ザ・スーパー・ポップ宣言

ラヴァーズロック

LOVERS ROCK (1)

雑誌RELAX(2001/11)に掲載された藤川毅さんによる LOVERS ROCK DISC GUIDE を中心にラヴァーズロックレゲエをポップにこだわって紹介します。


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LOVERS ROCK

【 ラヴァーズ偏差値 75

LOUISA MARKS / 6,SIX STREET '79 Bushay 12" (P.80掲載)
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いきなり核心に触れるが、紛れも無くラヴァーズロックの最高傑作NO.1ソングである。曲調はのんびりとしたちょっと牧歌的な雰囲気で、一聴すると特に派手さは無い。しかしながらほんのり甘いメロディとLOUISA MARKSの甘い歌声がゆったりとしたリズムに乗ってとても心地よい。バックのベース、キーボード、ドラムス、フルート?などの全ての楽器の音が絶妙な音空間を作っている。ちょっとエコーがかかった感じのするバックはこれしかない!といった感じのバランスを保ち、ひたすら心地よく響くのだ。

この響き具合の心地良さは、うーん、体験してもらうしか他は無い、としか言いようが無い素晴らしいものなのだ。当然と言えば当然だが、超大型スピーカーセットで大音量で聴いてもらってこそ真価を発揮する。実際に聴いてもらえば分かるがどれだけ音量を大きくしてもアラは聴こえてこない。ひたすら気持ちいい。ただそれだけ。

メロディと言うよりはそんな音空間がしばらく続いたのちに後半では更に追い討ちをかけて素晴らしいダブが展開される。その音の拡がり、エコーの絶妙なかかり具合、キーボードをはじめ全てが一体となって醸し出すリズム音世界は超悶絶の世界である。この音空間を作り出した関係者の方々、紹介してくれた藤川毅さんには感謝をしてもしきれない。またこの世界を体感理解できる自分の耳にもお礼をいいたい。ラヴァーズというだけでなく全レゲエ史上に残るナンバーワンソングだ。聴かずに死ぬなかれ!

【 ラヴァーズ偏差値 73

SUGAR MINOTT / A HOUSE IS NOT A HOME LP「REGGAE HITS VOL.2 (JETSTAR JELP 1002)」 (掲載なし)
REGGAE HITS2.jpg
Burt Bacharach作品のカバー。この曲の最大の聴き所はシュガーマイノットの甘い歌声と甘いバックの味付け、それとラヴァーズなリズムだろう。出だしの明るい女性コーラスが原曲には無いポップさ、躍動感を与えている。甘くころがるヴァイブ、しっぽり落ち着いたリズム、過剰に甘い歌声などに加え、さわやかなコーラスやコール&レスポンスなどがメリハリをつけ、元歌の平坦なイメージを振り払ってくれた。

ソウルや洋楽ヒット曲をレゲエで焼きなおす最大のメリットはなんと言っても、元歌の悪い意味でのポピュラリティーを消し去ってくれることだ。主に軽快で躍動感溢れるリズムに負うところが大きいがこの曲で聴けるような過剰な歌いこみもその一因だ。おかげで、その一般性を嫌いほとんど聴くことの無い元歌(その素晴らしさは認めるものの)に代わって、格段に聴く頻度がアップするのだな。

この曲は私の知る限り数あるバカラックカバーの中でも筆頭の焼き直しです。熟練の甘茶ソウルファンにも自信を持ってオススメします。クレジットはないけど製作はおそらく80年代中期。この曲が収録されているのはオムニバスLP「REGGAE HITS VOL.2 (JETSTAR JELP 1002)」 。同タイトルのCD版はジェットスターものだけでも数種類あったと思うが、CD版にはこの曲が未収録のものもあるようなので注意が必要です。また「GOOD THING GOING」収録のものとはバージョンが異なります(そちらはいまひとつ垢抜けない)。また彼の「Lovers Rock Tribulation」というCDにも同名曲が収録されていますが、試聴したところ全くの別曲になっていますのでご注意下さい。更に12"(BLACK ROOTS MUSIC / GUAMARI I RECORDS GR-001)とも内容が異なります。

【 ラヴァーズ偏差値 72

DENNIS BROWN / LOVE HAS FOUND ITS WAY '82 (P.84掲載)



ジャマイカのベテラン・レゲエ歌手の同名アルバム収録曲。この曲はラヴァーズロックの代名詞的存在と言えますね。然しながら、この当時の日本ではBOB MARLEYをはじめとしたルーツレゲエが人気の中心でこうした甘いレゲエが話題に上ることはあまり無かった気がします。

曲は甘く情感たっぷりに揺れるギターの音色が特徴的な大人向けのラヴァーズ。南国リゾートムード満点の曲ですが、特に甘く素敵なリゾートの夜を予感させてくれます。大甘なメロディにデニスの甘い歌声。熱い夜を涼しげにクールダウンしつつも、ムーディーに盛り上げるギターのカッティングが心地よいですね。全体として非常にキャッチーで聞きやすい作りになっているので、スウィートソウル・ファンにもお勧めしたい1曲です。

「YOU TUBE」 で聴けます。

MAXI PRIEST / SOME GUYS HAVE ALL THE LUCK (ALBUM VERSION) '87 (P.84掲載)
MAXI
LOVERS ROCK DISC GUIDE ではアルバムMAXIが取り上げられていますが、やはり何と言ってもこの曲。原曲は73年のPERSUADERS。 ROBERT PALMER , ROD STEWARTもカバーしてヒットしている。前三者よりも底抜けに明るく、乾いて、弾けている。原曲から14年経ているが、MAXI PRIESTがカバーするために生まれてきた曲という印象さえ受ける。原曲本来の持ち味が最大限に引き出されているといえる。いくつかバージョン違いで出ていてどれも良いのだが、後半に心地よいダブ的処理が聴けるこのバージョンが特に良い。ベスト盤なんかに収録されているのは収録時間が短く、後半部分が聴けませんのでアルバム収録(実録5分27秒)か12インチバージョンを聴きましょう。

MAXI PRIESTが彗星の如く表れ、瑞々しさを失う最後の、私にとっては一番円熟した時期に発表された曲だ。MAXI PRIESTはこの後大部レゲエ特有のしなやかさ、明るさを失い大衆性を追求していってしまうので、私にとっては惜別の歌にも聴こえる。
明るく元気 テンション 高揚感 乾燥感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(持ち味引出し) ラヴァーズ偏差値合計
8
7 9 7 10 8 10 8 5 72


JUPITER PROJECT / SILENT EVE '94「GREETINGS (PCD-4101)」収録 (掲載なし)
JUPITER

気だるく甘いヴォーカルが魅力なこの歌のバックの音は英アリワレーベルのようなちょっと硬質なサウンドだ。構成されている音も打ち込みが中心だと思う。それでも曲(メロディ)の出来がいいから変な機械臭さは感じない。何よりヴォーカルの大人のフェロモンたっぷりの大甘な味が素晴らしく、めくるめく官能の世界へと誘ってくれる。この感じはかなり甘茶ソウルに近い感覚で、私が甘茶ソウルのセレクトMDに入れて聴いている唯一のレゲエナンバーで、単純に甘さという点においてNO.1ラヴァーズロックだ。それにしてもこの手の甘さはジャマイカやイギリスのラヴァーズロックでは滅多に感じることが出来ないものだ。???ではこれはどこ産のレゲエなのか、、、。

ジュピタープロジェクトはモンチ田中という人をリーダーとした日本のバンドだ。たしかハウス系の音を多く世に出している。そして歌っているのはゲストとして参加したジャズシンガーでERI NISHINAという私の知らない女性だ。更に原曲はTVドラマでも使われていたという辛島美登里の大ヒット曲だそうだ。私の音楽嗜好からするとこれらの予備知識があったら頼まれても聴かなかったはずなのだが、幸運にもこの曲を初めて聴いたのは宇田川町にあったころのTOWER RECORDの店内だった。CD SHOPでたまたま流れた曲を聴いて痺れたのは後にも先にもこの曲でしか体験したことはない。流してくれた店員さんに感謝。

【 ラヴァーズ偏差値 71

RUDDY THOMAS / REFLECTIONS '83 LP「Very Best Of Ruddy Thomas」(掲載なし)
RUDDY REFLEC
RUDDY THOMASはファルセットシンガーで、甘めの良曲を沢山残しているので甘茶ソウルファンにも強力オススメだ。この曲はおそらくBarry Biggs & Ruddy Thomas名義で出ている「Reflections Of My Life」と同一のもの。そちらはどうか知らないがこのLP収録曲は5分32秒ある。(ご存知の方教えて!Barry Biggsのベスト盤に入ってるものは短かったです。オムニバス等に入ってるものも短いようです。このLP収録のものか12インチ盤を聴きましょう。)ダブが無いのにこの長さなのでたっぷり甘い世界が堪能できる。もともとはイギリスのMarmaladeというグループのヒット曲だが原曲はかなりノベーっと平坦な内容。

基本的にかなり大味/大仰なメロディでしかも大甘な内容。これを甘茶ソウルでやられたらかなりねっちょりとした出来となりそうだが、そこはラヴァーズのしっとりとしたリズムにのって絶妙な甘さに仕上がっている。途中間奏に入る泣きのギターが二度繰り返されるのだが、この展開が鳥肌もので素晴らしい。バックに流れるシンセをきっちりとしたストリングスで仕上げ、エレキシタールをビヨンビヨン鳴らしたら究極の甘茶ラヴァーズとなっていただろう。

短いバージョンが 「YOU TUBE」 で聴けます。うーん、やっぱりちょっと物足りないですね。

COCOA TEA / GETTING CLOSER from ONE UP (GREENSLEEVES)'93 (掲載なし)
COCOATEA
「LOVERS ROCK DISC GUIDE」では別の曲が取り上げられている。まあこの曲をラヴァーズロックと呼ぶべきかというと自分でもかなり疑問が残る。こぶしの利いたねちっこい歌いまわしはディープとさえ言えるしね。でも内容はメチャ甘。これでもかと言わんばかりに甘ーく粘着質に情感たっぷりにジャマイカ産ココアティーが歌い上げます。簡素なバックに控えめな女性コーラスは彼の持ち味を生かすには最適。甘茶ソウルファン、ディープソウルファンにも聴いて欲しい実に素敵な曲だ。「GREENSLEEVES SAMPLER」にも収録されています。

JOHN HOLT / DO YOU WANT ME '71 LP「Love I Can Feel (STUDIO ONE 9017)」収録
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ラヴァーズロックではなくてロックステディなんだけど甘くて素晴らしい内容だからここで紹介。ジョンホルトはかなりキャリアの長いスタジオワン時代から歌謡レゲエをやっている大御所で甘めの歌物を得意としている。甘い白人バラードのカバーなど大味で全くつまらなく感じるものも多いが、この曲は曲調と彼の持つ甘さが旨くマッチした快作。まずは↓のリンクからご試聴頂ければ早いのですが、70年代初期の軽快なスタジオワン産ROCKSTEADYにのせて青空高く舞い上がるイントロのストリングスの調べが実に爽快。その後もヴォーカルとともに甘く優雅なストリングスがこの曲をひっぱります。この爽快感、開放感、乾燥感、それと古き良き時代を感じさせるノスタルジックでのんびりした甘くも明るく健康的なムード。リズムも躍動感バッチリでラヴァーズロックステディとでも呼びたくなってしまいます。

CISCO RECORDSの ここ で試聴できます。ここの試聴は1分30秒と長く堪能できていいですよ。
明るく元気 テンション 高揚感 乾燥感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(爽快なストリングス) ラヴァーズ偏差値合計
7
7 9 9 9 8 9 8 5 71


JUNIOR SOUL / YOU KEEP ME HANGING ON 12"(ROHIT 531)'87? 「JUNIOR SOUL CLASSIC」収録
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「WALK AWAY FROM LOVE」、「SOMETIMES WHEN WE TOUCH」と並んでカバーバージョンの多い世界三大黄金旋律曲の一つだと思っている「YOU KEEP ME HANGING ON」。オリジナルはカントリーとのことですが、 世界三大黄金旋律曲の一つ OVATIONS / YOU KEEP ME HANGING ON に書きました通り、沢山のカバーバージョンが存在します。

中でもオヴェイションズのカバーが【甘茶偏差値 72】の大傑作であることはそちらに書きましたが、このジュニア・ソウルのカバーもそれに負けず劣らずの大傑作曲。オヴェイションズ版が甘めのソウル・ベスト50に入るならば、こちらは甘めのレゲエ・ベスト10には確実に入る。つまりラヴァーズロックの最高傑作だということです。

JUNIOR SOULというのは、レゲエ好きの間でもほとんど話題にのぼることのない、まあ早い話2,3流のシンガー。この曲の収録されている「JUNIOR SOUL CLASSIC」もソウルに憧れたジャマイカンが無難にレゲエ版をやってみましたという域を出ない。ジャケも如何にもジャマイカのリゾートホテルの営業で歌ってますって風情で物悲しい。然しながらTUFF GONGスタジオで録音されたこの曲はWILLIE LINDOのプロデュース、バックもスライ&ロビー、女性コーラス陣もJ.C.LODGE,PAM HALL,CYNTHIA SCHLOSSなどと超豪華。

このジュニア・ソウル版のベースとなるのは「JOE SIMON / YOU KEEP ME HANGIN' ON (Sound Stage 2608)'68」。女性コーラスのアレンジが一緒です。お歌の方は可もなく不可もなくといったところですが、先進国ジャマイカの一流ミュージシャンをバックに世界三大黄金旋律曲の一角を歌うのですから、悪いはずがありません。甘いメロディにレゲエのリズムがしっぽりと絡み極上のラヴァーズの出来上がり。特に中音域の響き具合が絶妙で快感。個人的に同じレゲエのCAROL BROWNとDAVID ISAACSのカバーを先に聴き、出来の悪さに失望していただけにこのジュニア・ソウル版に出会えて良かったと感慨もひとしお。

このアルバム収録版は約5分で終わってしまうのですが、12インチ版ではなんとその後にダブ系インストが接続されているのです。ウオッ!イイ!!!インストで聴くと更にこのメロディの持つ黄金旋律が輝きを増し、イマジネイションを駆り立てます。ここからがこのバージョンの真骨頂なのでした。更にJOE SIMON版でも聴かれる女性による由紀さおり風な「ルゥー、ルゥー」コーラスも真価を発揮。本来のどこかノスタルジックで物悲しい甘い旋律にのって、優しく包み込むコーラスに、もう涙だだ漏れ。まさかオヴェイションズ版に匹敵するほどのカバーに巡り合えるとは、、、。(この曲のMP3ファイル有りますヨ。)

【 ラヴァーズ偏差値 70

ELAINE FALCON / I'M GONNA MARRY YOU (LOVE NOTES 001)



全く正体不明なおそらくイギリスの女性ラヴァーズ・ロック。(正式タイトルは「I'M GONA MARRY YOU」)ちょっと物悲しげで胸キュンなイントロのメロディが曲全体のムードをリード。甘く、切なく、そしてどこか懐かしい気持ちにさせてくれます。続いて聴こえてくる女性ヴォーカルはまるで男の娘ファルセットのように甘くまろやか、かつ可愛らしい。甘茶ソウルで言うとデルフォニクスのウイリアム・ハートの女性版って感じですかねえ。唱法も出しゃばらず、ひたすら控えめで奥ゆかしい所は好印象。そして肝心のメロディも甘く綺麗で可愛らしく、ティーンエイジャーの恋愛における淡い想いがヒシヒシと伝わってきます。メロディ展開がひたすらAメロとBメロの繰り返しだけってのが単調で玉に瑕だけど、甘茶ソウルにおける「TOMORROW'S PROMISE / HE DON'T LOVE YOU LIKE I DO 」や「GASLIGHT / I'M GONNA GET YOU」クラスの胸キュン度って感じで、甘茶ファンにも絶対的お勧めのラヴァーズ・ロックです。甘く可愛らしい歌声かつMARRYつながりということで、 「REGAL DEWY / MARRY ME AGAIN」 とも共通項がある感じがします。

GARLAND JEFFREYS / CHRISTINE '81 LP「ESCAPE ARTIST」 (掲載なし)

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この曲を聴いたのは、当時の渋谷陽一のNHKサウンドストリートだったと思う。ガーランドジェフリーズは白人、黒人、プエルトリカンの混血だ。混血の人のルックスってそれぞれの血が絶妙に混じりあい、時として絶世の美人美男を生み出すことがあるが、ガーランドジェフリーズは、そんな混血の妙味が曲調にも表れた面白い例だと思う。

曲はレゲエタッチ、というかレゲエにかなり近い雰囲気だ。その辺は彼のプエルトリカンの血が騒いだのだろうか。出だしの格好いいドラムの響きに次ぐ軽やかなイントロが全編をリードし、明るく乾いたムードのうえに都会的な洗練されたセンスも感じる。情感豊かでちょっと泣き節の入ったメロディはちょっとジャマイカ産レゲエには無い洒落たものがあるよ。ジャンル的にはロック畑の人だが、この曲は一風変わったラバーズロックと言ってもいいかも知れない。なお、ベスト盤などに収録されているのは別バージョンで、内容もいまいちですので気をつけて下さい。

明るく元気 テンション 高揚感 乾燥感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(混血の妙) ラヴァーズ偏差値合計
9
7 9 7 8 8 8 9 5 70


BERES HAMMOND / FULL ATTENTION '92 CD「FULL ATTENTION」収録
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ベテランレゲエシンガー、ベレスハモンドが92年に放った奇跡の名曲。一部コアなディープ系ソウルファンにも76年の「SOUL REGGAE」で有名な人。然しながらこれといった曲に恵まれず中堅シンガーに甘んじていた感がありますが、遂にここで実に素晴らしい旋律を持った曲を書きました。甘く情感に満ちたメロディを思いっきりコブシを効かせて歌いこみます。コンピュータライズドなトラックがいまひとつだが、それでもレゲエの持つ振幅の効いたリズムはプラス要素でレゲエ、ディープソウル双方が好きな者には堪らない産物。太めのしゃがれぎみの声なのでラヴァーズとは言い難いが、こちらのコーナーでご紹介。93年の同名アルバム収録で試聴は容易。それにしてもこれまで何人ものディープ系ソウルファンにオススメしてきたんだけど誰も良いと言ってくれないのは何故?

【 ラヴァーズ偏差値 69

JANET KAY / SILLY GAMES (12"VERSION)'79 (掲載なし)

JANET KAY SILLY GAMES.jpg

いまやラバーズロックの代名詞的存在のジャネット・ケイ。77年のLOVIN' YOUのカバー・ヒットで有名ですね。「SILLY GAMES」の方は79年の作品ですが、共に70年代の明るく乾いた空気感と初期の彼女だからこそ持っていた瑞々しさ、更にイギリスで独自に展開・進化したレゲエの持つ冷ややかさが同居した素晴らしい内容です。プロデュースはDENNIS BOVELL。(作曲はDIANA BOVELLとあるから彼の奥さんかな)彼の落差のあるアレンジも見事で大音量で聴くと低・中・高音域まで空間を広く活かしてることに関心させられます。

なんといってもイントロのシンセのポップなメロディが魅力的で、少女の持つ純朴さ、明朗さ、そして何処となく慎ましさを感じさせてくれます。続く彼女の歌声も瑞々しさ一杯で、その真摯な歌いっぷりと程よい拙さが可愛らしい。もちろん肝心のメロディこそが最大の魅力で、Aメロの素朴で明るい風合い、そして転調したBメロの胸キュン系な展開が素晴らしい。ただし個人的にはその後のサビでのタイトル「SILLY GAMES」の繰り返し部分は暗めだし、くどく冗長に感じていまひとつ。

ロングバージョンなど幾つか出ていますが、私の好きなのはPRESSUREからの84年の12インチ・ロングバージョン(実測6分28秒)。オリジナル12"バージョンでは、ダブ接続後も「SILLY GAMES」のリフレイン部分を展開しただけの暗い内容なのに対して、こちらのバージョンは、いったんイントロのシンセのポップなメロディ部分に戻るところが美味。そこのところ含めたダブ・アレンジもずっと魅力的になっています。「YOU TUBE」で聴けるのは残念ながら 前者 の方ですが、ご参考まで。
明るく元気 テンション 高揚感 乾燥感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(ポップなシンセ) ラヴァーズ偏差値合計
8
6 8 8 7 9 9 9 5 69


TREVOR HARTLEY & BEVERLEY SKEETE / BABY DON'T GO TOO FAR
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イギリスのレゲエシンガーと女性ソウルシンガー?のデュエット曲でおそらく90年頃の作品。重低音の効いた振幅の大きいメリハリあるトラック、高揚感のある味わい深い濃厚豊潤なメロディが素晴らしい。あまり曲に恵まれない感のあるTREVOR HARTLEYがここでは実にいい曲に出会えました。(もしかしてカバーかな?)DEEP風味の少ししゃがれた声で、曲によっては聴き苦しい感じさえある彼ですが、ここでは上手く嵌りましたネ。こぶしを効かせたりファルセットになったりといった洒落た歌いまわし、デュエットの特性をいかした曲展開など、全てが上手くいった傑作です。「MASSIVE 4 - 2 CD SET OF REGGAE HITS '90 (FFRR 828 210-2)」収録。
明るく元気 テンション 高揚感 乾燥感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(嵌った歌声) ラヴァーズ偏差値合計
8
7 9 7 8 10 8 7 5 69


【 ラヴァーズ偏差値 68

FREDDIE MCGREGOR / THAT GIRL (GROOVY SITUATION)12" '87 (P.82掲載)
THAT GIRL
87年というとBUBBLIN' DUBが西麻布から幡ヶ谷に引っ越してしまい変わりにCLUB JAMAICAが西麻布に出来た頃だ。この曲を初めて聴いたのはそのCLUB JAMAICAで、その日の一番最初にプレイされたものだった。その週のうちにこのお皿を買いに走ったんだけど、すぐに市場から消えてしまっていた記憶がある。右側のお皿も当時もの。珍しいかもしれないが内容はつまらない。

GENE CHANDLER / GROOVY SITUATION (MERCURY 73083) '70 のカヴァー曲でもって、「Young-holt Unlimited / SOULFUL STRUT '68」,「Barbara Acklin / AM I THE SAME GIRL」ネタでもあるこの曲はMAXI PRIESTのポップで洗練されたタッチのレゲエに触発されて作られたものであろう。二つのシカゴソウルをブレンドさせるという着眼が素晴らしく、(おそらくは)「SOULFUL STRUT」ネタの始祖曲となった。

フリーソウルシーンでも人気曲のようで橋本徹氏のポリドール盤コンピにも入れたかったけど入れられなかった旨書かれている。(雑誌RELAX 2001年7月号に掲載された橋本徹氏の「FREE SOUL 2001」にも当然取り上げられている。)山下達郎も「SOULFUL STRUT」,「AM I THE SAME GIRL」をオンエアしてる。私のこのブログのどこでも書き込めそうな便利な曲だ。

明るさと高揚感をちりばめたこの曲はFREDDIE MCGREGORの代表曲だ。あまり歌声に強烈な個性が無い彼だけにポピュラリティを持たせることが出来たのは幸運だった。出だしの煌びやかなホーンはあまりにも有名。レゲエ色は薄いがラヴァーズロックということで問題はないだろう。

明るく元気 テンション 高揚感 乾燥感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(着眼点) ラヴァーズ偏差値合計
8
9 8 8 8 7 8 7 5 68


JUST DALE & THE ROBOTICS / UNTIL YOU COME BACK TO ME

BE SWEET.jpg

73年のアレサ・フランクリンのソウルの大ヒット曲のラヴァーズ・ロック版。90年代前半の英アリワの冷ややかで硬質なサウンドによるこのカバーは、そのサウンドの精鋭さにおいて遥かに前者を凌駕する素晴らしい内容。後半にダブが接続されていて7分28秒と長いバージョン。女性ヴォーカルのこの曲の歌唱スタイルはアレサ版を参考にしたと思われる絶唱交じりのDEEPなもの。MAD PROFESSORによる煌びやかでひんやりとしたサウンドは細部まで計算し尽くされた緻密な音世界を展開。ベースの心地よいエコー感、ハイハットのシャリシャリ感、ギターやシンセなどの中音域の振幅ぶり等、各器楽がどれをとっても必要最小限にして最大の魅力を発揮するよう構成されている。

私は70年代ソウルが大好きなので、決してアレサ版を貶めようという意図はないのだが、はっきり言って、それを何度も繰り返し聴きたいとは思わない。メロディはポピュラーっぽいし、サウンド的には全く凡百な内容。

しかし、このアリワ版の後半に入ってから聴かれるダブ・アレンジはどうだろう?精鋭なインスト/ダブ・サウンドにより、原曲の持つメロディの持つポピュラリティをうまく中和、ヴォーカルやコーラスを縦横無尽に部分挿入し緊迫感を高め、随所に聴かせる深いエコーで神秘的な世界を構築(葉モノを決めれば最高にヤバそう)。マニアックな音楽ファンでさえ何度もリピート再生したくなること請け合いで、その万華鏡的音世界により見事なまでに元曲を再構築、全く異次元の魅力を作り出している。

橋本徹氏監修の国内盤、SUBURBIA SOUND SYSTEM PRESENTS - BE SWEET - FRESH COVER OF ARIWA (JIMCO JICK-89629)'95 など幾つかのアリワのコンピにも収録されています。なお、このシリーズはアリワのオリジナル曲ばかりを集めた、SUBURBIA SOUND SYSTEM PRESENTS - BE LOVELY - CLEAN ORIGINAL OF ARIWA (JIMCO JICK-89630)'95 というのも同時発売されています。(当該曲が2007年8月に発売された「SUBURBIA SOUND SYSTEM FOR EVENING LOVERS」収録のものと同一かは不明。)

「YOU TUBE」には大ヒット曲の ARETHA FRANKLIN版(ATLANTIC 2995)'73 やオリジナルの STEVIE WONDER版 '67 など多くのこの曲のバージョンがアップされているようです。
明るく元気 テンション 高揚感 乾燥感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(煌きのサウンド) ラヴァーズ偏差値合計
6
7 8 7 9 7 10 9 5 68


【 ラヴァーズ偏差値 66

FEDERALS / SHOCKING LOVE (YOU BETTER CALL ON ME) '68



1968年製の甘めのアーリー・レゲエ/ロックステディの隠れた名曲。「Trojan Rocksteady Box Set」収録。この世の全てを達観したかのような自然体で落ち着いたトラック。この簡素なイントロのインストパートだけでも実に味わい深いものがあります。その渋いトラックをベースに、メロディは憂いを帯びながらも芳醇な甘さを感じさせる情感深いもの。そして囁きタイプのソフトな唱法が聴く者を甘く優しく包み込んでくれます。DELFONICSがLa-La (Means I Love You)をヒットさせていた頃、既にジャマイカでもこんなスウィートな甘茶が誕生していたんですねー。スウィートソウルのDJ諸氏もたまにはこんな曲をこっそり忍ばせてプレイしてみてはいかが?

「YOU TUBE」 で聴けます。

MAD PROFESSOR / BERBICE MADHOUSE '85 「A CARIBBEAN TASTE OF TECHNOLOGY」

A CARIBBEAN TASTE OF TECHNOLOGY.jpg

80/90年代のイギリスで数多くの傑作ラヴァーズロックをプロデュースしてきたマッド・プロフェッサーのソロアルバム「A CARIBBEAN TASTE OF TECHNOLOGY」収録曲。このアルバムは「COUNTRY LIVING」のダブバージョンである 「FRESH AND CLEAN」 等明るくポップな曲が多く、彼の他の「DUB ME CRAZY」シリーズとは趣が異なり大部聴き易い内容なのでお勧め。その「FRESH AND CLEAN」タイプのこの曲は、やはりスティールパンのきれいな音色が実に心地良い曲。

明るく乾いた空気の中、軽やかで爽やかなメロディをスティールパンが奏じます。そのポップで冷ややかな音色は清涼感たっぷり。将にカリブのリゾート地での一服の清涼剤にうってつけの内容。実際私もこのアルバムの発売以降、何度もリゾートでのBGMとして愛聴してきました。勿論マッド教授の曲ですから単なるインストで終わる曲ではなく、随所に効果的にエコーを効かせたダブ・ミックスは大音量で聴いてこそ真価を発揮します。特にベースが抜けて歯切れよくキーボードが鳴り渡る瞬間の開放感など饒舌に尽くしがたい。

歌ものではないのでラヴァーズと呼ぶには微妙だけど、いわゆる埃臭い土着的なジャマイカのレゲエとは対照的な洗練された内容なので、レゲエが苦手なフリーソウル・ファン、特に女の子なんかに喜ばれそうな曲なんじゃないかなと思います。清涼飲料水のコマーシャル・ソングにも適してそうですネ。
明るく元気 テンション 高揚感 乾燥感 グルーヴ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(清涼感) ラヴァーズ偏差値合計
8
6 8 8 6 7 8 10 5 66


DENNIS BROWN / INSEPERABLE '88「INSEPERABLE」収録
DENNIS BROWN INSEPERABLE 1.jpgDENNIS BROWN INSEPERABLE.jpg
ラヴァーズロックの最高傑作アルバムは?と聴かれたらこのアルバムと答える。So nice to be with you、For you、Inseparable、Rain、Since I've been loving youの5曲はどれも偏差値60以上の極上ラヴァーズだ。当たり外れの多いレゲエのアルバムにおいて一枚のアルバムにこれだけの名曲が揃うというのはかなり稀なことだ。(因みにこのアルバムに感動した私は急遽その前後のアルバムも買い集めたがどれもつまらない出来であった、よくある事です。) ここ (ドイツ?のアマゾンだろうか?)で試聴出来るようです。発売当初のアナログ盤は左側のジャケットだったけど、最近は右側のジャケットで流通しているようです。

それにしてもこれ程の紛れも無い名作であるけれど、「レゲエディスクガイド 石井志津男編(音楽之友社)」で紹介されているDENNIS BROWNのアルバム8枚の中にこのアルバムは無い。なんとも情けない話である。

Inseparableは、ゆったりとしたテンポにちょっと明るめのメロディで昼間の陽射しの元での聴取に向いている。幸福感と和み感は実にリゾート向きで適度にこみ上げるメロディと唱法はソウルファンにも楽しめるものだろう。
明るく元気 テンション 高揚感 乾燥感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(幸福な和み感) ラヴァーズ偏差値合計
6
7 8 8 8 9 8 7 5 66


JUNE LODGE (J.C.LODGE) / SOMEONE LOVES YOU HONEY '80 「SOMEONE LOVES YOU HONEY」収録

JC LODGE SOMEONE LOVES YOU HONEY.jpgJune Lodge & Prince Mohammed - Someone Loves You Honey.jpg

ジャマイカン・ラヴァーズの女王、JCロッジの1STアルバム収録曲。オリジナルはカントリーの Charley Pride(YOU TUBE) の78年のヒット曲。カントリーの平和で温厚で牧歌的な雰囲気はレゲエと相性が良く、この曲も将にそんな相性の良さが生きた名曲。原曲も悪くはないですが、リズムに意識的な音楽ファンならばやはりこっちのカバーでしょう。

ジャマイカの明るい陽射しをいっぱいに受けたトラックは、活き活きとした躍動感に満ちて実にしなやか。派手さは無いけど、クセの無いJCロッジの歌声などで誰にでも愛される曲に仕上がっています。 こちら のJCロッジのホームページで完全試聴が出来ます。(当該ジャケをクリック)

また、シングルの 「JUNE LODGE & PRINCE MOHAMMED / SOMEONE LOVES YOU HONEY」(YOU TUBE) は、軽く明るいDJも入ってより楽しめる内容です。
明るく元気 テンション 高揚感 乾燥感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(牧歌的雰囲気) ラヴァーズ偏差値合計
7
6 8 8 7 9 8 8 5 66





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