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2017.10.06
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カテゴリ: 探訪 [再録]
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「湖のテラス」からまずは西浜の浜辺を進みます。ここは「湖の辺の道」のルートです。 花々や猫が迎えてくれました。
 この西浜の浜辺は、 タチスズシロソウ生育地が散在し、琵琶湖岸では有数の規模を誇る群生地 だといいます。手許の小図鑑には載っていないので、調べてみますと、アブラナ科の植物で、4~5月に白い花が咲くそうです (資料1) なんと絶滅危惧植物になりつつあると言います。


浜辺をさらに進んで行くと、幅の狭い河口に到達。

ここに、 「近江湖の辺の道」の道標 が建てられています。ここを左折して道路の方に進むと、

「海津・西浜石積み最終地点」 でした。
今回はこの最終地点を起点にして、湖岸沿いの街道を北東方向に石積み景観を眺めながら進んで行きます。


西浜村で石積みが建造されたのは江戸時代中期(1688~1704) のことで、『西浜区有文書』中の「江州高嶋郡西浜村普請所明細帳」(延享2年5月)に、「元禄15年(1702)にたびたび大波があったことから、甲府領代官の西与一左衛門に普請を誓願し、翌年に普請費用の下付が認められた」ことが記されているそうです。このとき完成した石積みは、 全長500m、高さ2.7m、根台2.7m、上面の幅約2.7mの規模 だったのです。西浜村は後に甲府領から郡山藩領に変わったそうですが、この石積みは、領主が費用負担する 「御普請場」 として修復が続けられたといいます。 (資料2)(地図の番号3のところ)



辻子(ヅシ)
湖岸に沿って集落が形成され、マチ通りとして道路が背骨のように通っています。それが西近江路であり北国海道です。それに対し、 琵琶湖に向かって、2~3棟おきに街道と浜を、あるいは街道と裏道を結ぶ のが 「辻子」といわれる通路 です。それは港町として荷物の積み下ろしのための重要な通路だったのです。今では水辺に手軽にアプローチできる通路、薄暗いツジの先に琵琶湖の変化を眺められる空間の役割りの方が大きいという感じです。


街道沿いに、上記の「西与一左衛門の碑」説明板が建てられています。
街道を歩いてみて気づいたのは浄土真宗のお寺が多いことです。

最初に目にしたのが 「蓮光寺」 (真宗大谷派)です。

                 その先に、湖岸に向かう幅の広い道路へ

進行方向右側の石積みがまさに頑丈そうな石垣です。

左方向に道がカーブしていますが、ここが 「海津漁港」 です。 (地図の番号4のところ)
琵琶湖総合開発の一環として整備工事がなされ、昭和59年(1984)に完成。事前の発掘調査が行われた折に、 12~13世紀の遺物が多く出ている そうです。遺構は発見できなかったとか。出土した土器は「畿内と北陸を結ぶ重要な地点として機能していた当地の特性を示すものとして評価されます」 (資料2) 「西浜遺跡」 でもあります。
漁港入口に昭和13年(1938)建造の「海津漁港共同組合旧倉庫」(2階建土蔵)が存在し、水辺景観の構成要素になっています。




           西栄寺 (真宗大谷派)。鐘楼の透かし彫りは見応えがあります。


石積みが続きます。その先に 誓行寺 があり、ここも真宗大谷派です。


その先に、 「近江湖の辺の道」道標と「海津浜の石積」説明板 があります。
この地点から海津大崎には2.5km、JRマキノ駅には1.5kmです。「中部北陸自然歩道」の表示も 出ていることに気づきました。道標横の石積みの説明板はこの画像の説明よりもっと簡略に記したもの。
西浜から海津浜へと入ってきたあたりということになるのでしょう。


                  すぐ前に漁港の見える石積み地点


福善寺 (真宗大谷派)というお寺もあります。


湖側には 「海津迎賓館」の表札の掛けられた建物 が・・・・。

  門前のこれも狛犬? いかめしい面構えです。
門番代わりの獅子像一対というところです。ネット検索してみると、今は民間企業が所有する建物でした。この表札は単なる私的名称ということ・・・・なのでしょうね。この建物自体について、その会社のページには 「旧井花御殿」 と付記されています。

そこで調べてみると、 もとの所有は井花伊兵衛という人物に関係するようです 。彼は幕末~明治時代の実業家(1822~1907)。1854年に生地近くのこの海津村で肥料用石灰の製造を始めたのだとか。
海津東浜が江戸時代に琵琶湖を湖上交通路とし、北陸と近畿を結ぶ重要な港として栄えたことには先に触れています。



この建物から少し先のところに「旧海津港跡」の説明板がありました。これで結びつきます。

入手情報から少し推測を加えますと、明治維新となり、未だ廃藩置県(1871)が確立していない段階で、郡山藩の許可を受け、 船舶用の蒸気機関を購入し、琵琶湖畔の何処かで蒸気船を建造した ということでしょう。 (資料3)

尚、大津-海津間には、明治2年(1869)3月に、大津付近を統治していた大聖寺藩が計画実行した琵琶 湖上はじめての汽船(蒸気船)「一番丸」 が就航しているようです。当時の県令・松田道之が蒸気船の建造を奨励したことが、郡山藩による大津-海津航路、つまり井花らの事業に繋がるようです。このような明治の草創期の動きが、「太湖汽船」の成立と終焉、さらに「琵琶湖汽船」成立への母体としてつながっていくようです。 (資料4)

テーマを外れるためでしょうが、配付資料に言及のない「海津迎賓館」という名称から、興味を抱き、脇道に大きくそれてしまいました。
本筋に戻りましょう。
 この建物の左側にもツジが設けられています。




この近くに二百余年の味の歴史があるとい う鮒寿しの老舗「魚治」 があります。
遠藤周作が友人たちとこの店に立ちより、すっかりこの店が気に入ったそうです。「部屋からすぐ見える澄んだ湖、湖の風景、何もかもが私の好みにあって」と狐狸庵先生は記しています (資料5) 。そしてここのご主人に頼まれるままに「湖里庵」という名前をこの料亭につけたのだと。

このお店の前で目にとまったのがこの 石標の文字「粟柄越」

中央分水嶺である高島トレイルの一部になりますが、 赤坂山から寒風の往還に通過する地点が「粟柄越」 のようです。 (資料6) またまた脇道に・・・。

この「魚治」さんのところで、少し休憩タイムがとられました。
今回は立ち寄れないけれどこの近くには 「宝憧院」 があると言う探訪ガイドさんの話。
水上勉の小説『湖笛』に出てくるお寺です。一度訪ねてみたかったお寺。ちょっと境内を眺めるだけでも・・・と、この時間を使って、急いで観にいきました。
次回はその寄り道からご紹介です。



つづく

参照資料
1) ​ タチスズシロソウ ​:「山散歩 花散歩 徒然想」
2)「重要文化的景観 高島市海津・西浜・知内の水辺景観をゆく」
  当日配布のレジュメ資料  主催:滋賀県教育委員会
3) ​ 伊花伊兵衛 ​ :「コトバンク」
4) ​ 太湖汽船 ​ :ウィキペディア
5) ​ 海津の湖里庵 ​ :「魚治」ホームページ
6) ​ 高島トレイル縦走 黒河峠~粟柄越 ​   :「高島旅行記」
 ​ マキノ高原~粟柄越~赤坂山~粟柄越~寒風~マキノ高原 ​  :「諏訪工房」

【 付記 】 
「遊心六中記」と題しブログを開設していた「eo blog」が2017.3.31で終了しました。
ある日、ある場所を探訪したときの記録です。私の記憶の引き出しを維持したいという目的でこちらに適宜再録を続けています。
再録を兼ねた探訪記等のご紹介です。再読して適宜修正加筆、再編集も加えています。
少しはお役に立つかも・・・・・。他の記録もご一読いただけるとうれしいです。

補遺
琵琶湖東岸における絶滅危惧植物タチスズシロソウ大群落の出現とその保全
    山口正樹・杉阪次郎・工藤 洋 共著 論文 
琵琶湖の海浜植物の起源と進化 ​  :「瀬戸口浩晶研究室」
タチスズシロソウ ​  :「野生植物写真館」
魚治 ​ ホームページ
京象牙 白宝 ​ ホームページ
琵琶湖汽船 ​ 公式ホームページ

   ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)

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Last updated  2017.10.07 15:44:48
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