医療用医薬品 0
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TAS-118はS-1にロイコボリンを配合した薬剤です。S-1はフトラフール(5-FUのプロドラッグ)に5-FUの分解阻害剤、5-FUの消化管における活性化阻害剤を併用したものです。ロイコボリンは5-FUが殺細胞効果を発する際に必要な化合物ですから、5-FUが制癌作用を発揮するために必要な化合物を全て配合した薬剤と言えます。ちなみに5-FUの消化管における活性化阻害剤は腸管や口内で5-FUが殺細胞効果を示して、下痢や口内炎の発現を抑制する化合物です。もともとはアロプリノールが5-FUの口内炎を抑制することから発想して化合物を最適化したものです。今はまだ発売されていませんが、胃癌に対する第Ⅲ相試験は終了しています。結果は全生存率の中央値のS-1よりも統計学的に有意な延長が見られていますが、副作用は下痢と口内炎が増えていると言うことです(SOLAR試験)。こうなると5-FUの消化管における活性化阻害剤の量がS-1と同じでいいのかという問題が発生します。5-FUの消化管における活性化阻害剤の作用がロイコボリンを配合することによって不足していると読めるからです。配合比を最適化するのは、現在検討されているような2剤併用を単剤にするだけの併用剤とは異なり、配合する成分が一つ増えるごとに最適化が必要になるという証拠の一つかと思います。実際問題としては、臨床的に配合比を決めることは第一相試験で行うことになります。主要評価項目を下痢、口内炎において、5-FUの消化管における活性化阻害剤の量を変化させて見ると言うことになりますが、これは発生率の絶対値を考えるとかなりの例数が必要になると思われます。実現性は低そうですね。これはやはり、5-FUと5-FUの分解阻害剤を一つの化合物として、5-FUの消化管における活性化阻害剤とロイコボリンを配合する事によって、配合比の検討数を減らすことがいいのかもしれません。参考Abstract LBA-003A phase III study of TAS-118 plus Oxaliplatin versus S-1 plus Cisplatin as first-line chemotherapy in patients with advanced gastric cancer (SOLAR study). / Yoon-Koo Kang, et al.https://www.oncotribune.com/report/esmo-gi2019/lba003.html(日本語の学会速報)
2020年09月14日
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日刊現代の「海外の医者は処方しないのに、日本の医者がなぜかよく出す「薬」一覧 日本人は世界一の「薬依存」!?」という記事は表面的な理解で記載されているので、反論します。「日本人は風邪で医者にかかっても、とにかく薬をもらいたがる傾向があります。これが実は大きな問題なのです」こう語るのは、日米の医療システムに詳しい医師でミシガン大学教授(家庭医学)のマイケル・フェターズ氏だ。これはかぜ薬に抗生物質が処方されることに対して文句を言っている部分の根拠です。確かに問題にはなっていましたが、伊勢志摩サミットで耐性菌の問題がトピックとして挙げられ、今後は動物用抗生物質まで規制していく方針で厚生労働省は動いています。(動物の抗生物質使用に対して国の規制を考えているのは日本だけです。「熱冷ましでロキソニンやボルタレンが処方されていますが、胃潰瘍の原因になるほか、腎機能の低下で排尿困難になる可能性もあります。しかも、長く使い続けると心臓のリスクにもなるといわれているので、使い方には注意が必要です」胃潰瘍に対するリスクに対しては、プロトンポンプ阻害剤を併用することがアメリカの学会で標準治療としてあげられたことから、アスピリンで(他の用途で長期利用する場合が多い)さえ、プロトンポンプ阻害剤の併用が保険適用されています。しかし、胃潰瘍の原因になるリスクはどれぐらいあるのでしょうか。300人に5人ぐらいでプロトンポンプ阻害剤併用するとそれが300人に1人(記憶で書いているので間違いがあるかもしれません©稲田朋美防衛省大臣)とリスクを80%減少しますが、少なくとも295人の人には不要の薬です。医療経済学的な観点から欧州で使われていません。胃潰瘍の治療の第一選択肢はプロトンポンプ阻害剤なので、本当に併用する価値があるかどうかは私は疑問を持っています。「抗がん剤にTS1という飲み薬があります。これが今でも飲まれているのは日本とロシアだけです。これは5FUという'50年代に開発された最も古いタイプの抗ガン剤を、注射薬から経口薬に変えただけのもの。TS1は殺細胞剤とも言われていて、がん細胞だけでなく、それを攻撃するべき免疫細胞まで弱らせてしまいます。TS1でがんの再発予防ができる可能性は)ほとんどありません。日本ではがん治療における免疫の大切さがまだまだ理解されていないのです」(新日本橋石井クリニックの石井光院長)経口の5FUからUFTそしてTS-1に関しては日本発の制癌剤です。日本の腫瘍専門医は免疫の大切さを理解していないとおっしゃっていますが、本当にそう思うなら、日本癌学会や日本臨床腫瘍学会できちんと発言していただきたいものです。また、アメリカでもロシュの5FU系経口薬が販売されており、ファーストラインあるいは術後補助療法(再発防止)に関してエビデンスが存在します。TS-1の前の世代であるUFTという薬剤の評価はFDAで意見が割れて承認されませんでした。しかし、アメリカ以外の欧州では承認されています。最近はテーラーメードをめざして腫瘍の成長因子をターゲットにした薬剤が脚光を浴びていますが、その成長因子を持たない腫瘍を有している患者さんには殺細胞効果がある薬剤が使われています。免疫は攻撃と免疫チェックポイントによる攻撃中止により調節されていることが近年、日本発で発見されました。腫瘍細胞は免疫の攻撃を避けるために免疫チェックポイントと同様の仕組みで免疫を避けている可能性があり、オプジーボ点滴静注100mg 10mLという、高薬価で問題になった薬剤が発売されています。肺がんにたいして有効といわれていますが、臨床データをみれば、免疫療法(この免疫療法とは攻撃因子を患者に与えることです)。まず、オプジーボは肺がんに対して生存期間を2ヶ月ほど長くしましたが、2年生存した患者はいませんでした。これは既存の治療を受けた患者なので、オプジーボの臨床試験をした会社はファーストラインの肺がんに対する臨床試験を行いましたが、殺細胞役との殺細胞薬との比較試験で差を見いだすことができませんでした。オプジーボと同じような効果を示す薬剤を持っている会社はPD-1が発現している腫瘍のみの臨床試験を行った結果、殺細胞薬に対して有意な効果を示し、長期生存例も見られました。直接の比較ではないので、厚生労働省は優位性を認めず、PD-1の発現している患者のみにい縛ることになりました。オプジーボも同様な縛りが必要と考えますが、今のところ添付文書は変更されていません。(審査報告書では高発現は10%もなく、測定方法が確立していないということで逃げていました。)上記のデータから推測されることは、免疫療法が効果があるのは免疫チェックポイントを活性化させることができる腫瘍だけだだということです。(あくまで仮説ですが)腫瘍は最初に発現したときから、免疫にさらされ、ほとんどがアポトーシス(細胞死)しているという考えもあります。その中で、免疫に対する耐性を持った腫瘍のみが大きくなって疾病としてのがんとなるという説が免疫チェックポイントをターゲットとした薬剤の臨床効果から推測されます。年齢を重ねることにより、免疫の力が落ちてきたので、腫瘍細胞が生き延びる可能性が高まり、がんという疾病が成立している説も、ある年齢からがんが急激に増えることから否定はできません。そのため、免疫を強化することによりがんの治療ができる可能性は否定しませんが、いままで、エビデンスレベルが低いので、おすすめできない状態です。年齢に関しては、腫瘍細胞は遺伝子のミスコピーから発生する説に乗れば、免疫は関係なく、腫瘍細胞の発生量が増えて、免疫をくぐり抜ける方法を身につけた細胞ががんという疾病になるという仮説も成り立ちます。精神病薬に関してはよく知らないので、反論しないでおきます。
2017年05月30日
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両者の小細胞肺がんに対するファーストラインのTaxanを対象にしたDBTのデータが公表されました。全く同じ作用機序であるのに、オブジーボは対象に有意さなしで、キイトルーダは有意に生存期間を延長し、2年後の生存率も対象を上回りました。この差は一体なんでしょうか。対象患者の選択に違いがあるので、薬効の差によるものでは無いと思います。キイトルーダはオブジーボの試験結果と各国による問題点の指摘を検討した上で適格条件を決めたと思われます。私は日本の厚生労働省の審査報告書しか見ていないのですが、「10%以上のPD-1陽性のがん患者で明らかに効果の上昇が全体としての有意差をつけているのではないか」という厚生労働省の質問に対して、製薬メーカー側は今後の検討課題とするとして逃げています。(PD-1陽性10%の制限をつけたくなかったのでしょう)。しかし、キイトルーダは適格条件としてPD-1の陽性率が10%以上と適格条件に入れました。また、オブジーボの生存曲線では2年の生存率が0となっていました。そこでキイトルーダは二次評価項目として2年間の生存率をあげ、そこも評価しました。オプジーボとキイトルーダの二重盲検比較試験や他の非小細胞がんの化学療法の第1選択薬のDBTのデータが出て総括しなければエビデンスはBでキイトルーダは推奨に足るでオブジーボは非小細胞肺癌の第一選択には推奨されなくなります。この二つの薬は確かに新しい薬剤ではありますが、マスコミで言われるような画期的な効果を持つものとの評価は行きすぎであるというと思います。薬価を引き下げるよりも、今後使うためにはがん生検にによって得られたサンプルのPD-1発現量が10% 以上である事をオプジーボの添付文書に記載する必要があります。副作用は比較的早期に添付文書に記載されますが、効果の縛りに関しては年1の報告書によって変更が行われることが多くなっています。早急に変更すべきです。これは厚生労働省の判断だけでいけると思うのですが。
2016年11月13日
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塩崎恭久厚生労働相は6日の参院予算委員会で、優れた効果はあるものの、極めて価格の高い新型がん治療薬「オプジーボ」について、欧米での販売価格が日本の半値以下であることを明らかにした。共産党の小池晃氏への答弁。ここで小池氏に突っ込んでもらいたかった。薬価算定方式により比較的高薬価のつく米国でも日本の半額、医療経済を加味しているEUでは日本の4分の1という答弁に関して、何が違うのかを質問して欲しかった。米国の薬価はいわゆる保険会社の言い値で、単純に日本の2倍が保険会社から支払われることから、優秀な薬は日本の倍以上の価格がつきます。かつては肝性脳症からの意識を取り戻す輸液(アミノ酸の配合が特殊:分岐鎖アミノ酸の配合量が多い)に2万円の薬価がついたことがあります。日本では単なるアミノ酸輸液の配合変化で1000円ぐらいだったと記憶しています。何度もこのブログで書いていますが、オブジーボはそれほど優れた効果を持っているわけではないと海外では判断していることの傍証になるのではないでしょうか。日本において高薬価になった理由に関して検証する必要があると思います。財務省の保険財政に影響を与えるから下げるというのは、科学的でも何でもない暴言である都考えます。
2016年10月13日
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