイタリティ、ディープソウル的な感覚を併せ持つフレーズは実にキャッチーで魅力的。ギターフレーズが曲の全てを支配してしまったかのような圧倒的な存在感がありますが、全体のメロディや歌もなかなかのもの。このイントロのギターにビビビと来たらしめたものだけど、いかがでしょう?
溌剌としたサザン/ディープ
として69年のHEART ON A STRINGを紹介済みのキャンディ・ステイトン。キャンディって名前が可愛らしくていいよね。U.S.BDG #367で紹介されているアルバムのタイトル曲である本曲はTAMMY WYNETTEの1968年のカントリーヒットのカバー。オリジナルのゆったりとした和み系の曲調をすこしテンポアップさせ快活で躍動感のあるナンバーに仕上げている。キャンディの生き生きとしていて情感のこもったディープな歌もいいけど、バックの特徴的なベースライン、溌剌とした切れ味鋭いストリングス、曲に厚みを持たせるコーラスなどオリジナルにはない独創的なサウンドアレンジが光る。もちろん元歌のメロディラインの出来の良さあってのことではあるけれども。こうして聴いてみるとカントリーとディープの相性ってなかなか良いなと思います。ちょっと暗い曲が多いディープ界だけど、もっとこの手のカバーがあったら良かったのにね。
1970年代から細々と活躍していたメンフィス出身のディープ歌手カールシムズの74年のシングル曲。1995年に出した初アルバム「House Of Love」が好評だったけど、U.S.BDGの発行は1994年だったので惜しくも掲載されなかった感じ。曲はDAN GREER作のディープソウルでオリジナルは1972年のやはりメンフィスの女性歌手 Barbara Brown
の模様。タイトルは「馬鹿を憐れむ」でしょうか、自虐的なタイトルとは裏腹に楽しそうなスキャットから始まり、明るく快活な雰囲気が漂います。可愛らしく軽やかな女性コーラスをバックにカールシムズの自由度の高い歌声が弾けまくっている感じ。メロディも素晴らしいけれど、歌も負けず劣らずのなかなかの名唱ですね。太目で存在感があるけどスマートな声質も魅力的。