■FACEBOOKやこのブログで書いてきたNHKの番組『72hours』。いよいよ今年も年間リクエスト1位が発表になるそうです。放送は12月28日23:20~。この番組は人々が行き交う街角に3日間カメラをすえて、ただただカメラをまわし続けるだけの、ごく単純な構成。でもひとたびマイクを向けると、市井の人たちの抱える様々事情や困難が垣間見えてきます。それは見る人の想像をはるかに超えていて、とにかく面白いし実に「金言」が多い。偉人の残した名言もいいですが、同時代に生きる市井の先輩たちの言葉もまた珠玉です。
■はてさて、今年の1位は何でしょうか? いまから楽しみなんですが、ボクは「定年後の男の生きざま」というか、そういったニッチなことに興味があるので、『閉館する老舗のボウリング場』を1位に推したいですね。定年男とボウリング場は一見何の関係もないように見えますが、実は大ありなんです。
職場を引退して社会的な役割を失うと、どうやら人は「いま自分が生きている証」や「自分が生きていく新たな目標」を求めるようで、番組に登場した人たちは、自らの証や目標を再確認するためにボウリング場に通っていました。
きっと制作スタッフもそんなことは予想していなかったかも。意外な場所で意外な人の意外な事情を聞く、その醍醐味がこの回には端的に表れていたように思います。実は今から8年ほど前、定年した元サラリーマンたちの話を聞いてまわっていた頃、「オレがこの世に生きてきたという爪痕を、なんとか残したいんだよ!」と。そんな隠れた思いを話してくれたAさんを思い出す回でした。
場所は、新宿・歌舞伎町にある「ミラノボウル」。まもなく閉館することが決まっていますが、ここにカメラを据え、そしてプレーする人々にマイクを向けました。かつてボウリング場は仲間たちと集団でわいわいプレーするところでしたが、今はそうとも限らないようで。一人でやってきては黙々とボールを転がす人も少なからずいます。
まず、そんな一人にマイクを向けました。
(62歳・男性・無職)
高校卒業後、40年間働いてきた企業を突然リストラされ、ここ5年間は無職のまま。生活は厳しいけれど、週2回と決めたボウリング場通いはなんとか続けているという。なぜボウリングを続けているのですか?の問いに、
「偉そうなことを言うつもりはないけれど、ボウリングをやっていて、自分も一緒に成長できるかなと思っています」。
その意味するところは、たとえストライクがとれなくても、スペアで挽回できることもある。それは即ち、コツコツ頑張っていれば、必ず結果がついてくると信じているから今までやってきたと。
「なかなか人生もこれでいいって完璧というものはないですからね。だから、自分は満足というか、幸せなほうだと思いますよ」と話し、笑顔でボウリング場を後にしました。
「幸せなほう」という言葉は、決して誇張に聞こえませんでした。自分は何らかの人生の目標をもってきっちりと生きている。その点において、自分は幸せなほうなんだと。そう理解しました。
そしてあくる朝、またも一人で黙々とボウルを投げる年配男性にマイクを向けました。
(64歳・男性・コインロッカー管理)
大粒の汗をかいて必死の形相でボウルを投げ続けています。聞けば糖尿病を患い、通院後には必ずこのボウリング場に立ち寄り、汗を流すそう。
「ストレス解消なんですよ。糖尿病はストレスが悪さをするので、ストレスをためちゃだめなんですよ」。なぜボウリングを続けるのか。理由は他にもありました。それは60歳を超え、自分がまだ頑張れるのか、それを確かめる手段がボウリングなのだと。
「自分がまだ頑張れるか」。一定の年齢に達すると、皆に共通する思い、不安なんですよ、きっと。
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