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2017.03.04
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カテゴリ: 文芸
​ 恩田さん、やっぱりあなたはスゴかった。
『夜のピクニック』 で「流石」と唸らされ、
『ユージニア 』 では「あれっ?」と思わされたけれど、
 今回は「何だこれは!」 - まさに衝撃を受けました。

 こんなにもワクワクしながらページを捲り続けたのは久しぶり。
 何という臨場感!
 目の前にステージが広がり、キャラクターたちが躍動する。
 実写やアニメでは決して表現できないだろう、文字だけが織りなせる世界。

   ***

脚本家の神谷は、昔の仲間のオフィスで原稿を書いていた。
山手線駅前に建つビルの一室から、駅前のロータリーを見下ろすうちに、
一人の少女に目を奪われたのだが、その姿を一瞬で見失ってしまう。
それは、彼女が雑踏の中で別の人物になりきっていたからだった。

東響子は、役者の東創治と歌舞伎役者の娘である宝塚出身の川村華子の子供。
二人の兄も役者で、名子役と言われ、高校時代にはTVドラマにも出演した。
ここ数年は、連続ドラマで主演を演じ、
現在は、小松崎稔の脚本による舞台に取り組んでいた。

  しかし、同時に彼女は恐れてもいたのだった。  
  この面白さには果てがない、ということに薄々気付いていたからである。
  恐らく、この世界の面白さ、この職業の面白さはこんなものではない。
  もっと凄い、もっと恐ろしい面白さがこの先に続いている。
  一生かけてもそれは味わい尽くせない。
  それは果てしなく、ブラックホールのように役者たちを呑み込んでしまい、
  どんなに求めても求めてもきりがない。
  その予感が彼女には怖かった。
  まだ自分にはあそこに足を踏み入れる覚悟が
  できていないと知っていたのだ。(p.39)

佐々木飛鳥は、江戸時代から続く武道家の家に生まれた。
空手だけでなく、茶道や書道、日本舞踊も習わされた。
とてもおとなしく、存在感のないこどもだったが、
空手においては、勝負に執着し、相手を倒すことにこだわった。

が、試合に敗れ、大けがを負って入院した際、
隣りのベッドの入院患者が観ていた 『用心棒』 が契機となって、
ドラマ三昧の日々を過ごすことになる。
高校入学後に友人となった玉置龍子は、演劇部に所属していた。

その龍子に連れられて、初めて見た芝居が『ハムレット』。
そこでオフィーリアを演じていたのが東響子。
その夜を境に、飛鳥の興味は芝居へと移り、
大学に入学すると、ある劇団の一員となったのだった。

  やりたい、というよりは知りたい、なんだよねえ。
  知りたいって?
  飛鳥は黙り込んでしまう。
  この先はいつも言葉にできない。
  あの舞台の裏に、登場人物の向こうに何があるのか。
  なぜそれはそこにあるのか。
  どうすれば知ることができるのか。
  どうしてそれがそんなに知りたいのか。(p.247)

  これじゃあ、駄目だ。
  再現はできても、ちっとも分からない。
  幻滅は強まるが、飛鳥は魅入られたように台詞を続けていた。
  あの時東響子が何を感じていたのか。
  彼女の演じたオフィーリアは何を考えていたのか。
  いったいどうしたら知ることができるのだろう。
  いったい、どうしたら。(p.250)

映画業界では伝説の人物・芹澤泰次郎が、芝居のオーディションを開く。
彼の深慮遠謀により、響子と飛鳥は初めて舞台の上で相対することになる。
その作品の脚本を担当する神谷も、それを見つめている。
飛鳥は、四人目の候補者として登場する。

  ふと、響子は、再びあの場所へ来ていることに気付いた。
  顔に当たる風。
  さっき、葉月と演じていた時に来た場所。
  この感覚を忘れたくないと思った場所。
  そして、彼女は一人ではなかった。
  一人でこの場所に来ているのではなかった。
  もう一人、彼女と一緒にこの場所に来ている者がいた。(p.524)  

芹澤から相手役は誰がいいかと尋ねられた響子は、飛鳥を指名する。
後日、少しのためらいを見せたものの、飛鳥もそれを受け入れる。

  もう後戻りはできない。
  彼女は心の中で、
  これまで長い間もやもやと心の中の一部を占めていた何かに
  きっぱりと決別した。
  あたしたちは、あの場所を知ってしまったのだから。(p.544)

   ***

初出は「サンデー毎日」2004年6月27日号~2005年8月7日号。
恩田さん自身による「文庫あとがき」によると、
明日香が登場する、続編の『ダンデライオン』、
さらに、第三部『チェリーブロッサム』まで予定されていました。

が、そこで「今後のなりゆき次第」と書かれていたように、
『ダンデライオン』は、2009年9月号から2013年9月号まで連載されていた
毎日新聞社の『本の時間』が休刊となってしまったため、
作品は中断したまま、現在に至っています。

これだけの作品の続編ですから、読みたい人がたくさんいるはず。
何とか一つの形にまとめて、私たちを楽しませてください。





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Last updated  2017.03.04 10:48:21
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