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日本でサーモンと言えば、新巻鮭になる北海道で獲れるパシフィック・サーモンを思い浮かべる。基本的に北海道では、一部の河を除いてシャケは釣り禁止の為、 本州に住む釣り人には馴染みが特に薄い。
かく言う自分も鮭に憧れを感じた事すらない。当時、本州で公に釣りを許可されているのは桜鱒くらいで、もちろん鮭は許されていなかった。
本州で釣ることができる桜鱒(チェリー・サーモン)が、一番の対象となり、フライで釣れる魚では最大級である。
日本海側に流れ込む大河へ桜鱒を求めて、結果がなかなか出ず、果てしない釣り行脚を繰り返すことになる。絶対量が少ない所為で釣る技術だけでは結果は残せないのだ。
運と技術と回数が揃って、やっと何とか釣れるのである。運の無い人は、福井県の九頭竜川へ群馬から通って50数回目で1匹釣れた位に確率の低い対象魚である。
近年は桜鱒を釣りたいルアーマン、フライマンが激増して土日は、川に出かけても入る隙間もない位の混雑となっており、当地から九頭竜まで徹夜で行って、あまりの混雑が嫌になり竿を出さずに帰ってきたこともある。
自分は幸運にも計10回ほどの釣行で九頭流と米代支流の阿仁で各1匹釣ることができた。その後、桜鱒を釣りたい意欲はあったのだが、遠方な事と混雑に気後れて行かず仕舞となっていた。
1994年頃、親しくなった高田馬場のフライショップで一葉の写真を見せられた。
川の大きな石の上で大きなギンピカの鮭を抱える銀髪の外人が映っており、
店主が110cm位で14kgのアトランティック・サーモン、ロシアで釣れたものだと説明をしてくれた。
釣ったのはフランス人のジョルジュ・レッシュだった。(釣り雑誌アングリングなどに偶に記事を書いていた)
私は、写真のサーモンの大きさと美しさにいっぺんに魅了されてしまった。
店主が、「万吉さん、これを釣りにロシアへ行かないですか」と半分冗談で問いかけてきた 。
「いいねぇー、釣りたいね、行ってもいいよ」私も半分冗談で返した。この時点では、ロシアへ行くとは、つゆほどにも考えていなかった。
それまでアトランティック・サーモンの話は、国分寺のショップで店主から何度も誘われてはいた。店主がイギリスで釣ったサーモンの写真を見せてくれたが、釣った時期の所為か、魚がどれも一様に茶色で全然綺麗でないのだ。
そう、美しくないのだ。
美しくないサーモンと店主の主催釣り旅行の評判などから、イギリスのアトランティック・サーモンへの私のイメージは悪く、行く気にはならなかった。
しかし、ジョルジュの写真でアトランティック・サーモンのイメージが、ガラリと180度転換してしまった。
ジョルジュの写真を高田馬場のショップに送ってきたのは、フランス在住の日本人絵描きの戸出氏であった。戸出氏とFAXで何度か手紙のやり取りをしていくなか、私のアトランティック・サーモンへの欲望は次第に膨らんで、とうとうロシアへ行くことになった。
1995年に初めてアトランティック・サーモンを釣りにロシアのコラ半島にあるイオカンガ・リバーへ出かけた。1週間丸々やって、やっと3本掛けて、7kg位のを手元に寄せてからガイドがリーダーを持った為、バレてしまい、他の2本はグリルスで終わってしまった。
戸出さんは、計10本くらい釣って差を見せ付けられる。トラウトの釣り方と違う事は知ってはいたが、フライの流し方が私には分かっていなかった。
彼はガウラ・リバーで最初に釣りをした日本人であった。
30歳台にして、アトランティック・サーモンの釣りをイギリス、アイルランドなどから始めており、
恐らく日本人では先駆けとなる人である~~~
以上は、自分の釣りの記録というか自分史というか、長く続けてきた釣りを振り返ってみたいと思い、数年前に書き始めた雑文の一部を切り張りしたもの。
(注*記述した10年前の当時と今の日本の鮭釣りなどの状況とは大分様変わりしている)

AGORA 12月号に戸出画伯が取り上げられている。彼とは1995年以来、ノルウェー、フィンランド、モンゴルと度々一緒に釣りをしている間柄で、年齢も1歳しか変わらない。
海外で同じ釜の飯を食った親しい釣友に、二人も先立たれた私の友人の中では数少ない生き残りの一人だ。(お互いしぶとく生き残っているなー)
前述のように最初の頃は、アトランティック・サーモンが考えていたほど釣れずに、目の前で釣ってみせる彼に、私の自信を打ち砕かれたが何度か行くうちに対等になり、いつしか永遠のライバルの間柄になった。
彼はパリの郊外に居を構えて油彩画を描いて40年ほどになり、日本で一年おきに個展を開催して不景気下でも完売されてしまう。


AGORA-12月号をよろしかったら、手にとって見てください。
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