星の海と月の港

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それは週末の渋谷から郊外に向かう私鉄電車の中のことだった。

もう終電に近い車内は満遍なく混雑し、酔客も少なくなく、吊革につかまりながら舟をこいでいるサラリーマンの姿はいつもの風景。

それだけ混んでいても車内は意外と静かなもので、時折誰かが咳をする音、小さな声で会話する声が遠くから聞こえる程度で、普通ならばそれほど、気になるものではないのが日常。

しかし、時として場をわきまえず大きな声で会話をする人がいるのも仕方のないこと。

ドア付近の吊革につかまって立っている私の前に座っている男女も始めはそんな程度であった。見たところ50代始めのカップルで、互いに敬語を使っていることから夫婦ではないことは明らか。
男のほうが大きな声で、会話の内容はとるにたらないもので、気になるものではなかったが、少々うるさいなと思える程度。

そこへ起こった事件。。。

私の左側にドアにもたれて舟を漕いでいたこれも中年のいわゆる少しくたびれたサラリーマン風で、よれよれの背広姿。
電車が急発進したときに、まさに宙を飛んで、私とその中年男女の間に見事に転倒。

その転倒はまさに見事で、仰向けに完全に伸びた姿勢で、ただ仰天しているその表情が天を向く。

私も仰天したものの、これは本人にとってはまさに驚天動地のことだろう。怪我までしてやいないかと気になるのが当然。
周りの客も何事が起こったかと男性に注目。

そんな時にかける言葉は、当然ながら、

「大丈夫ですか?」

のはず。。

ところがいの一番に発せられた言葉は、

「おい、おっさん、しっかりつかまっていなければだめじゃないか!」

発したのはその男女の男のほう。

その声に反応し、転倒したサラリーマンは見事な速さで立ち上がり、「すいません!」と一声発し、元の場所に戻っていった。

さらにその男の会話は女と続く。

「最近のサラリーマンって奴はかっこつけて吊革につかまらないのが多いんだよな。社会で何かにつかまっていなければ生きていけないのだから、吊革くらいしっかり握ってなきゃどうすんだよ。。」
とげらげら笑いながら、隣の女性に話し、そんな話題が延々と続く。。

そしてその声は当然、倒れた男性の耳にも届くはず。

私を含め周りにいる客の顔が皆、引きつっているのが感じられ、私の隣に立っていた若い女性は本を読みながら、明らかに軽蔑の表情を浮かべるほどに。。

そうさ、
誰もが何かにつかまって必死で生きている。

だけど時には転ぶことだってあり、そんな時に差し伸べられる手はとっても暖かいもの。。

あなたは転ばないのですか?
そういうあなたこそ、転んだときに誰かの助けを必死で求めるのではないのですか?

そして、
ご一緒されている女性がうなずいて笑っているのを見て、さらにやるせない気持ちとなり。。

私は見ていたのだ。

その転倒した男性は、彼の前に無造作に、無遠慮に放り出された若者の大きな荷物に足をとられ、どうにもならなかったことを。。

依然として続くその男性の自論に耐え切れず、私は次の駅で車両を変えざるをえず。

やがて再び動き出す車両。

吊革につかまり、舟を漕ぐ男たちがゆらりゆらり。。





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Last updated  2009.11.02 23:15:57
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ひろ@ Re[1]:入院初体験(03/09) ありがとうございます。 昨日最終検診で…
久しぶりです^^@ Re:入院初体験(03/09) 久しぶりにブログ拝見させていただきまし…
竹島愛@ Re:日本が大好きだからこそ(06/02) 日本大好きです。日本に生まれたことに感…
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