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2024年06月17日
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カテゴリ: 読んだ本


枕草子第百三十六段までを読んだ。だいたい真ん中あたりなので、感想を書いてみる。
大きな部分を占める宮中生活の回想については、時系列に関係なく並べられており、しかも背景の政変などについてはほとんど記述されていない。そのため、ただ読んでいると楽しいことを思いつくままに書いたように見えるのだが、実際には道隆健在の頃の栄華の絶頂期から関白家の没落というように定子サロンをとりまく状況は激変している。栄花物語には関白家没落の後にも、並みの女房よりも面白い清少納言の相手をするのを楽しみに多くの男達が集まっていたという記述があったと思う。落ち目の関白家であっても、清少納言は必死にサロンをもりたてていたのだろう。百人一首でも有名な鳥のそら音の歌のやりとりも、この時期のことである。
前半を読んだ中で印象的なものは雪の山の挿話である。定子のなくなる二年か三年前で、既に関白家は没落している時期のことである。雪が降った後で、大きな雪の山を作り、その雪の山がいつまで残るかについて定子と清少納言との間で賭けをした。ところがこの雪の山の庭に乞食の尼が侵入し、仏前の供物の残りをねだる。卑猥な歌を歌って舞うので、女房達はいつしかその歌詞にちなんで常陸介というあだ名をつける。権勢のある時期であれば、そんな乞食の侵入は考えられなかったであろう。また、この尼乞食というのは、本当に庶民だったのだろうか。この時代、出家というのは一定以上の階層に限られていたであろうし、貴族の女性であっても、しっかりした後見がなければ、小野小町の落剝伝説にあるように、困窮し流浪する可能性もあった。今昔物語には宮女が乞食同然で窮死する話もある。尼乞食の常陸介は道化として登場しているが、女房達の目にはもしかして明日の我が身かもしれぬという感があったのかもしれない。
雪の山は結局は定子が賭けに負けるのがいやさに壊したという話になっており、これをそのまま読むと、単に定子が子供っぽい所業をしただけのことになる。しかし、そうではないだろう。雪山が壊れているのを見て清少納言がくやしがったということが書かれており、彼女自身も自ら道化役をやることで、サロンの雰囲気を明るくしようとしたのではないか。もちろんそれは定子も承知の上である。
楽しく面白いことばかりを書いているようにみえる枕草子も、関白家が、政争に敗れ、没落していく背景を考えて読むと、どことなく物悲しい。
ところで関白家の没落の決定的な要因となった長徳の変なのだが、ネットで見るとやはり道長の陰謀説がある。伊周と隆家が花山上皇に弓を射たという事件なのだが、秀才の誉れ高い伊周がこんな所業を主導するとも思えない。もしかしたら、伊周追い落としのために、道長と隆家が通じていたという可能性もあるのではないか。兄弟と言えども利害は同じではない。そして、その後を見ても、実際に弓を射たという隆家の処分の方が軽くなっている。





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最終更新日  2024年06月17日 17時41分13秒
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Re:「枕草子」(上)を読んで(06/17)  
・曙光 さん
>伊周と隆家が花山上皇に弓を射たという事件なのだが、秀才の誉れ高い伊周がこんな所業を主導するとも思えない。

花山天皇に弓を射たと言う長徳の変、道兼による花山天皇落飾の寛和の変、この辺りは「光る君へ」で結構丁寧に描かれていて現在進行中ですね。好色と言われた花山天皇には本郷奏多がいい味出していてはまり役でした。

又、「光る君へ」で道長を物語の縦軸とした場合、横軸になる女性主人公は、中宮定子に仕えた清少納言ではなく、藤原為時の娘である紫式部とした方が物語の展開が広く豊かになるという事でしょう。
岸谷五朗(式部の父である為時)と佐々木蔵之介(式部の夫となる宣孝)が、いい味を出していました。

前回、宣孝のまひろへの求婚シーンは30代の視聴者には、堪(こた)えられなかったでしょう。
此処で、史実は宣孝は越前に行っていないなどと水を差す人あれば、揚げ足取りの野暮というものでしょう。
(2024年06月17日 19時19分15秒)

Re[1]:「枕草子」(上)を読んで(06/17)  
七詩  さん
・曙光さんへ
「光る君へ」では道長はいい人でなければならないので、長徳の変の黒幕にはできないでしょう。でも、あれって道長が一番怪しいように思っています。伊周は大河ではわがままで世間知らずのように描かれていますが、枕草子では定子ともども学才、美貌ともに優れた人物として描かれています。 (2024年06月17日 22時21分59秒)

清少納言こそ現代女性に受ける人物ですね  
鳩ポッポ9098 さん
>栄花物語には関白家没落の後にも、並みの女房よりも面白い清少納言の相手をするのを楽しみに多くの男達が集まっていたという記述があったと思う。

ありますね。史料に残る清少納言は、男好きする性格であり、又、惜しみなく機知を披露するタイプですから、そういうところが、コミュ障で根暗な紫式部には、滅茶苦茶ムカついたのでしょう。

>尼乞食の常陸介は道化として登場しているが、女房達の目にはもしかして明日の我が身かもしれぬという感があったのかもしれない。

言われてみれば、仰るとおりですね。しかし、存外女達も楽しんで見ているのが、なんとも牧歌的です。

>雪の山は結局は定子が賭けに負けるのがいやさに壊したという話になっており、これをそのまま読むと、単に定子が子供っぽい所業をしただけのことになる。しかし、そうではないだろう。雪山が壊れているのを見て清少納言がくやしがったということが書かれており、彼女自身も自ら道化役をやることで、サロンの雰囲気を明るくしようとしたのではないか。もちろんそれは定子も承知の上である。

どう考えてもそうでしょう。清少納言は、才気あり先々行動するタイプですから、武士が目上の者に囲碁や将棋で手心を加えるのと同じ様に、道化を演じて場を盛り上げようとしている、そんな情景ですね。

>楽しく面白いことばかりを書いているようにみえる枕草子も、関白家が、政争に敗れ、没落していく背景を考えて読むと、どことなく物悲しい。

ええ、だからこそ今回の大河は清少納言メインのほうが良かったと思うんですね。暗い現実の中で、明るく生きようという、独立志向と機知に富んだ女性の目線で当時の世相を描けば、晩年に史料の上でフェードアウトしていく彼女の人生に、思い切り創作の筆を振るえたと思いますよ。

>ところで関白家の没落の決定的な要因となった長徳の変なのだが、ネットで見るとやはり道長の陰謀説がある。

まあ、陰謀というかどうかは別にして、事件を利用したのは間違いない。事件の当事者は、両者とも外聞を憚って穏便に済ませようとしたのを、問題化して大事にしたのは道長ですから。

>もしかしたら、伊周追い落としのために、道長と隆家が通じていたという可能性もあるのではないか。

いや、それはないでしょうね。長徳の変以前にも、道長と隆家は従者同士が喧嘩したり、道長側の従者が斬られたりと、むしろ隆家との方に争いの火種があったわけですよ。無論、政治力が乏しいくせに細かい事に拘る性格の伊周は、豪胆なタイプの道長とは全く性格が合わなかったので、廷内でも激しい口論をしていた事は史料に残っていますが、後の隆家の行動に対する道長の執拗なまでの政治的警戒を見るにつけ、むしろ隆家こそ道長が最もライバル視していた男だと思います。

まあ、「天下のさがな者」の名を残し、後に刀伊の入寇の際には、中央出身貴族でありながら、ほぼ独力で地元の武士を纏め上げて撃退した傾奇者ですし、周りの人間に対する辛辣な人物評で有名な藤原実資からも好かれていたようですから、一筋縄ではいかないというのは、道長にもよく分かっていたのでしょう。 (2024年06月17日 22時41分17秒)

Re:清少納言こそ現代女性に受ける人物ですね(06/17)  
七詩  さん
鳩ポッポ9098さんへ
どうもありがとうございます。
伊周は学才豊かな母親に似て、隆家は政治力や人望に富む父に似たのかもしれません。枕草子でべた褒めされているのは伊周ですが、道長にすれば警戒すべきは隆家だったというのはそうかもしれません。
それにしても長徳の変はやはりなにか裏がありそうですね。
清少納言と定子のドラマは面白そうですが一年となると冗長になるので、せいぜいが映画か単発ドラマの方がよいかもしれません。枕草子には当時の貴族も多くでてきますが、関白家没落後は道長方について冷淡になった人もいればそうではない人もいたでしょうから、どうしても道長方について貴族については筆が辛くなっているのでしょう。紫式部の従兄弟は字がきたない、夫は参詣の時にド派手な服装だったなどと書いてあるので、紫式部日記では清少納言の悪口を書いたのかもしれません。 (2024年06月18日 07時34分30秒)

Re:「枕草子」(上)を読んで(06/17)  
・曙光 さん
>清少納言と定子のドラマは面白そうですが一年となると冗長になるので、せいぜいが映画か単発ドラマの方がよいかもしれません。

「源氏物語」の流麗絵巻を今に翻らせ、「平安時代の権力闘争」を描こうとすれば、道長は縦軸の主人公として外せず、又横軸の主人公となるのは、清少納言では有り得ず、紫式部となるは必然でしょう。

清少納言と定子との強い信頼関係は生涯不変ですが、定子と道長は政敵関係にありました。一方紫式部は道長の長女彰子の女房として仕え、道長の長きに亘る支援のもとに源氏物語を完成させました。

歴史上の人物、まして1千年以上も前の人物が、実際に陽であったか陰であったか、将又実際の性格など誰にもわからない事です。書いた内容が明るくても実際に会えば暗い人、逆に書いた内容が暗くても実際に会えば明るい人など、今も昔も幾らでもいる事です。
例えば信長を家康を陽の人,或は陰の人と、その足跡、功績を別にして、如何様にでもドラマとして書く事ができるのと同様です。

何れにしても、「道長」と「源氏物語」の両方を際立たせる「光る君へ」のタイトルは絶妙でした。
そして道長と式部を通じて余り着目されることの為かった、世界、日本の至宝「源氏物語」を世間に大きく知らしめ、平均総合視聴率で約18%の予想以上の高視聴率を叩き出した「光る君へ」は、大河の新機軸への挑戦としては価値があったものと言えるでしょう。

蛇足ながら清少納言の百人一首にある「夜をこめて鳥の空音ははかるとも よに逢阪の関はゆるさじ」は当意即妙ながら、中国の故事函谷関の話を引用し、年少ながら憎からず思っていた行成(「光る君へ」では渡辺大地)への思いを告げる秀句ですね。

「百人一首」の紫式部は「めぐり逢いて見しやそれともわかぬ間に 雲隠れにし夜半の月かな」ですね。道長を偲んでという可能性は少ないでしょうけれど、月が雲に隠れるまでの めぐり逢いとは、これまた秀句です。

(2024年06月18日 11時56分26秒)

Re[1]:「枕草子」(上)を読んで(06/17)  
七詩  さん
・曙光さんへ
紫式部は母娘で、清少納言は祖父、父、娘で百人一首に入っていますね。
清少納言は和歌の名歌出身ということだったので、そのプレッシャーが大変だったようで、和歌は上手くないので…みたいなことを書いています。
それでももちろん水準以上ですので、よくできた歌が人に伝えられないのははりあいがないといいます。
わかります。
たしかに平安時代の政争も含めて一年間もたせるのなら道長と紫式部なのでしょう。

(2024年06月18日 21時28分05秒)

いや、オールドファンを取り込むなら清少納言でしょう。  
鳩ポッポ9098 さん
>それにしても長徳の変はやはりなにか裏がありそうですね。

被害が小さく、事件の当事者が両者とも醜聞を恐れて沈静化しようとしていたにも関わらず、伊周・隆家以外にも多くの者が連座で処罰されているので、変という呼称が仕様されているのですね。

>清少納言と定子のドラマは面白そうですが一年となると冗長になるので、せいぜいが映画か単発ドラマの方がよいかもしれません。

そうでしょうか?

現代の若い女性からすれば、2度の結婚歴・貴公子達との疑似恋愛・歯に衣着せぬ物言い・他人の悪口だけでなく、自分の不得手やコンプレクスも正直に言うといった勝気で闊達、正直な清少納言の特徴は、おそらく何がしたいのか分からんテーマ性の欠如した恋愛ドラマよりヒロインの独立性が輝いて、格好良く見えますし、一方で、時代の流れに翻弄された中でも最後まで定子を友情と忠誠心で支え続け、彼女の死後に枕草子を完成させ、道長の世になるとも定子の名を歴史に残した功績、そして二君にまみえず潔く引退したきっぷの良さは、オールドファンを満足させるに足りる内容となる事でしょう。

そして、引退後については不明点が多く、作家の筆を思い切りふるえる構成上のメリットもあります。外野から見た朝廷や世相に視点を移す事で、マンネリを避ける事もできます。

一方で、紫式部に関しては、分析眼が優れていたのは認められますが、一方で極めて陰湿で内向的な性格であったのは明白で、日記のみならず詠んでいる歌も、現代の我々からすると、かなり高慢な印象を受けるものがあります。

それに、彰子に給仕していたとはいえ、源氏物語を書いた以外は、大した事績もなく、遅くとも1020年頃には死んでいるので、これからも、例によってテーマ性のないファンタジーで延々とつないでいくしかないでしょうよ。夫の死から、どうやって源氏物語へ繋げていくか、その論理構成だけ見れば、もうそこから先は、個人的には見るに値しないと思います。 (2024年06月20日 20時24分38秒)

Re:いや、オールドファンを取り込むなら清少納言でしょう。(06/17)  
七詩  さん
鳩ポッポ9098さんへ

物語では主人公が何を目指していて何をやりたいのか…それがはっとしてわかりやすい。としてわかりやすい。もちろんその目指しているものが共感できるものであることは必要ですけど。清少納言は没落していく関白家の姫を支え続けたという意味でわかりやすいと思います。枕草子が延々と時代を超えて読み継がれてきた背景もそうした共感があったと思いますし、そしてやはり「清少納言」と呼ばれた作者に好感がもてるのですね。
(2024年06月21日 07時36分49秒)

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