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2003.05.26

今日は母親の命日。亡くなってから丸10年。
母親はちょうど私が小学校３年生の時に初めて倒れた。
弟の運動会の後だったから、たぶんそうだったと思う。
その後、検査の結果、脳腫瘍と診断をされ、小学校高学年、中学、高校の間に治ってはまた再発をくり返し、結局３回手術をしている。その度に右半身不随になったり、車椅子になったり…。結局、最終的には抵抗力がなくなり、死因は肺炎。口にパイプをいれたまま亡くなった。

　ちょうど私が大学３年の２月、意識不明で「もうだめだろう」という雰囲気が漂った。それが突然、急に回復して命をとりとめた。しかし目が見えなくなってしまった。
　今思えばあの回復力は神かがっていた。なぜか脳腫瘍のある部分も一緒に治ってしまったのだ。お医者さんも驚いていた。
　その時、弟は大学受験。意識不明から目覚めた母親は、どうも弟が第一志望の某国立大学にうかっていると勘違いしているらしく「Kちゃん落ちたがいぜ」といったらボーッと「そうながや～」とがっくりしていたのを今も思い出す。
　そんな弟も東京の私立大に合格し、東京に上京する事になった。その時には、だいぶん持ち直してきて、病室で「は～るの～おがわは～♪」やら「メダカの学校」を音痴にうたっておどけてみせるぐらいだった。
　その時つきそい看護をしていたばあちゃんも「春になったらまた車椅子にのって散歩いかんなんね～」と言っていたぐらいだった。
　でもなんとなく私と弟が一緒に東京に戻ってしまうと、がっくりくるような気がして、私が先に帰り、弟が次に上京してと時間差で戻った。しばらくは大丈夫のようだったからひとまず安心した。

　私は就職活動の真っ最中。その頃はバブルがはじけた後の就職難の二年目。「やっぱり地元に帰らんなんかな～」と思いつつ、東京と地元、両方の試験を受ける事にしていた。
　そんな中、父親から母親が急変したとの電話が入った。
「ああ、きたか」正直思った。あわてて戻ったら、集中治療室ではすでに口から直接管を通されてしゃべれない状態になっていた。
　それでも少しは持ち直して意識はあるようで「お母さん分かったら、目パチパチして」といったら、焦点のあわない目をまばたきさせた。
　ちょうどその付近にはマスコミ関係のセミナーがめじろ押しで、あきらめた試験もいくつかあったが、また持ち直したようだったので、一度東京に帰って、また地元に戻ることにした。
　そうこうするうちに、また反応のない日々が続いたが、私の22才の誕生日も持ちこたえてくれた。しかし、5月25日夜、また急変していわゆる「峠」をむかえることになった。東京にいた弟も夜行列車に飛び乗った。
　早朝、弟の到着をまって（お医者さんが薬でなんとか待たせてくれたんだと思う）母は、息をひきとった。５月26日の午前中だった。
　小さい時から、なんども手術をくり返し、正直、自分の成人式に元気な母と記念写真をとれるなんて思っていなかったくらい、ある意味覚悟をしていたので、ショックはショックだったけど、柔らかな衝撃だった。もし口に管がなかったら、母親はなんて言葉を残してくれたのだろうか。

　自分の年ぐらいに母親が病気になって、45歳で亡くなったということは、自分に置き換えてみると、自分はもうあと13歳しか生きられないことになる。「後悔しない人生」という言葉が改めて重みを帯びてくる。
　「生き様」って人それぞれだと思うけど、母親の生き様を病気を通して目の当たりにできたことは本当によかったなと感謝している。
　亡くなって10年。あいかわらず酔っぱらって成長していない私にあきれているに違いないなあ～。とりあえず反省の念をこめて、今日はしっかりお墓に手をあわせてきました。

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