黄昏の少女と人形

黄昏の少女と人形

其の二



ふと、恐怖した。
僕にはかけがえのないものがあった。
しかしそれは、既に失われてしまった。
それは、確かに悲劇だろう。辛い事だ。
だけど、本当の悲劇を今さっき思い知った。
その時は、もう絶望して生きていることすら厭になったけど。
今はああ、そんなこともあったな、と思い出すまで。
すっかり忘れていたのだ。
あの子の何処に惹かれていたのか。
あの子の何を愛していたのか。
笑顔か。
声か。
それともその存在全てか。
客観的な事実としては、記録に残っている。
ただ、それが既に鮮明な記憶ではなくて、
単純なデータとしての記憶でしかないという事が、
たまらなく恐ろしくなったのだ。


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