全71件 (71件中 1-50件目)
!山田企画事務所ピンタレストーすべてyoutube動画にリンクしてます!漫画の描き方 も掲載してます。 日本の美景写真集http://www.pinterest.com/yamadakikaku/ http://www.pinterest.com/yamadakikaku/ 御覧ください
2020.02.15
山田企画事務所ペンネーム 飛鳥京香の小説コンテンツページ■山田企画事務所・飛鳥京香・小説集です。どうぞご覧ください!●YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと?https://ncode.syosetu.com/n1703dc/-----------------------------------------------●BK私の中の彼へー青き騎士ー異星の生命体《アイス》と人の戦争で、少女暗殺組織ローズバットの沙織は、共生装甲機体・零号を操る独立装甲歩兵・翔と恋に落ちる。沙織には過酷な運命が待っていた。彼女は人類を新たな旅へ導く。 https://ncode.syosetu.com/n5222dc/-----------------------------------------------●TC東京地下道1949■ 1949年日本トウキョウ。 太平洋戦争の日本敗戦により、日本はアメリカ軍とソビエト軍に、分割占領。生き残った少年少女はどう生きるのか。それからの過酷なる日本の運命は? https://ncode.syosetu.com/n1603de/-----------------------------------------------●TD「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」 故郷、神立山の伝説は、僕、日待明にあらたなる人生の選択を迫る。彼女は何者であったのか?私は地球人でなく観察者として地球の長い歴史に関与したことをしる。https://ncode.syosetu.com/n9669cz/-----------------------------------------------●RSロボサムライ駆ける■「霊戦争」後、機械と自然が調和、人間とロボットが共生。日本・東京島「徳川公国」のロボット侍、早乙女主水が 日本制服をたくらむゲルマン帝国ロセンデールの野望を挫く戦いの記録。https://ncode.syosetu.com/n2492db/-----------------------------------------------●KIアイランド■暗殺者の島■ かって存在したエルドラド、サンチェス島で、地球連邦軍暗殺チーム「レインツリー」に属する暗殺者2人の対決。https://ncode.syosetu.com/n3928db/-----------------------------------------------●YK夢王たちの饗宴--ドラッグウォーの跡でー(麻薬戦争の跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高のドリームマスター,夢王は、だれなのか? なぜ、この世界はできたのか? https://ncode.syosetu.com/n7285dc/-----------------------------------------------●CP封印惑星 封印された地球で情報収集端子であるユニーコーン・新機類は、天空の光矢を見る。 それは新地球の解放者、世界樹の出現する。予兆である。 https://ncode.syosetu.com/n1512de/-----------------------------------------------●AFアリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー宇宙連邦の監視機構の元で、腐敗惑星内で新生命トリニティが蘇生し、世界の秩序を変える動きが始まる。https://ncode.syosetu.com/n6825dd/-----------------------------------------------●KZガーディアンルポ03「洪水」 廃墟で、人類最後の生存者カインは地球滅亡を迎え。彼は生命形を変え自分から精強なる生物兵器に変貌、地球を再生し敵へ復讐を硬く誓う。 https://ncode.syosetu.com/n1503de-----------------------------------------------●UK宇宙から還りし王■初めて新宇宙への門「タンホイザーゲイト」から帰還した男ネイサンは、今、ゼルシア国自然保護区、ラシュモア山で王国を建設。みづから発する言葉で、人類を次の高みへと進化させようとする。https://ncode.syosetu.com/n1598de/-----------------------------------------------●RUN遙かなる絆-ランナー● 地球と月を結ぶ「ムーンウェイ」から話は始まる。連邦軍「サイボーグ公社」に属するロードランナー,ヘルム。マコトは超能力者。2人は月で人類外の野望を砕く、新世界の人類の出現が始まる。https://ncode.syosetu.com/n1867de/-----------------------------------------------●「支配者たち」(ハーモナイザー01)世界樹ハーモナイザーの支配する宇宙での、2人の宇宙飛行士の物語。これは現実か夢なのか「もちろん、あの人は私の夢の一部分よ。でも、私も、あの人の夢の一部なんだわ」https://ncode.syosetu.com/n1894de/-----------------------------------------------●「クアイアーボーイズ」地球は絶滅の縁にあり。敵ROW」は、生命体ミサイルを発射。意思を持つ「生物体機雷」が人類戦士として。敵とであった彼はいかに。https://ncode.syosetu.com/n0015da/-----------------------------------------------
2019.08.12
YouTube.com■山田企画事務所の3000種類のYouTube動画チャンネル山田企画事務所の動画整理■YouTube.com■チャンネルアドレスを短縮しました。3000種類の YouTube動画が入っております。ご覧ください。山田企画事務所のYouTube動画のチャンネルです。ーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/Ydd16m漫画の描き方 などのYouTube動画ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/CqyT9Q大阪・近江八幡・伝統的町並み風景などのYouTube動画ーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/5jomdsメカムシ教室(クラフトアート)京都・大阪風景などのYouTube動画ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/V3atM4近江八幡・兵庫県武田尾温泉・兵庫県伊丹市風景などのYouTube動画ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/8B7dCJ金沢城・松山城風景などのYouTube動画ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/zyNTfS滋賀県高島市。琵琶湖風景などのYouTube動画
2019.08.12
知り合いのフォボンピクチャーズ(西宮映像)の山本監督より。映画「MOVIES Mr.フキョー VS 映画たち」上映お知らせです。http://n-film.net http://n-film.net/movie.html6月16日(土)に●「OSシネマズ 神戸ハーバーランド」映画館「MOVIES Mr.フキョー VS 映画たち」が上映。●「OSシネマズ 神戸ハーバーランド」(※6月16日(土)●「スクリーン10」にて18時20分より上映)https://www.jollios.net/cgi-bin/pc/site/det.cgi?tsc=21120下記が上映の詳細。1月の宝塚上映から、再編集したバージョン。https://kobe-movie.doorkeeper.jp/events/75639●上映後にクリエイターの紹介コーナーがあり。事前チェックがありますが、映画製作をされている方は予告編を流して頂けます。若いクリエイターを応援し、クリエイターの交流の場にしたいということですので、映画製作者以外でもクリエイターさんであれば、短い時間ですがPRして頂きたいとのことです!●CG製作、パルクール、特殊メイク、イベント開催などクリエイターさんであれば大丈夫です。●今後、神戸国際映画祭を行うためのプレイベントです。●映画館の場所が神戸ポートタワーの近くにある●「umie(ウミエ)」●というショッピングモール内。「神戸ハーバーランドumie」http://umie.jp/
2018.06.10
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第5回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/779592/第5回ー最終回私が目をあけると、ヘリはすべて夜空から消えていた。残滓が飛び散っていた。滝は、滝であった生物は、緑色の光を櫛びた物質に変化していた。私は草原に腰をおろし、涙岩をながめていた。手になみだ石をにぎりしめていた。 リーラが私の側まで歩いてきた。 しばらくだまって私をながめていた。 「さっき、パスの転落の時助けてくれたのは君だね、リーラ」 「そう私。あの滝という人に来てほしくなかったのでパスを落としたの。バスの運転手も地球防衛機構の一員だった」 思わず、私たちはお互いを抱きあい、耳元で小さな声でささやいた。「きようならミユー」 そして、私は涙岩の方へかえっていくリーラに同じように小さい声でつぶやいた。「さようなら、リーラ」 さようならを言った時、リーラの目にも涙が浮んでいた。それは、私がいま手にしているなみだ石とよく似ていた。 リーラは罪人の私に最後の別れの機会をあたえてくれたのだった。もちろん規則違反だ。私という罪人に、本当の記憶をとりもどすきっかけをあたえ、私達の星への帰還をみかくらせるのは。 私は、彼女達の旅立ちを、最後まで見届けようと決心した。 彼女達、それからこの穢れた地球から逃れる人間達は、涙岩のまわりに整列した。涙岩がまた輝きを増し、緑の光が彼女達をとりかこむように、みえた。 やがて彼女リーラ達の体は、涙岩が発する緑の光の中でだんだん小さくなっていき、しまい脚は見えなくなっていった。光り輝く涙岩の表面に小さなひびがはいっていき、まもなく、ひびは、涙岩全体を覆った。緑色の光はオレンジ色に代わり、涙岩の端から、はじかれるようにくづれていく。このかけらは緑色に戻る。細かいなみだ石の集団は、人々が圧縮され乗り込んだ宇宙船なのだが、しばらく空間にとどまっていた。そして、突然に、夜空の中に、すいあげられるように上昇していく。もう、地球防衛機構の防御手段では、手に終えない存在となった。残った涙岩の部分は、崩れる速度がしだいに早くなり、最後には、爆発を起こしたように四方に飛び散り、最後には、涙石の集団の方へ、引きつかれていった。別れの花火のようだった。なみだ石の集りが、すべて、夜空に吸い込まれていくのを、私は最後までながめていた。私の手の中には、リーラから渡された「なみだ石」が残っている。思わず握り締める。リーラの体の温もりが思い出された。この地球に、、一人、、取り残されたのだ。癒される事のない寂しさ。私ミユーは、なみだ石を握り締め、今までの2000年分の、、過去の自分の歴史と、これから、長く続くであろうこの地球での、長い長い日々を思った。私はかっての地球人としての生活や歴史を追っていくだろう。時間はとりもどすことはできない。でも、たぶん場所はとりもどせる。場所の記憶がある。それは、地球人として私の子孫を訪れる旅になるはずだ。祖先として子孫を、、急に、私は、その時代、時代と愛していた女たち、子供たちを思い起こしていた。その場所をたずねる、長い旅が、私を待っているだろう。「リーラ」と、思わず叫んだ。叫びとともに、私のほほを、生暖かいものが流れ、それがなみだ石に染み込んでいった。(完)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
2017.04.04
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第4回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/779592/第4回人々の悲しみの涙を集めた涙岩が、粉粉になる。その涙岩のかけら、「なみだ石」が、緑色、瑠璃色の光を放ちながら、漆黒の闇の中へ、消えていくはずなのだ。今日がその日だ。「君も芝居がうまいね、日待クン。いや本当の名前は何というのかな」ふっと滝は鼻で笑いながらいう。しみじみと、僕を馬鹿にしている。でも僕は理解できないでいる。ゆっくりと、滝が口を開いた。「それじゃな。日待クンという名のコードネームをもつ男よ。「なみだ石」のところまで案内してもらおうか」「わからないんのだ。覚えていないのだ」僕はあわてて、ごまかそうとする。「でまかせをいうな。さっき、村にたどりつく前に、この山腹の方で光がちらちらと見えていた。あのあたりが涙岩の位置じゃないのかな、なあ日待クンよ」「おおっと。そうそう。忘れるところだったな。これが必要だろうな、これからはな」 滝は短針銃ニードルガンをジャケットのポケットからと取り出し、それを僕に向けた。短針銃ニードルガンは、超小型の針を限りなくばら撒く対人殺傷兵器だ。が、僕はなぜ、それを知っているのか?自分の知識におののく。「滝、よせ、あぷないじゃないか。短針銃を、、」「おおつと。なぜ、危ないとわかる?短針銃とわかる?ふふん」「僕は、、一体、誰だ、、、」「もうよせ、日待クン,もう、すでにネタはあがっているぞ」世の中がまるで180度回転したみたいだ。僕はあきらめ、滝を後に、「涙岩」にむかい歩き始めた。もちろん、滝は右手にその究極の殺人兵器、短針銃を構え、用心深くぴったりと僕の背中に照準あわせているのだ。涙岩へは小一時間ほどかかった。悪路だった。村人以外は、知らないよりな迷路のような道だ。滝は先程、事故に出会ったばかりと思えないようなタフさでついてきた。この頑丈さは。何者なのだ。それと同じように、僕はいったい誰なのだ。何者なのだ。「まて、日待クン」滝は、道の徒切れていて、僕を止める。山道がおわり丘が盛り上がり、そこからは草原の盆地になっていて、そこに人の気配がした、樹木のそばに隠れる。涙岩のまわりには二百人ほどの人が集まっていた。村人以外の人が、かなりいるようだ。あきらかに、村の人口よりは多い。気づかれないように、そっと草陰から眺める。涙岩は緑色からルリ色へ、色々な透き通った色眼光を変え輝いていた。 人々の顔がはっきり見え始めた時、滝がいった。「ようし、日待クン、ここまでだ。いい眺めじゃないか」 それから、僕達の出現に気づいていない人々に、隠れていた岡の上から姿を見せ見下ろし大声で叫んだ。「おい、君達、おれは「地球防衛機構」のものだ。代表者をだしたまえ」 どこからともなく突然、爆音がきこえた。夜空に「ガン=シップ」と呼ばれる攻撃用ヘリコプターが5機、飛来してくる。「我々には、君たちと話し合いをする用意がある。しかし我々に逆らえば、、」「ガン=シップ」ヘリ1機から1本の空対地ミサイルが発射され、草原近くの森の木々が打ち倒された。その人間のならから、一人の女が、前にでてきた。何てことだ。彼女だった。第7回「私が、代表者です。名前はリーラです」 それから、ゆっくりと僕の存在をわかり、みつめ、悲しそうな顔をした。「やっばり、来てしまったわね。ミユー。間違いだったわ、あなたに会ったのは。これで最後だと思いあなたに会った。失敗だったわ。私は、あなたをつれていくことは、、やはり、できないのですもの」リーラ、そうだ。彼女はリーラだった。ミユー。それが私、日待明の本名?僕の、、いや、私の頭の中で何かが爆発した。私の記憶の総てが急激に、、甦ってきた。リーラ、彼女は私の妻だった。いや、今も私ミユーの妻だ。 はるか昔、我々は、この地球に降り立った。我々は目的遂行のため、この地球に一定期間、滞在することになっていた。だが、第10次探険隊長の私ミユーは、ふとしたことで、この地球上で罪を犯してしまったのだ。私達の星の法律及び裁判に依り、私はこの星への追放刑に処せられた。第10次探険隊長の私ミユーは、この地球に,永遠に住まざるを得ないのだそして同時に、私の記憶は分解された。偽りの記憶が埋め込まれたのだ。 1年前に、「リーラ」に会い、別れの記念に「涙石」を与えられた。その涙石が、ここで記憶をとりもどすきっかけとなった。今の自分に戻った私の意識。 滝が、リーラ達にむかい、何かを必死に訴えている。が、私は、私自身の過去の記憶を、何とかたぐりよせる事に努力し、上の空だった。「私は地球防衛機構を代表して話している。君達は、なぜ地球人をつれさろうとするのだ。すでに多くの地球人が、いままでに君達によってつれさられている」滝という名の男の声が耳に入ってきている。 リーラは、ゆっくりと微笑んで、余裕のある態度で返事をかえす。「滝さん。いい。ですか」リーラは、回りに不安げにたたづむ人々を両手でしましながら、諭すように言った。「この人達は地球では住めない人達なの。善良すぎて。この汚れた梅球ではね」「ふつ、善良すぎるだと?リーラ。ここは我々の星だ。そして彼らは我々人類の仲間なのだ」「ねえ、滝さん、彼らがこの地球を去るかどうかは、自分達がきめる事よ」 私の、今までの記憶、過去はすべて造られたものだった。この村で生まれ、育ったということ。それもすぺて彼女らに、つまり仲間遠に作られた記憶だ。 私達が、この星地球をはじめて見た時のことを私。ミューは思い出す。地球は本当に美しかった。そうなのだ。夜空の中に浮ぶ「なみだ石」のようだった。 あれから何年たってしまったろう。今まで20才であると思っていた僕「日待明」は、地球の上で少なくとも2000年暮らしていた私「ミュー」を発見する。 裁判の決果、有罪と決めつけられた私は、何人分もの地球人の人生を一人で,歩んできたのだった。仲間は私の体に特殊処置を施した。私は私個有の記憶をなくし、地球人幾人分かの生と死を味わったのだ。今の今まで、私自身を忘れさっていた。 あの日記、このなみだ石のことを書いた父の日記は誰のものだろうか。おそらく私はリーラがそう仕掛けたと思う。副隊長であったリーラは、自分達、第10次探険隊が引きあげる時が近づいたことを知せるためにだ。この20才の僕「日待明」の人格、頭屋村の生まれであるという記憶が、最後に作られていたのもりーラのしわざだろう。「地球追放刑」を受けた私を、彼女の旅立ちの時に、涙岩のところまで来させたかったのだろう。たてまえとしては、来させてはいけないのだが、彼女の本音は、やはり、ここに、別れに来てほしかったに違いない。 滝は、本当の名前は知らないが、まだ、必死でりーラ達と話をしていた。彼女達をとめようとしていた。涙岩の上で、涙をながさざるをえないような心のやさしい人達、今の地球に住むには心やさしすぎる地球人達、そんな人達を、我々の星に連れてかえるのが私達の使命だ。しかし、そんなことは、今の私には、かかわりあいがない。 滝は、地球防衛組織の一員だ。そしてどういうきっかけかはしらないが、私が地球人ではないことを知り、「涙岩」の場所をつきとめるために、私について、この神立山に来たのだろう。かわいそうな地球人たち、、、私は常に思う。どうやら、滝は力にうたえるらしい。近くの森の上を旋回していたヘリ5機が、急速に近づいてきた。草原と涙岩と人々の間に、ヘリからのサーチライトの光条が飛び交う。 それまで輝いていた「涙岩」がもっと光を増しはじめた。 一瞬、涙岩からの閃光が私の目を射た。そして、大きな音が聞こえ、衝撃が襲う。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
2017.04.04
染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第3回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/779592/ 「ええ」僕は答える。 「そうですか.僕、この路線走るのは始めてですねん。ふだんでも,このバスは,ほとんど頭屋村までいかんのですわ。最近は、客が、よういってるようだけど。本当は、これより先はいかんのなあ。いやだなあ」「バス停には、頭屋村まで通じてますの地図と張り紙がったぜ」 滝がいいかえす。 「ここからは道が、えろう悪くなるし、つづらおりの坂ばかりですわ。あまり行きたくないんですわ。頭屋村まで、まだ40分ほどかかるという話だし、途中には全然停まるとこないんですわ。」「バスで40分もかかるところ、歩いてはいけないよ」 滝がいう。「わかりました。では、こうしましょう。このバス停から先は特別料金をいただきますよ」「ボリョルナ。タタシーみたいだな」「残念ながら、ここにはタクシーはないんです。1000円余分にいりますけれど、このパスしかないんです」運転手は言い返す。「そんなこと、一言もバス停の掲示板には、書いてなかったけれどな。まあいいわ、いってよ」「すごいところだな。日待。1000円分の風景を楽しむとするか」が、僕は滝の言葉に注意を払わず、僕は彼女のことを考え始めていた。もうすぐ、あえるかもしれない。心臓がなみうち始める。汗がでる、待てよ。記憶が、、そうだ。彼女を。、、かなり昔からずっーとずっと前のことだ。僕が子供だった時よりも?、、、昔からだ?変だ。僕が子供だったことより前。。、彼女を知っていた?。どういうことだ。 僕が彼女を思うあまりに、そんな気がしたのだろうか。 いや、まちがいない。僕は彼女を大昔から知っている。 移り変わる新緑の山々、その外の景色に気をとられていた滝が、僕の思いつめた青い顔に気がつく。「どうしたんだい、日待ひまち、まっさおだぜ、お前の顔」 突然、バスが横に激しくゆれた。窓の景色がひと回りした。体が車体に勢いよく打ちつけられ、失神しそうになる。 突熱、僕の体を、緑色の光が包み込む。光は神立山の神腹からきていた。体の重さがなくなり、空間に浮いている。すべてのしがらみから解きはなされ、ほんとうに自由にたったような気がした。’ 僕は、緑の光につつまれ、バスが大きく回転しながら、谷間へかちていくのを、他人事のようにぼんやりとながめている。 僕の名前が呼ばれたような気がした。それも遠くの方から。 いつのまにか僕の体は、道路そば側の草の上でよこたわっている。滝のことを気づかい、起きあがり、谷の方をのぞいてみた。パスは車体がグシャとなり、崖下20mくらいで火に包まれていた。 ころばないように気をつけながら、まったく無傷の僕は、バスまで降りていった。 燃えあがるバスの残骸までたどりつき、しばらくの間呆然とながめていた。第5回 バスのとびちった部品の影に、滝が倒れていた。「滝,しっかりしろ」 滝は目をあけた。服がやぶれ、血がにじんでいた。すこし焼けこげてもいた。一、二度、頭を振って、滝は上体をおこした。不思議そうな顔をして、滝は僕をみつめていたが、ポケットに手をつっこんでから、ゆっくりといった。「日待、君はケガをしなかったのか」「ああ、そうさ、運転手は?」あたりをしばらく見渡してみた。「どうやら、ダメなようだな」 ポツリといった。 滝は、僕の目をじっとみつめ、口を開いた。「日待、どうだ、ここらでもうはっきりさせないか」その表情は、これまでの饒舌な滝のものではなかった。別人のようだった。「何のことだ。何のことを言っているのだ」僕は体をこわばらせる。「日待、いや、君の本当の名前まではわからないが、、まだ、しらばくれる気なのか。君と君の仲間のことさ」「僕の仲間?」滝は立ちあがり、少しよろけたが、僕の肩に手をかけた。「はっきりいえよ、日待。それとも」「まってくれ、滝、一体お前、どうしたんだ」その時だ。隣にあるバスの残骸が爆発した。おもわず僕達は体をふせた。「そうだ。滝、はやく頭屋村へいこう。むこうで、君のケガをみてもらおう」「ふっつ、どうやら、頭屋村までは、君が、案内してくれるつもりらしいな」と皮肉っぽく言う。 いったい、この滝の変心は、なんだ。僕はバスの転落、体を包み込んだ緑色の光、滝の豹変、わずかの間に起こった事で混乱している。それにしても、あの緑色の光は、涙岩の色に似ている。と僕は思った。頭屋村までは、まだかなりの距離があった。僕は、滝、彼も、いや彼こそ本当の名前は何だ、、もう話をする気がしなかった。冷たい沈黙が、僕達の間にあった。が、二人は村へ向って歩きだす。滝に肩をかしていた。バスの通り道へあがり、夕ぐれの中を歩きだした。村までの風景は、僕が出かける前と、少しも変わっていなかった。おぼろげな記憶だったけれども、はっきりと一致していた。ようやく村へたどりついた時、来てはいけないところへ来た、そんな気がした。僕をよよつけない何物かがあった。体がぞくっとした。 最初に滝の傷をみてもらもらおうと思った。しかし急に「彼女」のことも思いだし、どうしても会いたいと思った。彼女の姿を浮べ、不安を振り払おうとした。 手近かの家からは光がもれている。「ごめんください。」 答えはない。「誰もいないんですか」無断で家にはいっていく。人の気配がない。隣の家家にも、同じように走っていって声をかける。やはり誰もいない。そして、不思議だが、村じゅう、物音一つしない。誰もいないのか?滝は、ポケットからタバコ箱くらいの小さな機械をとりだし操作していた。さっきから滝が触っていたのは、これだったのか。「滝、村には一人もいない。おかしい」「やっぱりな、思った通りだな」 滝は、傷のせいか、疲れた顔をしていたが、不思議に目眼だけは、力があった。獲物を前にしたハンターの眼だ。「いいか、もう、はっきりしたらどうなんだ、日待よ」「何のことをいっていろんだ。滝、君はバスが転落した時から、何をいいたいんだ。人が変ったみたいだよ」「ふう、簡単な話じゃないか。日待、最近、この田舎の、頭屋村へ来る人々が増えていたこと。パスの中で老人が言ったこと。そして、今現在、この頭屋村にはな、人っ子一人いないこと。すなわち、今日が。涙岩のくずれる日だ。今日は涙岩伝説の日だ」 僕はその意味するところに、打ちのめされる。そうか。今日が、涙岩がこわれる日に違いない。すなわち、数百年に一度の日なのだ。(続く)
2017.04.04
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第2回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所第2回 僕は、いま 1975年ー昭和50年ーの思い出の中にいる。 正直にいうと実は、「なみだ石」を一つ持っているのだ。 東京へでてからの僕は人づきあいの悪い人間だった。特異な風貌、まるで禁欲的な僧侶にみえた。なみはずれた長身、それにどことなく体から発する毅然たる態度。 こんな僕でも恋はする。 その彼女、香月和子こうつきかずこに出会ったのは、去年1974年の十二月。仕事の関係で知り合った。 彼女の眼をみた僕ははっととする。同じ種類の入間だ。 僕は彼女に必死で話しかけ、最後には彼女が同じ頭屋村の出だとわかった。幼ない頃、村を出た僕が知らないはずだった。彼女と知り合い、それ以後私は彼女にひかれていた。ずっと昔から彼女を愛しているように思えた。それからの僕の行動は、あらゆることを投げすて、彼女に会うこと、それがわびしかった生活をなぐさめる生きる力。 けれども、彼女にはどこか近づきがたいところがあった。外見は20才くらいにみえるのだが。僕と話をすると、僕がたちうちできほいほどの知識をもっていた。まるで何百年もいきているように感じられた。「あなたと同じようが寂しい眼をしている人々、この世の中そう地球といってもいいわ、でやさし過ぎて生きてはいけない人々をさがし、そんな人達を幸福にみちびいてあげるのが私なの」 ある時、彼女は私の眼をじっとのぞきこみながらいった。「でも残念ながら、あなたは私達の仲間にはなれない」「仲間だって」「そう仲間よ。一緒に長い旅にてる仲間」「旅?」「私達、旅立つ日が近づいている」 彼女はさびしそく言う。「二度と、、、「会えなくなる」「そんな」「悲しい?。そう、、これをあげる」 彼女が僕にわたしてくれたのは、ちっぽけな石。「これは何」 僕は立ちあがった彼女を見上げながらたずねた。「なみだ石」 彼女は去っていった。「なみだ石」 僕はつぶやく。きらきら光るそのなみだ石をじっとながめる。彼女のあとは追いかけなかった。 なみだ石、聞いたことがある。その時はっきり思いだせなかった。そうだ、ときずいた僕はさっそく下宿にとんでかえる。もう一度、なみだ岩伝説の事を読みかえす。 そして、決心した。涙岩をみよう。ふるさとへ帰ろう、、と。そうそう,僕、日待明の道ずれについて話すのをわすれていた。知り合いといっても最近知り合ったばかり。彼。名前は滝光一郎という。いわゆるフリーターだと本人は言っている。知り合いになった理由は、ほんの偶然で「なみだ石」をみせてしまったからなのだ。滝はとてもおもしろい奴だったが、こと、なみだ石のことではしっこく聞き、とうとう一緒に「涙岩」を見るために、頭屋村までついてくることになった。僕は滝を連れてきたくなかった。他の地域の人間には見せたくないのだ。が、滝は、不思議にあまりに執拗に食い下がった。何があるのだ。唯一の知り合いなので、無下にことわることができない。「おい、日待よ、明よ。「カンタチ」駅、この駅じゃないのか」 色んなことを考えているうちに、やっとお目当ての駅にたどりついた。 駅の出札口で、駅員(といっても契約社員か)が、私達に話をしかけてきた。 「あんたら、東京の方からきなすったかね」「ええ、そうですけれど」 僕が、答えた。「いやな。感でいうたんだが、近頃、このーカ月の間に、このカンタチ駅で降りる人がたくさんふえてね。それであんたら神立山カンタチヤマの方へやっぱりいくかね」「ええ、、、やっぱりの口ですな」そらなという表情で滝は答え、僕の顔を見てニヤリと笑った。「へえ、仲間がいっぱいか。涙岩のことが知られているのか。雑誌でも紹介されたかな、さては」 僕は、僕でやはり、こない方がよかったかなあ、それにこの滝も、、と後悔しはじめる。「いや、そんなことはないはずだよ。涙岩が、どんな新聞、雑誌にも記事になたったことがない。滝、君の方がよくしってるだろう」「そうだな。神立山の方で他に何か祭事があるのか。まあ、いいや。あ、どうやらあそこがパス停らしいぞ。レンターカーはない?なにのだな。人口がないから、、商売にならんから、、か」 滝は、しゃべっている間、しきりにズボンの内ポケットの中に手をつっこんでいじりまわしている。「滝、何を、そういらいらいじくりまわしている」「いや何も」 こんどは、ジャケットの内ポケットに手をつっこんでいる。「日待よ。これは俺の個人的な性癖ってやつだ。あまりつっくっ子無と友達なくすぞ。って俺しかいないか友達は、なあ明クンよ」探し物か?僕はいぶかしく思った。内をそわそわ。つまりは、僕の存在より、カンタチヤマへの手がかりとして僕に近づいてきた。という疑念が僕におこる。とはゆえ、バスは、十人ほどの近くの村人達をのせて走りだす。 僕は彼女に頭屋村で会えそうな気がしてきた。彼女に会いたい。一目でいい。あの人は頭屋材出身だといっていた。駅員が神立山の方へ行く人がふえたと言っていた。ひよっとしてその中に彼女がはいっていないだろうか。いや絶対に帰っているに違いないと僕は思った。僕の、自分でいうのも何だが、このロマンスというか、純真さが後で大惨事を起こすとは。思っちゃいなかった。そして僕の人生も変えてしまうとは。それは、この田舎バスから始まったのだ。 バスは、そう考えにふけっている僕を乗せ、神立山へむかって坂を下りたり峠を上たり、森林を抜け走る。あちこちに点在した人家がたまにみえる。しかしめづかしく、でこぼこ道だ。あまり乗りごこちはよくない。「日待、何かへんな気分だな。僕の方をみているようだ」と、滝は、僕、日待明ひまちあきらの名前を気安く呼ぶ。「気にするなよ。僕らのかっこが目立つからだろう・・」「しかしだな。テレピというものがあるだろう。こいつら、テレビで東京の人間を見たことがないか」「滝、いいわすれていたけれど、神立山の方は日本でめずらしく電気がとおっていない。だからもちろん、テレビもみずらい。新聞・郵便物は1週間にまとめてだ」 「へえーー、まるで日本の秘境か、まだ日本にあったか、、だな」 滝がしゃぺった。 「あんたらも、神立山の方へいくだか」後の座席から、急に声がしてびっくりした。後ろには、市外地の途中のバス停で降りたらしく、もう4人しかいない。 滝がふりかえって答えた。「ええ、そうですけれど」 僕も後を見る。後の方の座席に80才くらいの男の老人がちょこんと腰掛けて、僕たちの方をにらんでいる。「僕は、頭屋村トウヤムラの出なんです。頭屋村へかえるんです」 僕が答えた。「へえ,、そうかいね。,頭屋村のもん近頃、ようバスにのっとるで。また危ない」「また頭屋村で人がようけいてなくなるやろらだろう・・」「あんた、そのこというたらいかんがね」老人の隣にいる老婆が、きつい調子でたしなめた。「そうやったな。あのこと、を、しゃべったら、それも他の村のものがいうたら、タタリがあるのやなあ。クワバラ、タワバラやは」「おじいさん、ひょっとしたら涙岩伝説のことと違う」滝がしゃぺった。老人達は、しわい顔をしてだまりこむ。パスの中は、異様なふんいきだった。やがて、老婆が訟もいきったようすでいった。「そっちのにいちゃは、頭屋村の人だけど、いま、あのことをいったにんちゃは。村の人と違うようだね。そのことは、口にせん方が身のためだ」「これや、これ」今度は、老人の方が老婆をたしなめた。いっているのが聞こえてくる。「ちえっ、しったことかいな」 滝が後を見ずに悪態をつく。 その老人達は、次のパス停で降りていった。残りの2人も山の中に点在するバス停で逃げるよう降りていった。 奥深い山の中を走るパスの中には僕たち二人だけ。 年の若いニキピづらの運転手が、バスを止め、座席から振り返り話しかけてきた。迷惑そうに、たづねる。 「あんたら、キクけどさ。本当に頭屋村までいくの?」(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
2017.04.04
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第1回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/779592/ 僕達2人は、乗りごこちの悪いローカル線に乗っている。列車は。僕の故郷に向かっていた。故郷といってもあまり記憶はない。親戚もいない。僕は都会の中で一人、孤独で何年も住んでいた。あるきっかけで故郷へ帰ろうと思った。 奈良県、和歌山県、三重県の3県の県境にあるふるさと。ふるさとといっても本当に伺のとりえもない山間の小さな村だ。それこそ、一日に三本あるかないかの鉄道、駅からパスに、パスの終点から山道、そま道を歩み、やっと、その土地、頭屋村とうやむらへたどりつくことができる。 帰ったところで、誰も僕を喜んでむかえてくれるわけではない。 僕、日待明ひまちめいは頭屋封へ、何年もの町中の生活で得た悲しみ、体の中にたまりすぎた汚れを、洗いおとすために帰る。苦しみは僕の体をむしばんでいるのだ。なみだ岩に、行き着き、そこで涙を流すことで、僕は幸せになれるだろう。いや少なくとも、過去の傷を、いくぱくかいやすことができるだろう、と僕は考えていた。僕の生まれた頭屋村は、「神立山」と呼ばれる深山の中にある。奥深い、あまり人も、森林伐採でしか入れない「神立山」の森の中に「なみだ岩」と呼ばれる岩がある。「なみだ岩」のまわりは、不思議と草が刈りとられたような芝の多い草原になっている。その草原を深い森がかこんでいる。「なみだ岩」はわかりにくい場所にあり、頭屋村出身でない者はたどりつくことができがタイ。涙岩は高さおよそ15mくらい。頂上はとんがっていて、底に向かって広がっている。土の中に岩の半分ほどが、うまっている感じだ。全体は緑がかった乳白色で、表面は人が毎日みがいていると錯覚するほど光り輝いている。遠くから見ると、涙のしずくが空からかちてきて、地球につきささったようなのだ。、、、と詳しく知っているようだが、僕は父が亡くなったあと、すぐ頭屋村を出て、遠い親戚をたより、東京にでていった。5才の頃の話だったから、なみだ岩についてくわしく覚えているわけではないのだ。この「なみだ岩」にのぼり、その上で涙を流し、「なみだ岩」に、涙がしみこんでいくなら、その人は幸せになるという伝説がある。この「なみだ岩」伝説を知ったのは、ふとしたきっかけだった。親戚から東京に送られてき、父の形見を整理していた時、父の日記を見つける。古ぼけたページを,めくっているうちに、こんな記述にであったのだ。「涙岩は 何百年かに一度、必ず崩壊する。そして、その跡には、指でつまめるほどの小さなかけらが残る。人はこれを原石と呼ぶがたま、そのあとに残ることがある。なみだ石のほとんどは夜空に舞いあがっていく。そしてなみだ岩はきれいになくなっていて、あとには大き々穴があいている。まわりの草原も焼けただれている。この話は、先祖代々に渡り、頭屋村に住んでいる者のみに語りつがれている。」と、、、 僕は子供の頃見たことのある「なみだ岩」を、もう一度、はっきりとこの眼にしたい。涙を流したいと思う。あれほど美しい原岩がこわれぱ、どれほどの「なみだ石」ができるのだろう。涙岩の美しくくずれる瞬間、それをながめたい。 さいわい、「なみだ岩」についてはあまり知られていない。もし旅行維誌がとりあげれば、一たちまち大勢の人でうめられてしまうだろう。 しかし、神立山は観光ルートからはなれた辺境で、訪れる人はほどんどない。「なみだ岩」は、ごくわずかの人しか知られていない。たとえ、「なみだ岩」のことを土地以外の人が知っでも、「なみだ岩」で悲しみをとりのぞいてもらい、本当に幸福になりたいと思う人にしか「なみだ岩」の場所を教えてはならないのだ。僕の行動は、あらゆることを投げすて、その「涙岩」に行きつけたい。と思った時から始まっていた。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
2017.04.04
光陽社さんのアート年賀状 2017年酉年(とりどし)光陽社さんのアート年賀状2017年-酉年(とりどし)の一部デザイン協力をさせていただきました。http://www.koyosha-inc.co.jp/nenga_2017/
2016.12.05
光陽社さんのアート年賀状2016年-申年(さるどし)の一部デザイン協力をさせていただきました。山田企画事務所は、ビジネス・マンガ制作事務所です。光陽社さんのアート年賀状2016年-申年(さるどし)の一部デザイン協力をさせていただきました。http://www.koyosha-inc.co.jp/nenga_2016/作家の作品は、以下を御覧ください。mangakadata.net年賀状の協力作家の作品見本です。年賀状番号1671 1672 suzuki 鈴木純子http://suzuki-junko.com/ 鈴木純子鈴木純子mangakadata.net年賀状番号1656 1668 oishi 大石容子http://mangakadata.net/oishi/index.html# 大石容子大石容子mangakadata.net年賀状番号1639 1685 1686 kitagaki北垣 絵美 http://mangakadata.net/kitagaki/index.html# 北垣 絵美北垣 絵美mangakadata.net年賀状番号1666 1667 shougaki 正垣有紀http://mangakadata.net/shogaki/index.html# 正垣有紀正垣有紀mangakadata.net年賀状番号1654 1673 1674 morinaga 森永先生山田企画事務所は、ビジネス・マンガ制作事務所です。http://www.yamada-kikaku.com/ ▲『マンガ家になる塾』ナレッジサーブ『マンガ家になる塾』ナレッジサーブ ■ユーチューブ■youtube.com●how to draw manga● ●http://www.youtube.com/user/yamadakikaku2009 -------------------------------------------------------
2015.12.02
マンガ家になる塾http://www.knowledge.ne.jp/lec1379.html●マンガ業界がかなり厳しい業界であると認識して受講下さい。●マンガ原稿をすぐ拝見!●編集部へ持ち込みの原稿を添削指導!1か月分の会費です。ただしマンガ家先生のスケジュール調整があり。基本の課題は、かならづしも1回の授業からの課題でなくても構いません。山田企画事務所のHPにテキストは入れています。http://www.yamada-kikaku.com/lesson.html ●1回だけの受講、飛び飛びの受講も可能。参加者の紙原稿(漫画データ)への赤ペン添削●参加の方の個人に合わせ課題も。
2015.11.25
Windows!Free! Animation Editor 9VA-win http://9vae.comhttps://youtu.be/Kl7IeVhxwIIWindows!Free! Animation Editor 9VA-win http://9vae.com How to make movie and upload to YouTube ? Windows ! アニメ作成フリーソフト 動画変換! YouTube に ! Windows!Free! Animation Editor 9VA-win http://9vae.com How to make movie and upload to YouTube ? Windows ! アニメ作成フリーソフト 動画変換! YouTube に !
2015.11.02
My youtube VIDEO List, http://www.pinterest.com/yamadakikaku/My youtube VIDEO List, entrance to How to draw manga etc、my pinterest http://www.pinterest.com/yamadakikaku/山田企画事務所のyoutube 動画LIST になっています。漫画の描き方や日本の美景の 動画の入り口の 写真集です。御覧ください。
2015.07.26
!山田企画事務所ピンタレストーすべてyoutube動画にリンクしてます!http://www.pinterest.com/yamadakikaku/ 御覧くださいyamadakikaku 山田企画・山田博一の写真帳を御覧ください・http://www.pinterest.com/yamadakikaku/ 御覧ください
2015.07.10
http://www.tv-osaka.co.jp/event/eventtool/名 称イベントツールウエストジャパン2015会 期2015年5月28日(木)~29日(金) 10:00~17:00会 場 大阪南港ATCホール(大阪市住之江区南港北2-1-10 ATC O's南B2F)主 催テレビ大阪 アジア太平洋トレードセンター後援経済産業省 近畿経済産業局、大阪府、大阪市、大阪商工会議所、(公財)大阪観光局、公益財団法人関西・大阪21世紀協会、一般社団法人日本イベントプロデュース協会関西本部、 NPO法人ジャパンイベントネットワーク、日本イベント業務管理士協会、一般社団法人日本イベント産業振興協会 (順不同)ーーーーーーーー入 場 料 無料 (招待制・事前登録制)目標来場者数5,000人ーーーーーーーーテレビ大阪では今年も、アジア太平洋トレードセンターとの共同開催による「イベントツールウエストジャパン2015」を5月28日(木)~29日(金)に大阪南港のATCホールにて開催します。本展は、イベントや販促関連のツールやコンテンツを所有する企業が出展。企業の販促、関・自治体・行政機関・各種イベント主催団体など、販促やイベント関連のツールをお探しのユーザーをお招きし、出展者とのビジネスマッチングの場としてご好評頂いております。4回目の開催となる今年は、多数の関連企業が出展し、ご来場の皆さまに質の高いプレゼンテーションを展開します。開催時にはぜひ本展へお越しくださいますようお願い申し上げます。ーーーーーーーーお問い合わせイベントツールウエストジャパン運営事務局(テレビ大阪 事業局内) 担当 :酒井・仲野〒540-8519 大阪市中央区大手前1-2-18TEL : 06-6947-1912FAX : 06-6947-1941E-mail : eventtool@tv-osaka.jpーーーーーーーー山田企画事務所・山田博一は、後援団体の日本イベント業務管理士協会/広報委員として告知しています。http://www.jedis.org/member/memberlist/517-940808.html日本イベント業務管理士協会http://www.jedis.org/ーーーーーーーー
2015.04.28
大石容子の作品http://oishi-youko.com/山田企画事務所 の協力作家大石容子の作品をまとめてみました。大石容子アートギャラリーマンガイラスト依頼見本にご利用下さい。oishi-youko.com大石容子アートギャラリー
2014.11.22
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第4回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第4回 「ええ」僕は答える。 「そうですか.僕、この路線走るのは始めてですねん。ふだんでも,このバスは,ほとんど頭屋村までいかんのですわ。最近は、客が、よういってるようだけど。本当は、これより先はいかんのなあ。いやだなあ」「バス停には、頭屋村まで通じてますの地図と張り紙がったぜ」 滝がいいかえす。 「ここからは道が、えろう悪くなるし、つづらおりの坂ばかりですわ。あまり行きたくないんですわ。頭屋村まで、まだ40分ほどかかるという話だし、途中には全然停まるとこないんですわ。」「バスで40分もかかるところ、歩いてはいけないよ」 滝がいう。「わかりました。では、こうしましょう。このバス停から先は特別料金をいただきますよ」「ボリョルナ。タタシーみたいだな」「残念ながら、ここにはタクシーはないんです。1000円余分にいりますけれど、このパスしかないんです」運転手は言い返す。「そんなこと、一言もバス停の掲示板には、書いてなかったけれどな。まあいいわ、いってよ」「すごいところだな。日待。1000円分の風景を楽しむとするか」が、僕は滝の言葉に注意を払わず、僕は彼女のことを考え始めていた。もうすぐ、あえるかもしれない。心臓がなみうち始める。汗がでる、待てよ。記憶が、、そうだ。彼女を。、、かなり昔からずっーとずっと前のことだ。僕が子供だった時よりも?、、、昔からだ?変だ。僕が子供だったことより前。。、彼女を知っていた?。どういうことだ。 僕が彼女を思うあまりに、そんな気がしたのだろうか。 いや、まちがいない。僕は彼女を大昔から知っている。 移り変わる新緑の山々、その外の景色に気をとられていた滝が、僕の思いつめた青い顔に気がつく。「どうしたんだい、日待(ひまち)、まっさおだぜ、お前の顔」 突然、バスが横に激しくゆれた。窓の景色がひと回りした。体が車体に勢いよく打ちつけられ、失神しそうになる。 突熱、僕の体を、緑色の光が包み込む。光は神立山の神腹からきていた。体の重さがなくなり、空間に浮いている。すべてのしがらみから解きはなされ、ほんとうに自由にたったような気がした。’ 僕は、緑の光につつまれ、バスが大きく回転しながら、谷間へかちていくのを、他人事のようにぼんやりとながめている。 僕の名前が呼ばれたような気がした。それも遠くの方から。 いつのまにか僕の体は、道路そば側の草の上でよこたわっている。滝のことを気づかい、起きあがり、谷の方をのぞいてみた。パスは車体がグシャとなり、崖下20mくらいで火に包まれていた。 ころばないように気をつけながら、まったく無傷の僕は、バスまで降りていった。 燃えあがるバスの残骸までたどりつき、しばらくの間呆然とながめていた。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2014.10.04
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第3回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第3回そうそう,僕、日待明の道ずれについて話すのをわすれていた。知り合いといっても最近知り合ったばかり。彼。名前は滝光一郎という。いわゆるフリーターだと本人は言っている。知り合いになった理由は、ほんの偶然で「なみだ石」をみせてしまったからなのだ。滝はとてもおもしろい奴だったが、こと、なみだ石のことではしっこく聞き、とうとう一緒に「涙岩」を見るために、頭屋村までついてくることになった。僕は滝を連れてきたくなかった。他の地域の人間には見せたくないのだ。が、滝は、不思議にあまりに執拗に食い下がった。何があるのだ。唯一の知り合いなので、無下にことわることができない。「おい、日待よ、明よ。「カンタチ」駅、この駅じゃないのか」 色んなことを考えているうちに、やっとお目当ての駅にたどりついた。 駅の出札口で、駅員(といっても契約社員か)が、私達に話をしかけてきた。 「あんたら、東京の方からきなすったかね」「ええ、そうですけれど」 僕が、答えた。「いやな。感でいうたんだが、近頃、このーカ月の間に、このカンタチ駅で降りる人がたくさんふえてね。それであんたら神立山(カンタチヤマ)の方へやっぱりいくかね」「ええ、、、やっぱりの口ですな」そらなという表情で滝は答え、僕の顔を見てニヤリと笑った。「へえ、仲間がいっぱいか。涙岩のことが知られているのか。雑誌でも紹介されたかな、さては」 僕は、僕でやはり、こない方がよかったかなあ、それにこの滝も、、と後悔しはじめる。「いや、そんなことはないはずだよ。涙岩が、どんな新聞、雑誌にも記事になたったことがない。滝、君の方がよくしってるだろう」「そうだな。神立山の方で他に何か祭事があるのか。まあ、いいや。あ、どうやらあそこがパス停らしいぞ。レンターカーはない?なにのだな。人口がないから、、商売にならんから、、か」 滝は、しゃべっている間、しきりにズボンの内ポケットの中に手をつっこんでいじりまわしている。「滝、何を、そういらいらいじくりまわしている」「いや何も」 こんどは、ジャケットの内ポケットに手をつっこんでいる。「日待よ。これは俺の個人的な性癖ってやつだ。あまりつっくっ子無と友達なくすぞ。って俺しかいないか友達は、なあ明クンよ」探し物か?僕はいぶかしく思った。内をそわそわ。つまりは、僕の存在より、カンタチヤマへの手がかりとして僕に近づいてきた。という疑念が僕におこる。とはゆえ、バスは、十人ほどの近くの村人達をのせて走りだす。 僕は彼女に頭屋村で会えそうな気がしてきた。彼女に会いたい。一目でいい。あの人は頭屋材出身だといっていた。駅員が神立山の方へ行く人がふえたと言っていた。ひよっとしてその中に彼女がはいっていないだろうか。いや絶対に帰っているに違いないと僕は思った。僕の、自分でいうのも何だが、このロマンスというか、純真さが後で大惨事を起こすとは。思っちゃいなかった。そして僕の人生も変えてしまうとは。それは、この田舎バスから始まったのだ。 バスは、そう考えにふけっている僕を乗せ、神立山へむかって坂を下りたり峠を上たり、森林を抜け走る。あちこちに点在した人家がたまにみえる。しかしめづかしく、でこぼこ道だ。あまり乗りごこちはよくない。「日待、何かへんな気分だな。僕の方をみているようだ」と、滝は、僕、日待明(ひまちあきら)の名前を気安く呼ぶ。「気にするなよ。僕らのかっこが目立つからだろう・・」「しかしだな。テレピというものがあるだろう。こいつら、テレビで東京の人間を見たことがないか」「滝、いいわすれていたけれど、神立山の方は日本でめずらしく電気がとおっていない。だからもちろん、テレビもみずらい。新聞・郵便物は1週間にまとめてだ」 「へえーー、まるで日本の秘境か、まだ日本にあったか、、だな」 滝がしゃぺった。 「あんたらも、神立山の方へいくだか」後の座席から、急に声がしてびっくりした。後ろには、市外地の途中のバス停で降りたらしく、もう4人しかいない。 滝がふりかえって答えた。「ええ、そうですけれど」 僕も後を見る。後の方の座席に80才くらいの男の老人がちょこんと腰掛けて、僕たちの方をにらんでいる。「僕は、頭屋村(トウヤムラ)の出なんです。頭屋村へかえるんです」 僕が答えた。「へえ,、そうかいね。,頭屋村のもん近頃、ようバスにのっとるで。また危ない」「また頭屋村で人がようけいてなくなるやろらだろう・・」「あんた、そのこというたらいかんがね」老人の隣にいる老婆が、きつい調子でたしなめた。「そうやったな。あのこと、を、しゃべったら、それも他の村のものがいうたら、タタリがあるのやなあ。クワバラ、タワバラやは」「おじいさん、ひょっとしたら涙岩伝説のことと違う」滝がしゃぺった。老人達は、しわい顔をしてだまりこむ。パスの中は、異様なふんいきだった。やがて、老婆が訟もいきったようすでいった。「そっちのにいちゃは、頭屋村の人だけど、いま、あのことをいったにんちゃは。村の人と違うようだね。そのことは、口にせん方が身のためだ」「これや、これ」今度は、老人の方が老婆をたしなめた。いっているのが聞こえてくる。「ちえっ、しったことかいな」 滝が後を見ずに悪態をつく。 その老人達は、次のパス停で降りていった。残りの2人も山の中に点在するバス停で逃げるよう降りていった。 奥深い山の中を走るパスの中には僕たち二人だけ。 年の若いニキピづらの運転手が、バスを止め、座席から振り返り話しかけてきた。迷惑そうに、たづねる。 「あんたら、キクけどさ。本当に頭屋村までいくの?」(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2014.10.03
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第2回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第2回 正直にいうと実は、「なみだ石」を一つ持っているのだ。 東京へでてからの僕は人づきあいの悪い人間だった。特異な風貌、まるで禁欲的な僧侶にみえた。なみはずれた長身、それにどことなく体から発する毅然たる態度。 こんな僕でも恋はする。 その彼女、香月和子(こうつきかずこ)に出会ったのは、去年の十二月。仕事の関係で知り合った。 彼女の眼をみた僕ははっととする。同じ種類の入間だ。 僕は彼女に必死で話しかけ、最後には彼女が同じ頭屋村の出だとわかった。幼ない頃、村を出た僕が知らないはずだった。彼女と知り合い、それ以後私は彼女にひかれていた。ずっと昔から彼女を愛しているように思えた。それからの僕の行動は、あらゆることを投げすて、彼女に会うこと、それがわびしかった生活をなぐさめる生きる力。 けれども、彼女にはどこか近づきがたいところがあった。外見は20才くらいにみえるのだが。僕と話をすると、僕がたちうちできほいほどの知識をもっていた。まるで何百年もいきているように感じられた。「あなたと同じようが寂しい眼をしている人々、この世の中そう地球といってもいいわ、でやさし過ぎて生きてはいけない人々をさがし、そんな人達を幸福にみちびいてあげるのが私なの」 ある時、彼女は私の眼をじっとのぞきこみながらいった。「でも残念ながら、あなたは私達の仲間にはなれない」「仲間だって」「そう仲間よ。一緒に長い旅にてる仲間」「旅?」「私達、旅立つ日が近づいている」 彼女はさびしそく言う。「二度と、、、「会えなくなる」「そんな」「悲しい?。そう、、これをあげる」 彼女が僕にわたしてくれたのは、ちっぽけな石。「これは何」 僕は立ちあがった彼女を見上げながらたずねた。「なみだ石」 彼女は去っていった。「なみだ石」 僕はつぶやく。きらきら光るそのなみだ石をじっとながめる。彼女のあとは追いかけなかった。 なみだ石、聞いたことがある。その時はっきり思いだせなかった。そうだ、ときずいた僕はさっそく下宿にとんでかえる。もう一度、なみだ岩伝説の事を読みかえす。 そして、決心した。涙岩をみよう。ふるさとへ帰ろう、、と。(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2014.10.02
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第1回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 僕達2人は、乗りごこちの悪いローカル線に乗っている。列車は。僕の故郷に向かっていた。故郷といってもあまり記憶はない。親戚もいない。僕は都会の中で一人、孤独で何年も住んでいた。あるきっかけで故郷へ帰ろうと思った。 奈良県、和歌山県、三重県の3県の県境にあるふるさと。ふるさとといっても本当に伺のとりえもない山間の小さな村だ。それこそ、一日に三本あるかないかの鉄道、駅からパスに、パスの終点から山道、そま道を歩み、やっと、その土地、頭屋村(とうやむら)へたどりつくことができる。 帰ったところで、誰も僕を喜んでむかえてくれるわけではない。 僕、日待明(ひまちめい)は頭屋封へ、何年もの町中の生活で得た悲しみ、体の中にたまりすぎた汚れを、洗いおとすために帰る。苦しみは僕の体をむしばんでいるのだ。なみだ岩に、行き着き、そこで涙を流すことで、僕は幸せになれるだろう。いや少なくとも、過去の傷を、いくぱくかいやすことができるだろう、と僕は考えていた。僕の生まれた頭屋村は、「神立山」と呼ばれる深山の中にある。奥深い、あまり人も、森林伐採でしか入れない「神立山」の森の中に「なみだ岩」と呼ばれる岩がある。「なみだ岩」のまわりは、不思議と草が刈りとられたような芝の多い草原になっている。その草原を深い森がかこんでいる。「なみだ岩」はわかりにくい場所にあり、頭屋村出身でない者はたどりつくことができがタイ。涙岩は高さおよそ15mくらい。頂上はとんがっていて、底に向かって広がっている。土の中に岩の半分ほどが、うまっている感じだ。全体は緑がかった乳白色で、表面は人が毎日みがいていると錯覚するほど光り輝いている。遠くから見ると、涙のしずくが空からかちてきて、地球につきささったようなのだ。、、、と詳しく知っているようだが、僕は父が亡くなったあと、すぐ頭屋村を出て、遠い親戚をたより、東京にでていった。5才の頃の話だったから、なみだ岩についてくわしく覚えているわけではないのだ。この「なみだ岩」にのぼり、その上で涙を流し、「なみだ岩」に、涙がしみこんでいくなら、その人は幸せになるという伝説がある。この「なみだ岩」伝説を知ったのは、ふとしたきっかけだった。親戚から東京に送られてき、父の形見を整理していた時、父の日記を見つける。古ぼけたページを,めくっているうちに、こんな記述にであったのだ。「涙岩は 何百年かに一度、必ず崩壊する。そして、その跡には、指でつまめるほどの小さなかけらが残る。人はこれを原石と呼ぶがたま、そのあとに残ることがある。なみだ石のほとんどは夜空に舞いあがっていく。そしてなみだ岩はきれいになくなっていて、あとには大き々穴があいている。まわりの草原も焼けただれている。この話は、先祖代々に渡り、頭屋村に住んでいる者のみに語りつがれている。」と、、、 僕は子供の頃見たことのある「なみだ岩」を、もう一度、はっきりとこの眼にしたい。涙を流したいと思う。あれほど美しい原岩がこわれぱ、どれほどの「なみだ石」ができるのだろう。涙岩の美しくくずれる瞬間、それをながめたい。 さいわい、「なみだ岩」についてはあまり知られていない。もし旅行維誌がとりあげれば、一たちまち大勢の人でうめられてしまうだろう。 しかし、神立山は観光ルートからはなれた辺境で、訪れる人はほどんどない。「なみだ岩」は、ごくわずかの人しか知られていない。たとえ、「なみだ岩」のことを土地以外の人が知っでも、「なみだ岩」で悲しみをとりのぞいてもらい、本当に幸福になりたいと思う人にしか「なみだ岩」の場所を教えてはならないのだ。僕の行動は、あらゆることを投げすて、その「涙岩」に行きつけたい。と思った時から始まっていた。(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2014.10.01
山田企画事務所・山田のpinterest写真集ーyou tube動画にリンクしてます。●●pinterest●●pinterest●●http://pinterest.com/yamadakikaku/ ●
2014.08.03
涼し気なる琵琶湖の波音 you tube 映像です。●you tube event-art seminerイベント案内 ●you tube Scenery in japan01風景写真●you tube 風景写真Scenery in japan02 ●you tube 風景写真Scenery in japan03●you tube 風景写真Scenery in japan04 pinterest風景写真集 you tube 映像です。画像をクリックして御覧ください。涼し気なる琵琶湖の波音22涼し気なる琵琶湖の波音21涼し気なる琵琶湖の波音20涼し気なる琵琶湖の波音12涼し気なる琵琶湖の波音11涼し気なる琵琶湖の波音10涼し気なる琵琶湖の波音09涼し気なる琵琶湖の波音08涼し気なる琵琶湖の波音07涼し気なる琵琶湖の波音06涼し気なる琵琶湖の波音05涼し気なる琵琶湖の波音04涼し気なる琵琶湖の波音03涼し気なる琵琶湖の波音02涼し気なる琵琶湖の波音01
2014.07.27
鈴木純子 作品より
2014.05.03
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第8回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第8回ー最終回私が目をあけると、ヘリはすべて夜空から消えていた。残滓が飛び散っていた。滝は、滝であった生物は、緑色の光を櫛びた物質に変化していた。私は草原に腰をおろし、涙岩をながめていた。手になみだ石をにぎりしめていた。 リーラが私の側まで歩いてきた。 しばらくだまって私をながめていた。 「さっき、パスの転落の時助けてくれたのは君だね、リーラ」 「そう私。あの滝という人に来てほしくなかったのでパスを落としたの。バスの運転手も地球防衛機構の一員だった」 思わず、私たちはお互いを抱きあい、耳元で小さな声でささやいた。「きようならミユー」 そして、私は涙岩の方へかえっていくリーラに同じように小さい声でつぶやいた。「さようなら、リーラ」 さようならを言った時、リーラの目にも涙が浮んでいた。それは、私がいま手にしているなみだ石とよく似ていた。 リーラは罪人の私に最後の別れの機会をあたえてくれたのだった。もちろん規則違反だ。私という罪人に、本当の記憶をとりもどすきっかけをあたえ、私達の星への帰還をみかくらせるのは。 私は、彼女達の旅立ちを、最後まで見届けようと決心した。 彼女達、それからこの穢れた地球から逃れる人間達は、涙岩のまわりに整列した。涙岩がまた輝きを増し、緑の光が彼女達をとりかこむように、みえた。 やがて彼女リーラ達の体は、涙岩が発する緑の光の中でだんだん小さくなっていき、しまい脚は見えなくなっていった。 光り輝く涙岩の表面に小さなひびがはいっていき、まもなく、ひびは、涙岩全体を覆った。緑色の光はオレンジ色に代わり、涙岩の端から、はじかれるようにくづれていく。このかけらは緑色に戻る。細かいなみだ石の集団は、人々が圧縮され乗り込んだ宇宙船なのだが、しばらく空間にとどまっていた。そして、突然に、夜空の中に、すいあげられるように上昇していく。もう、地球防衛機構の防御手段では、手に終えない存在となった。残った涙岩の部分は、崩れる速度がしだいに早くなり、最後には、爆発を起こしたように四方に飛び散り、最後には、涙石の集団の方へ、引きつかれていった。別れの花火のようだった。なみだ石の集りが、すべて、夜空に吸い込まれていくのを、私は最後までながめていた。私の手の中には、リーラから渡された「なみだ石」が残っている。思わず握り締める。リーラの体の温もりが思い出された。この地球に、、一人、、取り残されたのだ。癒される事のない寂しさ。私ミユーは、なみだ石を握り締め、今までの2000年分の、、過去の自分の歴史と、これから、長く続くであろうこの地球での、長い長い日々を思った。私はかっての地球人としての生活や歴史を追っていくだろう。時間はとりもどすことはできない。でも、たぶん場所はとりもどせる。場所の記憶がある。それは、地球人として私の子孫を訪れる旅になるはずだ。祖先として子孫を、、急に、私は、その時代、時代と愛していた女たち、子供たちを思い起こしていた。その場所をたずねる、長い旅が、私を待っているだろう。「リーラ」と、思わず叫んだ。叫びとともに、私のほほを、生暖かいものが流れ、それがなみだ石に染み込んでいった。(完)20111210改定1975年作品(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2013.11.08
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第7回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第7回「私が、代表者です。名前はリーラです」 それから、ゆっくりと僕の存在をわかり、みつめ、悲しそうな顔をした。「やっばり、来てしまったわね。ミユー。間違いだったわ、あなたに会ったのは。これで最後だと思いあなたに会った。失敗だったわ。私は、あなたをつれていくことは、、やはり、できないのですもの」 リーラ、そうだ。彼女はリーラだった。ミユー。それが私、日待明の本名?僕の、、いや、私の頭の中で何かが爆発した。私の記憶の総てが急激に、、甦ってきた。リーラ、彼女は私の妻だった。いや、今も私ミユーの妻だ。 はるか昔、我々は、この地球に降り立った。我々は目的遂行のため、この地球に一定期間、滞在することになっていた。だが、第10次探険隊長の私ミユーは、ふとしたことで、この地球上で罪を犯してしまったのだ。私達の星の法律及び裁判に依り、私はこの星への追放刑に処せられた。第10次探険隊長の私ミユーは、この地球に,永遠に住まざるを得ないのだそして同時に、私の記憶は分解された。偽りの記憶が埋め込まれたのだ。 1年前に、「リーラ」に会い、別れの記念に「涙石」を与えられた。その涙石が、ここで記憶をとりもどすきっかけとなった。今の自分に戻った私の意識。 滝が、リーラ達にむかい、何かを必死に訴えている。が、私は、私自身の過去の記憶を、何とかたぐりよせる事に努力し、上の空だった。「私は地球防衛機構を代表して話している。君達は、なぜ地球人をつれさろうとするのだ。すでに多くの地球人が、いままでに君達によってつれさられている」滝という名の男の声が耳に入ってきている。 リーラは、ゆっくりと微笑んで、余裕のある態度で返事をかえす。「滝さん。いい。ですか」リーラは、回りに不安げにたたづむ人々を両手でしましながら、諭すように言った。「この人達は地球では住めない人達なの。善良すぎて。この汚れた梅球ではね」「ふつ、善良すぎるだと?リーラ。ここは我々の星だ。そして彼らは我々人類の仲間なのだ」「ねえ、滝さん、彼らがこの地球を去るかどうかは、自分達がきめる事よ」 私の、今までの記憶、過去はすべて造られたものだった。この村で生まれ、育ったということ。それもすぺて彼女らに、つまり仲間遠に作られた記憶だ。 私達が、この星地球をはじめて見た時のことを私。ミューは思い出す。地球は本当に美しかった。そうなのだ。夜空の中に浮ぶ「なみだ石」のようだった。 あれから何年たってしまったろう。今まで20才であると思っていた僕「日待明」は、地球の上で少なくとも2000年暮らしていた私「ミュー」を発見する。 裁判の決果、有罪と決めつけられた私は、何人分もの地球人の人生を一人で,歩んできたのだった。仲間は私の体に特殊処置を施した。私は私個有の記憶をなくし、地球人幾人分かの生と死を味わったのだ。今の今まで、私自身を忘れさっていた。 あの日記、このなみだ石のことを書いた父の日記は誰のものだろうか。おそらく私はリーラがそう仕掛けたと思う。副隊長であったリーラは、自分達、第10次探険隊が引きあげる時が近づいたことを知せるためにだ。この20才の僕「日待明」の人格、頭屋村の生まれであるという記憶が、最後に作られていたのもりーラのしわざだろう。「地球追放刑」を受けた私を、彼女の旅立ちの時に、涙岩のところまで来させたかったのだろう。たてまえとしては、来させてはいけないのだが、彼女の本音は、やはり、ここに、別れに来てほしかったに違いない。 滝は、本当の名前は知らないが、まだ、必死でりーラ達と話をしていた。彼女達をとめようとしていた。涙岩の上で、涙をながさざるをえないような心のやさしい人達、今の地球に住むには心やさしすぎる地球人達、そんな人達を、我々の星に連れてかえるのが私達の使命だ。しかし、そんなことは、今の私には、かかわりあいがない。 滝は、地球防衛組織の一員だ。そしてどういうきっかけかはしらないが、私が地球人ではないことを知り、「涙岩」の場所をつきとめるために、私について、この神立山に来たのだろう。かわいそうな地球人たち、、、私は常に思う。どうやら、滝は力にうたえるらしい。近くの森の上を旋回していたヘリ5機が、急速に近づいてきた。草原と涙岩と人々の間に、ヘリからのサーチライトの光条が飛び交う。 それまで輝いていた「涙岩」がもっと光を増しはじめた。 一瞬、涙岩からの閃光が私の目を射た。そして、大きな音が聞こえ、衝撃が襲う。(続く)●090921改訂●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2013.11.07
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第6回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第6回 人々の悲しみの涙を集めた涙岩が、粉粉になる。その涙岩のかけら、「なみだ石」が、緑色、瑠璃色の光を放ちながら、漆黒の闇の中へ、消えていくはずなのだ。今日がその日だ。 「君も芝居がうまいね、日待クン。いや本当の名前は何というのかな」ふっと滝は鼻で笑いながらいう。しみじみと、僕を馬鹿にしている。でも僕は理解できないでいる。ゆっくりと、滝が口を開いた。「それじゃな。日待クンという名のコードネームをもつ男よ。「なみだ石」のところまで案内してもらおうか」「わからないんのだ。覚えていないのだ」僕はあわてて、ごまかそうとする。「でまかせをいうな。さっき、村にたどりつく前に、この山腹の方で光がちらちらと見えていた。あのあたりが涙岩の位置じゃないのかな、なあ日待クンよ」「おおっと。そうそう。忘れるところだったな。これが必要だろうな、これからはな」 滝は短針銃(ニードルガン)をジャケットのポケットからと取り出し、それを僕に向けた。短針銃(ニードルガン)は、超小型の針を限りなくばら撒く対人殺傷兵器だ。が、僕はなぜ、それを知っているのか?自分の知識におののく。「滝、よせ、あぷないじゃないか。短針銃を、、」「おおつと。なぜ、危ないとわかる?短針銃とわかる?ふふん」「僕は、、一体、誰だ、、、」「もうよせ、日待クン,もう、すでにネタはあがっているぞ」世の中がまるで180度回転したみたいだ。僕はあきらめ、滝を後に、「涙岩」にむかい歩き始めた。もちろん、滝は右手にその究極の殺人兵器、短針銃を構え、用心深くぴったりと僕の背中に照準あわせているのだ。涙岩へは小一時間ほどかかった。悪路だった。村人以外は、知らないよりな迷路のような道だ。滝は先程、事故に出会ったばかりと思えないようなタフさでついてきた。この頑丈さは。何者なのだ。それと同じように、僕はいったい誰なのだ。何者なのだ。「まて、日待クン」滝は、道の徒切れていて、僕を止める。山道がおわり丘が盛り上がり、そこからは草原の盆地になっていて、そこに人の気配がした、樹木のそばに隠れる。涙岩のまわりには二百人ほどの人が集まっていた。村人以外の人が、かなりいるようだ。あきらかに、村の人口よりは多い。気づかれないように、そっと草陰から眺める。涙岩は緑色からルリ色へ、色々な透き通った色眼光を変え輝いていた。 人々の顔がはっきり見え始めた時、滝がいった。「ようし、日待クン、ここまでだ。いい眺めじゃないか」 それから、僕達の出現に気づいていない人々に、隠れていた岡の上から姿を見せ見下ろし大声で叫んだ。「おい、君達、おれは「地球防衛機構」のものだ。代表者をだしたまえ」 どこからともなく突然、爆音がきこえた。夜空に「ガン=シップ」と呼ばれる攻撃用ヘリコプターが5機、飛来してくる。「我々には、君たちと話し合いをする用意がある。しかし我々に逆らえば、、」 「ガン=シップ」ヘリ1機から1本の空対地ミサイルが発射され、草原近くの森の木々が打ち倒された。その人間のならから、一人の女が、前にでてきた。何てことだ。彼女だった。(続く)●090921改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2013.11.06
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第5回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第5回 バスのとびちった部品の影に、滝が倒れていた。「滝,しっかりしろ」 滝は目をあけた。服がやぶれ、血がにじんでいた。すこし焼けこげてもいた。一、二度、頭を振って、滝は上体をおこした。不思議そうな顔をして、滝は僕をみつめていたが、ポケットに手をつっこんでから、ゆっくりといった。「日待、君はケガをしなかったのか」「ああ、そうさ、運転手は?」あたりをしばらく見渡してみた。「どうやら、ダメなようだな」 ポツリといった。 滝は、僕の目をじっとみつめ、口を開いた。「日待、どうだ、ここらでもうはっきりさせないか」その表情は、これまでの饒舌な滝のものではなかった。別人のようだった。「何のことだ。何のことを言っているのだ」僕は体をこわばらせる。「日待、いや、君の本当の名前まではわからないが、、まだ、しらばくれる気なのか。君と君の仲間のことさ」「僕の仲間?」滝は立ちあがり、少しよろけたが、僕の肩に手をかけた。「はっきりいえよ、日待。それとも」「まってくれ、滝、一体お前、どうしたんだ」そ時だ。隣にあるバスの残骸が爆発した。おもわず僕達は体をふせた。「そうだ。滝、はやく頭屋村へいこう。むこうで、君のケガをみてもらおう」「ふっつ、どうやら、頭屋村までは、君が、案内してくれるつもりらしいな」と皮肉っぽく言う。 いったい、この滝の変心は、なんだ。僕はバスの転落、体を包み込んだ緑色の光、滝の豹変、わずかの間に起こった事で混乱している。それにしても、あの緑色の光は、涙岩の色に似ている。と僕は思った。頭屋村までは、まだかなりの距離があった。僕は、滝、彼も、いや彼こそ本当の名前は何だ、、もう話をする気がしなかった。冷たい沈黙が、僕達の間にあった。が、二人は村へ向って歩きだす。滝に肩をかしていた。バスの通り道へあがり、夕ぐれの中を歩きだした。村までの風景は、僕が出かける前と、少しも変わっていなかった。おぼろげな記憶だったけれども、はっきりと一致していた。ようやく村へたどりついた時、来てはいけないところへ来た、そんな気がした。僕をよよつけない何物かがあった。体がぞくっとした。 最初に滝の傷をみてもらもらおうと思った。しかし急に「彼女」のことも思いだし、どうしても会いたいと思った。彼女の姿を浮べ、不安を振り払おうとした。 手近かの家からは光がもれている。「ごめんください。」 答えはない。「誰もいないんですか」無断で家にはいっていく。人の気配がない。隣の家家にも、同じように走っていって声をかける。やはり誰もいない。そして、不思議だが、村じゅう、物音一つしない。誰もいないのか?滝は、ポケットからタバコ箱くらいの小さな機械をとりだし操作していた。さっきから滝が触っていたのは、これだったのか。「滝、村には一人もいない。おかしい」「やっぱりな、思った通りだな」 滝は、傷のせいか、疲れた顔をしていたが、不思議に目眼だけは、力があった。獲物を前にしたハンターの眼だ。「いいか、もう、はっきりしたらどうなんだ、日待よ」「何のことをいっていろんだ。滝、君はバスが転落した時から、何をいいたいんだ。人が変ったみたいだよ」「ふう、簡単な話じゃないか。日待、最近、この田舎の、頭屋村へ来る人々が増えていたこと。パスの中で老人が言ったこと。そして、今現在、この頭屋村にはな、人っ子一人いないこと。すなわち、今日が。涙岩のくずれる日だ。今日は涙岩伝説の日だ」 僕はその意味するところに、打ちのめされる。そうか。今日が、涙岩がこわれる日に違いない。すなわち、数百年に一度の日なのだ。(続く)●090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2013.11.05
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第4回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第4回 「ええ」僕は答える。 「そうですか.僕、この路線走るのは始めてですねん。ふだんでも,このバスは,ほとんど頭屋村までいかんのですわ。最近は、客が、よういってるようだけど。本当は、これより先はいかんのなあ。いやだなあ」「バス停には、頭屋村まで通じてますの地図と張り紙がったぜ」 滝がいいかえす。 「ここからは道が、えろう悪くなるし、つづらおりの坂ばかりですわ。あまり行きたくないんですわ。頭屋村まで、まだ40分ほどかかるという話だし、途中には全然停まるとこないんですわ。」「バスで40分もかかるところ、歩いてはいけないよ」 滝がいう。「わかりました。では、こうしましょう。このバス停から先は特別料金をいただきますよ」「ボリョルナ。タタシーみたいだな」「残念ながら、ここにはタクシーはないんです。1000円余分にいりますけれど、このパスしかないんです」運転手は言い返す。「そんなこと、一言もバス停の掲示板には、書いてなかったけれどな。まあいいわ、いってよ」「すごいところだな。日待。1000円分の風景を楽しむとするか」が、僕は滝の言葉に注意を払わず、僕は彼女のことを考え始めていた。もうすぐ、あえるかもしれない。心臓がなみうち始める。汗がでる、待てよ。記憶が、、そうだ。彼女を。、、かなり昔からずっーとずっと前のことだ。僕が子供だった時よりも?、、、昔からだ?変だ。僕が子供だったことより前。。、彼女を知っていた?。どういうことだ。 僕が彼女を思うあまりに、そんな気がしたのだろうか。 いや、まちがいない。僕は彼女を大昔から知っている。 移り変わる新緑の山々、その外の景色に気をとられていた滝が、僕の思いつめた青い顔に気がつく。「どうしたんだい、日待(ひまち)、まっさおだぜ、お前の顔」 突然、バスが横に激しくゆれた。窓の景色がひと回りした。体が車体に勢いよく打ちつけられ、失神しそうになる。 突熱、僕の体を、緑色の光が包み込む。光は神立山の神腹からきていた。体の重さがなくなり、空間に浮いている。すべてのしがらみから解きはなされ、ほんとうに自由にたったような気がした。’ 僕は、緑の光につつまれ、バスが大きく回転しながら、谷間へかちていくのを、他人事のようにぼんやりとながめている。 僕の名前が呼ばれたような気がした。それも遠くの方から。 いつのまにか僕の体は、道路そば側の草の上でよこたわっている。滝のことを気づかい、起きあがり、谷の方をのぞいてみた。パスは車体がグシャとなり、崖下20mくらいで火に包まれていた。 ころばないように気をつけながら、まったく無傷の僕は、バスまで降りていった。 燃えあがるバスの残骸までたどりつき、しばらくの間呆然とながめていた。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2013.11.04
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第3回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第3回そうそう,僕、日待明の道ずれについて話すのをわすれていた。知り合いといっても最近知り合ったばかり。彼。名前は滝光一郎という。いわゆるフリーターだと本人は言っている。知り合いになった理由は、ほんの偶然で「なみだ石」をみせてしまったからなのだ。滝はとてもおもしろい奴だったが、こと、なみだ石のことではしっこく聞き、とうとう一緒に「涙岩」を見るために、頭屋村までついてくることになった。僕は滝を連れてきたくなかった。他の地域の人間には見せたくないのだ。が、滝は、不思議にあまりに執拗に食い下がった。何があるのだ。唯一の知り合いなので、無下にことわることができない。「おい、日待よ、明よ。「カンタチ」駅、この駅じゃないのか」 色んなことを考えているうちに、やっとお目当ての駅にたどりついた。 駅の出札口で、駅員(といっても契約社員か)が、私達に話をしかけてきた。 「あんたら、東京の方からきなすったかね」「ええ、そうですけれど」 僕が、答えた。「いやな。感でいうたんだが、近頃、このーカ月の間に、このカンタチ駅で降りる人がたくさんふえてね。それであんたら神立山(カンタチヤマ)の方へやっぱりいくかね」「ええ、、、やっぱりの口ですな」そらなという表情で滝は答え、僕の顔を見てニヤリと笑った。「へえ、仲間がいっぱいか。涙岩のことが知られているのか。雑誌でも紹介されたかな、さては」 僕は、僕でやはり、こない方がよかったかなあ、それにこの滝も、、と後悔しはじめる。「いや、そんなことはないはずだよ。涙岩が、どんな新聞、雑誌にも記事になたったことがない。滝、君の方がよくしってるだろう」「そうだな。神立山の方で他に何か祭事があるのか。まあ、いいや。あ、どうやらあそこがパス停らしいぞ。レンターカーはない?なにのだな。人口がないから、、商売にならんから、、か」 滝は、しゃべっている間、しきりにズボンの内ポケットの中に手をつっこんでいじりまわしている。「滝、何を、そういらいらいじくりまわしている」「いや何も」 こんどは、ジャケットの内ポケットに手をつっこんでいる。「日待よ。これは俺の個人的な性癖ってやつだ。あまりつっくっ子無と友達なくすぞ。って俺しかいないか友達は、なあ明クンよ」探し物か?僕はいぶかしく思った。内をそわそわ。つまりは、僕の存在より、カンタチヤマへの手がかりmmとして僕に近づいてきた。という疑念が僕におこる。とはゆえ、バスは、十人ほどの近くの村人達をのせて走りだす。 僕は彼女に頭屋村で会えそうな気がしてきた。彼女に会いたい。一目でいい。あの人は頭屋材出身だといっていた。駅員が神立山の方へ行く人がふえたと言っていた。ひよっとしてその中に彼女がはいっていないだろうか。いや絶対に帰っているに違いないと僕は思った。僕の、自分でいうのも何だが、このロマンスというか、純真さが後で大惨事を起こすとは。思っちゃいなかった。そして僕の人生も変えてしまうとは。それは、この田舎バスから始まったのだ。 バスは、そう考えにふけっている僕を乗せ、神立山へむかって坂を下りたり峠を上たり、森林を抜け走る。あちこちに点在した人家がたまにみえる。しかしめづかしく、でこぼこ道だ。あまり乗りごこちはよくない。「日待、何かへんな気分だな。僕の方をみているようだ」と、滝は、僕、日待明(ひまちあきら)の名前を気安く呼ぶ。「気にするなよ。僕らのかっこが目立つからだろう・・」「しかしだな。テレピというものがあるだろう。こいつら、テレビで東京の人間を見たことがないか」「滝、いいわすれていたけれど、神立山の方は日本でめずらしく電気がとおっていない。だからもちろん、テレビもみずらい。新聞・郵便物は1週間にまとめてだ」 「へえーー、まるで日本の秘境か、まだ日本にあったか、、だな」 滝がしゃぺった。 「あんたらも、神立山の方へいくだか」後の座席から、急に声がしてびっくりした。後ろには、市外地の途中のバス停で降りたらしく、もう4人しかいない。 滝がふりかえって答えた。「ええ、そうですけれど」 僕も後を見る。後の方の座席に80才くらいの男の老人がちょこんと腰掛けて、僕たちの方をにらんでいる。「僕は、頭屋村(トウヤムラ)の出なんです。頭屋村へかえるんです」 僕が答えた。「へえ,、そうかいね。,頭屋村のもん近頃、ようバスにのっとるで。また危ない」「また頭屋村で人がようけいてなくなるやろらだろう・・」「あんた、そのこというたらいかんがね」老人の隣にいる老婆が、きつい調子でたしなめた。「そうやったな。あのこと、を、しゃべったら、それも他の村のものがいうたら、タタリがあるのやなあ。クワバラ、タワバラやは」「おじいさん、ひょっとしたら涙岩伝説のことと違う」滝がしゃぺった。老人達は、しわい顔をしてだまりこむ。パスの中は、異様なふんいきだった。やがて、老婆が訟もいきったようすでいった。「そっちのにいちゃは、頭屋村の人だけど、いま、あのことをいったにんちゃは。村の人と違うようだね。そのことは、口にせん方が身のためだ」「これや、これ」今度は、老人の方が老婆をたしなめた。いっているのが聞こえてくる。「ちえっ、しったことかいな」 滝が後を見ずに悪態をつく。 その老人達は、次のパス停で降りていった。残りの2人も山の中に点在するバス停で逃げるよう降りていった。 奥深い山の中を走るパスの中には僕たち二人だけ。 年の若いニキピづらの運転手が、バスを止め、座席から振り返り話しかけてきた。迷惑そうに、たづねる。 「あんたら、キクけどさ。本当に頭屋村までいくの?」(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2013.11.03
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第2回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第2回 正直にいうと実は、「なみだ石」を一つ持っているのだ。 東京へでてからの僕は人づきあいの悪い人間だった。特異な風貌、まるで禁欲的な僧侶にみえた。なみはずれた長身、それにどことなく体から発する毅然たる態度。 こんな僕でも恋はする。 その彼女、香月和子(こうつきかずこ)に出会ったのは、去年の十二月。仕事の関係で知り合った。 彼女の眼をみた僕ははっととする。同じ種類の入間だ。 僕は彼女に必死で話しかけ、最後には彼女が同じ頭屋村の出だとわかった。幼ない頃、村を出た僕が知らないはずだった。彼女と知り合い、それ以後倹は彼女にひかれていた。ずっと昔から彼女を愛しているように思えた。それからの僕の行動は、あらゆることを投げすて、彼女に会うこと、それがわびしかった生活をなぐさめる生きる力。 けれども、彼女にはどこか近づきがたいところがあった。外見は20才くらいにみえるのだが。僕と話をすると、僕がたちうちできほいほどの知識をもっていた。まるで何百年もいきているように感じられた。「あなたと同じようが寂しい眼をしている人々、この世の中そう地球といってもいいわ、でやさし過ぎて生きてはいけない人々をさがし、そんな人達を幸福にみちびいてあげるのが私なの」 ある時、彼女は私の眼をじっとのぞきこみながらいった。「でも残念ながら、あなたは私達の仲間にはなれない」「仲間だって」「そう仲間よ。一緒に長い旅にてる仲間」「旅?」「私達、旅立つ日が近づいている」 彼女はさびしそく言う。「二度と、、、「会えなくなる」「そんな」「悲しい?。そう、、これをあげる」 彼女が僕にわたしてくれたのは、ちっぽけな石。「これは何」 僕は立ちあがった彼女を見上げながらたずねた。「なみだ石」 彼女は去っていった。「なみだ石」 僕はつぶやく。きらきら光るそのなみだ石をじっとながめる。彼女のあとは追いかけなかった。 なみだ石、聞いたことがある。その時はっきり思いだせなかった。そうだ、ときずいた僕はさっそく下宿にとんでかえる。もう一度、なみだ岩伝説の事を読みかえす。 そして、決心した。涙岩をみよう。ふるさとへ帰ろう、、と。(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2013.11.02
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第1回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 僕達2人は、乗りごこちの悪いローカル線に乗っている。列車は。僕の故郷に向かっていた。故郷といってもあまり記憶はない。親戚もいない。僕は都会の中で一人、孤独で何年も住んでいた。あるきっかけで故郷へ帰ろうと思った。 奈良県、和歌山県、三重県の3県の県境にあるふるさと。ふるさとといっても本当に伺のとりえもない山間の小さな村だ。それこそ、一日に三本あるかないかの鉄道、駅からパスに、パスの終点から山道、そま道を歩み、やっと、その土地、頭屋村(とうやむら)へたどりつくことができる。 帰ったところで、誰も僕を喜んでむかえてくれるわけではない。 僕、日待明(ひまちめい)は頭屋封へ、何年もの町中の生活で得た悲しみ、体の中にたまりすぎた汚れを、洗いおとすために帰る。苦しみは僕の体をむしばんでいるのだ。なみだ岩に、行き着き、そこで涙を流すことで、僕は幸せになれるだろう。いや少なくとも、過去の傷を、いくぱくかいやすことができるだろう、と僕は考えていた。僕の生まれた頭屋村は、「神立山」と呼ばれる深山の中にある。奥深い、あまり人も、森林伐採でしか入れない「神立山」の森の中に「なみだ岩」と呼ばれる岩がある。「なみだ岩」のまわりは、不思議と草が刈りとられたような芝の多い草原になっている。その草原を深い森がかこんでいる。「なみだ岩」はわかりにくい場所にあり、頭屋村出身でない者はたどりつくことができがタイ。涙岩は高さおよそ15mくらい。頂上はとんがっていて、底に向かって広がっている。土の中に岩の半分ほどが、うまっている感じだ。全体は緑がかった乳白色で、表面は人が毎日みがいていると錯覚するほど光り輝いている。遠くから見ると、涙のしずくが空からかちてきて、地球につきささったようなのだ。、、、と詳しく知っているようだが、僕は父が亡くなったあと、すぐ頭屋村を出て、遠い親戚をたより、東京にでていった。5才の頃の話だったから、なみだ岩についてくわしく覚えているわけではないのだ。この「なみだ岩」にのぼり、その上で涙を流し、「なみだ岩」に、涙がしみこんでいくなら、その人は幸せになるという伝説がある。この「なみだ岩」伝説を知ったのは、ふとしたきっかけだった。親戚から東京に送られてき、父の形見を整理していた時、父の日記を見つける。古ぼけたページを,めくっているうちに、こんな記述にであったのだ。「涙岩は 何百年かに一度、必ず崩壊する。そして、その跡には、指でつまめるほどの小さなかけらが残る。人はこれを原石と呼ぶがたま、そのあとに残ることがある。なみだ石のほとんどは夜空に舞いあがっていく。そしてなみだ岩はきれいになくなっていて、あとには大き々穴があいている。まわりの草原も焼けただれている。この話は、先祖代々に渡り、頭屋村に住んでいる者のみに語りつがれている。」と、、、 僕は子供の頃見たことのある「なみだ岩」を、もう一度、はっきりとこの眼にしたい。涙を流したいと思う。あれほど美しい原岩がこわれぱ、どれほどの「なみだ石」ができるのだろう。涙岩の美しくくずれる瞬間、それをながめたい。 さいわい、「なみだ岩」についてはあまり知られていない。もし旅行維誌がとりあげれば、一たちまち大勢の人でうめられてしまうだろう。 しかし、神立山は観光ルートからはなれた辺境で、訪れる人はほどんどない。「なみだ岩」は、ごくわずかの人しか知られていない。たとえ、「なみだ岩」のことを土地以外の人が知っでも、「なみだ岩」で悲しみをとりのぞいてもらい、本当に幸福になりたいと思う人にしか「なみだ岩」の場所を教えてはならないのだ。僕の行動は、あらゆることを投げすて、その「涙岩」に行きつけたい。と思った時から始まっていた。(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2013.11.01
「源義経黄金伝説」 飛鳥京香源義経黄金伝説の宣伝●http://plaza.rakuten.co.jp/rekishistory/お盆の小説サービス源義経黄金伝説■第58回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所★漫画通信教育「マンガ家になる塾」★★you tube★■ 1190年(建久元年) 河内国葛城弘川寺葛城の弘川寺に西行はいる。 背後には葛城山脈が河内から紀州に南北に広がり河内と奈良古京の道をふさいでいる。庵の文机に向かい、外の風景を見ていた西行は、いにしえの友を思い起こしていた。平泉を陰都にする企ては、昨年の源頼朝の「奥州成敗」により、ついえていた。おもむろにつぶやく。「我が目的も、源頼朝殿の手によって潰えたわ。まあ、よい。源義経殿、またその和子、源善行殿も生きておられれば、あの沙金がきっと役に立つだろう」西行は、崇徳上皇のため、平泉を陰都にしょうとした。また、奥州を仏教の平和郷であり、歌道「しきしま道」の表現の場所にしょうとした。それが、鎌倉殿、源頼朝の手で費えたのである。西行はぼんやりと裏山の方、葛城山を見つめている。季は春。ゆえに桜が満開である。「平泉の束稲山の桜も散ったか。俺の生涯という桜ものう……」桜の花びらが散り、山全体が桃色にかすみのように包まれている。「よい季節になったものだ」西行はひとりごちながら、表へ出た。何かの気配にきずいた西行は、あたりをすかしみる。「ふふつ、おいでか?」と一人ごちる。 そして、枝ぶりのよい桜の枝をボきボキと折り、はなむけのように、枝を土に指し始めた。ひとわたり枝を折り、草かげの方に向かって、話しかけた。「準備は調いましたぞ。そこにおられる方々、出てこられよ。私が、西行だ。何の用かな」音もなく、十人の聖たちが、草庵の前に立ち並んでいた。「西行殿、どうぞ、我らに、秀衡殿が黄金のありか、お教えいただきたい」「が、聖殿、残念だが俺らの道中、悪党どもに襲われ、黄金は、すべて奪い去られてしもうた」「ふつ、それは聞けませぬなあ。それに西行殿は、もう一つお宝をお持ちのはず」「もう一つの宝とな。それは」西行の顔色が青ざめた。「そうじゃな、秀衡殿が死の間際に書き残された書状。その中には奥州が隠し金山の在りかすべて記していよう」「よく、おわかりだな。が、その在りかの書状のありかを、お前様がたにお教えする訳にはいかぬよ」「だが、我らはそういう訳にもいかん」「私も、今は亡き友、奥州藤原秀衡殿との約束がござる。お身たちに、その行方を知らす訳にはいかぬでな」「西行、抜かせ」聖の一人が急に切りかかって来た。西行は、風のように避けた。唐突にその聖がどうと地面をはう。その聖の背には大きな桜の枝が1本、体を、突き抜けている。西行、修練の早業であった。「まて、西行殿を手にかけることあいならぬ」片腕の男が、前に出て来ている。「さすがは、西行殿。いや、昔の北面の武士、佐藤義清殿。お見事でござる」西行は何かにきづく。「その声は、はて、聞き覚えがある」 西行は、その聖の顔をのぞきこむ。「さよう、私のこの左腕も御坊のことを覚えてござる」「ふ、お前は太郎左か。あのおり、命を落としたと思うたが…」いささか、西行は驚いた。足利の庄御矢山の事件のおりの、伊賀黒田庄悪党の男である「危ういところを、頼朝様の手の者に助けられたのじゃ。さあ、西行殿、ここまで言えば、我々が何用できたか、わからぬはずはありますまい」「ふ、いずれにしても、頼朝殿は、東大寺へ黄金を差し出さねばのう。征夷大将軍の箔が付かぬという訳か。いずれ、大江広元殿が入れ知恵か」西行はあざ笑うように言い放った。「西行殿、そのようなことは、我らが知るところではない。はよう、黄金の場所を」「次郎左よ、黄金の書状などないわ」「何を申される。確か、我々が荷駄の後を」「ふふう、まんまと我らが手に乗ったか。黄金は義経殿とともに、いまはかの国にな」「義経殿とともに。では、あの風聞は誠であったか。さらばしかたがない。西行殿、お命ちょうだいする。これは弟、次郎左への手向けでもある」「おお、よろしかろう。この西行にとって舞台がよかろう。頃は春。桜の花びら、よう舞いおるわ。のう、太郎左殿、人の命もはかないものよ。この桜の花びらのようにな」急に春風が、葛城の山から吹きおち、荒れる。つられて桜の花片が、青い背景をうけて桃色に舞踊る。「ぬかせ」 太郎左は、満身の力を込めて、右手で薙刀を振り下ろしていた。が、目の前には、西行の姿がない。「ふふ、いかに俺が七十の齢といえど、あなどるではないぞ。昔より鍛えておる」恐るべき跳躍力である。飛び上がって剣先を避けたのだ。「皆のものかかれ、西行の息の根を止めよ」弘川寺を、恐ろしい殺戮の桜吹雪が襲った。桜の花びらには血痕が。舞い降りる。西行庵の地の上に、揺れ落ちる桜花びらは、徐々に血に染まり、朱色と桃色がいりまじり妖艶な美しさを見せている。「まてまて、やはり、お主たちには歯が立たぬのう」大男が聖たちの後ろから前へ出てくる。西行は、その荒法師の顔を見る。お互いににやりと笑う。「やはりのう、黒幕はお主、文覚殿か」「のう、西行殿。古い馴染みだ、最後の頼みだ。儂に黄金の行方、お教えくださらぬか」西行はそれに答えず、「文覚殿、お主は頼朝殿のために働いていよう。なぜだ」「まずはわしが、質問に答えてくれや。さすれば」「お前は確か後白河法皇の命を受け、頼朝様の決起を促したはず。本来ならば、後白河法皇様の闇法師のはず、それが何ゆえに」西行は不思議に思っていた。文覚は、後白河法皇の命で頼朝の決起を促したのだ。「俺はなあ、西行。頼朝様に惚れたのだ。それに東国武士の心行きにな。あの方々は新しき国を作ろうとなっておる。少なくとも京都の貴族共が、民より搾取する国ではないはずだ。逆にお主に聞く。なぜ西行よ、秀衡殿のことをそんなにまで、お主こそ、後白河法皇様のために、崇徳上皇のためにも、奥州平泉を第二の京都にするために、働いていたのではなかったのか。それに、ふん、しきしま道のためにも、、」「ワシはなあ、文覚殿。奥州、東北の人々がお主と同じように好きになったのだ。お主も知ってのとおり、平泉王国の方々は元々の日本人だ。京都王朝の支配の及ばぬところで、生きてきた方々。もし、京都と平泉という言わば二つの京都で、この国を支配すれば、もう少し国の人々が豊かに暮らせると思うたのだよ」文覚は納得した。「ふふ、貴様とおれ。いや坊主二人が、同じように惚れた男と国のために戦うのか」文覚はにやりと笑う。「それも面白いではないか、文覚殿。武士はのう、おのが信じるもののために死ぬるのだ」西行もすがすがしく笑う。「それでは、最後の試合、参るか」文覚は八角棒を構えた。西行は両手を構えている。八角棒は、かし棒のさきを鉄板で包み、表面に鉄びょうが打たれている。「西行、宋の国の秘術か」「そうよ、面白い戦いになるかのう」(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所作 「源義経黄金伝説」 飛鳥京香Manga Agency山田企画事務所★漫画通信教育「マンガ家になる塾」★★you tube★
2012.08.13
主催:伊丹市立産業・情報センター、伊丹商工会議所 共催:日本イベント業務管理者協会関西地域本部のコンテンツセミナー予定です。コンテンツセミナー告知ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー1.-クリエイターをめざす人の心得を学ぼう-クリエイター基礎セミナー(入門編)http://www.meditam.org/seminar/20110723/index.html映像・漫画・アニメなどのコンテンツ産業にかかわる、各種企業へのプレゼンテーション能力が必要な学生や若手クリエイターの方々を対象に、コンテンツ産業はじめ企業等への企画提案・PRするために必要となるアイデア発想法・新人教育の方法を、フリーの若手イラストレーターの仕事を参考事例として講義します。開催日時 ◆平成24年6月23日(土)14:00~16:30講 師◆1.「企画・アイデア発想法(映像・アニメ・小説・携帯電話コンテンツ等の企画)」 メディアクリエイター・夢人塔代表 浅尾典彦氏伊丹クリエイターセミナー講師浅尾先生、自著(青心社)を説明。 (去年2011年撮影)2012年のセミナー実施日をお間違いなく。◆2.「イラストレーターの仕事(イラストの描き方、代理店・デザイン会社へのアプローチ方法)」 北垣絵美氏イラストレーター・kitagaki_emi北垣 絵美/作品プレゼン料 金 ◆無料会 場 ◆伊丹商工プラザ4階会議・研修室A定 員 ◆先着80名対 象 ◆コンテンツクリエイターを目指す学生/就職を希望する若手クリエイター等主催:伊丹市立産業・情報センター、伊丹商工会議所 共催:日本イベント業務管理者協会関西地域本部http://www.jedis.org/concept.htmlhttp://plaza.rakuten.co.jp/jediskansai/協力:山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/《お申込み》 伊丹市立産業・情報センター〒664-0895 兵庫県伊丹市宮ノ前2-2-2TEL 072-773-5007 URL http://www.meditam.org/FAX 072-778-6262 Mail postmaster@meditam.orghttp://www.meditam.org/access/index.htmlーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2012.06.16
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第8回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第8回ー最終回私が目をあけると、ヘリはすべて夜空から消えていた。残滓が飛び散っていた。滝は、滝であった生物は、緑色の光を櫛びた物質に変化していた。私は草原に腰をおろし、涙岩をながめていた。手になみだ石をにぎりしめていた。 リーラが私の側まで歩いてきた。 しばらくだまって私をながめていた。 「さっき、パスの転落の時助けてくれたのは君だね、リーラ」 「そう私。あの滝という人に来てほしくなかったのでパスを落としたの。バスの運転手も地球防衛機構の一員だった」 思わず、私たちはお互いを抱きあい、耳元で小さな声でささやいた。「きようならミユー」 そして、私は涙岩の方へかえっていくリーラに同じように小さい声でつぶやいた。「さようなら、リーラ」 さようならを言った時、リーラの目にも涙が浮んでいた。それは、私がいま手にしているなみだ石とよく似ていた。 リーラは罪人の私に最後の別れの機会をあたえてくれたのだった。もちろん規則違反だ。私という罪人に、本当の記憶をとりもどすきっかけをあたえ、私達の星への帰還をみかくらせるのは。 私は、彼女達の旅立ちを、最後まで見届けようと決心した。 彼女達、それからこの穢れた地球から逃れる人間達は、涙岩のまわりに整列した。涙岩がまた輝きを増し、緑の光が彼女達をとりかこむように、みえた。 やがて彼女リーラ達の体は、涙岩が発する緑の光の中でだんだん小さくなっていき、しまい脚は見えなくなっていった。 光り輝く涙岩の表面に小さなひびがはいっていき、まもなく、ひびは、涙岩全体を覆った。緑色の光はオレンジ色に代わり、涙岩の端から、はじかれるようにくづれていく。このかけらは緑色に戻る。細かいなみだ石の集団は、人々が圧縮され乗り込んだ宇宙船なのだが、しばらく空間にとどまっていた。そして、突然に、夜空の中に、すいあげられるように上昇していく。もう、地球防衛機構の防御手段では、手に終えない存在となった。残った涙岩の部分は、崩れる速度がしだいに早くなり、最後には、爆発を起こしたように四方に飛び散り、最後には、涙石の集団の方へ、引きつかれていった。別れの花火のようだった。なみだ石の集りが、すべて、夜空に吸い込まれていくのを、私は最後までながめていた。私の手の中には、リーラから渡された「なみだ石」が残っている。思わず握り締める。リーラの体の温もりが思い出された。この地球に、、一人、、取り残されたのだ。癒される事のない寂しさ。私ミユーは、なみだ石を握り締め、今までの2000年分の、、過去の自分の歴史と、これから、長く続くであろうこの地球での、長い長い日々を思った。私はかっての地球人としての生活や歴史を追っていくだろう。時間はとりもどすことはできない。でも、たぶん場所はとりもどせる。場所の記憶がある。それは、地球人として私の子孫を訪れる旅になるはずだ。祖先として子孫を、、急に、私は、その時代、時代と愛していた女たち、子供たちを思い起こしていた。その場所をたずねる、長い旅が、私を待っているだろう。「リーラ」と、思わず叫んだ。叫びとともに、私のほほを、生暖かいものが流れ、それがなみだ石に染み込んでいった。(完)20111210改定1975年作品(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.08
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第7回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第7回「私が、代表者です。名前はリーラです」 それから、ゆっくりと僕の存在をわかり、みつめ、悲しそうな顔をした。「やっばり、来てしまったわね。ミユー。間違いだったわ、あなたに会ったのは。これで最後だと思いあなたに会った。失敗だったわ。私は、あなたをつれていくことは、、やはり、できないのですもの」 リーラ、そうだ。彼女はリーラだった。ミユー。それが私、日待明の本名?僕の、、いや、私の頭の中で何かが爆発した。私の記憶の総てが急激に、、甦ってきた。リーラ、彼女は私の妻だった。いや、今も私ミユーの妻だ。 はるか昔、我々は、この地球に降り立った。我々は目的遂行のため、この地球に一定期間、滞在することになっていた。だが、第10次探険隊長の私ミユーは、ふとしたことで、この地球上で罪を犯してしまったのだ。私達の星の法律及び裁判に依り、私はこの星への追放刑に処せられた。第10次探険隊長の私ミユーは、この地球に,永遠に住まざるを得ないのだそして同時に、私の記憶は分解された。偽りの記憶が埋め込まれたのだ。 1年前に、「リーラ」に会い、別れの記念に「涙石」を与えられた。その涙石が、ここで記憶をとりもどすきっかけとなった。今の自分に戻った私の意識。 滝が、リーラ達にむかい、何かを必死に訴えている。が、私は、私自身の過去の記憶を、何とかたぐりよせる事に努力し、上の空だった。「私は地球防衛機構を代表して話している。君達は、なぜ地球人をつれさろうとするのだ。すでに多くの地球人が、いままでに君達によってつれさられている」滝という名の男の声が耳に入ってきている。 リーラは、ゆっくりと微笑んで、余裕のある態度で返事をかえす。「滝さん。いい。ですか」リーラは、回りに不安げにたたづむ人々を両手でしましながら、諭すように言った。「この人達は地球では住めない人達なの。善良すぎて。この汚れた梅球ではね」「ふつ、善良すぎるだと?リーラ。ここは我々の星だ。そして彼らは我々人類の仲間なのだ」「ねえ、滝さん、彼らがこの地球を去るかどうかは、自分達がきめる事よ」 私の、今までの記憶、過去はすべて造られたものだった。この村で生まれ、育ったということ。それもすぺて彼女らに、つまり仲間遠に作られた記憶だ。 私達が、この星地球をはじめて見た時のことを私。ミューは思い出す。地球は本当に美しかった。そうなのだ。夜空の中に浮ぶ「なみだ石」のようだった。 あれから何年たってしまったろう。今まで20才であると思っていた僕「日待明」は、地球の上で少なくとも2000年暮らしていた私「ミュー」を発見する。 裁判の決果、有罪と決めつけられた私は、何人分もの地球人の人生を一人で,歩んできたのだった。仲間は私の体に特殊処置を施した。私は私個有の記憶をなくし、地球人幾人分かの生と死を味わったのだ。今の今まで、私自身を忘れさっていた。 あの日記、このなみだ石のことを書いた父の日記は誰のものだろうか。おそらく私はリーラがそう仕掛けたと思う。副隊長であったリーラは、自分達、第10次探険隊が引きあげる時が近づいたことを知せるためにだ。この20才の僕「日待明」の人格、頭屋村の生まれであるという記憶が、最後に作られていたのもりーラのしわざだろう。「地球追放刑」を受けた私を、彼女の旅立ちの時に、涙岩のところまで来させたかったのだろう。たてまえとしては、来させてはいけないのだが、彼女の本音は、やはり、ここに、別れに来てほしかったに違いない。 滝は、本当の名前は知らないが、まだ、必死でりーラ達と話をしていた。彼女達をとめようとしていた。涙岩の上で、涙をながさざるをえないような心のやさしい人達、今の地球に住むには心やさしすぎる地球人達、そんな人達を、我々の星に連れてかえるのが私達の使命だ。しかし、そんなことは、今の私には、かかわりあいがない。 滝は、地球防衛組織の一員だ。そしてどういうきっかけかはしらないが、私が地球人ではないことを知り、「涙岩」の場所をつきとめるために、私について、この神立山に来たのだろう。かわいそうな地球人たち、、、私は常に思う。どうやら、滝は力にうたえるらしい。近くの森の上を旋回していたヘリ5機が、急速に近づいてきた。草原と涙岩と人々の間に、ヘリからのサーチライトの光条が飛び交う。 それまで輝いていた「涙岩」がもっと光を増しはじめた。 一瞬、涙岩からの閃光が私の目を射た。そして、大きな音が聞こえ、衝撃が襲う。(続く)●090921改訂●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.07
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第6回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第6回 人々の悲しみの涙を集めた涙岩が、粉粉になる。その涙岩のかけら、「なみだ石」が、緑色、瑠璃色の光を放ちながら、漆黒の闇の中へ、消えていくはずなのだ。今日がその日だ。 「君も芝居がうまいね、日待クン。いや本当の名前は何というのかな」ふっと滝は鼻で笑いながらいう。しみじみと、僕を馬鹿にしている。でも僕は理解できないでいる。ゆっくりと、滝が口を開いた。「それじゃな。日待クンという名のコードネームをもつ男よ。「なみだ石」のところまで案内してもらおうか」「わからないんのだ。覚えていないのだ」僕はあわてて、ごまかそうとする。「でまかせをいうな。さっき、村にたどりつく前に、この山腹の方で光がちらちらと見えていた。あのあたりが涙岩の位置じゃないのかな、なあ日待クンよ」「おおっと。そうそう。忘れるところだったな。これが必要だろうな、これからはな」 滝は短針銃(ニードルガン)をジャケットのポケットからと取り出し、それを僕に向けた。短針銃(ニードルガン)は、超小型の針を限りなくばら撒く対人殺傷兵器だ。が、僕はなぜ、それを知っているのか?自分の知識におののく。「滝、よせ、あぷないじゃないか。短針銃を、、」「おおつと。なぜ、危ないとわかる?短針銃とわかる?ふふん」「僕は、、一体、誰だ、、、」「もうよせ、日待クン,もう、すでにネタはあがっているぞ」世の中がまるで180度回転したみたいだ。僕はあきらめ、滝を後に、「涙岩」にむかい歩き始めた。もちろん、滝は右手にその究極の殺人兵器、短針銃を構え、用心深くぴったりと僕の背中に照準あわせているのだ。涙岩へは小一時間ほどかかった。悪路だった。村人以外は、知らないよりな迷路のような道だ。滝は先程、事故に出会ったばかりと思えないようなタフさでついてきた。この頑丈さは。何者なのだ。それと同じように、僕はいったい誰なのだ。何者なのだ。「まて、日待クン」滝は、道の徒切れていて、僕を止める。山道がおわり丘が盛り上がり、そこからは草原の盆地になっていて、そこに人の気配がした、樹木のそばに隠れる。涙岩のまわりには二百人ほどの人が集まっていた。村人以外の人が、かなりいるようだ。あきらかに、村の人口よりは多い。気づかれないように、そっと草陰から眺める。涙岩は緑色からルリ色へ、色々な透き通った色眼光を変え輝いていた。 人々の顔がはっきり見え始めた時、滝がいった。「ようし、日待クン、ここまでだ。いい眺めじゃないか」 それから、僕達の出現に気づいていない人々に、隠れていた岡の上から姿を見せ見下ろし大声で叫んだ。「おい、君達、おれは「地球防衛機構」のものだ。代表者をだしたまえ」 どこからともなく突然、爆音がきこえた。夜空に「ガン=シップ」と呼ばれる攻撃用ヘリコプターが5機、飛来してくる。「我々には、君たちと話し合いをする用意がある。しかし我々に逆らえば、、」 「ガン=シップ」ヘリ1機から1本の空対地ミサイルが発射され、草原近くの森の木々が打ち倒された。その人間のならから、一人の女が、前にでてきた。何てことだ。彼女だった。(続く)●090921改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.11.06
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第5回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第5回 バスのとびちった部品の影に、滝が倒れていた。「滝,しっかりしろ」 滝は目をあけた。服がやぶれ、血がにじんでいた。すこし焼けこげてもいた。一、二度、頭を振って、滝は上体をおこした。不思議そうな顔をして、滝は僕をみつめていたが、ポケットに手をつっこんでから、ゆっくりといった。「日待、君はケガをしなかったのか」「ああ、そうさ、運転手は?」あたりをしばらく見渡してみた。「どうやら、ダメなようだな」 ポツリといった。 滝は、僕の目をじっとみつめ、口を開いた。「日待、どうだ、ここらでもうはっきりさせないか」その表情は、これまでの饒舌な滝のものではなかった。別人のようだった。「何のことだ。何のことを言っているのだ」僕は体をこわばらせる。「日待、いや、君の本当の名前まではわからないが、、まだ、しらばくれる気なのか。君と君の仲間のことさ」「僕の仲間?」滝は立ちあがり、少しよろけたが、僕の肩に手をかけた。「はっきりいえよ、日待。それとも」「まってくれ、滝、一体お前、どうしたんだ」そ時だ。隣にあるバスの残骸が爆発した。おもわず僕達は体をふせた。「そうだ。滝、はやく頭屋村へいこう。むこうで、君のケガをみてもらおう」「ふっつ、どうやら、頭屋村までは、君が、案内してくれるつもりらしいな」と皮肉っぽく言う。 いったい、この滝の変心は、なんだ。僕はバスの転落、体を包み込んだ緑色の光、滝の豹変、わずかの間に起こった事で混乱している。それにしても、あの緑色の光は、涙岩の色に似ている。と僕は思った。頭屋村までは、まだかなりの距離があった。僕は、滝、彼も、いや彼こそ本当の名前は何だ、、もう話をする気がしなかった。冷たい沈黙が、僕達の間にあった。が、二人は村へ向って歩きだす。滝に肩をかしていた。バスの通り道へあがり、夕ぐれの中を歩きだした。村までの風景は、僕が出かける前と、少しも変わっていなかった。おぼろげな記憶だったけれども、はっきりと一致していた。ようやく村へたどりついた時、来てはいけないところへ来た、そんな気がした。僕をよよつけない何物かがあった。体がぞくっとした。 最初に滝の傷をみてもらもらおうと思った。しかし急に「彼女」のことも思いだし、どうしても会いたいと思った。彼女の姿を浮べ、不安を振り払おうとした。 手近かの家からは光がもれている。「ごめんください。」 答えはない。「誰もいないんですか」無断で家にはいっていく。人の気配がない。隣の家家にも、同じように走っていって声をかける。やはり誰もいない。そして、不思議だが、村じゅう、物音一つしない。誰もいないのか?滝は、ポケットからタバコ箱くらいの小さな機械をとりだし操作していた。さっきから滝が触っていたのは、これだったのか。「滝、村には一人もいない。おかしい」「やっぱりな、思った通りだな」 滝は、傷のせいか、疲れた顔をしていたが、不思議に目眼だけは、力があった。獲物を前にしたハンターの眼だ。「いいか、もう、はっきりしたらどうなんだ、日待よ」「何のことをいっていろんだ。滝、君はバスが転落した時から、何をいいたいんだ。人が変ったみたいだよ」「ふう、簡単な話じゃないか。日待、最近、この田舎の、頭屋村へ来る人々が増えていたこと。パスの中で老人が言ったこと。そして、今現在、この頭屋村にはな、人っ子一人いないこと。すなわち、今日が。涙岩のくずれる日だ。今日は涙岩伝説の日だ」 僕はその意味するところに、打ちのめされる。そうか。今日が、涙岩がこわれる日に違いない。すなわち、数百年に一度の日なのだ。(続く)●090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.10.05
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第4回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第4回 「ええ」僕は答える。 「そうですか.僕、この路線走るのは始めてですねん。ふだんでも,このバスは,ほとんど頭屋村までいかんのですわ。最近は、客が、よういってるようだけど。本当は、これより先はいかんのなあ。いやだなあ」「バス停には、頭屋村まで通じてますの地図と張り紙がったぜ」 滝がいいかえす。 「ここからは道が、えろう悪くなるし、つづらおりの坂ばかりですわ。あまり行きたくないんですわ。頭屋村まで、まだ40分ほどかかるという話だし、途中には全然停まるとこないんですわ。」「バスで40分もかかるところ、歩いてはいけないよ」 滝がいう。「わかりました。では、こうしましょう。このバス停から先は特別料金をいただきますよ」「ボリョルナ。タタシーみたいだな」「残念ながら、ここにはタクシーはないんです。1000円余分にいりますけれど、このパスしかないんです」運転手は言い返す。「そんなこと、一言もバス停の掲示板には、書いてなかったけれどな。まあいいわ、いってよ」「すごいところだな。日待。1000円分の風景を楽しむとするか」が、僕は滝の言葉に注意を払わず、僕は彼女のことを考え始めていた。もうすぐ、あえるかもしれない。心臓がなみうち始める。汗がでる、待てよ。記憶が、、そうだ。彼女を。、、かなり昔からずっーとずっと前のことだ。僕が子供だった時よりも?、、、昔からだ?変だ。僕が子供だったことより前。。、彼女を知っていた?。どういうことだ。 僕が彼女を思うあまりに、そんな気がしたのだろうか。 いや、まちがいない。僕は彼女を大昔から知っている。 移り変わる新緑の山々、その外の景色に気をとられていた滝が、僕の思いつめた青い顔に気がつく。「どうしたんだい、日待(ひまち)、まっさおだぜ、お前の顔」 突然、バスが横に激しくゆれた。窓の景色がひと回りした。体が車体に勢いよく打ちつけられ、失神しそうになる。 突熱、僕の体を、緑色の光が包み込む。光は神立山の神腹からきていた。体の重さがなくなり、空間に浮いている。すべてのしがらみから解きはなされ、ほんとうに自由にたったような気がした。’ 僕は、緑の光につつまれ、バスが大きく回転しながら、谷間へかちていくのを、他人事のようにぼんやりとながめている。 僕の名前が呼ばれたような気がした。それも遠くの方から。 いつのまにか僕の体は、道路そば側の草の上でよこたわっている。滝のことを気づかい、起きあがり、谷の方をのぞいてみた。パスは車体がグシャとなり、崖下20mくらいで火に包まれていた。 ころばないように気をつけながら、まったく無傷の僕は、バスまで降りていった。 燃えあがるバスの残骸までたどりつき、しばらくの間呆然とながめていた。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.10.04
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第3回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第3回そうそう,僕、日待明の道ずれについて話すのをわすれていた。知り合いといっても最近知り合ったばかり。彼。名前は滝光一郎という。いわゆるフリーターだと本人は言っている。知り合いになった理由は、ほんの偶然で「なみだ石」をみせてしまったからなのだ。滝はとてもおもしろい奴だったが、こと、なみだ石のことではしっこく聞き、とうとう一緒に「涙岩」を見るために、頭屋村までついてくることになった。僕は滝を連れてきたくなかった。他の地域の人間には見せたくないのだ。が、滝は、不思議にあまりに執拗に食い下がった。何があるのだ。唯一の知り合いなので、無下にことわることができない。「おい、日待よ、明よ。「カンタチ」駅、この駅じゃないのか」 色んなことを考えているうちに、やっとお目当ての駅にたどりついた。 駅の出札口で、駅員(といっても契約社員か)が、私達に話をしかけてきた。 「あんたら、東京の方からきなすったかね」「ええ、そうですけれど」 僕が、答えた。「いやな。感でいうたんだが、近頃、このーカ月の間に、このカンタチ駅で降りる人がたくさんふえてね。それであんたら神立山(カンタチヤマ)の方へやっぱりいくかね」「ええ、、、やっぱりの口ですな」そらなという表情で滝は答え、僕の顔を見てニヤリと笑った。「へえ、仲間がいっぱいか。涙岩のことが知られているのか。雑誌でも紹介されたかな、さては」 僕は、僕でやはり、こない方がよかったかなあ、それにこの滝も、、と後悔しはじめる。「いや、そんなことはないはずだよ。涙岩が、どんな新聞、雑誌にも記事になたったことがない。滝、君の方がよくしってるだろう」「そうだな。神立山の方で他に何か祭事があるのか。まあ、いいや。あ、どうやらあそこがパス停らしいぞ。レンターカーはない?なにのだな。人口がないから、、商売にならんから、、か」 滝は、しゃべっている間、しきりにズボンの内ポケットの中に手をつっこんでいじりまわしている。「滝、何を、そういらいらいじくりまわしている」「いや何も」 こんどは、ジャケットの内ポケットに手をつっこんでいる。「日待よ。これは俺の個人的な性癖ってやつだ。あまりつっくっ子無と友達なくすぞ。って俺しかいないか友達は、なあ明クンよ」探し物か?僕はいぶかしく思った。内をそわそわ。つまりは、僕の存在より、カンタチヤマへの手がかりmmとして僕に近づいてきた。という疑念が僕におこる。とはゆえ、バスは、十人ほどの近くの村人達をのせて走りだす。 僕は彼女に頭屋村で会えそうな気がしてきた。彼女に会いたい。一目でいい。あの人は頭屋材出身だといっていた。駅員が神立山の方へ行く人がふえたと言っていた。ひよっとしてその中に彼女がはいっていないだろうか。いや絶対に帰っているに違いないと僕は思った。僕の、自分でいうのも何だが、このロマンスというか、純真さが後で大惨事を起こすとは。思っちゃいなかった。そして僕の人生も変えてしまうとは。それは、この田舎バスから始まったのだ。 バスは、そう考えにふけっている僕を乗せ、神立山へむかって坂を下りたり峠を上たり、森林を抜け走る。あちこちに点在した人家がたまにみえる。しかしめづかしく、でこぼこ道だ。あまり乗りごこちはよくない。「日待、何かへんな気分だな。僕の方をみているようだ」と、滝は、僕、日待明(ひまちあきら)の名前を気安く呼ぶ。「気にするなよ。僕らのかっこが目立つからだろう・・」「しかしだな。テレピというものがあるだろう。こいつら、テレビで東京の人間を見たことがないか」「滝、いいわすれていたけれど、神立山の方は日本でめずらしく電気がとおっていない。だからもちろん、テレビもみずらい。新聞・郵便物は1週間にまとめてだ」 「へえーー、まるで日本の秘境か、まだ日本にあったか、、だな」 滝がしゃぺった。 「あんたらも、神立山の方へいくだか」後の座席から、急に声がしてびっくりした。後ろには、市外地の途中のバス停で降りたらしく、もう4人しかいない。 滝がふりかえって答えた。「ええ、そうですけれど」 僕も後を見る。後の方の座席に80才くらいの男の老人がちょこんと腰掛けて、僕たちの方をにらんでいる。「僕は、頭屋村(トウヤムラ)の出なんです。頭屋村へかえるんです」 僕が答えた。「へえ,、そうかいね。,頭屋村のもん近頃、ようバスにのっとるで。また危ない」「また頭屋村で人がようけいてなくなるやろらだろう・・」「あんた、そのこというたらいかんがね」老人の隣にいる老婆が、きつい調子でたしなめた。「そうやったな。あのこと、を、しゃべったら、それも他の村のものがいうたら、タタリがあるのやなあ。クワバラ、タワバラやは」「おじいさん、ひょっとしたら涙岩伝説のことと違う」滝がしゃぺった。老人達は、しわい顔をしてだまりこむ。パスの中は、異様なふんいきだった。やがて、老婆が訟もいきったようすでいった。「そっちのにいちゃは、頭屋村の人だけど、いま、あのことをいったにんちゃは。村の人と違うようだね。そのことは、口にせん方が身のためだ」「これや、これ」今度は、老人の方が老婆をたしなめた。いっているのが聞こえてくる。「ちえっ、しったことかいな」 滝が後を見ずに悪態をつく。 その老人達は、次のパス停で降りていった。残りの2人も山の中に点在するバス停で逃げるよう降りていった。 奥深い山の中を走るパスの中には僕たち二人だけ。 年の若いニキピづらの運転手が、バスを止め、座席から振り返り話しかけてきた。迷惑そうに、たづねる。 「あんたら、キクけどさ。本当に頭屋村までいくの?」(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.10.03
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第2回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第2回 正直にいうと実は、「なみだ石」を一つ持っているのだ。 東京へでてからの僕は人づきあいの悪い人間だった。特異な風貌、まるで禁欲的な僧侶にみえた。なみはずれた長身、それにどことなく体から発する毅然たる態度。 こんな僕でも恋はする。 その彼女、香月和子(こうつきかずこ)に出会ったのは、去年の十二月。仕事の関係で知り合った。 彼女の眼をみた僕ははっととする。同じ種類の入間だ。 僕は彼女に必死で話しかけ、最後には彼女が同じ頭屋村の出だとわかった。幼ない頃、村を出た僕が知らないはずだった。彼女と知り合い、それ以後倹は彼女にひかれていた。ずっと昔から彼女を愛しているように思えた。それからの僕の行動は、あらゆることを投げすて、彼女に会うこと、それがわびしかった生活をなぐさめる生きる力。 けれども、彼女にはどこか近づきがたいところがあった。外見は20才くらいにみえるのだが。僕と話をすると、僕がたちうちできほいほどの知識をもっていた。まるで何百年もいきているように感じられた。「あなたと同じようが寂しい眼をしている人々、この世の中そう地球といってもいいわ、でやさし過ぎて生きてはいけない人々をさがし、そんな人達を幸福にみちびいてあげるのが私なの」 ある時、彼女は私の眼をじっとのぞきこみながらいった。「でも残念ながら、あなたは私達の仲間にはなれない」「仲間だって」「そう仲間よ。一緒に長い旅にてる仲間」「旅?」「私達、旅立つ日が近づいている」 彼女はさびしそく言う。「二度と、、、「会えなくなる」「そんな」「悲しい?。そう、、これをあげる」 彼女が僕にわたしてくれたのは、ちっぽけな石。「これは何」 僕は立ちあがった彼女を見上げながらたずねた。「なみだ石」 彼女は去っていった。「なみだ石」 僕はつぶやく。きらきら光るそのなみだ石をじっとながめる。彼女のあとは追いかけなかった。 なみだ石、聞いたことがある。その時はっきり思いだせなかった。そうだ、ときずいた僕はさっそく下宿にとんでかえる。もう一度、なみだ岩伝説の事を読みかえす。 そして、決心した。涙岩をみよう。ふるさとへ帰ろう、、と。(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.10.02
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第1回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 僕達2人は、乗りごこちの悪いローカル線に乗っている。列車は。僕の故郷に向かっていた。故郷といってもあまり記憶はない。親戚もいない。僕は都会の中で一人、孤独で何年も住んでいた。あるきっかけで故郷へ帰ろうと思った。 奈良県、和歌山県、三重県の3県の県境にあるふるさと。ふるさとといっても本当に伺のとりえもない山間の小さな村だ。それこそ、一日に三本あるかないかの鉄道、駅からパスに、パスの終点から山道、そま道を歩み、やっと、その土地、頭屋村(とうやむら)へたどりつくことができる。 帰ったところで、誰も僕を喜んでむかえてくれるわけではない。 僕、日待明(ひまちめい)は頭屋封へ、何年もの町中の生活で得た悲しみ、体の中にたまりすぎた汚れを、洗いおとすために帰る。苦しみは僕の体をむしばんでいるのだ。なみだ岩に、行き着き、そこで涙を流すことで、僕は幸せになれるだろう。いや少なくとも、過去の傷を、いくぱくかいやすことができるだろう、と僕は考えていた。僕の生まれた頭屋村は、「神立山」と呼ばれる深山の中にある。奥深い、あまり人も、森林伐採でしか入れない「神立山」の森の中に「なみだ岩」と呼ばれる岩がある。「なみだ岩」のまわりは、不思議と草が刈りとられたような芝の多い草原になっている。その草原を深い森がかこんでいる。「なみだ岩」はわかりにくい場所にあり、頭屋村出身でない者はたどりつくことができがタイ。涙岩は高さおよそ15mくらい。頂上はとんがっていて、底に向かって広がっている。土の中に岩の半分ほどが、うまっている感じだ。全体は緑がかった乳白色で、表面は人が毎日みがいていると錯覚するほど光り輝いている。遠くから見ると、涙のしずくが空からかちてきて、地球につきささったようなのだ。、、、と詳しく知っているようだが、僕は父が亡くなったあと、すぐ頭屋村を出て、遠い親戚をたより、東京にでていった。5才の頃の話だったから、なみだ岩についてくわしく覚えているわけではないのだ。この「なみだ岩」にのぼり、その上で涙を流し、「なみだ岩」に、涙がしみこんでいくなら、その人は幸せになるという伝説がある。この「なみだ岩」伝説を知ったのは、ふとしたきっかけだった。親戚から東京に送られてき、父の形見を整理していた時、父の日記を見つける。古ぼけたページを,めくっているうちに、こんな記述にであったのだ。「涙岩は 何百年かに一度、必ず崩壊する。そして、その跡には、指でつまめるほどの小さなかけらが残る。人はこれを原石と呼ぶがたま、そのあとに残ることがある。なみだ石のほとんどは夜空に舞いあがっていく。そしてなみだ岩はきれいになくなっていて、あとには大き々穴があいている。まわりの草原も焼けただれている。この話は、先祖代々に渡り、頭屋村に住んでいる者のみに語りつがれている。」と、、、 僕は子供の頃見たことのある「なみだ岩」を、もう一度、はっきりとこの眼にしたい。涙を流したいと思う。あれほど美しい原岩がこわれぱ、どれほどの「なみだ石」ができるのだろう。涙岩の美しくくずれる瞬間、それをながめたい。 さいわい、「なみだ岩」についてはあまり知られていない。もし旅行維誌がとりあげれば、一たちまち大勢の人でうめられてしまうだろう。 しかし、神立山は観光ルートからはなれた辺境で、訪れる人はほどんどない。「なみだ岩」は、ごくわずかの人しか知られていない。たとえ、「なみだ岩」のことを土地以外の人が知っでも、「なみだ岩」で悲しみをとりのぞいてもらい、本当に幸福になりたいと思う人にしか「なみだ岩」の場所を教えてはならないのだ。僕の行動は、あらゆることを投げすて、その「涙岩」に行きつけたい。と思った時から始まっていた。(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2011.10.01
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第1回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 僕達2人は、乗りごこちの悪いローカル線に乗っている。列車は。僕の故郷に向かっていた。故郷といってもあまり記憶はない。親戚もいない。僕は都会の中で一人、孤独で何年も住んでいた。あるきっかけで故郷へ帰ろうと思った。 奈良県、和歌山県、三重県の3県の県境にあるふるさと。ふるさとといっても本当に伺のとりえもない山間の小さな村だ。それこそ、一日に三本あるかないかの鉄道、駅からパスに、パスの終点から山道、そま道を歩み、やっと、その土地、頭屋村(とうやむら)へたどりつくことができる。 帰ったところで、誰も僕を喜んでむかえてくれるわけではない。 僕、日待明(ひまちめい)は頭屋封へ、何年もの町中の生活で得た悲しみ、体の中にたまりすぎた汚れを、洗いおとすために帰る。苦しみは僕の体をむしばんでいるのだ。なみだ岩に、行き着き、そこで涙を流すことで、僕は幸せになれるだろう。いや少なくとも、過去の傷を、いくぱくかいやすことができるだろう、と僕は考えていた。僕の生まれた頭屋村は、「神立山」と呼ばれる深山の中にある。奥深い、あまり人も、森林伐採でしか入れない「神立山」の森の中に「なみだ岩」と呼ばれる岩がある。「なみだ岩」のまわりは、不思議と草が刈りとられたような芝の多い草原になっている。その草原を深い森がかこんでいる。「なみだ岩」はわかりにくい場所にあり、頭屋村出身でない者はたどりつくことができがタイ。涙岩は高さおよそ15mくらい。頂上はとんがっていて、底に向かって広がっている。土の中に岩の半分ほどが、うまっている感じだ。全体は緑がかった乳白色で、表面は人が毎日みがいていると錯覚するほど光り輝いている。遠くから見ると、涙のしずくが空からかちてきて、地球につきささったようなのだ。、、、と詳しく知っているようだが、僕は父が亡くなったあと、すぐ頭屋村を出て、遠い親戚をたより、東京にでていった。5才の頃の話だったから、なみだ岩についてくわしく覚えているわけではないのだ。この「なみだ岩」にのぼり、その上で涙を流し、「なみだ岩」に、涙がしみこんでいくなら、その人は幸せになるという伝説がある。この「なみだ岩」伝説を知ったのは、ふとしたきっかけだった。親戚から東京に送られてき、父の形見を整理していた時、父の日記を見つける。古ぼけたページを,めくっているうちに、こんな記述にであったのだ。「涙岩は 何百年かに一度、必ず崩壊する。そして、その跡には、指でつまめるほどの小さなかけらが残る。人はこれを原石と呼ぶがたま、そのあとに残ることがある。なみだ石のほとんどは夜空に舞いあがっていく。そしてなみだ岩はきれいになくなっていて、あとには大き々穴があいている。まわりの草原も焼けただれている。この話は、先祖代々に渡り、頭屋村に住んでいる者のみに語りつがれている。」と、、、 僕は子供の頃見たことのある「なみだ岩」を、もう一度、はっきりとこの眼にしたい。涙を流したいと思う。あれほど美しい原岩がこわれぱ、どれほどの「なみだ石」ができるのだろう。涙岩の美しくくずれる瞬間、それをながめたい。 さいわい、「なみだ岩」についてはあまり知られていない。もし旅行維誌がとりあげれば、一たちまち大勢の人でうめられてしまうだろう。 しかし、神立山は観光ルートからはなれた辺境で、訪れる人はほどんどない。「なみだ岩」は、ごくわずかの人しか知られていない。たとえ、「なみだ岩」のことを土地以外の人が知っでも、「なみだ岩」で悲しみをとりのぞいてもらい、本当に幸福になりたいと思う人にしか「なみだ岩」の場所を教えてはならないのだ。僕の行動は、あらゆることを投げすて、その「涙岩」に行きつけたい。と思った時から始まっていた。(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2010.12.25
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第2回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第2回 正直にいうと実は、「なみだ石」を一つ持っているのだ。 東京へでてからの僕は人づきあいの悪い人間だった。特異な風貌、まるで禁欲的な僧侶にみえた。なみはずれた長身、それにどことなく体から発する毅然たる態度。 こんな僕でも恋はする。 その彼女、香月和子(こうつきかずこ)に出会ったのは、去年の十二月。仕事の関係で知り合った。 彼女の眼をみた僕ははっととする。同じ種類の入間だ。 僕は彼女に必死で話しかけ、最後には彼女が同じ頭屋村の出だとわかった。幼ない頃、村を出た僕が知らないはずだった。彼女と知り合い、それ以後倹は彼女にひかれていた。ずっと昔から彼女を愛しているように思えた。それからの僕の行動は、あらゆることを投げすて、彼女に会うこと、それがわびしかった生活をなぐさめる生きる力。 けれども、彼女にはどこか近づきがたいところがあった。外見は20才くらいにみえるのだが。僕と話をすると、僕がたちうちできほいほどの知識をもっていた。まるで何百年もいきているように感じられた。「あなたと同じようが寂しい眼をしている人々、この世の中そう地球といってもいいわ、でやさし過ぎて生きてはいけない人々をさがし、そんな人達を幸福にみちびいてあげるのが私なの」 ある時、彼女は私の眼をじっとのぞきこみながらいった。「でも残念ながら、あなたは私達の仲間にはなれない」「仲間だって」「そう仲間よ。一緒に長い旅にてる仲間」「旅?」「私達、旅立つ日が近づいている」 彼女はさびしそく言う。「二度と、、、「会えなくなる」「そんな」「悲しい?。そう、、これをあげる」 彼女が僕にわたしてくれたのは、ちっぽけな石。「これは何」 僕は立ちあがった彼女を見上げながらたずねた。「なみだ石」 彼女は去っていった。「なみだ石」 僕はつぶやく。きらきら光るそのなみだ石をじっとながめる。彼女のあとは追いかけなかった。 なみだ石、聞いたことがある。その時はっきり思いだせなかった。そうだ、ときずいた僕はさっそく下宿にとんでかえる。もう一度、なみだ岩伝説の事を読みかえす。 そして、決心した。涙岩をみよう。ふるさとへ帰ろう、、と。(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2010.12.24
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第3回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第3回そうそう,僕、日待明の道ずれについて話すのをわすれていた。知り合いといっても最近知り合ったばかり。彼。名前は滝光一郎という。いわゆるフリーターだと本人は言っている。知り合いになった理由は、ほんの偶然で「なみだ石」をみせてしまったからなのだ。滝はとてもおもしろい奴だったが、こと、なみだ石のことではしっこく聞き、とうとう一緒に「涙岩」を見るために、頭屋村までついてくることになった。僕は滝を連れてきたくなかった。他の地域の人間には見せたくないのだ。が、滝は、不思議にあまりに執拗に食い下がった。何があるのだ。唯一の知り合いなので、無下にことわることができない。「おい、日待よ、明よ。「カンタチ」駅、この駅じゃないのか」 色んなことを考えているうちに、やっとお目当ての駅にたどりついた。 駅の出札口で、駅員(といっても契約社員か)が、私達に話をしかけてきた。 「あんたら、東京の方からきなすったかね」「ええ、そうですけれど」 僕が、答えた。「いやな。感でいうたんだが、近頃、このーカ月の間に、このカンタチ駅で降りる人がたくさんふえてね。それであんたら神立山(カンタチヤマ)の方へやっぱりいくかね」「ええ、、、やっぱりの口ですな」そらなという表情で滝は答え、僕の顔を見てニヤリと笑った。「へえ、仲間がいっぱいか。涙岩のことが知られているのか。雑誌でも紹介されたかな、さては」 僕は、僕でやはり、こない方がよかったかなあ、それにこの滝も、、と後悔しはじめる。「いや、そんなことはないはずだよ。涙岩が、どんな新聞、雑誌にも記事になたったことがない。滝、君の方がよくしってるだろう」「そうだな。神立山の方で他に何か祭事があるのか。まあ、いいや。あ、どうやらあそこがパス停らしいぞ。レンターカーはない?なにのだな。人口がないから、、商売にならんから、、か」 滝は、しゃべっている間、しきりにズボンの内ポケットの中に手をつっこんでいじりまわしている。「滝、何を、そういらいらいじくりまわしている」「いや何も」 こんどは、ジャケットの内ポケットに手をつっこんでいる。「日待よ。これは俺の個人的な性癖ってやつだ。あまりつっくっ子無と友達なくすぞ。って俺しかいないか友達は、なあ明クンよ」探し物か?僕はいぶかしく思った。内をそわそわ。つまりは、僕の存在より、カンタチヤマへの手がかりmmとして僕に近づいてきた。という疑念が僕におこる。とはゆえ、バスは、十人ほどの近くの村人達をのせて走りだす。 僕は彼女に頭屋村で会えそうな気がしてきた。彼女に会いたい。一目でいい。あの人は頭屋材出身だといっていた。駅員が神立山の方へ行く人がふえたと言っていた。ひよっとしてその中に彼女がはいっていないだろうか。いや絶対に帰っているに違いないと僕は思った。僕の、自分でいうのも何だが、このロマンスというか、純真さが後で大惨事を起こすとは。思っちゃいなかった。そして僕の人生も変えてしまうとは。それは、この田舎バスから始まったのだ。 バスは、そう考えにふけっている僕を乗せ、神立山へむかって坂を下りたり峠を上たり、森林を抜け走る。あちこちに点在した人家がたまにみえる。しかしめづかしく、でこぼこ道だ。あまり乗りごこちはよくない。「日待、何かへんな気分だな。僕の方をみているようだ」と、滝は、僕、日待明(ひまちあきら)の名前を気安く呼ぶ。「気にするなよ。僕らのかっこが目立つからだろう・・」「しかしだな。テレピというものがあるだろう。こいつら、テレビで東京の人間を見たことがないか」「滝、いいわすれていたけれど、神立山の方は日本でめずらしく電気がとおっていない。だからもちろん、テレビもみずらい。新聞・郵便物は1週間にまとめてだ」 「へえーー、まるで日本の秘境か、まだ日本にあったか、、だな」 滝がしゃぺった。 「あんたらも、神立山の方へいくだか」後の座席から、急に声がしてびっくりした。後ろには、市外地の途中のバス停で降りたらしく、もう4人しかいない。 滝がふりかえって答えた。「ええ、そうですけれど」 僕も後を見る。後の方の座席に80才くらいの男の老人がちょこんと腰掛けて、僕たちの方をにらんでいる。「僕は、頭屋村(トウヤムラ)の出なんです。頭屋村へかえるんです」 僕が答えた。「へえ,、そうかいね。,頭屋村のもん近頃、ようバスにのっとるで。また危ない」「また頭屋村で人がようけいてなくなるやろらだろう・・」「あんた、そのこというたらいかんがね」老人の隣にいる老婆が、きつい調子でたしなめた。「そうやったな。あのこと、を、しゃべったら、それも他の村のものがいうたら、タタリがあるのやなあ。クワバラ、タワバラやは」「おじいさん、ひょっとしたら涙岩伝説のことと違う」滝がしゃぺった。老人達は、しわい顔をしてだまりこむ。パスの中は、異様なふんいきだった。やがて、老婆が訟もいきったようすでいった。「そっちのにいちゃは、頭屋村の人だけど、いま、あのことをいったにんちゃは。村の人と違うようだね。そのことは、口にせん方が身のためだ」「これや、これ」今度は、老人の方が老婆をたしなめた。いっているのが聞こえてくる。「ちえっ、しったことかいな」 滝が後を見ずに悪態をつく。 その老人達は、次のパス停で降りていった。残りの2人も山の中に点在するバス停で逃げるよう降りていった。 奥深い山の中を走るパスの中には僕たち二人だけ。 年の若いニキピづらの運転手が、バスを止め、座席から振り返り話しかけてきた。迷惑そうに、たづねる。 「あんたら、キクけどさ。本当に頭屋村までいくの?」(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2010.12.23
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第4回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第4回 「ええ」僕は答える。 「そうですか.僕、この路線走るのは始めてですねん。ふだんでも,このバスは,ほとんど頭屋村までいかんのですわ。最近は、客が、よういってるようだけど。本当は、これより先はいかんのなあ。いやだなあ」「バス停には、頭屋村まで通じてますの地図と張り紙がったぜ」 滝がいいかえす。 「ここからは道が、えろう悪くなるし、つづらおりの坂ばかりですわ。あまり行きたくないんですわ。頭屋村まで、まだ40分ほどかかるという話だし、途中には全然停まるとこないんですわ。」「バスで40分もかかるところ、歩いてはいけないよ」 滝がいう。「わかりました。では、こうしましょう。このバス停から先は特別料金をいただきますよ」「ボリョルナ。タタシーみたいだな」「残念ながら、ここにはタクシーはないんです。1000円余分にいりますけれど、このパスしかないんです」運転手は言い返す。「そんなこと、一言もバス停の掲示板には、書いてなかったけれどな。まあいいわ、いってよ」「すごいところだな。日待。1000円分の風景を楽しむとするか」が、僕は滝の言葉に注意を払わず、僕は彼女のことを考え始めていた。もうすぐ、あえるかもしれない。心臓がなみうち始める。汗がでる、待てよ。記憶が、、そうだ。彼女を。、、かなり昔からずっーとずっと前のことだ。僕が子供だった時よりも?、、、昔からだ?変だ。僕が子供だったことより前。。、彼女を知っていた?。どういうことだ。 僕が彼女を思うあまりに、そんな気がしたのだろうか。 いや、まちがいない。僕は彼女を大昔から知っている。 移り変わる新緑の山々、その外の景色に気をとられていた滝が、僕の思いつめた青い顔に気がつく。「どうしたんだい、日待(ひまち)、まっさおだぜ、お前の顔」 突然、バスが横に激しくゆれた。窓の景色がひと回りした。体が車体に勢いよく打ちつけられ、失神しそうになる。 突熱、僕の体を、緑色の光が包み込む。光は神立山の神腹からきていた。体の重さがなくなり、空間に浮いている。すべてのしがらみから解きはなされ、ほんとうに自由にたったような気がした。’ 僕は、緑の光につつまれ、バスが大きく回転しながら、谷間へかちていくのを、他人事のようにぼんやりとながめている。 僕の名前が呼ばれたような気がした。それも遠くの方から。 いつのまにか僕の体は、道路そば側の草の上でよこたわっている。滝のことを気づかい、起きあがり、谷の方をのぞいてみた。パスは車体がグシャとなり、崖下20mくらいで火に包まれていた。 ころばないように気をつけながら、まったく無傷の僕は、バスまで降りていった。 燃えあがるバスの残骸までたどりつき、しばらくの間呆然とながめていた。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2010.12.22
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第5回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第5回 バスのとびちった部品の影に、滝が倒れていた。「滝,しっかりしろ」 滝は目をあけた。服がやぶれ、血がにじんでいた。すこし焼けこげてもいた。一、二度、頭を振って、滝は上体をおこした。不思議そうな顔をして、滝は僕をみつめていたが、ポケットに手をつっこんでから、ゆっくりといった。「日待、君はケガをしなかったのか」「ああ、そうさ、運転手は?」あたりをしばらく見渡してみた。「どうやら、ダメなようだな」 ポツリといった。 滝は、僕の目をじっとみつめ、口を開いた。「日待、どうだ、ここらでもうはっきりさせないか」その表情は、これまでの饒舌な滝のものではなかった。別人のようだった。「何のことだ。何のことを言っているのだ」僕は体をこわばらせる。「日待、いや、君の本当の名前まではわからないが、、まだ、しらばくれる気なのか。君と君の仲間のことさ」「僕の仲間?」滝は立ちあがり、少しよろけたが、僕の肩に手をかけた。「はっきりいえよ、日待。それとも」「まってくれ、滝、一体お前、どうしたんだ」そ時だ。隣にあるバスの残骸が爆発した。おもわず僕達は体をふせた。「そうだ。滝、はやく頭屋村へいこう。むこうで、君のケガをみてもらおう」「ふっつ、どうやら、頭屋村までは、君が、案内してくれるつもりらしいな」と皮肉っぽく言う。 いったい、この滝の変心は、なんだ。僕はバスの転落、体を包み込んだ緑色の光、滝の豹変、わずかの間に起こった事で混乱している。それにしても、あの緑色の光は、涙岩の色に似ている。と僕は思った。頭屋村までは、まだかなりの距離があった。僕は、滝、彼も、いや彼こそ本当の名前は何だ、、もう話をする気がしなかった。冷たい沈黙が、僕達の間にあった。が、二人は村へ向って歩きだす。滝に肩をかしていた。バスの通り道へあがり、夕ぐれの中を歩きだした。村までの風景は、僕が出かける前と、少しも変わっていなかった。おぼろげな記憶だったけれども、はっきりと一致していた。ようやく村へたどりついた時、来てはいけないところへ来た、そんな気がした。僕をよよつけない何物かがあった。体がぞくっとした。 最初に滝の傷をみてもらもらおうと思った。しかし急に「彼女」のことも思いだし、どうしても会いたいと思った。彼女の姿を浮べ、不安を振り払おうとした。 手近かの家からは光がもれている。「ごめんください。」 答えはない。「誰もいないんですか」無断で家にはいっていく。人の気配がない。隣の家家にも、同じように走っていって声をかける。やはり誰もいない。そして、不思議だが、村じゅう、物音一つしない。誰もいないのか?滝は、ポケットからタバコ箱くらいの小さな機械をとりだし操作していた。さっきから滝が触っていたのは、これだったのか。「滝、村には一人もいない。おかしい」「やっぱりな、思った通りだな」 滝は、傷のせいか、疲れた顔をしていたが、不思議に目眼だけは、力があった。獲物を前にしたハンターの眼だ。「いいか、もう、はっきりしたらどうなんだ、日待よ」「何のことをいっていろんだ。滝、君はバスが転落した時から、何をいいたいんだ。人が変ったみたいだよ」「ふう、簡単な話じゃないか。日待、最近、この田舎の、頭屋村へ来る人々が増えていたこと。パスの中で老人が言ったこと。そして、今現在、この頭屋村にはな、人っ子一人いないこと。すなわち、今日が。涙岩のくずれる日だ。今日は涙岩伝説の日だ」 僕はその意味するところに、打ちのめされる。そうか。今日が、涙岩がこわれる日に違いない。すなわち、数百年に一度の日なのだ。(続く)●090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」
2010.12.21
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第6回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第6回 人々の悲しみの涙を集めた涙岩が、粉粉になる。その涙岩のかけら、「なみだ石」が、緑色、瑠璃色の光を放ちながら、漆黒の闇の中へ、消えていくはずなのだ。今日がその日だ。 「君も芝居がうまいね、日待クン。いや本当の名前は何というのかな」ふっと滝は鼻で笑いながらいう。しみじみと、僕を馬鹿にしている。でも僕は理解できないでいる。ゆっくりと、滝が口を開いた。「それじゃな。日待クンという名のコードネームをもつ男よ。「なみだ石」のところまで案内してもらおうか」「わからないんのだ。覚えていないのだ」僕はあわてて、ごまかそうとする。「でまかせをいうな。さっき、村にたどりつく前に、この山腹の方で光がちらちらと見えていた。あのあたりが涙岩の位置じゃないのかな、なあ日待クンよ」「おおっと。そうそう。忘れるところだったな。これが必要だろうな、これからはな」 滝は短針銃(ニードルガン)をジャケットのポケットからと取り出し、それを僕に向けた。短針銃(ニードルガン)は、超小型の針を限りなくばら撒く対人殺傷兵器だ。が、僕はなぜ、それを知っているのか?自分の知識におののく。「滝、よせ、あぷないじゃないか。短針銃を、、」「おおつと。なぜ、危ないとわかる?短針銃とわかる?ふふん」「僕は、、一体、誰だ、、、」「もうよせ、日待クン,もう、すでにネタはあがっているぞ」世の中がまるで180度回転したみたいだ。僕はあきらめ、滝を後に、「涙岩」にむかい歩き始めた。もちろん、滝は右手にその究極の殺人兵器、短針銃を構え、用心深くぴったりと僕の背中に照準あわせているのだ。涙岩へは小一時間ほどかかった。悪路だった。村人以外は、知らないよりな迷路のような道だ。滝は先程、事故に出会ったばかりと思えないようなタフさでついてきた。この頑丈さは。何者なのだ。それと同じように、僕はいったい誰なのだ。何者なのだ。「まて、日待クン」滝は、道の徒切れていて、僕を止める。山道がおわり丘が盛り上がり、そこからは草原の盆地になっていて、そこに人の気配がした、樹木のそばに隠れる。涙岩のまわりには二百人ほどの人が集まっていた。村人以外の人が、かなりいるようだ。あきらかに、村の人口よりは多い。気づかれないように、そっと草陰から眺める。涙岩は緑色からルリ色へ、色々な透き通った色眼光を変え輝いていた。 人々の顔がはっきり見え始めた時、滝がいった。「ようし、日待クン、ここまでだ。いい眺めじゃないか」 それから、僕達の出現に気づいていない人々に、隠れていた岡の上から姿を見せ見下ろし大声で叫んだ。「おい、君達、おれは「地球防衛機構」のものだ。代表者をだしたまえ」 どこからともなく突然、爆音がきこえた。夜空に「ガン=シップ」と呼ばれる攻撃用ヘリコプターが5機、飛来してくる。「我々には、君たちと話し合いをする用意がある。しかし我々に逆らえば、、」 「ガン=シップ」ヘリ1機から1本の空対地ミサイルが発射され、草原近くの森の木々が打ち倒された。その人間のならから、一人の女が、前にでてきた。何てことだ。彼女だった。(続く)●090921改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2010.12.20
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第7回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第7回「私が、代表者です。名前はリーラです」 それから、ゆっくりと僕の存在をわかり、みつめ、悲しそうな顔をした。「やっばり、来てしまったわね。ミユー。間違いだったわ、あなたに会ったのは。これで最後だと思いあなたに会った。失敗だったわ。私は、あなたをつれていくことは、、やはり、できないのですもの」 リーラ、そうだ。彼女はリーラだった。ミユー。それが私、日待明の本名?僕の、、いや、私の頭の中で何かが爆発した。私の記憶の総てが急激に、、甦ってきた。リーラ、彼女は私の妻だった。いや、今も私ミユーの妻だ。 はるか昔、我々は、この地球に降り立った。我々は目的遂行のため、この地球に一定期間、滞在することになっていた。だが、第10次探険隊長の私ミユーは、ふとしたことで、この地球上で罪を犯してしまったのだ。私達の星の法律及び裁判に依り、私はこの星への追放刑に処せられた。第10次探険隊長の私ミユーは、この地球に,永遠に住まざるを得ないのだそして同時に、私の記憶は分解された。偽りの記憶が埋め込まれたのだ。 1年前に、「リーラ」に会い、別れの記念に「涙石」を与えられた。その涙石が、ここで記憶をとりもどすきっかけとなった。今の自分に戻った私の意識。 滝が、リーラ達にむかい、何かを必死に訴えている。が、私は、私自身の過去の記憶を、何とかたぐりよせる事に努力し、上の空だった。「私は地球防衛機構を代表して話している。君達は、なぜ地球人をつれさろうとするのだ。すでに多くの地球人が、いままでに君達によってつれさられている」滝という名の男の声が耳に入ってきている。 リーラは、ゆっくりと微笑んで、余裕のある態度で返事をかえす。「滝さん。いい。ですか」リーラは、回りに不安げにたたづむ人々を両手でしましながら、諭すように言った。「この人達は地球では住めない人達なの。善良すぎて。この汚れた梅球ではね」「ふつ、善良すぎるだと?リーラ。ここは我々の星だ。そして彼らは我々人類の仲間なのだ」「ねえ、滝さん、彼らがこの地球を去るかどうかは、自分達がきめる事よ」 私の、今までの記憶、過去はすべて造られたものだった。この村で生まれ、育ったということ。それもすぺて彼女らに、つまり仲間遠に作られた記憶だ。 私達が、この星地球をはじめて見た時のことを私。ミューは思い出す。地球は本当に美しかった。そうなのだ。夜空の中に浮ぶ「なみだ石」のようだった。 あれから何年たってしまったろう。今まで20才であると思っていた僕「日待明」は、地球の上で少なくとも2000年暮らしていた私「ミュー」を発見する。 裁判の決果、有罪と決めつけられた私は、何人分もの地球人の人生を一人で,歩んできたのだった。仲間は私の体に特殊処置を施した。私は私個有の記憶をなくし、地球人幾人分かの生と死を味わったのだ。今の今まで、私自身を忘れさっていた。 あの日記、このなみだ石のことを書いた父の日記は誰のものだろうか。おそらく私はリーラがそう仕掛けたと思う。副隊長であったリーラは、自分達、第10次探険隊が引きあげる時が近づいたことを知せるためにだ。この20才の僕「日待明」の人格、頭屋村の生まれであるという記憶が、最後に作られていたのもりーラのしわざだろう。「地球追放刑」を受けた私を、彼女の旅立ちの時に、涙岩のところまで来させたかったのだろう。たてまえとしては、来させてはいけないのだが、彼女の本音は、やはり、ここに、別れに来てほしかったに違いない。 滝は、本当の名前は知らないが、まだ、必死でりーラ達と話をしていた。彼女達をとめようとしていた。涙岩の上で、涙をながさざるをえないような心のやさしい人達、今の地球に住むには心やさしすぎる地球人達、そんな人達を、我々の星に連れてかえるのが私達の使命だ。しかし、そんなことは、今の私には、かかわりあいがない。 滝は、地球防衛組織の一員だ。そしてどういうきっかけかはしらないが、私が地球人ではないことを知り、「涙岩」の場所をつきとめるために、私について、この神立山に来たのだろう。かわいそうな地球人たち、、、私は常に思う。どうやら、滝は力にうたえるらしい。近くの森の上を旋回していたヘリ5機が、急速に近づいてきた。草原と涙岩と人々の間に、ヘリからのサーチライトの光条が飛び交う。 それまで輝いていた「涙岩」がもっと光を増しはじめた。 一瞬、涙岩からの閃光が私の目を射た。そして、大きな音が聞こえ、衝撃が襲う。(続く)●090921改訂●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2010.12.19
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第8回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第8回ー最終回私が目をあけると、ヘリはすべて夜空から消えていた。残滓が飛び散っていた。滝は、滝であった生物は、緑色の光を櫛びた物質に変化していた。私は草原に腰をおろし、涙岩をながめていた。手になみだ石をにぎりしめていた。 リーラが私の側まで歩いてきた。 しばらくだまって私をながめていた。 「さっき、パスの転落の時助けてくれたのは君だね、リーラ」 「そう私。あの滝という人に来てほしくなかったのでパスを落としたの。バスの運転手も地球防衛機構の一員だった」 思わず、私たちはお互いを抱きあい、耳元で小さな声でささやいた。「きようならミユー」 そして、私は涙岩の方へかえっていくリーラに同じように小さい声でつぶやいた。「さようなら、リーラ」 さようならを言った時、リーラの目にも涙が浮んでいた。それは、私がいま手にしているなみだ石とよく似ていた。 リーラは罪人の私に最後の別れの機会をあたえてくれたのだった。もちろん規則違反だ。私という罪人に、本当の記憶をとりもどすきっかけをあたえ、私達の星への帰還をみかくらせるのは。 私は、彼女達の旅立ちを、最後まで見届けようと決心した。 彼女達、それからこの穢れた地球から逃れる人間達は、涙岩のまわりに整列した。涙岩がまた輝きを増し、緑の光が彼女達をとりかこむように、みえた。 やがて彼女リーラ達の体は、涙岩が発する緑の光の中でだんだん小さくなっていき、しまい脚は見えなくなっていった。 光り輝く涙岩の表面に小さなひびがはいっていき、まもなく、ひびは、涙岩全体を覆った。緑色の光はオレンジ色に代わり、涙岩の端から、はじかれるようにくづれていく。このかけらは緑色に戻る。細かいなみだ石の集団は、人々が圧縮され乗り込んだ宇宙船なのだが、しばらく空間にとどまっていた。そして、突然に、夜空の中に、すいあげられるように上昇していく。もう、地球防衛機構の防御手段では、手に終えない存在となった。残った涙岩の部分は、崩れる速度がしだいに早くなり、最後には、爆発を起こしたように四方に飛び散り、最後には、涙石の集団の方へ、引きつかれていった。別れの花火のようだった。なみだ石の集りが、すべて、夜空に吸い込まれていくのを、私は最後までながめていた。私の手の中には、リーラから渡された「なみだ石」が残っている。思わず握り締める。リーラの体の温もりが思い出された。この地球に、、一人、、取り残されたのだ。癒される事のない寂しさ。私ミユーは、なみだ石を握り締め、今までの2000年分の、、過去の自分の歴史と、これから、長く続くであろうこの地球での、長い長い日々を思った。私はかっての地球人としての生活や歴史を追っていくだろう。時間はとりもどれず、たぶん場所はとりもどせる。場所の記憶だ。それは、地球人として私の子孫を訪れる旅になるはずだ。祖先として子孫を、、急に、私は、その時代時代と愛していた女たち、子供たちを思い起こす。「リーラ」と私は思わず叫んだ。それとともに、私のほほを生暖かいものが流れ、それはなみだ石に染み込んでいった。(完)090901kaitei1975年作品(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2010.12.18
全71件 (71件中 1-50件目)