25.STEEL PULSE / JAH PICKNEY-R.A.R. '79 「TRIBUTE TO THE MARTYRS」収録 P.158掲載
70/80年代ブリティッシュ・レゲエの代表的グループ、スティール・パルスの2NDアルバム収録曲。曲名にある「R.A.R.」は「ROCK AGAINST RACISM」の略だそうな。つまり「差別主義者をやっつけろ!」という実に攻撃的な歌詞なのですが、曲調自体は明るめのレゲエ。少しとぼけた感のあるひょうきんな効果音も面白い。
イギリスの白人黒人混成のレゲエ・バンドの1980年の1STアルバム収録曲。後に「RED RED WINE」や「CAN'T HELP FALLING IN LOVE」といったヒット曲を連発するメジャーなバンドだけど、このデビューアルバムはメジャー志向も薄く、適度な濃さと洗練さを併せ持った内容で、個人的には彼等の一番美味しかった時期と感じています。
BOB MARLEYと一緒にWAILERSをやっていたバニー・ウェイラーのファースト・アルバム収録曲。ボブ・マーリーがあまりにも有名過ぎてあまり話題に上らない傾向がありますが、彼も偉大なレゲエ歌手の一人。そのボブを含めてウェイラーズがバックアップして作られた作品だけあって、このアルバムは「Blackheart Man」、「Fighting Against Convictions」、「This Train」などと名曲が多く、ルーツ名盤の一つと言えるでしょう。
アルバム「AFRICA STAND ALONE」収録のこの曲は、軽快なミリタント・ビートに情緒的なメロディが特徴的。速めのリズムながらメリハリの効いたリズムも素晴らしいですね。ジョゼフ・ヒルの陽性でヘタウマなヴォーカルもイイ。後半にダブが接続されているディスコ・ミックスなんだけど、そのダブに移行する瞬間が実にスリリング&ダイナミック。超カッコイイー!こういうのを聴くとレゲエが分かる人間で良かったーって思えるね。
35.JACOB "KILLER" MILLER / CHAPTER A DAY '80 LP「MIXED UP MOODS(TOP RANKING)」 P.97掲載
ルーツ歌手、ジェイコブミラーの80年のアルバム「MIXED UP MOODS」収録曲。若くして亡くなった彼のこの最後のアルバムは既に取り上げ済みの 「ONCE UPON A TIME」
をはじめ粒揃いの大傑作なので、実にその死が惜しまれます。せめてもう1作ぐらい残してくれていたら、、、。そのアルバムの最後を飾るのが、この「CHAPTER A DAY」なんだけれども、偶然にか如何にも最後を飾るに相応しい約7分長もの大作となっています。
ボブ・マーリーに通じるようなキャッチーで感傷的なメロディを持つ曲で、ゆったりとしたリズムに乗りジェイコブが豪快に、ソウルフルに歌い上げます。よく抜けるパーカッションも開放的なムードを出しているし、シンセも入ってサウンドが明るくポップなところもいいね。そして一番の聴きどころは終盤の語り部分。JAHを讃える内容のようだけどエコーの増したサウンドをバックに渋く語感よくグルーヴィーに語ります。そのシメはお馴染みの「JAH RASTA FAR I」なんだけれどもこれが豪快で最高にカッコイイ!
36.CARLTON AND THE SHOES / Sincerely Yours '76「LOVE ME FOREVER」(STUDIO ONE PSOL 003)P.40掲載
ロックステディ/初期レゲエを代表する名作アルバムから。アルバムは76年リリースですが録音自体は68年頃に行われていた模様。このアルバムには他にも LOVE IS ALL
,Love Me Forever, Never Give Your Heart Away, Me And Youといった名曲がゴロゴロしています。
この「Sincerely Yours」は中でも特にハーモニーが美しい曲。淡く柔らかでか細いリードにこれまた控えめなバックコーラスが微妙に音程をずらしてフォローする構図。優しく甘いメロディも相まって非常に魅力的なヴォーカルワークですね。ちょっとヘタウマっぽい感じで泥臭さや田舎臭さ、古臭ささえもいい塩梅に感じられます。バックの歯切れ良いロックステディのリズムも素晴らしいのですが、中でも特にオルガンのチープで哀愁に満ちた響きとフレーズがなんとも魅力的です。(なお、82年のアルバム「This Heart Of Mine」収録のバージョンはいまいちな内容になっていますのでお間違えのないように。)
37.ISRAEL VIBRATION / TOP CONTROL '80「UNCONQUERED PEOPLE」P.59掲載
「THE SAME SONG」、「BALL OF FIRE」、「FRIDAY EVENING」などの名曲を持つイスラエル・バイブレーションの2NDアルバム収録曲。STRICTLY ROCKERSではアルバムは大きく取り上げられているけど本曲は未掲載。タイトルの訳は「支配者による管理・統制」って感じですかねえ。バレット兄弟やパブロなんかがバックを務めタフゴングで録音されているだけに生楽器の響きや、その音の抜け具合とか素晴らしいですね。こういう生音を使った良質なレゲエが大部廃れてしまっていることが残念でならない。
38.Augustus Pablo / King Tubbys Meets The Rockers Uptown '75「King Tubbys Meets The Rockers Uptown」 P.132掲載
単なるメロディカ奏者というよりもレゲエのプロデューサーであるオーガスタス・パブロが主体となって作った楽曲をダブの王様、キング・タビーがダブ化した曲で、ダブの歴史的名盤「King Tubbys Meets The Rockers Uptown (王様タビーが音楽集団ロッカーズとアップタウンで出会う)」収録のタイトル曲。レゲエ好きなら誰もが認めるダブの傑作中の傑作で名実共に代表曲と言える存在。(レゲエ・ガイドブック STRICTLY ROCKERS P.132掲載)
元歌は 「JACOB MILLER / Baby I Love You So」
で、ダブ版ではヴォーカルを大部抜いてしまい、ベース、ドラムなどを大幅に強調している。またエコーをふんだんに使い奥行きのある非常に立体的な音空間を構築している。(特にシャキシャキとした切れ味鋭いハイハットの高音部と重量感のあるベースの低音部が聴きどころ。)そして立体的というだけでなく、それが元曲から大部戦闘的で緊迫感に満ちたものへと変換されている。加えてここで聴けるカールトン・バレットのドラムのおかずが非常に独創的で魅力的。(藤原ヒロシが昔自身のラジオのジングルに効果的に使用していた)短いながらも実に聴きどころの多い素晴らしいダブです。是非超大型スピーカーで大音量で体感して欲しいですね。
その後2003年の「BERES HAMMOND / THERE FOR YOU」でSLY & ROBBIEによって「THERE FOR YOU」リズムとして蘇り2005年にかけて下記のような曲が作られたようです。オリジナルの素朴な風合いは失われてしまっているけれども各曲ともこの年代にしては十分いい感じのラヴァーズに仕上がっている感じ。
その後2003年に 「BERES HAMMOND / THERE FOR YOU」
でSLY & ROBBIEによって「THERE FOR YOU」リズムとして蘇ります。21世紀に入ってからのものということで大部機械臭のするものとなったけれどトラック本来の持つ魅力はきっちりと伝承されていますね。このヒットを契機に作られた2005年の「HAWKEYE / OH I (OH MY)」もシングJという特異なスタイルを取っているもののトラックの伝統的魅力を踏襲した名曲に仕上がっています。甘く情緒的という点では前記3曲に劣らぬ素晴らしい出来。こうして太古の名トラックが時代を超えて名曲を生み続ける姿を見るにつけ「名トラックは名曲を生む」という格言を思いつく私でありました。
42.MARCIA GRIFFITHS / DON'T LET ME DOWN '69 「Put a Little Love in Your Heart」
ジャマイカの女性シンガー、マーシャ・グリフィスのアルバム「Put a Little Love in Your Heart」収録曲。曲はビートルズの有名曲のロックステディ・カバー。オリジナルはゆったりとしたバラードといった感じだけど、このマーシャ版はスピード感のあるリズミカルなものとなっている。特筆すべきはHARRY J. ALL STARSによる非常に歯切れの良いリズム・トラック。オリジナルの温い曲調から一変し瑞々しくダンサブルなロックステディへと劇的に変貌している。特に随所で弾けまくるドラムが良いアクセントになっていて一番の聴き所。スピード感のあるロックステディものリズムとして、またレゲエによるビートルズのカバーの中でも最上級の出来と言えるんじゃないかな。ただマーシャの歌声の方はオリジナルのジョンレノンの歌唱には遠く及ばないのが残念。JACOB MILLER辺りに歌ってもらいたかった。
44.JACOB "KILLER" MILLER / COME SEEK JAH '80 LP「MIXED UP MOODS(TOP RANKING)」 P.97掲載
ジェイコブミラーの遺作。このアルバムは他にも 「ONCE UPON A TIME」
, 「CHAPTER A DAY」
,「MR.OFFICER」といった偏差値65クラスの素晴らしいルーツレゲエが収録されています。現在ではオリジナルLP盤とは違い、画像のジャケでダブなどを加えた構成で発売されています。
46.CULTURE / BEHOLD I COME '78 「BALDHEAD BRIDGE」収録 P.51掲載
多くの名曲を持つルーツ・レゲエ・コーラス・グループのカルチャーの78年のアルバム「BALDHEAD BRIDGE」収録曲。やはり78年のアルバム「HARDER THAN THE REST」では「BEHOLD」というタイトルで発表されていて、このバージョンは別録音という位置づけになります。(STRICTLY ROCKERSによると後者が再録音とのこと。)アルバム「BALDHEAD BRIDGE」はJOE GIBBSのアレンジ&プロデュースなのでかなりポップな仕上がり。この曲もテンポアップさせ、ピアノを効果的に配置、コーラスも積極的に導入している。メロディはカルチャーものとしては落ち着いた雰囲気なのでジョゼフ・ヒルのヴォーカルの魅力が際立つ内容ではないが、軽快なリズムに陽性な曲調、明るいピアノと小気味よいホーン入りのトラックが秀逸です。このトラックも名トラックとして使い回されてしかるべきかと思いますが良曲は存在するんですかねえ。カルチャーには他にも 「BEHOLD THE LAND」
という名曲があり「BEHOLD」という単語のつく曲が3曲もありややこしい。
47.HORACE ANDY & ERROL SCORCHER / COME ON & ROCK ME '80 「UNITY SHOWCASE」 P.89掲載
歌手HORACE ANDYとERROL SCORCHERのDJによる1980年のショウケーススタイルのミニアルバム収録曲。 HeptonesのWe Are In The Mood
の変名カバーで、オリジナル歌手の LEROY SIBBLESによるセルフカバーRock Me Baby
も非常に良い出来(昔ジャパンスプラッシュで来日した時歌ってくれました)。「STRICTLY ROCKERS」P.89掲載曲で菅野さんは「ラバーズロック」として紹介しています。前半が歌で後半がDJとなっていますが、特に前半のホレイス・アンディの女性っぽいハイトーン・ヴォイスによる歌に味わいがありますね。元歌の良さと歴史的名トラックの出来栄えもありますが、のんびりした和み系レゲエとして実にいいムード。後半からDJに変わるのも一興で楽しい雰囲気ですね。
48.BLACK UHURU / GUESS WHO'S COMING TO DINNER / WHO'S IN THE TOMB (DUB) '79 STRICTLY ROCKERS P.62掲載
80年代初頭に大人気となった硬派なルーツレゲエバンド、ブラックユフルの代表的名曲。79年のアルバム「BLACK UHURU」収録でプロデュースは重鎮スライ&ロビィ。67年のアメリカの映画に同タイトルの「邦題:招かれざる客」という黒人と白人の結婚問題に関する映画があるので、歌詞の内容などこの作品にインスパイアされたのかも。曲は暗めだけど、キャッチーなメロディを持つヘビィなルーツもの。元はリードの MICHAEL ROSEがソロ作品
で発表していた作品で、本作はリメイクということになりますね。オリジナルと聴き比べると明確ですが、SLY & ROBBIEの織り成すリズムは超強烈で、個人的にはユフルというよりもスライ&ロビィの作品という気さえする。彼らにとっても代表的な名演と言えそう。菅野さんはSTRICTLY ROCKERSでこの曲について「シンドラのすさまじいポリリズムは特筆すべきで、機械的かつ人間的な強烈なリズムは革命的」と評価。当時私の周囲のロックファンにも大部受けてましたね。
なお、81年のスライ&ロビィのダブアルバム「RAIDERS OF THE LOST DUB」には同曲のダブバージョン 「WHO'S IN THE TOMB」
が収録されています。オリジナルに接続されているダブよりもより派手な内容でこちらの方が個人的にはお勧め。鐘の音がいいんですよねー。因みに同アルバムはインディジョーンズの映画をパロったジャケでかなりB級感が漂っていますが、他にもユフルのダブ 「CONVOY HIJACK」
やバーニングスペアのダブ 「PIT OF SNAKES」
などレゲエ名曲の名ダブが収録されていてあまり評価されていない隠れたダブ名作アルバムという感じ。結構知らない人が多いんじゃないかな。
レゲエを代表する偉大なコーラスグループ、ヘプトーンズの初期レゲエのオールディーズ・カバー。1968年のアナログアルバム「ON TOP」収録。(CD収録版はコーラス入りでいまいちなので注意)オリジナルは1959年のPhil Phillips with The Twilightsの小ヒット。secondhandsongsによると66ものカバーが存在。一番有名なのが1984年にヒットしたHoneydrippers版でしょうか。他にもB.J. ThomasやHorace Andy、Dennis Brownといったレゲエ勢もカバーしています。タイトルに海とつくイメージ通り、浜辺で海を見ながら恋人との想い出を懐かしむような曲でしょうか、のんびりとした曲調で実に和めるムード。ノスタルジックで少し物悲しい雰囲気のAメロのラインも良いけれど、懐かしい想いがこみあげて来るかのようなサビの盛り上がりが素晴らしい。ヘプトーンズ版は初期レゲエの純朴なムードに簡素ながら歯切れのよいトラックがオリジナルの雰囲気にピタリとマッチしていて将に嵌り曲という感じ。この曲の最良バージョンだと思います。個人的には若い頃日光浴をするのに愛聴していましたが、やはり南国リゾートの浜辺やプールサイドなどでまったり和むのに適した曲かと思います。
56.The Beatles & Harry J. Allstars / Don't Let Me Down (Rocksteady Version)
史上最高のロックバンド、ザ・ビートルズの名曲「Don't Let Me Down」を2024年に新たにロックステディ・バージョンとして作成しました。オリジナルのヴォーカルとHarry J. Allstarsによるロックステディ・サウンドを組み合わせたもので、所謂二次創作にあたる非公式・未公認の楽曲です。具体的にはオリジナルからヴォーカルのみを、MARCIA GRIFFITHS版からサウンドのみを抽出し組み合わせています。(ココナラというスキルを売買できるサイトでパレコサウンドという方に安価に編集して頂きました。)
本曲は当ブログで以前記事にした MARCIA GRIFFITHS
によるカバーが秀逸ですHARRY J. ALLSTARSによる非常に歯切れの良いリズム・トラックはオリジナルのゆるい曲調から一変し瑞々しくダンサブルなロックステディへと劇的に変貌させています。然しながらマーシャの歌声はジョンレノンの歌唱には遠く及ばない出来なので歯がゆい思いをしていました。一方のオリジナルの方もメロディは流石の出来ながら、ゆったりとした曲調にソウルフルな歌声が個人的に初期の瑞々しくノリの良いビートルズが好きな私の好みではないので、マーシャ版やインスト版の方を好んで聴く状況でした。今回のロックステディ版ビートルズはその両者の長所を生かし欠点を補いあい、ジョンの熱唱をグルーヴィなサウンドで聴ける素晴らしい作品になったと感じています。なお、安価に製作頂いたので若干聞き苦しい箇所がありますので、本作は試作品として公開させて頂きます。もしもご要望が多いようでしたらもっと本腰を入れて徹底的にマスタリングなど修正を加えてみたいとも思いますが、個人的にはある程度満足していますので、どなたか代わりに作ってくれないかな?とも思います。
57.MOVING BROTHERS / DON'T PLAY THAT SONG (DARLING I LOVE YOU) '67
おそらくこの一曲のみで消えたトレジャーアイルのグループの1967年のロックステディ。プロデュースはDUKE REIDでバックはTommy McCook & The Supersonicsです。オリジナルは1962年の Ben E. King / Don't Play That Song (You Lied)
で、secondhandsongsによるとAretha Franklinなど57曲ものカバーが存在する。レゲエ系も幾つかあるけど、個人的にはこのカバーがベスト。イントロでの他のカバーにはない暖かみがあるけど悲哀に満ちたTommy McCookのサックスが実にいい味出してます。ここを聴くだけで涙腺が緩んでしまいそう。レゲエ前夜の素朴だけど生き生きとしたリズムも、ともすれば湿ってしまいそうなメロディに活力を持たせてます。こうした甘みのある優良メロディ&軽快かつ純朴なリズムの妙味有る組み合わせはトレジャーアイルにはまだまだ沢山ありますね。