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ダメです。正直、助けて下さいとブログに救いを求めています。この間、台風が首都圏を直撃した時にもそうだったんですが今も軽い妄想というのか、不安よりも少し強い恐怖感で逃げ出したくなります。たーすーけーてーくぅーれぇ~!!松文館の事件から、もう何年も経ちました。娘も3歳を過ぎて、七五三の写真も撮りました。旦那の仕事も増えて、アシスタントを増やしてます。お隣さんとも親しくなって、子供達が家を行き来したり。暑い日が続くから、衣替えのタイミングがなかなか難しかったり娘が覚えて来た素っ頓狂な言葉に夫婦で大笑いしたり実際に何もないんです、怖いことなんか。毎日のやる事を繰返して、穏やかで、幸せなんです、きっと。でも道を歩いている人が家を見張りに来ているんだとか。家の前に停車した車が覆面パトカーなんじゃとか。そして台風が来ると、旦那が嵐のどさくさで連行されるんじゃとか。月代わりに又、大きなトラブルが起こって孤立するんじゃとか。ふと手を止めた瞬間に、そんな考えが体を覆います。思い立って服を段ボールに詰め込んでみたり通帳や実印をまとめてみたりふと正気に戻ると、何してんだと泣けてきます。そのくせ、少し調子が戻って「大丈夫」と思うとテンションの上がりが止まらなくなって、自分は何でも上手く行くと根拠の無い自信がわき上がって来て、別の意味で何かしそうだし平均台の上で左右にユラユラしながら、何とか立ってる感じです。どうすればいいのか知ってます。そして全ては過ぎて行って、何とかなるのも知っています。でも自分を御すことだけが分からないなんて情けない。これ以上、旦那の負担になりたくないです。誰か私に喝を入れて下さい。私の現状が情けないから黙ってられないんだよって叱ってやって下さい。10月になります。旦那が連行された1日は目前。でも一ヶ月なんかすぐに過ぎて、冬になり年が変わります。そしたら春になるんです。私も又、歳を重ねます。なのに今が怖いなんて。鬱のバカ!お前なんて、どっか行け!!
Sep 29, 2007
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エロ漫画を商業誌で描くことになった旦那。これと言って心配はなかったけれど、一つ気になることがありました。ペンネームをどうするかという事です。それまでの旦那は、イラストレーターの仕事がメインだったのでペンネームは一つだけでしたが、漫画も同じペンネームにするのかそれともジャンルがジャンルだし、別ネームで行くのか。何となく気になって聞きました。「どうするかなぁ・・・余り考えてなかった」自分の事なんだし、もっと考えていても良さそうなものですが他に考える事が沢山あって、すっかり失念していたのだと良い方に解釈する事にしました。最終的には、本人の問題ですし。「まぁ、エロ漫画用のペンネームは別に作るよ」それだけ答えてくれました。それから何日か後。旦那のペンネームを知らされました。「ビューティ・ヘア」実は、このペンネーム。お世話になっているある同人誌の編集長がライター陣にあだ名をつけるという企画の時に、旦那に命名しました。その同人誌の中では、時折使っていたペンネームでしたがまさか、こんな名前を自ら進んで使うとは夢にも思いません。「・・・何?このビューティ・ヘアって」「ビューティなヘア」「同人誌で付けられた、あだ名だよね?」「うん、そう」「どうして商業誌で、このペンネームにしたの?」「いや、せっかく人に付けてもらった名前があったからと思って」考えているうちに面倒臭くなったな、と容易に想像がつきました。まぁ、当人の問題です。ビューティー・ヘア、めでたく誕生。後々旦那も、このペンネームでヘコむ事になるのです。
Jul 9, 2005
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と言うニュースが出たらしい。わいせつ図画頒布罪だから、旦那の時と同じ内容。ただ1つ違うのは、旦那は出版会社から出された単行本でこの人の本は印刷会社を通じて書店販売されていた同人誌。これが結構、大きな違いだと私は思う。同人誌は個人・ないしグループで本を作って、しかるイベントで販売。勿論、個人の責任で全てを制作・販売するのだから、公共機関のチェックは特に入らないと思う。旦那が唯一参加している、コミックマーケットは事前に見本誌という形で提出して、チェック体制があるみたいだけどアダルト関係のものを、どういう基準で審査しているのかは知らない。旦那の時と同じで、性器の消しが問題になってくるのだろうけど具体的な指導要綱みたなものを見たことがないから、あくまで個人のモラルに判断をゆだねて、表現の自由に規制をかけていないのではないかと思う。すみません。私が成人向け同人誌は好きではないので、勉強不足です。理由は今回逮捕されたイラストレーターがくしくも言っているけれど「同人誌でキャラクターものの漫画を書いたが売れず わいせつ漫画を書くようになった」と言う様に、自分の表現した物を誰かに見てもらいたいという欲求だけでなく、売りたい・儲けたいで過激な描写になって、流行のゲームキャラや漫画・小説キャラを使い安易なエロ漫画を描いている人って、多いと思う。それがオリジナル作品の世界観を広げる良作であればまだしも人気にあやかって、売れるものを作るというのが果たして表現の自由なのかと。著作権関連も含めて、最近の同人活動はかなりグレーゾーンが多いと思う。同人作家という肩書きがあって、年2回のコミケで数百万・数千万を売上げをする人も少なからずいるという話しも聞く。今回逮捕された人も、1万1000冊を1冊1350~1600円で販売。旦那が1回に刷る冊数よりも多いです、実際。印刷費・郵送費・委託料はそのうちの何割かになるから、ほぼ丸儲けになるし、その儲けを忠実に確定申告で申し出る人がどの程度いるのか謎。今回はネット上で販売されているのを見て捜査が開始されたというから誰かのたれ込みである可能性は多いにある。父兄からの連絡だけでなく売上げに嫉妬した身内からのたれ込みという可能性だってある。同人誌でも成人向けの内容だから「性的刺激」を与えるものには違いない。それを個人が作って、楽しみに持つ。それを知った人が欲しいと言う。商売になってしまう以上、個人的楽しみで終わらない状況になる。法に触れる様な作品を間違って世に送り出してしまっているのならそれは当然、個人の責任で罪を認めなければならない。でも。そもそも「漫画のわいせつ性」というのが何かの明確な規定がない。消しの濃さなのか、絵柄なのか、ストーリーについてなのか。いたずらに性欲を刺激する物が、一体どういう物なのか。それを明確に示されない限り、どんな「わいせつ図画頒布罪」も私は納得出来ない。好き・嫌いじゃなくて、法規制には一貫性がなければ絶対に誰かが後ろで得をする為に利用するに決まってる。正規出版ルートを経ている・いないに関わらず「絵のわいせつ性」が誰にでも分かる様に規定されなければ、出る杭や・目立つ邪魔な杭が打たれる。表現の自由は、規定されてない今だからこそ、全てを認めなきゃいけない。その上で未成年がアクセス出来ない様にする、安易な個人販売を控えるなどの措置をとってもらうことを要求する方が先ではないのかと思う。この人の作品が一体どんな物だったのか、逮捕までの経緯がどんなだったのか詳細を知りたいが、情報が無い。しかもこの人は、容疑をすんなり認めたらしい。「まさか自分が」と言ったところだろう。わいせつの基準も分からないまま自分の描いた漫画は「いやらしい物だから」=わいせつと認めたのか後ろ盾がないから不安・パニックになって警察の言われるままに認めたのかのどちらかだと思う。冬に行われるコミケには、どんな影響が出るのやら。又、業界周辺が騒がしくなりそうだ。と、書いている今。私は稿料未納金の会社に通告書を出す準備と平行して簡易裁判の申立準備もしている。慌ただしい1日の始まり。今月中にはケリがつくだろうけど、色々と重なって心がざわつく。こんな時こそ、気持ちを落ち着けなくては。
Aug 24, 2007
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部屋に戻った私は、旦那と共通の友人へ電話を入れました。同業者で、こんな事態を話せる親しい友人は、そんなにいません。まっ先に思い付いたのは、仕事を手伝ってくれるIさん、同業のKさん。ところが、その日に限って携帯が繋がりません。自宅に電話をしても、留守電になっています。漫画家の一斉摘発が行われて、みんな連行されたんだ!良く分らない思考の飛躍で、私は更にオロオロします。でも関西の友人Tさんなら、まだ大丈夫かもしれない!滅多に電話をしないTさんの連絡先を、あちこち探します。そんな時に、編集長から電話が来ました。「ビューティ先生はいらっしゃいますか?」全然予測していなかった電話に戸惑いながら、不在の旨を伝えます。すると編集長は、警察から何か連絡があったかを聞いてきました。聞いて来るからには、何か知っている事があるに違いありません。旦那が連れて行かれた事を言おうかと思いました。でも警察が旦那に、会社へは連絡するなと指事をしています。もし喋った事が後々警察に知られたら、どうなるか分りません。私はへごもごしながら、何だか苦しい話をしました。実は、少し出掛けていて、帰って来たら旦那がいなくなってました。自分が留守の間に出掛けてしまう様な人ではないし、連絡もないままでもう随分経っているから、もしかしたら警察が留守中に来たのかも。自分で話ながら、苦しい言い訳に聞こえました。幸いな事に編集長から疑いの言葉はなく、そうですかの相づちの後「実は会社に警察が来まして、お宅の住所と電話番号を聞いて行きました。後で警察からの連絡があるかも知れません」そう続けました。もう旦那連れていかれてますと、言うに言えません。それにしも、警察に連れて行かれたのは旦那だけだったのか。他の漫画家さんはどうなっているのか、聞きたくてたまりません。編集長の話しが続き、更にショッキングな言葉が耳に飛び込みます。「私も今、警察に行く所なんですけど・・・」編集長、あなたもですか?!事態が予測の範疇を余りに越え過ぎて、くらくらしました。
Jul 15, 2005
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同人エロ漫画家逮捕と同日、日本ビデオ倫理協会に家宅捜査が入ってる。このビデ倫は警視庁の天下り先というもっぱらの噂が立っていた。なのでビデ倫にお金を払っていれば大丈夫という神話が崩れる。ビデ倫へわいせつ物頒布ほう助の容疑で強制捜査が入ったということとその陰に隠れる様にして同人漫画家個人を逮捕して、関係者それぞれにも捜査が入ると言われている。この件の関係者は、印刷所・委託販売書店。となると国が風紀取締強化を図るために動いている様に見える。新しい法規制が出来るのか、新しくわいせつ物認定を審査する団体を(映像・絵・写真を問わず)設立するつもりなのか。何にしても、今回逮捕されたイラストレーターの売上げは超有名サークルや作家に比べたら劣る人で、もっと摘発されそうな人はいたと思われる。けれど人に知られる大手サークルはそれだけの売上げ分お金も持っているし、所得税も納税している。だから中堅所で、個人を狙ったのではないかと思う。松文館はエロ漫画を出版しているけれど、業界で決して規模の大きい会社ではなかった。それでも検挙された後、社長だけ1人、法廷で争って結局検察の方は当初の「執行猶予付き懲役刑」から減刑された「罰金刑」を最高裁でも認められた形なので、担当検事は左遷されたという話しも聞いた。松文館の様な中堅所出版社がこれ程抵抗出来るとなれば、他大手出版社を相手にするのは到底、同等の時間や費用がかかる。それならば「自分には関係の無い話し」と思っている同人漫画家へと個人攻撃に方針を変えたのでは無いかと思う。突然逮捕されるショックに加え、実際に弁護士等を雇って争う金銭の負担はかなり重い。私達だって色々な事はあったけれど、会社や身内の援助がなければ今の生活は絶対になかった。娘だって産まれなかったろうと思う。それくらい人生に重くのしかかる。情報は恐らく月曜日以降にならないと、入って来ない。でも何か大きな動きが、見えない所であると思う。
Aug 24, 2007
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私の旦那は絵を描く自由業者。仕事内容から考えれば、イラストレーターだったり漫画家だったりします。現在のメイン収入は漫画原稿なので、漫画家となるはずなんですがその漫画のジャンルが成人向け漫画、いわゆるエロ漫画です。だから職業欄に旦那の職種を書く時には、無難にイラストレーター。下手に漫画家などと書くと、タイトルとか掲載雑誌なんかを聞かれてしまい余りにもアレなタイトルを即答することも出来ず、口籠ってしまうと相手に微妙な不信感を与えてしまうからです。普段はこんな事を公言はしないけど、別に必死で隠してる訳でもなく。不特定多数の人達に理解を得られるとは言い難い仕事内容なので身内を含めて、年輩の方々や差程親しくない方々、お堅い職業の人には「絵を描く仕事」としか言いませんでした。嘘ではないですから。ところが。ある時旦那のエロ漫画が、大きな問題になってしまいました。別に裏ルートで違法に出版されていた訳ではなく、他にある本と同じ様に出版社から正規流通ルートで出されていて、書店販売もされていました。なのに世のエロ漫画を押し退け、旦那の描いた漫画がわいせつと認定。空から落ちて来た隕石が、頭を直撃して死ぬくらいの衝撃です。誰も予想だにしなかった警察沙汰。その時の騒ぎと言ったら・・・したくて出来る経験ではないから、いいんですが。あれから早いもので、2年以上が経ちました。漫画業界からの情報は色々と出ているけれど、私はただの主婦です。旦那が警察沙汰に巻込まれて、どんなバタバタが我が家にあったのか。藤原家の日常雑事と一緒に、そんな事をここで書かせて頂きます。よろしくお願い致します。
Jul 7, 2005
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旦那は急に思い立った様に、財布を手渡しながら私の肩に手を置きました。「出来たらでいいけど、これでキューブのコントローラーを買っておいて」キューブ=任天堂ゲームキューブというゲーム機の事ですが現状と余りに不釣り合いな言葉を聞かされ、はぁ?と固まりました。深刻な面持ちで、何を言い出すのかと思えば!「こんな時に、そんなモンを買える訳ないでしょう!」思いっきり怒鳴りつけました。旦那は別に堪えた風もなく「一つ壊れちゃったしさ、帰って来たら一緒にゲームでもやりましょう」旦那にしたら、帰って来た時の約束でも無いと不安だったのでしょうが私はそれを汲むだけの余裕がありません。いよいよ旦那が出掛けるというので、私も下まで見送る事にしました。階段を2人で降りながら、きっと何かの間違いだから大丈夫と話しました。お互いに、自分に言い聞かせていたのかもしれません。私はふと思い付き、松文館に電話しておくかと旦那に確認しました。「会社には一切連絡をするなって言われたから、やめといて。その変わりに、友達とでも話して待ってて下さい」会社には秘密で旦那に話しを聞くなんて、何だか変な話しです。もしかしたら、会社で何かあったのかもしれないと思いました。階段を降り切った所で、旦那はもう1度、行って来ますと言いました。私は気を付けてと言いましたが、警察へ連れて行かれる人に対して気を付けてもクソも無いものです。旦那は手を振って応えました。そして1台の車へ向かいます。黒っぽいセダンでした。これが噂の、覆面パトカーと言うものか!私は変な所で感心しました。旦那は後ろに乗り込みました。旦那が乗り込む時に、1人がわざわざ車から降りて、旦那を先に乗せます。良く見えませんが、反対側のドアを開けて旦那を乗せなかったという事は既に1人が乗っていて、旦那はまん中に座らせらたんだと思いました。その推理は、旦那が帰宅した時に正しかったと分ります。前の席は見えませんが、運転手を含めて警察は3人。話しを聞かれるというより、犯人が連行されるみたいです。車は直に走り出し、ゆるいカーブを曲がるとすぐ見えなくなりました。窓を開けている部屋があったのか、テレビの声が聞こえていました。消し忘れたテレビが誰もいない部屋で、ずっと音を出している様です。私は取り残された不安で、泣き出しそうになりました。本当に辺りは静かで、1人になった途端、現実が重くなりました。落ち着いて、落着いて。そう呟きながら深呼吸をしましたが上手く行きません。大変な事になっているのではないか。そんな不安ばかりが膨らみます。
Jul 15, 2005
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旦那は順調に、漫画を描き続けます。平成14年4月、4冊目の単行本が松文館から出版されました。それが、わいせつコミックと認定された「密室」です。警察が何の前触れもなく我が家に来たのは、平成14年9月19日。「密室」発売から、5ヶ月も経ってからの事でした。寝耳に水と言いますが、その時、私達は2人とも昼寝の最中でした。この日は本当に暖かく、窓を開け放している位が丁度良い気候で取り込んだばかりの布団にもたれて、私は少しウトウトしていたのです。仕事が少し立て込んでいた旦那も、犬2匹も同じ様に昼寝をしていて本当に静かな午後でした。2時を過ぎた頃だったでしょうか。玄関のチャイムが鳴りました。立続けに2、3度押されて、かなり乱暴な音が響きました。続けて居留守を確かめるかの様に、ドアノブを回す音もします。幸いにも鍵が掛けられていたので、ドアは開けられなかったのですがもし鍵が空いていたら、彼等は土足で上がり込んだのでしょうか。犬達は飛び起きて、けたたましく吠えだします。私はこんな無礼な来訪者は、質の悪いセールスに違い無いからこのまま放っておこうと旦那に提案しました。家の者が対応する前にドアを開けようとするなんて、非常識にも程があります。放っておけばいいと思いました。私に対応する意志が無いと分かった旦那は、「宅配便かもしれないから、一応出てみるよ」と起き上がり、吠える犬を制しながらインターホンに向かいました。インターホンで話していた旦那は、何やら話しをした後で玄関に向かい来訪者の対応を本格的に始めた様でした。宅配便かとも思いましたがそれにしては、認印を入れてあるケースを開ける音がしません。旦那は誰かと話しているみたいで、短い返答が聞こえて来ます。少しして、旦那が戻って来て言いました。「警察が話しを聞きたいって言うから、ちょっと下まで行ってくる」眠気も一気に覚めました。「警察?何で警察が来てるの?何か事件でもあったの?」目撃情報の収集で来たのか、もしくはアパートで何か事件が起きたのか。本当に私達は、他人事で考えていました。部屋着を着替えた旦那は「ちょっと行ってくる」そう言って、少し緊張した面持ちで出掛けていきました。
Jul 13, 2005
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結婚直前までは、イラストレーターの嫁でした。旦那はある雑誌の表紙をずっと描いていましたが、その雑誌が突然廃刊。それどころか、会社自体が倒産という愉快な話しになりました。詳しい経緯については、余り知りません。旦那本人にも、そういう話しが全然耳に入って来なくて、知人から、ネットで教えてもらうという有り様だったんです。10年近く仕事をしていたなんて事は、全く関係ないんですね。別会社に移った編集さん達は、似た様な雑誌を創刊されました。興味からなのか、旦那は創刊号を買っていましたが、その中に、廃刊された雑誌で挿絵を描いていたイラストレーターさんがしっかりとその雑誌で描いていたから、旦那の落ち込み様ったら無かった。編集の動きも聞かされなかったし、結局、必要とされてなかった訳だと。ぶっちゃけて言えば、そういう事になります。こういう事実の前には、慰めの言葉もありません。で、実は。この失業の時期が、挙式の約1ヶ月前のことだったんです。この間の悪い現実に、泣いていいのか笑っていいのかすら分りません。ただ、一つ。経済的安定が欠ける事を理由に、結婚を反対されていたので会社倒産の事は、話さないでおこうと決めました。挙式費用を生活費に当てたいなぁ・・・打ち合わせを終えて、最終見積もり書を手にした時の正直な感想。とっくに入籍を済ませていたので、その気持は本当に切実でした。夢もへったくれも、あったもんじゃありません。
Jul 7, 2005
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30分近く経っても、旦那は戻りません。さすがに不安になり、ベランダから外を覗きました。警察が来て話しを聞くと言うのだから、アパートのすぐ下にはパトカーがあって、制服姿の警察官がいるものと思っていました。ドラマに出て来る、現場検証みたいな図を想像していたのです。さすがに死体や事故車があるとは思っていませんでしたが。ところが旦那の姿も、警察らしき人の姿も、全く見えません。アパートの周囲に人のいる気配が全く無く、実に静かでした。「旦那は何かの間違いで、犯人と思われて逮捕されたんだ!」そう決めつけて、かなり慌てました。これは誰かに連絡しなくちゃと思ったところで、「本当に警察だったの?」と、更に不穏な考えが浮かびます。もしかしたら、警察を装った人が旦那を誘拐したのかもしれない。そうだとしても、犯人を見ていないから、警察へ連絡も出来やしない!どうしよう、どうしよう・・・妄想は際限なく広がります。頭を抱え込んでいる所へ、ひょっこりと旦那が戻って来ました。「戻って来た!逮捕されてなかったんだ」小走りで玄関に向かうと、旦那も駆け込む様に部屋へ入って来ました。えらいこっちゃ、えらいこっちゃと呟いています。「遅いから心配したよ、何だったの?」私が聞くよりも先に、旦那は口を開きました。「俺の事だったよ、俺の漫画が問題になってるらしい」「え?!それ、どういう事??」更に訳が分りません。そしてそれは、旦那も同じでした。「とにかく警察で詳しい話をする事になったから、もう一度出掛けて来る下に車が待ってるから時間無いし、とにかく帰ってから話しをするよ」警察から持って来る様に言われた、松文館との契約書をカバンに入れると水を2杯飲み、靴を履こうと座りかけ、思い直してトイレへ行きと旦那はコマネズミの比喩通り、効率悪く、くるくると動き回っていました。その間にずっと、えらいこっちゃと言い続けています。私は旦那とは対象的に、玄関とリビングの間に立ち尽くして「盗作、著作権侵害、名誉毀損・・・?」思い当たる警察沙汰を推理していました。
Jul 14, 2005
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光市母子殺害で最高裁が弁論決定を開くことで、無期懲役の判決が見直される可能性と報道されています。弁論は明日開かれるそうですがそもそも最高裁で弁論が開かれることが、なぜ見直しの可能性になるのかお分かりでしょうか。松文館裁判にも関係あることなので、今日はその事を(かなり大雑把ですが)書いておこうと思います。「一審での判決を不服として場合に、その当事者が上級裁判所に再審を求めることを控訴といい、更に控訴審での判決に不服がある場合には上告をすることが出来る」これは一般知識として多くの人が認知しているとは思います。でも一審と二審は全く性質が違います。そもそも二審と言う言葉通り、一審の続きとして裁判を開くので最初から裁判をやり直すという訳ではありません。一審でやった事はそのままに、他にも調べるべき点があったと認定された場合に限って、そこだけが新しく審議されることになります。だから審議が開かれるという事だけを見れば、判決に対しての理由付けが見直される可能性が高く、量刑が変化することもあり得る訳です。松文館の場合は、2審判決で懲役刑から罰金刑への軽減判決が言い渡されました。二審で更に不服がある場合に上告になり、最高裁で争うことになりますが最高裁では憲法違反や判例違反があるかどうかが焦点になる為にそれまでの審議に問題が無いと判断されれば、改めての弁論が開かれる必要はない訳です。つまり最高裁で受理されたということは、少なからず憲法判断や過去の判例に照らし合わせて、審議が行われると決定されたということになるのです。しかも今回の光市母子殺害事件については最高裁では極めて異例な弁論開催から見て、18歳少年に対して下された情状酌量の無期懲役判決から、死刑判決に見直されるのではないかと予測されているのです。これで前例が出来れば、未成年者が起こした刑事事件に対して新しい判例が適用されることになるので、今回の判決が今後に大きな波紋を与えることは、間違いないでしょう。ちなみに松文館も最高裁での審議が、現在行われています。表現の自由に関する憲法判断がどの様になるのか。表現の自由が認められれば、恐らくは無罪。認められなければ2審での罰金刑が確定することになります。しかし審議状況については、全く知らされて来ません。日本の裁判は、確かに時間がかかります。今日の絵は、昨日に引き続き「バンパイアハンター」のキャラクター。コピーをスキャンした為に画像が荒いですが「美女と野獣」の様な2人が青空の下を仲良く歩いている、大好きな絵です。どんな形にしろ裁判が終了して、気分も軽くなりたいものです。
Mar 13, 2006
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審判決が覆り、懲役刑から罰金刑になりました。主文、原判決を破棄する。被告人を罰金150万円に処する。この罰金を完納することができないときは、金2万円を1日に換算した機関被告人を労役場に留置する。原審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。刑だけをみると減刑です。今後もし、成人向けコミックが摘発されるとしても懲役刑にはならず、罰金刑での判決が下ることが考えられます。それがどういう事か。つまり余程悪質な作品でなければ、お金で問題が片付くことになるので出版側も対策が取りやすくなるし、検察側も罰金刑程度の罪を必死に追うことは可能性として少なくなる訳です。この減刑だけを見れば、勝利と言えます。ですが判決文を見ると、密室は完全にわいせつ物と断定されています。しかも写真の様な実写表現物と漫画の相対比較が問題なのではなく「密室という漫画そのものがわいせつの定義に該当するかどうかを考えた場合」「本件漫画本がその作品性・思想性・芸術性により性的刺激の度合いが緩和 されているとは認められない」し、この様な本がいくら書店でゾーニング(区分け)されて販売されていたとしても「見たい人に対する規制とは なり得ない」という判決文が出ています。お分かりでしょうか。わいせつ図画にあたる物は見たく無い人・見せたく無い人に対してだけでなくいかなる人にも見せてはいけない物となり、例え自分の嗜好で「見たい人」に対して販売する様に配慮しても、ダメという判決の内容です。しかも成人向け漫画において、何がわいせつなのかの線引きが、全く出されなかった。修正の度合いを気をつければいいのか、内容に関して扱ってはいけないものがあるのか全く分からない状況です。判決文だけを見ると、完全なる敗北。ゾーニングが認められないという点では、書店等の販売側にも大きな波紋を投げかけました。東京都では青少年健全育成条例もあって、警察が書店での見回りを強化しているらしく、成人向けコミックの扱いを止める書店も多くなったと聞きます。大手出版社では成人向けコミックから撤退する動きもあるといいますから、それをメインにしていた中小出版社のダメージはかなり大きいのではないでしょうか。最高裁での判決は、まだ出ていません。判決は控訴審判決の罰金刑か、無罪かのどちらかになります。無罪になることはまず無いだろうという見方が、大半を占めています。今のところ、審議の経過も結審予定も、何も耳に入ってきません。こちらに控訴審判決全文が掲載されていますので、お時間のある方はどうぞ。http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Tone/9018/shoubun0616hanketsu.html
Apr 14, 2006
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その手の雑誌が参考資料として送付される事が多くなりました。旦那の仕事机の横に、どんどん積み重なって行きます。段ボール一箱くらいにはなったでしょうか。今まで接触する機会の少ないジャンルだったけれど、生理的嫌悪感は無く「雑誌や新聞紙の回収は月に一度だから、場所を取って困る」程度の感想。旦那の嗜好と関係なく置かれている物だったからだろうと思います。もし旦那の趣味というのであれば、嫌悪感が出たかもしれません。それに、たまに受けていた同人誌の原稿依頼は、大抵エッチなものだったので私自身にも、少なからず免疫が出来ていたのでしょう。私の知ってる範囲で旦那の好きなモノと言えば、ゲームでしょうか。シューティングとかアクションとかのジャンルだと思います。映画や本だと、SFとかファンタジーのマイナーに片寄った物が多いみたい。お互いの好きな作品を話す時、余り噛み合いません。教えてもらうのを「へぇ」と聞く感じです。話しは戻って、送られて来た様々な資料。旦那はほとんど目を通しませんでした。1、2冊をめくった程度です。人気がある作品を参考にしようとしたところで迷うだけだからと聞いた記憶があります。確かにそういう面もあるのでしょうがそもそも旦那は、普段から余り漫画を読む人ではありません。単に面倒臭かった、そういう面も少なからずあったと思っています。
Jul 8, 2005
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結婚式の後、旦那は本格的に営業活動をしたけれど結局、仕事は一つももらえませんでした。再び落ち込む旦那。「何とかなるよ」とは言っても、私の収入では生活を支えられないしかと言って失業保険もない状況では、貯金ももって3ヶ月。定期預金を切崩し、食費を切り詰めてのギリギリ生活です。私の目下の不安は、この先の事より「今日、安い食材を探せるか」でした。借りていた家の前に畑があって、いつもダイコンかキャベツが作られています。仕事で帰宅するのは夜中近くになるから、畑の前を通るだびに「ひとつだけ・・・」という誘惑との戦いです。幸いな事に、野菜泥棒にはならずに済みましたが。で、ある日。旦那の知人から電話があり、仕事の話が来たのです。新しく創刊される雑誌だけれど、描いてみないかと。それがエロ漫画の原稿依頼でした。珍しく旦那は悩んでました。ジャンルがジャンルという事もあったのでしょうが商業誌に漫画を描いた経験が無い事も、不安要素としてあったみたい。友人にも相談していたけれど、それでも比較的早く決断をして私にもエロ漫画を描く事にしたと、報告してくれたのです。「自分の事よりも生活守る方が大事だから、描く事にする。人気がなければ、すぐに切られるだろうし。まぁ、やってみるよエロだからとか言って、仕事を選んでる場合じゃないし」旦那が仕事を選ぶ人だったら、一体どうなっていた事か。正直、この仕事は断っても仕方が無いかなと思っていたので本当に頭が上がりませんでした。
Jul 8, 2005
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意外にも旦那は、9時過ぎに帰宅しました。犬2匹と一緒に旦那を迎えましたが、旦那はニコリともせずに一言「今から警察が来るから、犬と一緒にそっちの部屋に入ってて」話しをする間もなく、主人の帰還で興奮する犬を押さえながら玄関のすぐ前にある部屋へ入り、ドアを閉めました。家宅捜査でした。別に後ろめたい事がある訳でもないのですが、別室で待機していると何だか警察の目を逃れようと隠れている気分で、変に緊張しました。私は犬を抱き寄せながら、息を潜めて様子を伺います。野太い男性の声が聞こえて来て、数人の人が部屋に入る気配がします。ドアを隔てているので、何人かは分りませんでした。しばらくは聞耳を立てて、旦那達の様子を探ろうと必死でしたがさすがに断片的な声しか聞こえません。いつまで捜査されるのかと考えていた所に、ドアが突然開けられ男性2人が顔を覗かせました。「あ、どうも失礼します。部屋を見せて下さい」1人が言って軽く部屋の中を見回し、もう1人が紙に書き込んでいます。部屋の間取りを確認しているのでした。「失礼しました」部屋に入り込む事はしませんでしたが、部屋の間取りを確認するなんてまるで犯人の逃走ルートを、事前に押さえているみたいです。任意事情聴取で、そこまでされるものなのか。驚きというより、不快感や怒りが込み上げます。と、犬が足下でクルクルと回りだしました。トイレのサインです。閉じ込められている腹いせや、見知らぬ人を見た緊張もあるのでしょう。2匹が同時に、回り出します。お前達まで、嫌がらせか?!緊急事態に慌てて部屋を出て、警察と話をしている旦那を小声で呼び犬のトイレや、ペーパー類を取ってもらいました。「あ、奥さん、突然すみません」警察の人が、何とも返答に困る挨拶をしてくれました。部屋にいた警察は、3人でした。私に挨拶をしてくれた、いかにも体育会系な体の大きな男性。この人がリーダー的な立場にある様で、旦那にあれこれ質問をしてます。もう1人は場慣れしていない新米の様な雰囲気の若い男性。最後の1人は「引越しのサカイ」のCMに出ている俳優に何となく似ていてそれでも一番食えない感じのする人でした。「研修生」と「サカイ」が、私のいた部屋を覗きに来た人達です。必要な物を受け取ると、私はお辞儀だけして、すぐにその場を離れました。ただし玄関横の部屋ではなく、仕事部屋に隣接する部屋へ。私は様子を伺いやすい部屋へと、ちゃっかり移動します。
Jul 18, 2005
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前にも少し書きましたが、控訴すれば必ず二審が開かれる訳ではありません。一審判決を踏まえた上で、新しい証言や証拠があることを裁判所に提示して審議の必要があるという決定がされれば、裁判が開かれます。二審の大きな目玉となったのは「あしたのジョー」の作者である漫画家ちばてつや先生が、証言に立たれることでした。先生の傍聴をするのには抽選が行われました。傍聴希望者が多数になる時に整理券が配られるという、あれです。旦那も当たるかどうか分からないけどと言いながら支度をしていました。でもこの時、私はなぜかは分かりませんが旦那は絶対に傍聴出来るからと言い切って送り出しました。「まぁそうだと有難いんだけど」と言いながら出かけた旦那。ところが旦那はすぐに帰って来ました。あれだけ確信していたのに勘が外れたかしらと事情を聞くと、松文館裁判の経過をアップしている人が抽選に外れていたので、交代して帰って来たと言います。その為、私達夫婦はどちらも、先生の証言を直接聞いてはいないことを先に断っておきます。ネットでアップされた証言全文や、その他の記事・旦那が聞いた話しなどから、この日のことを書いているので、ご了承下さい。さて、ちばてつや先生は旦那の漫画について、決して評価している訳でも認めている訳でも無い立場の方でした。わいせつな漫画は嫌いだし、作品内で性器描写をここまでする必要は無いと思うと、新聞のインタビューにも答えていらっしゃいます。でも1つの表現を規制することの危うさを感じてこの裁判での証言に立って下さったと聞きました。誰でも知っている大御所の先生が、表現の自由を守るためにご自身の嗜好を別にしてお話し下さるのは、有難いことだと思います。報道でもほとんど取り上げられることの無い裁判が、世間の注目を得る手段は、もう著名人の協力しか無い状態でした。世間が注目したからと言って、何か良い結果が出る訳ではないし逆に成人向けコミックに対する批難の目が、もっと集まる可能性もあります。それでも私は業界関係者だけでなく、沢山の人に考えてもらえるきっかけがどんな形でもあった方が良いと思っている方です。母親という立場になってから、自分の考えが揺れます。「子供が大きくなった時に、父親の仕事がそんな内容じゃ可哀想だ」と言われる時に、完全否定出来ません。でも子供にとって害になるであろう物はいつでも世に溢れかえっているし、それが無くなるとは到底思えません。住み良い環境を得るために、取捨選択をしなくてはならないとしてもそこを選択するのは自分の意思でありたいし、誰かの強制が働くことに対して私は強い不快感を覚えます。何を見るか、読むかの選択は全て自分で出来る社会であった方が嬉しい。だからこそ単純に良い・悪い、好き・嫌いでの二元論で話しを片付けずに、もっと議論を深めていくこと。それが「自己責任」の最も基本になるのではないかと私は考えているので自分自身だけでなく、娘に対しても選択の自由を残している社会がずっと続くことを強く望んでいます。
Apr 11, 2006
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何だか、まだ気が抜けてボンヤリしてるのですが。支離滅裂覚悟で、ご報告です。先日、とうとう最高裁判決が出ました。上告棄却ということで2審での罰金刑150万が確定。1審では懲役刑が出ていたのだから一応、喜んでいいとは思う。思うのだけど、何だか釈然としない。歴史に残る大事件とは思わないけれど漫画という一つのジャンルが初めて罪を問われ表現の自由とか、見たい人と見たく無い人の権利とか社会通念の変化とか、諸々の事を確かに包括している事件だとは思ってました。大袈裟かもしれないけど一つ間違えば、国家による表現規制に発展する可能性もなきにしもあらずだとも思ってました。1957年に出されたチャタレー裁判のわいせつ三要素1980年「四畳半襖の下張り」でわいせつ性を判断する要素。それがお偉いさんの判断一つで旦那の漫画がビンゴしてしまった。でも成人漫画がコンビニでも簡単に手に入るのが現状だから古い規定が見直されるきっかけになって、新しい規定が出来ないかとちょっと期待してたんです。例えば作品内の性器描写に関して言えば、修正基準を決めるとか販売時に何かしらの制限をして、青少年に悪影響が無い売り方を考えるとか。そういうのが、全く無い終結。私はこの国に何か妄想を抱いていたのかもしれない。本当にそんな風に考えて、美しいも何もクソミソだとよく分からない怒りで、ふて寝し続けてた日曜日。で。この判決ですが、土曜日の朝刊を見て知った訳です。旦那もネットで偶然見て、判決を知ったと言うしまぁ社長が自社出版物での裁判を闘ってたとは言え最後まで、いざこざの外で傍観していた様な。しかも作者本人もそうなのか?と少しツッコミ。でもありがたいことに、旦那は仕事してます。エロ漫画家としても健在だし、イラストレーターとしても。私はまだ鬱で治療継続中だけど、少し旦那から離れたところで色々な物を見たり、色々な人に会ったりしようと決めました。考えてみると、私の視点は旦那に向けられてばかりいたし私自身のことを旦那抜きで知る友人との交流はとても少ないと今ごろになって気がついてしまい、自分にダメ出ししてました。ブログも自分自身のことより、旦那観察が多すぎかなぁとちょっと読み直してみたり。私は大した人間ではないし、出来た人間でもないので相手のことを思って動いている時でさえも自分が偽善的で良いカッコしいみたいに思えて、嫌いなんです。それに加えて、事件の後に周囲の人が手のひらを返した様にどんどん離れて行った時の、淋しさとか不安とか悔しさとか。それがいつの間にか、無条件で旦那の味方でいることが自分の価値にすり替わって、すごく依存してるんです。そのくせ、旦那付属品としてしか見られていないのが無性に嫌で、その矛盾した想いが鬱の原因だったのかなと最近になって少し絡まっていた糸が解けて来た気がしてます。もう少し自分を可愛がってやろうかと。変な言い方ですが。そして娘に対して視点を移して、旦那離れをしようかなとか。ブログも裁判が一段落したし、これを区切りに模様替え予定。予定は未定ですが、しばらくは鬱日記かなぁw相変わらず味覚変動が大きくて、食いしん坊は大変です。でもお気に入りの食べ物、2つ見つかったんですよ!ネタなので今日はナイショですが、旦那がショックを受けてました。正直、しんどいです。頭に浮かぶ言葉はネガティブなことばかり。娘に対しての影響も心配で、今という時間に集中して過ごすことがどんなに大切なことだったか、こんなにも難しいことだったのかと痛感します。でも、そんな愚痴を口にするのは私のプライドが許しませんw周囲にまで鬱の空気を流すなんて、それこそ罪作りですよね。鬱ネタを笑ってやるんです、こんな時こそ。作り笑いも笑ってりゃぁ、楽しくなるってモンでぃ!(江戸っ子調で)方向が定まってないのは不安ですが、大丈夫。まだまだ行けますよ、私は。ブログも不定期更新し続けます。時間を割いて私の文章を読んでくれる人が楽しんでくれる様なそんな話が出来る様に、とにかく動き続けてみます。これで離れる方もいるかもしれませんし、まだ細く長くブログでお付合いが続く方もいるかもしれません。そんな訳で、今日はひとまずの区切りをつけてご挨拶させて頂きます。裁判の経過を読み続けて下さった皆様、ありがとうございました。今後もブログに立ち寄って下さる皆様、改めてよろしくお願い致します。 藤原しぇり
Jun 19, 2007
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買物から帰宅したのは、6時10分前でした。編集部の電話番号を確認して、電話の前で6時になるのを待ちました。すぐに電話をすればいいようなもんですが、やはり緊張します。松文館へ電話した事は、それまで一度もありませんしまだ旦那も帰っていないのですから、当然松文館の方でも何かしらの混乱があることは、容易に想像出来ます。きちんと対応してもらえるのか。そんな不安もあったと思います。それでも我が家の時計が6時になると、迷わず受話器を手に取りました。電話に出たのは女性社員でした。私は本名を名乗り、編集長を呼び出して欲しいとお願いすると今、出掛けていて帰りが何時になるか分らないと言われました。旦那もまだ帰って来ていないのですから、当然の返答でした。私は再度、自分がビューティ・ヘアの妻である事を相手に伝えて編集長から電話をもらって聞いた内容と、旦那が不在の旨を伝えて何が起こっているのか分らないので、事情を知っている人と話がしたい。ぜひ取次いで欲しいと頼みました。相手はそれを言うと、誰かに電話を取次ぐこともなく、上の者は緊急対応会議中の旨をすぐ教えてくれました。会議が終わり次第、折り返しの電話をすると言う約束をもらって電話を切りました。私は電話受付業務をしていた事があります。会社に重大な連絡が入ったり、会社規模のトラブルや汚職事件発生してクレーム電話が大量に予測される時には、すぐに応対の指事が出たりマニュアルが出来たりします。その様な対応が間に合わない時には余計な事を言って問題を大きくしない様、担当社員へ電話を回すことを指示されます。電話に出た人の対応だけで考えると、警察が介入してから随分と時間が経っているのではないかと思いました。会社規模での大きな事件になっている事も、間違い無い様です。それにしても。会議では一体、どんな事が話し合われているのか。何時頃から始まったのか、誰が会議に参加しているのか。もし社内の事だけしか話し合われていなかったら、旦那はどうなるのか。漫画家が全員が連行され、大変な事になっている可能性も捨て切れません。聞きたい事が、どんどんと増えて行くばかりです。折り返しの電話が一刻も早く来る事を、ただただ願うばかりでした。
Jul 17, 2005
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旦那の漫画が掲載された雑誌。たった2号で廃刊になりました。今となっては、タイトルも覚えていません。漫画家を集めるのに苦労したのでしょうか、特に2号目は素人目にも絵の粗い作品がゴロゴロしていて驚いた程なので廃刊に至った事は、仕方がないかなと思いました。ただ、早過ぎ。稿料入金もされない内に、旦那は再び失業です。考えてみると、結婚を境にしてトラブルの続出。「私って、さげまん?」こういうのにお祓いは有効なのか、真剣に考えていました。旦那は早々の雑誌廃刊について、余り驚いていませんでした。「成りゆきで描いたけど、積極的に取った仕事ではなかったしイラストの仕事を探し直せると思えば、まぁ丁度いいかもね」淡々と、ポジティブシンキングです。いずれにしても少ない収入と預金から考えて、2~3ヶ月の内にまとまった収入がある仕事を見つけないと、ピンチでした。その時、私は個別指導塾の講師をしていたので、転職するにしても担当している生徒の進路が決まらないと、動けない状況でしたし最悪の場合は、私の実家に頭を下げて借金させてもらうかとカレンダーを見ながら、あれこれ考えていました。それから少しして、旦那に電話が掛かって来たのです。それが現在もお世話になっている、松文館編集長からの連絡でした。旦那の作品が編集さんの目に止まった様で、本誌で描いてみないかと有り難いお話を頂いたのです。余りに上手く運んだので、旦那は喜ぶというよりも、何だか信じられないという風で「エロ漫画の神様がいたらしい」と、おかしな事を言ってました。偶然にしろ必然にしろ、これを運命の出会いと言うのでしょう。たった2号だけ出された雑誌に、たまたま執筆したことから「わいせつコミック裁判」に繋がるのですから。本当にわからないものです。
Jul 9, 2005
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編集長は警察に行くと言っても、逮捕された訳じゃなくて話しにしに行くだけだとも言葉を足しました。もし逮捕されていたら、こんな連絡出来ませんとも言いましたがあの時は警察と移動中だったのでしょうか。何だか不思議な気がします。途中から会話も上の空になり、電話をどう切ったのか分りません。アドレス帳の捜索を再開するのにも、随分と時間がかかりました。ようやく旦那のアドレス帳を見つけだし、Tさんへ連絡をします。幸いな事に、Tさんはすぐ携帯に出てくれました。お久しぶりです、どうしたんですか?と明るい声を聞いて、「旦那が、警察に連れて行かれた。戻って来なかったらどうしよう」それだけ言って、大泣きしてしまいます。Tさんは状況を聞き出した後で携帯を何時でも繋がる様にしておくから、何かあればすぐ連絡してと本当に有り難い事を言ってもらいました。色々と話したはずですが、他の会話は覚えていません。同様にTさんから勧められて、同人誌編集長にも電話をしますが何を話したのか、すとんと記憶が抜け落ちてます。それでも私は、気分的に楽になったというのか、少し前向きになって「じっとしていても仕方ないから、何かして待っていよう」そう決めて、あれやこれや始めます。部屋の掃除、洗濯物、夕飯の支度。でも気を紛らわそうと動いていただけなので、部屋はひどい惨状になり結局どうにもならず、全てを投げ出して買物へ行くことにします。そして買物から帰ったら松文館へ連絡しようと、唐突に決めました。情報が少な過ぎるから不安なのだし、詳細は松文館しか分らないのです。「旦那の一大事に、黙って待っていられるか!」散らかした部屋にイライラが溜まり、怒り出した事がきっかけで一気にモードが切り替わりました。時刻は4時半前。私はこの勢いで買物へ行ったら、きっと訳も分らず散財すると思い買物リストだけはしっかり作りました。足りない食材と、帰宅した旦那と一緒に食べる甘い物も幾つか書き出し最後に旦那御所望の、コントローラーも足しておきました。
Jul 16, 2005
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ちば先生の証言の中で印象深い言葉が幾つかありました。描写が露骨で生々しいし、何もここまで書くことは無いのではないかと言う検察側の意見に自分も同感ではあるけれど、それは表現する漫画家の感性であり描きたいから描くことであって、又、本を買って読む人もそういう所を見たくて買うのではないかと思う。子供には見せたくないけれど、世界にこういう趣味や嗜好があるし、成人が個人の判断で読むことはあると思うと言われました。本人の好き・嫌いを越えたところで表現の自由を認めるということです。又、線で描いた絵は、刺激を受ける程度に描写されてないといけないという主張は面白いものでした。かわいい・きれいな等の違いがあっても女性としての美を描けなければ、刺激に結びつかない。そう考えると、成人向け漫画の中にも絵としての芸術性を垣間見られる部分があるということになります。又、暴力的・嗜虐的・反道徳的というものが人間の持っている側面である以上これに絡んだドラマが生まれるし、それを描きたくなることもあるだろうと続けて話されています。ちば先生ご自身は、暴力的な描写は好きではないとおっしゃっています。血しぶきが飛ぶ描写は自分の嗜好から離れているけれどストーリの流れで必要、又は必然な描写であったから描いたと言われています。証言の最後に、残酷な描写・卑猥な描写を良しとせず、世の保護者達が不買運動を起こして漫画を燃やす等の抗議運動をするのは構わないけれど、法律という縛りで発禁という形にはしないで欲しいとも言われています。子供達に見せない様にする規制を厳しくするのは構わないけれど、表現に関しての規制はしないで欲しい。1つの規制を始めると、全ての表現に関して取締が行われる様になるだろうしそういうものは読者の感覚に任せて、発禁はしないで欲しいと言って証言は終了しています。良いものは残り、悪いものは消えていく「自然淘汰」は漫画においても起こりますし、それが読み手が持つ権利の反映でもある筈です。安易に自分達が持つ権利を他者に委ねることが、どういう結果を招くのか。それがどんなに小さな規制でも、いずれ拡大解釈される可能性が強いということをもう少し認知されたらと思います。私はちばてつや先生が証言して下さったことに関して、筋違いではありますがとても感謝をしています。先生は「表現の自由」を守るためにしただけの事で決して旦那の漫画を擁護している訳ではないし、旦那の為ではなく、むしろ社長の為に証言に立ったのですから、私が喜ぶことではありません。でも著名な漫画家の中には、成人向けコミックを蔑む方が少なからずいますし大手出版会社になるとエロ漫画を描いた経歴だけで、契約しないこともあると複数の人から話しを聞いたこともあります。そういう事もあって、ちば先生の様な方に切捨てられなかったことそれ自体が本当に嬉しかった。少し分かりにくい感情だとは思いますが。旦那自身は既に「傍聴してても、何だか他人事の様に聞こえる」と言うのですが最初から離れた位置で見ているしか出来なかった自分は、今でも裁判が気になるし形はどうであれ「旦那の表現が嫌いでも、認めてくれる人」には無条件で感謝したくなるのです。
Apr 11, 2006
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予想でしかありませんが、警察は旦那の描いている物からして、自宅にはそれに類するもの、例えばアダルトビデオとかポルノ雑誌が大量にあると思っていたのかもしれません。でも雑誌類はゲームやプラモデル関係。文庫本はほとんどSFです。成人向けの漫画は、自分で描いた単行本数冊と見本で届いた雑誌知合いの漫画家さんがくれた同人誌が、数冊ある程度でした。警察にしたら、当てが外れたのではないでしょうか。実際は押入の中に、箱詰めにされた成人向けの同人誌があったのですが警察はそこまで調べる事はしませんでした。我が家の家宅捜査は、本当に形だけに近かった様です。でも1度「何だ、この本は?」とボスの声が大きく聞こえました。すると旦那は、あろう事か「それは妻のです」と答えているのです。「こんな本をか?何にするんだ」少しトーンが下がったボスの声に続いて、旦那は論文の資料だと思うと答えていますが、一体何の話しか私の方が冷や汗をかきました。警察が帰った後、私はすぐに本棚を見直して、力が抜けました。確かに私の本に間違いなかったので、げらげらと笑い出してしまいます。ボスはこの本を、わいせつ物の可能性ありと思ったのかと思うと笑いが止まりませんでした。タイトルを上げておきましょうか。「エロチシズム」「エロスの涙」「言葉とエロス」「エロティシズムの歴史」こういうタイトルがあると、エロ漫画家の本棚にあるものだから問題のある書籍ではないかと、反射的に聞いてしまったのでしょう。これらの本は、大学時代に受講していた芸術学で、教授が紹介した本です。論文を書くために集めた資料なので、恥ずかしながら拾い読みのレベルで当然全ての内容を把握はしていません。でも記憶している内容を言えば宗教的な物に見られる精神の飛躍は、エロチックな情感の高まりに共通しそれらを芸術の中にも見てとれる事を論じていたと思います。(今は読み直す根性もないので、間違っていたらすみません)いずれもジョルジュ・バタイユの著作です。ある程度の偏見は仕方が無いにしても、犯罪者を捕らえる職の人が偏見を持って家宅捜査を進めていたのではないかと思うと恐ろしくなります。勿論咎められたり、押収されたりはしませんでしたが念の為、翌日には「私の本」を、本棚の奥へとしまい込みました。
Jul 19, 2005
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電話が来たのは7時半頃、松文館の顧問弁護士からでした。彼は挨拶が済むと、開口一番にこう言います。「ご主人様はいらっしゃいますか」この人は何を言ってるんだろう?旦那がいない事を知らないなんて本当に会社の顧問弁護士?不信感を押さえて、旦那が不在の旨と警察についての事を言うと、早口で少しトーンの高い声の弁護士さんは「あ、もう奥様もご存知でしたか」・・・大丈夫なんだろうか、この人。正直にそう思った事を白状します。電話での第一印象は、ハッキリ言って良くありませんでした。顧問弁護士である彼は、幾つかの情報を与えてくれました。まず今回の件に関して、顧問弁護士が対応を始めていること。漫画家で取り調べを受けているのは、旦那だけであること。任意事情聴取なので、旦那も今日中に帰宅するだろうということ。そして万一の事を考え、弁護士のフルネームと所属する法律事務所をきちんと覚えておくよう、旦那に伝えておくことを指事されます。万一の事。旦那が警察のお世話になり続けてしまう事でしょうか。でも最悪の事態になったら、旦那との連絡手段はあるのかしら?嫌な考えが頭をよぎります。それでも私はメモを慎重に取って旦那が帰宅したら、改めて連絡させる事を告げて電話を切りました。旦那帰還の確率は高いと分り、少し安心します。もし自分で帰ることになったら、旦那から連絡があると思いました。何しろ旦那は財布も持たずに出掛けましたから、動けないはずです。警察も連れて行くだけ連れて行って、帰れない旦那を放置する様な事はさすがにしないでしょう。電話くらい貸してくれるはずです。私は動いている警察を、勝手に池袋の警察と決めていました。松文館の最寄り駅は池袋なので、管轄地域の警察に連れて行かれたとそう思っていたのです。なので池袋発の終電が出る午前1時頃までに旦那が外に出されなければ、一晩警察でお世話になるのだと思いました。さすがに徹夜で任意事情聴取が行われるとは思えません。0時前後までには、旦那の処遇がどうなるかハッキリするはずです。私は又、関西の友人Tさんに電話をして、気を紛らわせます。「いつでも電話していい」という言葉に遠慮無く甘えさせてもらいその日は3度も電話を掛けて、長話をしました。
Jul 17, 2005
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犬2匹が無事トイレを済ませるた後、私は隣の話声に耳を澄ませました。と言ってもリーダーの声は大きく、勝手に聞こえて来ましたが。旦那の仕事部屋にある絵や本、資料についての説明を求めている様で特に絵に関しては、いつ頃に描いた物なのかとか、何に使ったかとかどうやって描いたのかとかを、逐一聞いていました。でも旦那の答えというのが実に素頓狂で、「普通に描いた」「下書きの後にインクで色を塗って」等と答えになってない様な説明を、丁寧にしています。旦那本人は逆らう風でもなく、至って真面目に答えているのですから警察の人も内心、困っていたのかもしれません。それでも画材を見せたり、パソコンも見せたりしたのでしょうか。説明を続けていくと、リーダーは更に大きな声で「いやぁ~参った、こんなのも描くのか。どうしてこういう仕事をしないのよ?こんなにちゃんと描けるなら普通の仕事をすりゃぁいいじゃないか」旦那は返答に困った様に、何か小さな声でぼそぼそと言っていました。その時の事を、私は日記に記していますが「パンが無ければお菓子を食べればいいじゃないと言われた小市民の気持ってこんなモンだったんだろうか?ホント、腹が立つ!」と書いています。少しズレた例えの様な気がしないでもありませんが事情を知らない上の立場にいる人が気安く口にする、無神経な言葉もとにかく猛烈に怒ったと思って下さい。旦那はプロ野球選手の例えで話しながら、静かに怒っていました。「プロ野球選手になった人全員が、一軍でプレーできる訳がないし、プレーしたくても、起用されなきゃ仕方が無いって話しなんだけどな」好きな絵だけで食べていければ、こんなに楽な事はありません。仕事を選べる人は、ごく一部の有名作家だけです。有名作家にしたって、編集や出版者の要望をあれこれ聞いてしたくない仕事をしているのかもしれませんが。警察が帰った後、どうして経緯を話してやらなかったのかと聞きました。すると旦那は、言ったところで分かってもらえると思えなかったし何か面倒臭くなって、はいはいって気分になったんだと言っていました。「世界が全然違う人に、最初からいちいち説明するのは大変だしね。まぁ、いいかって思ってスルーしてた」世界の違う人に説明する事が、どれ程大変な事なのか。旦那逮捕後、私は色々な場面で経験しましたが、その時はまだ「話さなきゃ、もっと理解されないのに」と少し不満に思っていました。
Jul 19, 2005
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翌日、随分と遅くまで眠っていたのですが、お昼前に電話が来ます。私は起きていたけれど、きっと松文館からの電話だろうと思い旦那を起こして、そのまま電話に出てもらいました。電話は旦那関係者ではあったのですが、松文館の社員からではなく以前に話した某出版社の編集T氏だったのです。本当に我が家の電話に、モニター機能が無かった事が悔やまれます。旦那は、自分も取調べを受けたから、迷惑を掛けても困るので自分の原稿を返してほしい。そんな内容の事を言ってました。電話が切れた後、旦那は分らないなぁと呟きながら珍しく自分から、私に話し掛けて来ました。「Tだったよ。昨日は大変だったそうですねって、いきなり言われた」「で、彼の用件は何だったの?」「さぁ。俺も事情聴取されたって事を言ったら、慌てちゃって何か用件もそこそこに切られたって感じだった」「何でTは昨日の事を知ってるの?そんなに話しは広がってるの?」「・・・さぁ」2人でしばし黙り込んでしまいました。「匿名のFAXが、代々木警察署に届いたって言ってたよね」「って、俺は聞いたんだけどね」「Tの出版者も、代々木に近くなかったっけ?」「まぁ、代々木じゃないけど、距離としては近いかな」「・・・どう思う?」「・・・何か、イヤな感じだな」それまでのしつこい営業を思い出して、胡散臭い感じがしました。そんな警察沙汰になる様な会社なんて辞めて、うちで描かないか。そういう会話にしたかったのではないかと、つい疑ってしまいました。でも人気作家でもない旦那を、そこまでして獲得したがる訳もないし単なる偶然と思いたいのですが、それにしても余りに早い電話です。不信感だけが膨らみました。後に、事件のきっかけはライバル会社の密告だったのではないかと噂が流れます。後に、平沢勝栄議員の元に届いた手紙が直接の原因と裁判で分りますが、その親の名前や職業等は明かされていませんので同業者からの密告ではないと、完全に言い切れない面があるのです。事実関係は確認されていませんし、今となってはどうでもいいことですが少なくとに私達はTに対して、少なからずの疑念を抱いていたのは事実です。
Jul 23, 2005
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警察は更に、身に付けている貴金属類を全て外すように指事します。旦那は結婚指輪だけしていましたが、それを言われた通りに外してテーブルに置きます。小さく乾いた音がしました。旦那が結婚指輪を外していても、私は余り気にしない方でした。外しても無くさなければそれでいい程度の、形式的な物です。でも他人からの指事で旦那が指輪を外したのは、ひどくショックでした。本当に別れなくてはいけないというのか、別れさせられる様な感じで何とも言えない感情が湧き出ます。絶望的という言葉が、近かったかもしれません。センチな気分になるとか、そういう甘い感傷は一切ありません。切実で重い気分でした。サカイ氏が「それじゃぁ、行きましょうか」と旦那に声を掛けます。旦那は小さく返事をして、警察に続きます。「奥さんの前だから手錠は掛けないでやるけど」真庭が、玄関の前で言いました。「逃げようとか、変な気を起こすんじゃないぞ」全くこの男は、どこまで失礼な奴なのかと腹が立って仕方がありません。逃げるつもりなら、今頃こんな所にいるかってんだ、ボケ!再度取調べがあるかもしれないと言われていたので、任意事情聴取以降ずっと自宅待機の状態で、いつでも警察の呼び出しに応じられる様にしていたのに。今でも、もし許されるのなら生卵や犬の糞を投げ付けて罵倒してやりたい気分です。旦那もさすがに「そんな事しません」と呆れた様に答えていました。玄関まで行くと、足が震えだしました。足だけが玩具の様に震えます。それまでのやり取りで、確かに感情は高まってはいました。でも取り乱す程の感情の高まりは、自覚していません。それなのに、足が自由に動かせないのです。旦那が玄関で腰を下ろして、靴ひもを結びます。何か言おうと思いながらも、足ばかりが気になります。靴を履き終えた旦那が振り向きざまに、小さな声で耳打ちしました。「会社へ連絡しておいて」私は黙って頷きました。警察に聞き咎められたら面倒です。立ち上がった旦那は、いつも通りにそれじゃぁと言いました。下まで行かなくちゃ、そう思いながらも足が動きません。旦那が警察に前後を挟まれる様に、階段を降りて行くのが少しだけ見えてすぐにドアが閉まりました。あの時の私は、一体何だったのでしょう。全く情けない話ですが、私は旦那を見送る事も出来ずに玄関にしばらく立ちすくんでいました。
Jul 28, 2005
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旦那は電話をもらった後、具体的な打ち合わせをして毎月16ページの原稿を描くことになりました。漫画は1作品ではなく、ページ単価で稿料が決まります。最低稿料はページ単価4~5000円という話しがありますが幸いな事に一番最初の契約から、その倍に近い稿料を頂けるという話しになりました。10万以上の定期収入です。私は原稿料が高い・安いの判断は付きませんでしたがページ単価が研修中の日給より高いのね、と変に感心しました。何より親に借金をしないで済んだ事が、一番嬉しかったのです。私は当然、何も文句はありませんでしたし、旦那も難色を示さず、提示額で即了承しただろうと思います。出版社からの定期稿料は、今でも有り難いと思ってます。多数の人にウケる、可愛い絵を多少なりとも描ける人なら流行りのテーマで同人誌を作って、もっと効率良く稼ぐでしょう。でも旦那は、アニメやゲームの流行に敏感な人間ではないし器用に絵を変えて、漫画を描ける人でもありません。外からの強制力がないと、筆が進まないという面もあります。締きりを設定される事が、仕事をする一番の原動力なのです。そしてこれは、少しズレた考え方かもしれませんが身分を証明する手段がとても少ない自由業者だからこそきちんとした会社から定期収入を頂ける方が、多少なりとも外からの信用度が違うのではないかと思うのです。「○○社から発行されている雑誌に、毎月漫画を描いています」「○○社の雑誌に、これくらいの間、連載をしていました」こういう肩書きに近い物があると、営業活動をする時に、少しは楽になるのではと、勝手に考えています。実際の所は、全く分りませんが。
Jul 10, 2005
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隠れ家の生活ではないのだから、何をしていようとしていまいと警察が来る時は来るのですが、それでも気持ちが怯えモードになってしまい車の音、サイレンの音、ドアのすぐ外で聞こえる足音、電話のベル。色々な音に過剰反応して1日を過ごしましす。30日も無事に過ぎて、これで警察も来ないだろうと安心した途端に私はひどい頭痛を伴った熱を出して、ダウンしました。レトルトのお粥を作ってもらい、葛根湯を飲んで早々に布団に入ります。しばらくゲームをしている旦那を見ていましたが、気が着くと眠っていて目が覚めた時は8時になっていました。旦那の姿が寝室にないのでリビングを見ると、少しむくんだ顔で原稿に向かっています。「寝てないの?」「うん、まぁ一応、やれる所までやってみる」私はまだめまいがしていたので、午前中一杯休ませてもらうと言って、再度布団に入ります。警察の心配が無くなったら、今度は原稿を落とす落とさないで旦那は悩んでいるんだから、大変だよなぁ・・・ぼんやり考えていました。10時過ぎた頃、チャイムが鳴ります。旦那がインターホンに出たと思ったら、今度は私が寝ている和室のドアを慌てた様に勢い良く閉めました。宅配便が来たんだと思いました。犬が2匹とも和室の隅に寝ていたので、応対の邪魔にならない様にドアを閉めたんだろうと、そのまままどろんでいました。それから間をおかず、パッと何かが強く光りました。雷かと一瞬思いましたが、窓ではなくリビングの方から光ります。何か変だとは思い始めていましたが、続く知らない男性の声で一気に目が覚めました。「まだ、こんな物を描いているのか!」厳しく咎める様な声が聞こえます。「警察が来た!今のはフラッシュ?何が起きてるんだろう?」私は布団の中で様子を伺っていましたが、しばらくすると「奥さん、奥さん!」と大きな声で呼ばれます。上着は皆がいるリビングの椅子に掛けっぱなしなので、パジャマのまま来訪者の前へ立つ羽目になりました。そして何の前置きもなく、警察は私に向かって言い渡します。「これからご主人を連れて行くから、支度してやって。2~3日分の着替えね。下着と、後は洗面道具」驚いて旦那を見ると、彼は困った様なすまなそうな顔で頷きました。逮捕される事はまず無いと言われていたのに。明日からは気持を入れ替えて頑張ると話していたばかりだったのに。2002年10月1日火曜日旦那はついに逮捕されてしまったのです。
Jul 26, 2005
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旦那が私達の待機している部屋に顔を覗かせて「警察の人が帰るって」そう言いました。呼びに来たという事は、お見送りをしろって事?何だか分らないまま、私は犬を押さえながら顔を出して挨拶をしました。相手のリーダーも「それじゃぁ、失礼しました」と頭を下げます。ふと見ると、若い研修中ライクのお兄さんが、私の手帳をめくっています。「それは私のです」と取り上げたくなりましたが、我慢しました。何しろ一番の被害者は旦那ですし、この先何があるかも分りません。下手に刺激して、変な罪を着せられても困ります。結局警察は、旦那の単行本3冊と、絵を保存していたMOを一枚。それから単行本「密室」の表紙がポスターになった物を押収しました。それらをご丁寧にも、小さな段ボールに入れて持ち運びます。わざわざ箱に入れて持って行くのは、規則なのでしょうか。片手でも持てる様な荷物なのに。少し滑稽でもありました。部屋を出て行く警察に続いて、旦那もなぜか靴を履きます。「どこ行くの?」驚いて聞くと、旦那は一応下まで見送りに行くといいます。「何でわざわざ?放っておけばいいじゃない」「まぁ、一応ね」言ってる間にも、旦那は外に向かいます。本当にお人好しなんだから!バカじゃないの?文句を言いながら、私も追い掛けます。車は来た時と同じ、セダン車でした。黒なのか紺なのか分りません。こういう色だと、夜に見られても特定されにくいだろうし犯人の張り込みには丁度いいのかしら、と覆面パトカーを前に何とは無く「う~む」という感じで、あれこれ考えていました。警察が乗り込み、車が走り出します。旦那は車に向かってお辞儀をしました。慌てて旦那に続きます。もし誰かがみていたら、あの車にはどんなお偉方が乗っているのかと驚いたかもしれません。それ程旦那は深く、長く頭を下げ続けます。私はとっとと頭を上げて、そんな旦那を眺めていました。旦那のお辞儀は、いつでもバカ丁寧です。拍手をする時には、まっ先に手を叩き、最後まで拍手を続けます。旦那が相手に対して、いつでも変わらずに敬意を払う姿は自分に無い姿勢なので、私は心から尊敬していましたがまさか警察にまでこんなお辞儀をするとは思ってもみませんでした。全く、やれやれです。
Jul 20, 2005
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話しは一気に下世話な方向へ向かいました。「待たされてる間とか任意事情聴取の間に、お茶くらい出たの?」「いや、お茶はさすがに出されなかったけど、途中で何か飲むかって自販機のお茶を買ってもらった」「カツ丼ではないのね」私は思わず、笑いながら言いました。「でもさ。そのお茶が、見た事が無いお茶なんだ。何て言うか、オリジナルブランドって感じのお茶でさぁ・・・。これって、まさか囚人が作ってるんじゃないだろうなって思ったよ」警察の中にあるオリジナルブランド。味は普通のお茶なのでしょうが不味そうだし、警察にお金が入るなんて、二重にイヤな感じです。メーカー名は忘れたそうですが、何と言うメーカーなんでしょう。ちょっと気になりました。しかめた顔で旦那はもう一つ、話しをしてくれました。「警察で待たされて、刑事さんが入った来た時なんだけど。俺のことをお前がビューティ・ヘアかって聞くんだよね。まぁ、そうなんだけど、こんな所なんだからペンネームじゃなくて本名で呼んでくれってシオシオしたなぁ・・・」本人は、かなりヘコんでいました。恨むなら名付け親を恨むか、自分の浅はかさを恨むが良しです。私はゲラゲラ笑いながら、他に何か面白い話がなかったかを聞きました。少し考えてた旦那が、そうそうと笑いながら話し出します。「家には来なかったけど、もう1人、警察署で一緒だった人がいたんだ。結構イカツイっていうのか、強面でいかにもな感じの人だったんだけど携帯の着メロがさ、アルプスの少女ハイジだったんだよね」「♪口笛はなぜ~、遠くまで聞こえるのって、あの曲?」「そうそう。♪教えて~、おじい~さん~。何か微笑ましかったねぇ。本人の趣味なのか、子供か孫の趣味なのか分らないけど、この人も仕事を離れれば、普通のおじさんなんだろうなぁって思うと妙にしみじみしたよ。ちょっといい話しかな」私達は関係無い話で盛り上がり、笑ってました。結局私達があれこれと考えても、仕方が無いのです。話しが一段落したのは、11時過ぎでした。頼まれていたコントローラーが見つからなかった旨を話すと近所の中古ゲーム店まで、散歩がてら買物へ行きました。無事コントローラーを入手し、ついでにゲームをしながら食べようとコンビニでポテチやコーラを買い込みます。口にこそしませんが、何かして気を紛らわせないと不安でした。その日は明け方近くまで、旦那と一緒にゲームをして過ごします。
Jul 22, 2005
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2月末から体調を崩し気味だった娘。3月になっても三寒四温が続く頃は微熱が出たり喘息の発作が断続的に出たりが続きました。3月末に時期外れのインフルエンザを発症してこれが最後かと思ったら、そのまま容態が悪化。血液の炎症反応が異常に高いとのことで大きな病院へ行って再検査、即入院となりました。抗生物質を点滴で入れても熱は下がらず体中が痛いと泣き続ける娘の耳の下は腫れっぱなし。おたふくで炎症反応はこんなに上がらないし腫れ方も少し違うと検査が再度行われようやく川崎病と診断されました。川崎病には特有の症状がいくつかあります。目の充血や体の発疹、手足が腫れたり、手のひらや足の裏が赤くなったり。喉の粘膜の炎症、イチゴ舌の症状。首の下のリンパ節炎等が典型症状だそうですが娘はそれら症状が余り認められず唯一顕著に出たのが高熱とリンパ節炎でした。川崎病を一言で説明すると全身血管の炎症を起こす病気。発症原因は未だに不明、乳幼児の発症が多いそうです。最も怖いのが、炎症を起こした血管に瘤が残って血液の流れを止めてしまうという症状だそうです。特に心臓へ酸素や栄養を送る冠状動脈にその後遺症が残ると血流を塞いで心筋梗塞を起こしてしまうのが最悪のケース。その為に血液をサラサラにする薬の服用を続けるエコー検査等で冠動脈瘤の有無をチェックするが必要になってくるので、検査はこの先2年続くようです。治らない病気ではないけれども後遺症やその場所によっては命にも関わるというのですから必要以上に怖がる必要は無くても用心しなければなりません。2週間の入院生活を送り、先日退院しました。4月半ばに行われる最初の検査で問題がなければその後は保育園にも普通に通えるようになるみたいです。付添いが出来ない病院だったので通い続けた疲れと娘が無事戻ってきた安心とで、今は何もする気がせず溜まった疲れを少しずつ解消しているところです。本当に娘帰宅翌日は、体中が筋肉痛を起こして歩くのも辛いという情けない状況。年を取ると筋肉痛は遅れて来ると言いますが気が張っていた為に、筋肉痛にも気が付きませんでした。しばらくは娘の自宅療養も続くので、またブログは休みますが楽天ブログのコメントやトラックバックの性質の悪さや広告が次々にリンクされる状況に少々うんざりしているので閉鎖や移転も一緒に考えようかと思っています。今年から主人も「藤原屋台村」という屋号を正式に申請したので改めてHPの仕切りなおしもいいかもしれません。まだ落ち着いて考える余裕が無いので、結論を急がずゆっくり検討しようと思います。ようやく春本番。大変だったけれど色々と考える良い機会を与えられました。皆様も良い春を迎えられるよう、心からお祈り申し上げます。
Apr 4, 2009
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ようやく落着いた旦那は、それから何人かと電話で話しをしました。弁護士さんと話した後、私が電話を掛けたTさんとAさんにもご挨拶というのかお詫びに近い電話をしました。「嫁が迷惑を掛けて」と言われてしまい、何だか釈然としませんが全くその通りなので、文句も言えません。そうして、ようやく遅い夕飯を取りながら、警察での話しを聞きました。まず驚いたのは、池袋ではなく代々木警察署での取調べだった事です。旦那も最初はどこの警察か分らなかったらしく、車に乗った後で「代々木の方まで行くから」と言われて初めて知ったそうです。警察手帳は、所属警察署まで分る様に見せられはしない様です。そして、旦那の容疑は「わいせつ罪」との事でした。正確には「わいせつ図画頒布の共謀」と言っていたらしいです。代々木警察署に匿名で抗議のFAXが届いた様で、その中の漫画が自分の漫画だったらしいと旦那は言いました。聞かれた事は、事実関係・連載内容・契約内容の確認・経歴等。どうして旦那の漫画が捜査の対象になっているのか等の詳しい話は聞かなかったそうです。正確には聞ける雰囲気では無かったのでしょう。それにしても、問題になっていた単行本「密室」が発売されたのはその年の4月の事です。それがなぜ、9月になって捜査なのか。よく分らないと首を傾げました。取り調べを受けた時間は、2時間もかからなかったそうです。1時間強程度と旦那は言っていました。移動と聴取の時間を合わせても計算が合いません。どこで時間のロスがあったのかを尋ねると、聴取の書類作成に時間が掛かったとの事です。慣れない人が入力するので、とにかくタイピングに時間が掛かりその間ずっと待たされていたと言うから、呆れる話しです。そんな事だったら、録音でもしておけばいいのに。取調室は、事務所にある様なグレーの小さな机が2つ並べられていてそこに向かい合って座ったそうです。対面に刑事さんが1人座り部屋にもう1人、同席していたと言っていました。2対1での聴取です。取調べ室には窓があり、比較的明るい部屋だったそうです。広さも、まぁある方だと言っていました。「テレビに出て来る様な、部屋の雰囲気って考えていいの?」「うん、まぁ、そうだね。そんな感じ」「机には、スタンドが付いてた?」「無かった。それを凶器にされると困るんでしょ」「なるほど」お互い緊張もほぐれたのか、会話は軽いノリになって行きました。
Jul 21, 2005
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編集長との打ち合わせで、内容や絵柄についても話したそうです。内容については、雑誌のカラーに合ったものをという事。絵については、アニメ調ではなく劇画調で描いて欲しいという事。先に描いていた雑誌の画風で構わないという事だったので、逆に言えば劇画調の絵が目を引いて、スカウトされたのかもしれません。言われた事はその2点と聞きましたから、余り細かい指事は無かった様です。一方の旦那は、漫画を描くという経験が少なかったので具体的に「どういう風にストーリーを進めて行けばいいのか」を聞いたといいます。少し分りにくいのですが「話しのテンポは、どれ位がいいのか」に近いみたいです。要するに、どの程度のページ配分で描けばいいのか。そういう意味合いで指導を願ったと、私は解釈しました。16ページの内、ストーリーは大体6ページ位で済ませて後は性描写だそうです。勿論、作家さんによって違うでしょうし連作なのか、一話読切りかでも違うでしょうからあくまで旦那が、エロ漫画に限って実践している事ですが。それと、これは別の時にアドバイスしてもらったそうですがキャラクター設定を細かくする事が、役立つらしいのです。旦那の机に無造作に置かれている、落書きに近いキャラクターの設定書には主人公の性格や好きな物・嫌いな物、ストーリーとは直接関係の無い様な過去の出来事等が、ちょこちょこと細かく書かれています。結局、同じストーリーでもキャラクターが魅力的に動くかどうか説得力のある言動を取るかどうかは、そういう細かい所にある様です。それにしても。旦那が編集長と打ち合わせをしたのは、駅近くの喫茶店。時間は確か3時か4時頃、夕方前と記憶しています。そんな時間にそんな場所で、エロ漫画の打ち合わせがされているなんて。むしろ私は、そっちの方が驚きです。
Jul 10, 2005
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もう1人。マイナスのベクトルで、忘れられない人がいます。成人向けコミックを出している、某出版社の編集T氏です。その人は旦那と、少なからずの面識はあった様でした。どういうい経緯からか、ビューティ・ヘアが旦那であると知って自分の所で描かないかと、とても熱心に声を掛けて下さったのです。ただその人の勧誘方法が、余りにも露骨で不快でした。旦那がお世話になっている松文館は、印税の誤魔化しを普通にしているし作家さんの評判も悪いので、何人もそこの雑誌で描くのを辞めている。その点、自分の所はきちんとしているので、こっちで描いた方がいい。そんな事を旦那に電話で長々と言ったり、わざわざ印税の計算をしてファックスで送ってきたりしていました。旦那も私も情報の真偽を調べようとは、全くしませんでした。もし本当だったとしても、それまでの報酬に十分満足していたから事実がどうとか業界裏話とか、そんな事はどうでも良かったのです。それ以上に本当に苦しかった時、偶然とは言え仕事をくれた会社です。恩のある会社に対してT氏がした発言は、神経を逆撫でするだけでした。しかし、押しに弱い旦那です。結局根負して、別雑誌に漫画を描く事になりました。自分の漫画が、今までと違う読者層に受け入れられるか。相手もうるさい事だし、少し試してみてもいいかと思ったそうです。漫画掲載は、すぐに見つかってしまいます。担当さんから「困ります」程度の注意があった様でした。ちなみに、別雑誌に描いた時のペンネームは「B・ヘア」絵柄も全然変えていません。隠すつもりならペンネームを変えるかそんな気が無いなら、堂々と同じペンネームで執筆すればいいのに。私は呆れて、旦那に言いました。「旦那って、ちょっとバカなんじゃないの?」その後、旦那は松文館の専属という形になりました。断りの理由がはっきりと出来て、旦那も気分的に楽になった様です。何しろ仕事を頼まれると、なかなか断れない人ですから。結局その出版社での仕事は、2~3本の漫画のみで終了しました。
Jul 12, 2005
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その後、旦那は松文館に行き、顧問弁護士と会って話を聞きます。松文館の人達も交えて、今後の展開がどうなるかの話しをしたそうですが結局、警察がどう動くかをもう少し見ないと分らないという事でその場で具体的な事は、何も決まらなかったと聞きました。会社はともかく、漫画家が逮捕される事はまず無いでしょうと言われて旦那は少しホッとしたと言っていました。警察から再度お呼びがかかり、事情聴取される可能性はまだあるし、事情聴取がこの先無かったとしても警察が旦那の漫画を問題にしていたのは間違いがありませんから安心するのは、まだまだ先という感じでしたが。この頃、私達はパスポートを申請しています。9月24日には受け取り予定でした。そして遅くとも11月頭にはオーストラリアへ行こうと具体的に計画を進めていて、旅行会社も決まり後は申し込みをするまでになっていたのです。友人も一緒に行く事になっていたのですが、事情を話して今後、事態がどういう風に転がるかが全く分らないので落着いてからの申し込みにしたいと、延期のお願いをしました。友人は了承してくれましたが、「本当に先生は、本州から出られない男だね」心底感心した様に言って、苦笑しました。なぜか旦那と旅行の計画を立てると、大きなトラブルがやってきます。新婚旅行に九州か北海道へ旅行しようと計画したら、会社が倒産してそれどころの話しではなくなりました。貯金も出来たし、旦那の仕事のペースも安定してきたから今度こそ旅行へ。車の免許を持たない私達は身分証明書が少ないのでパスポート取って、いっそ時差の少ない海外旅行へ行こう!そんな勢いで、7月頃から計画を始めていました。「俺には本州から出られない呪いがかけられているんだな。いきなり海外旅行なんて計画したから、呪いの反動もデカかったんだ」冗談とも本気ともつかない旦那の言葉に、私も笑うに笑えません。警察が来るとしたら、一体いつになるのか。今月中に何もなければ、来月に引きずる事はないだろう。カレンダーを見ると、2002年9月30日は月曜日です。この日までに何もなければ、わざわざ翌月の、しかも火曜日に警察が来たりする事は無いはずだと、勝手に決めつけました。全てが終わったら、諸手を振って海外旅行へ行こう。そんな会話をして、お互い9月が何も起こらずに過ぎる事を祈りました。
Jul 24, 2005
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翌日、10月2日の事です。差出人の無い荷物が届きました。封筒が大きい上に、差出人が無い為に、郵便局員が届けてくれたのです。旦那宛の荷物ですが、逮捕された後に無記名の荷物が届くのは何となく気持が悪く、受け取りを拒否しようかと思ったのですが大きさが原稿用紙サイズと言う事と、中に小さな硬い感触がありMOと判断出来たので、某出版社からの原稿返却と分りました。消印も会社所在地の郵便局に間違い無い様です。「どうなさいますか?」郵便局員が受け取るかどうかを聞いて来たので「恐らく主人宛の荷物に間違い無いので、このまま引き取ります」そう言って、荷物を受け取りました。部屋に戻って荷物を開封すると、案の定です。旦那が別の雑誌に描いた3本分の原稿と、カラーページのデータが入ったMOが出て来ました。私は念のために、中に手紙の一筆でも無いかと原稿の間も全部見てみましたが、儀礼的な挨拶状の一筆も無しです。私は余りの対応に、心底驚きました。編集のTがやった事なのでしょうがこんな社員を雇っている会社にも呆れます。この会社で出された本は松文館と違い、性器部分の修正が全くありません。旦那の漫画が猥褻な物と言われるのであれば、修正が無い分こちらで出した雑誌の漫画の方が、更に猥褻な作品となるはずです。だからこそ警察の介入を恐れていたのだし、会社の名前を出さない様にと私に念を押したのだと言うことは、誰が考えても明白でしょう。本当に、こんな会社に旦那が移らなくて良かった。心底思いました。もし。この会社で旦那が警察沙汰になったら、どうなっていた事でしょう。トカゲの尻尾きりをされて、全責任を押し付けられたかもしれません。妻の立場として言わせてもらえば、旦那逮捕は複雑な思いでした。松文館の編集サイドにm何らかの判断ミスがあったのではないかと逆恨みする気持が多少あったのは事実です。もしそうだったとしても。この会社は旦那を見捨てる様な態度は取っていないのだから、とにかく黙ってお任せしよう。そう決心した瞬間にもなりました。
Aug 4, 2005
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折り返しの電話は、すぐに来ました。私は儀礼的な挨拶をして、突然の連絡についてお詫びを言った後で旦那の逮捕の話しをしました。逮捕の単語を聞いた時には、さすがに声を上げていましたが、彼の反応は淡々としていました。男兄弟って結構クールなんだなぁと、妙に感心したのを覚えています。もしかしたら内心はすごくショックを受けていたのかもしれませんが、付合いのほとんど無い私には、それが分りませんでした。一通り話し終えた後、そちらの両親への報告はどうするべきかを聞くと「いや、言わない方がいいでしょう」と即答しました。そして長男にだけは、自分から今晩にでも連絡すると言ってくれたので有り難くお願いしました。電話は本当に用件のみで終了します。私はあれこれと質問されずに済んだので、ホッとしました。そしてIさんから「連絡しろ」と責められないで済むということにもすごくホッとします。近くの人にあれこれと強く言われるのはいくら正しい事だとしても、感情的に辛いものがあったのです。取り乱してこそいませんでしたが、ダメージは大きかった様でとやかく言われると、その反動で怒り出してしまいそうになります。私達が報道の内容を確認したのは、夜の11時半になっての事でした。「きょうの出来事」の中で、メイン以外のその他のニュースとしてテロップで流されていたのです。社長・編集長に続いて、旦那の氏名年令・町名までの住所が報道されていました。実名が報道されてる!私は呆然とします。唯一の救いは、北朝鮮関係のニュースのお陰で扱いが小さかった事でしょうか。それでも、なぜ漫画家の本名や住所まで報道される必要があるのか、今でも納得出来ません。ペンネームと実名が一緒に報道された事で、今後何か面倒な事が起きなければいいけれどと私は不安になりました。結局、猥褻罪の容疑での逮捕・コミックの摘発は史上初程度の情報しか流されませんでした。私は実名報道にショックを受けながらも、一体いつ詳しい情報が出て来るのかしらと、もどかしさも感じ始めます。この頃から始まった苛立ちは、自分の望む物が手に入らないだけでなくそれを手に入れる力が無いだけでなく、どうやって手に入れられるのかも全く分らなかった事に、起因していたのでしょう。普段から感情の起伏は激しい方ですが、何かの拍子に、自分が驚くくらいの感情の揺れが起こりどうしようも無くなりました。情けない話ですが、私はとても弱い人間で困難に直面すると、ヒステリックになるというだけの事です。一つやるべき事を済ませて肩の荷が降りたのに、実名報道のお陰で興奮して眠る気になりません。私はIさんを誘い、旦那と一緒にやっていたゲームの続きを、明け方近くまでやりました。
Aug 8, 2005
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又トラブルになっても面倒なので、ある組織団体に所属している身内としておきますが、その人から電話が突然来ました。前説明として、私自身も事件前の8月に1ヶ月の講習の後に試験を受けて、その団体最下位ランクの資格を所持していました。その団体は世間では聖職者に入る物です。舅が講習会受講を勧めてくれた時、私は色々な意味で喜びましたしかなりハードなスケジュールの中で、それでも何とか資格授与された時は嬉しかったのですが、講習の中で一般的に抱かれていたイメージとは離れた講和や授業がありました。具体的に言うと、お金にまつわる事です。税金面の優遇の話しや、顧客管理とも取れる様な話しが飛び出したので聖職とは言ってもビジネスの側面もあるのかと、妙に納得しました。お金に関して考えるのは、卑しいこと。聖職者とお金は縁が無いと勝手に思い込む方が確かにおかしいのですが、やはり違和感があったのです。その事を深く考えずに、私は掲示板の話しの流れで書いてしまいます。「知らなくても良かった事を知って、ディープだ」そんな風に書き込みました。まだ旦那が逮捕される前の、9月末の事です。「あなたは藤原しぇりという芸名で、インターネットをしているか」そう聞かれます。私は確かに、書いていたと答えるとその人は息巻いて「藤原君の本名やペンネーム、描いていた作品がなんかが全部公開されているそうじゃないか」そう言って怒るのです。それは2ちゃんねるという別の掲示板の事で自分が書いている所では個人情報も漫画についても、一切伏せていると伝えたのですが、何を勘違いしたのか「あなたはインターネットの恐ろしさを分かっていない、世の中はそんなに甘いものじゃないんだ」と、語気を荒げます。年輩の方なので、いくら説明しても2ちゃんねるや、他の掲示板を理解出来ないのです。更に困った事に、その方は世間的にも地位があり、人を諭す立場です。私の説明が口答えと聞こえたのでしょう。とにかく、今すぐ書いている事全部消しなさい、その一点張りです。更に前述した「ディープだ」と書いた事も、情報が流れていて「何も知りもしないのに、何で聞いた口を叩くのか。上ではかなり不愉快な思いをしているので、いずれあなたを呼んで皆の前で事情説明をしてもらう事になる」そう続けるのです。これは変だと思いました。確かに軽はずみな発言は咎められても仕方が無い事ですしそういう上からの命令があれば、従うのに何も異論はありません。でも、HPの存在が知られると過去の掲示板上に少なからず出ている、別の人達の個人情報が特定される恐れがあったので、旦那逮捕の報道がされたその日に、過去ログを消していたのです。どう考えても事件が公になる前から私の発言を知っていたとしか思えません。このタイミングで出してくる事に悪意を感じました。「聖職者が聞いて呆れる。イヤラシイ事をしてくれるな」そう思いました。そして過去ログについて話しをした人の標的は私ではなくこの身内自身なのではないか。そんな事まで考えました。偏見は承知ですが2ちゃんねるをチェックする聖職者なんて、余り良い印象を抱けません。身内は私の説明に、一切耳を貸そうとはしません。この人自身がネットに明るい人では無く、平易な言葉に置き換えて「過去ログ」「HP」「掲示板」を説明しても、別の意味に変換され話しは同じ所を回り続け、一方的に責められました。職場のおばちゃん達に感じた以上の「バカの壁」です。とにかく面倒な事になってしまったと、私は頭を抱え込みました。
Sep 4, 2005
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聞きたい事や、言いたい事が沢山あった気がしますがとても口を開ける状況ではなく、とにかく支度をしなければなりません。泣きながら言われた物を準備し始めた私を、呆れて馬鹿にした様に「何も命まで取ろうって訳じゃないから」警察はそう言いました。特番で放送される、警察の24時間を追う番組を時々見ていましたが犯人逮捕の時に、人情味あふれる対応をしている映像がよく流れます。でも言い切りますが、あんなのは嘘です。実際には、人情の欠片もありません。警察は何を説明する訳でもなく旦那を連れていったし家族に対して今後どうなるのか、何処に連れて行くのか等の説明は全くしません。最初から最後まで、高飛車な物言いです。あの高圧的な態度に、悔しくて泣きました。この慰めか脅しか分らない一言を言ったのは、細い目にボサボサの頭少しルーズな感じの中年男性。灰色がかった水色のジャンパーは工事現場のうるさい監視人と言った風貌でした。この人が、真庭という人でした。思い出すだけで腹が立ちます。他は前回の家宅捜査で家に来た「サカイ」と「研修中」でした。この2人も、同じ水色のジャンパーを羽織っていました。サカイ氏が真庭氏をフォローする様に、持ち物について説明してくれます。実際は丁寧というよりも、必要な情報内でのアドバイスだったのでしょうが真庭氏の後では、どんな言葉も穏やかに聞こえた事でしょう。「体を締め付けない物の方がいいね。締め付けると辛くなるから。それと、ウエストや首回りに紐のついてないものじゃないとダメなんで」後から分かった事ですが、紐の着いた服や長いタオル等は凶器にされたり、それを使っての自殺をする可能性がある等で、一切ダメなのでした。旦那が部屋着で使っていた物には全てウエストに紐が入っていたので持っていけません。紐を抜こうにも抜けないし、どうしようかと思っていたらサカイ氏が「後からでも荷物は渡せるから、とりあえず大丈夫な物だけを荷物に入れればいいですよ」と言ってくれたので、ズボンは諦める事にします。Tシャツ、靴下、下着、ハンカチ、歯磨きセット。そんな物をカバンに次々と入れます。ふと気が付いて聞きました。「お金やテレホンカードは?」「中でも物を買えるからお金はあった方がいいけど、カード類は全部ダメだから、ここに置いてって」旦那の所持金を確認すると、1万円札があると言いましたが細かいお金もあった方がいいのではと思い、私の持っていた数千円も手渡します。カード類を全て置いておくように言われたので旦那は外との連絡が、自由に出来なくなるんだと思いました。逮捕されるのだから当たり前と言えば当たり前なのですが旦那が犯罪者となって、正確には容疑者となって逮捕されるのは何かの間違いだとしか思えなかったのです。きっと、すぐに戻って来れるに違いないと思っていました。
Jul 27, 2005
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この日Iさんの携帯が、お昼前から頻繁に鳴ります。旦那の逮捕をニュースで聞いたという人が、連絡を入れて来たのでした。報道されていると聞き、慌ててテレビを付けて見ましたが、その時は丁度ニュースが流れる時間帯では無かったので、確認出来ませんでした。でも、ニュースを聞いて連絡をして来る人がいるのだから、報道されているのは間違いありません。予想していなかった事態です。これを受けて、Iさんはとにかく実家へ連絡しろの一点張りになりました。どう対処しようと考えている所に、助けてくれるのは結局家族しかいないと頑固なまでに連絡をする様に言います。私は諦めて、まずは自分の母親にどうするべきかを相談すると言いました。母は普段通りに電話に出ましたが、私が相談したい事があると言うと「どうしたの?」と声が急にトーンダウンしました。「実は、旦那が逮捕されちゃって・・・」「ええっ!?一体、何したの?」驚いた声を出して母は少し慌てた様でしたが、事情を話すと「殺傷事件や盗みって訳ではないのね、ああ良かったわ」と少しズレた事を言い、その後は冷静でした。実際、自分の直接の子供が逮捕された訳ではないから落着いていたというのもあったのでしょう。「でも、そんなニュース。今朝からテレビを見てるけどあったかしら?」とも言いました。地域限定の小さな扱いなのかもしれないと思いました。それなら、テレビ局によって報道していない所があるのにも納得出来ます。そして私は、一番重要な事を母に相談しました。「あちらの実家への連絡を、どうしたらいいと思う?」母は考えていましたが、情報の少ない今、連絡しても騒ぎが大きくなるしご両親が冷静でいられないだろうから色々と混乱するだろうと私と同じような考えを示しました。でも黙っておく訳にも行かないしどうするかで詰まった時、私はふと、旦那の兄弟の存在を思い付きました。彼の兄弟に連絡して、実家への連絡について指示を仰ぐのはどうだろうと聞くと、母も明るい声でそれが一番だろうと賛同してくれました。私としてもご両親と話すよりも遥かに状況を伝えやすくなります。そしてご両親の事を一番分かっている、実の子供からのアドバイスを聞いて対処すれば、間違いは少ないはずです。旦那は兄弟同士で連絡を取る事は滅多に無く、実家から近況を聞く位です。当然ながら旦那兄弟の連絡先は、旦那のアドレス帳にも書かれていません。でも偶然に、暑中見舞いの返事で私と同い年の兄弟から手紙が来ていてその中にメールアドレスが書かれていたのです。手紙を旦那の机から探し携帯電話のアドレスに、相談したい事があるから至急連絡を下さいという短いメールを送信して、折り返しの連絡を待ちました。話しやすいとは言っても、やはり相手がどう反応するか、緊張します。私は折り返しの連絡がすぐに来て欲しいような、欲しくないような。何とも言えない気持ちで待っていました。
Aug 7, 2005
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逮捕された旦那は車に乗るとすぐに、手錠と腰縄をつけらたそうです。「普通の世界とグッバイした瞬間だったね」笑いながら旦那は教えてくれました。確かに端から見てもそういう姿はショッキング映像に他なりません。そして「少なくとも10日位は顔を突き合わせる事になるから」と、真庭氏に言われたそうです。取調べで勾留出来るのはまず72時間。その後は10日ずつ、裁判所に申請して延長手続きが出来るそうで最長23日間の勾留が可能になります。逮捕直後に、旦那は勾留延長を言い渡されていた事になりますから結局警察は容疑者を好きに出来るんだなぁと、変に感心しました。車はまず代々木署へ向かい、お昼頃に到着します。私が考えていた通り、台風の影響は受けずに無事着いていました。そして事情聴取。内容は任意事情聴取の時とほぼ同じと言う事ですから確認作業に近かったのでは無いでしょうか。3時頃まで聴取を受け、調書作成を含めて4時頃までかかったそうです。調書作成の間に旦那はお弁当を買ってもらって、遅い昼食を取ったものの徹夜の為に食欲も無く眠ってしまったので、ほとんど口にしなかったと聞きました。その後で、久松警察へ移送されます。そこが旦那の入った留置所です。留置所に着くと諸手続きをしたり、手荷物の確認作業や整理をしたりですぐに就寝時間になってしまったそうです。就寝時間は夜の9時頃と言いますから、本当に長い夜です。電気が完全に消される訳ではなく、かなり明るい中での就寝です。特に新参者は部屋の入り口付近で眠る事になるので、余計に明かりが強く結構辛かったと言っていました。事態が事態ですから、緊張もあって余計眠れなかったのだとも思いますが。もし全く意に介さず眠れるくらい旦那が図太い神経の持ち主だったら、それはそれで複雑な気持になります。ところで。旦那が留置所で使っていた歯ブラシには、柄の部分にマジックで7と書かれている、黄色いビニールテープが貼られています。留置所内では名前を呼ばれる事はほとんど無く、全て番号制らしいです。その為に1ケ所に置いて保管される物には、自分の番号が目印として付けられる訳ですが、ラッキーの象徴みたいな「7」なんて禁忌番号にすればいいのにと、歯ブラシを見ながら思いました。旦那が一度だけ、逮捕された時の事を4コマ漫画で描いていますが、「ラッキー7だから、きっと良い事がある」と言う台詞がありました。実際にはラッキーに見放された様な事が、次々と起こるのです。
Aug 2, 2005
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私は比較的すぐに持ち直しました。「旦那から言われた会社への連絡を、きちんとしなくちゃ」そんな使命感もあったのですが、とにかく事態が動いた事で訳が分らず悶々としているよりも、幾分気が楽になった感じもありました。きちんと調べてもらえれば、旦那の漫画が飛び抜けて卑猥な物ではないとすぐに分るはずだと、甘い考えも少しはあったのだと思います。松文館へ電話したのは11時前くらいだったでしょうか。編集部へ連絡すると、男性が出ました。「ビューティ・ヘアの家内ですが、今、旦那が逮捕されました」挨拶もせずに、そう言ったと思います。相手は私に対して慰めを言った後、会社にも今、警察が来ていると言われ、驚きながらもやっぱりと思いました。状況が状況なので、電話はそれですぐに切り上げます。私は考えた末にもう一社、別出版社のTにも連絡をする事にしました。それと言うのも、以前に描いた原稿の返却を求めていたにも関わらずその時点でもまだ、原稿は送られていませんでしたからもしTの所属する出版社に警察が介入する事態になったら原稿が捨てられてしまうのではないか、そんな危惧があったからです。Tに状況を話して原稿を返すようにお願いすると、彼は狼狽して「原稿を返したら、うちとの関連を疑われないか」そんな内容の事を言います。旦那が社名を言うかとか、警察がどこまで調べるかは、私には全然分りません。でも連載をした事は事実です。だからこそ警察が介入した時に旦那の原稿を廃棄されたら困るから至急返して欲しいと言っているのに「又、家宅捜査を受けられた時に、名前を出されては困る」とにかく自分達の身を案じる、情けない言葉ばかりが飛び出します。何をこいつは、ビクビクしてるんだか。旦那は逮捕されてしまったのに。疾しい所があるから、こんない心配してるんじゃないのか。そんな疑念が改めて湧き出ます。「原稿はすぐに返却出来るようにはしてあるんですが・・・」言い訳の様に、Tは言います。「なら、すぐに送って下さい。万一そちらの会社が捜査をされて旦那の原稿があると困るんじゃないですか?」「返しても、こちらの名前は出さないでくれますか?」「私は言わないとしても、旦那が言うか言わないかまでは分りません。とにかく返却して下さいとお願いしてるんです」強く言って、電話を終了させました。本当にロクな人ではありません。旦那が帰って来たら、例え旦那の仕事に口出しする事になっても絶対に二度と関わるなと、きつく忠告する決心をしました。
Jul 30, 2005
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毎日、電話やチャイムの音に過剰反応して、気が休まりません。旦那の仕事も遅々として進まなくなり、ムッツリと黙り込んでいました。元々自分から積極的に話す人ではなかったのですが、こちらが話し掛けても「別に」とか「どっちでもいい」とかの単語で返事をするだけで会話らしい会話が、全くと言っていいほど無くなりました。旦那もさすがに気にしたらしく、しばらくしたある日突然言いました。「警察がいつ来るか分らないし、これから先の事が全然分らなくて仕事も手付かずのままだから、イライラしてた。迷惑掛けて申し訳ない」謝る立場では無い旦那が謝ったので、嬉しいと思う反面変に気を遣われて重荷になるのもどうかと、困りました。それでもとにかく、9月30日まで後少しだから頑張ろうと良く分らない返事をしたのを覚えています。私達はストレスからなのか異常な食欲に襲われて、四六時中食べ物を口にしています。ちなみに25日の食べた物をあげると遅い朝食後にカステラ1本、昼食とチーズケーキ1ホール。夜は気晴らしを兼ねて、江古田にあるお気に入りのお店で私は雑炊を旦那はカレーを食べましたが、何となく物足りないので店を移してサンドイッチを食べた後、更にケーキをそれぞれ食べ、帰宅後にはスナック菓子2袋とクッキーを開けています。お腹が空くというより、口が空くという方が正しいかもしれません。食べ終わっても口淋しさが残り、又、何か食べてしまうのでした。任意事情聴取からの2週間で、毎月の平均食費を軽く越えました。元々、昼夜逆転の生活なので食事は1日2回がほとんどで夜にしっかり食べる事が多かったのですが、この時期は夕方を過ぎるとどうやら警察が来ないらしいと安心して、その反動で食べていた様です。だから1日の中でも夕方以降、1週間だと土日の食欲が尋常ではなく普段からは想像出来ない程の量を食べています。日課としてもう一つ、夕飯が終わって一息つくと、旦那と夜中過ぎまでゲームをやって時間を過ごしていました。「ファンタシースターオンライン」というゲームでしたが、スナック菓子とコーラを傍らに、ひたすら続けるのです。私は猪突猛進型のキャラクター、旦那は遠距離攻撃型のキャラクターで何度もミッションを繰返し、疲れて横になると眠っている状態でした。さすがに29日夜は緊張し続け、疲れても眠れません。ほぼ徹夜で30日を迎えます。
Jul 25, 2005
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空騒ぎの夜が過ぎ、落ち込みながらも朝になります。旦那リクエストの本を探すついでに、本棚と部屋の片付けを始めました。旦那の伝言通り、じたばたしても仕方が無いのですから。久しぶりに掃除道具一式を用意して、本格始動です。と、部屋の隅を犬がさかんと気にしていると思ったら、ゴキブリでした。逃げ回るゴキブリを、犬2匹は大興奮で追い掛け回します。殺虫剤が見つかりません。台所へ駆け込み、犬を押さえ付けながらゴキブリへ浴びせかけます。害虫駆除が終わった後の床はベタベタになり何度も雑巾で水拭きするハメになりました。予想外の大掃除です。旦那が戻らない限り、私は1人でゴキブリを何とかしなくてはなりません。又、出て来たらどうしよう・・・別の意味で、泣きそうになります。そんな時にチャイムが鳴りました。余り深く考えず、インターホンで対応します。聞き覚えの無い、若い男性の声が「○○さんのお宅ですか?」と聞きます。我が家のドアの横には、きちんと名前を出しています。見れば分るだろうと不審に思いますが、はいと答えると更にその人は続けて言います。「ビューティ・ヘアさんのお宅ですよね?僕は単行本を持ってます。応援しているんでサインをしてほしいんですけど」旦那はいないので引き受けられないと断りますが「預けておくので、警察から出て来てから書いてもらってもいいです」とか「又、取りに来てもいいですから、取りあえず預かっておいて下さい」とか何とも勝手な事を言い始めます。丁寧に応対するのも馬鹿馬鹿しいので失礼しますと一方的に話しを切り上げて、インターホンを置きました。玄関先でその人は、まだ何やら喋っている様です。恐いもの見たさだったのでしょう。どんな人が来たのかが気になり覗き穴から見る事にしました。そっと近付いて覗いてみると大きな紙袋を下げた、細身の若い男性が立っています。失礼な表現になりますが、いかにもな感じの人です。インターホンに話し続けていましたが、その内にドアをノックしてノブをガチャガチャと回し出しました。ぎゃっ!という感じで私は後ろへ飛び退いていました。声を上げないように口を押さえたまましばらくじっとして様子を見守ります。鍵とチェーンがかかっていて、本当に助かりました。どうしてこうも、人の家を勝手に開けて入ろうとする人が多いのでしょう?それより、どうしてこんな人が我が家に来るのかと、全く不思議でした。その後、2度程彼の訪問を受けましたが、それ以降は近所で見かける事もありませんし、旦那帰還後に我が家へ来る事もありませんでした。一体、彼は何処の誰だったのでしょう?一つだけ確かな事は、あの男性は、旦那のファンなどではなく話題性に乗じてサインを求めに来た輩だろうと言うことです。
Aug 18, 2005
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漫画について、猥褻の基準を設ける事は可能なんでしょうか?私は旦那が逮捕されてから、たかが主婦ですが色々と考えました。旦那の絵が、必要以上に緻密な描写をされているという意見も出ましたがそれならば、線が少ない絵であればいいのでしょうか?その絵の判断を、一体どこの誰がするのでしょうか?絵という表現に、明確な線引きが出来るとは到底思えないのです。ネットの書き込みの中でも同じ様な議論が起こっていました。旦那の漫画より、もっとキツい内容の漫画があると言った人にスピード違反で捕まった人が、あいつの方がもっとスピードを出していたと言い訳する様なものだと言うレスが着いていました。絵に制限速度と同じ様な線引きが可能で、そのラインが明確であったなら旦那の逮捕についても、きっと納得出来たと思います。 175条に抵触する罪としての猥褻定義は1・いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ2・普通人の正常な性的羞恥心を害し3・善良な性的道義観念に反すると言うことです。しかもヘアーヌード解禁になった今この定義は戦前からの物というのです。この3つの定義でここからが犯罪ラインと誰もが明確に認識できるのでしょうか?私の父は、村上春樹著「ノルウェーの森」がベストセラーだからと購入して読み終わった後「ただのピンク小説じゃないか!」と言い放ちました。私は渡辺淳一著「失楽園」で、喪服姿の女性との情事が書かれていた所に生理的嫌悪感を覚えました。作品の中に、私達が酌む事の出来なかった深い男女の機微があったのかもしれませんが、理解出来なければそれこそただのピンク小説、ただの不倫小説でしかないのです。私はノルウェーの森はともかく、失楽園は嫌いでした。小説でも、映画でも、漫画でも。自分が嫌いな作品に触れる事は、好きな作品に出会う事と全く同じだと思います。ベクトルが真逆に向いているだけでどちらもその作品が、強く自分にインパクトを与えて感情を揺さぶったという点では、何ら変わる事はないのです。そして好きな物を好きと言うよりも、嫌いな物を嫌いだと公言出来ること批判する自由がある事の方が、もっと大事ではないかと同時に思います。基準が曖昧なまま表現を規制して、国から与えられた物しか見られないと世界が閉塞してしまうのではないかと思います。たかがエロ漫画にと思われますか?この先、別ジャンルに警察の手が介入しないと、誰が言い切れるでしょう?だからこそ、マスコミに余り取り上げられない松文館事件を色々な人達に知ってもらいたいし、考えてもらいたいと願っているのです。
Aug 5, 2005
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しばらく続いた寝不足と、久しぶりの外出、人に会った緊張から文字どおりクタクタになり、足を引きずる様に帰り尽きました。家に帰るとIさんから、旦那両親が今夜、家に来る事を聞かされす。玄関で靴を脱ごうとした姿勢から、立ち上がれなくなりました。こっちに来られた所で何も分らないし、一体どうしろと言うのだろう?大体、留守番のIさんへの連絡だけで来られると言う事にも少なからずの抵抗を感じていた様に思えます。事態が事態だけに両親が飛んで来ると言うのは当然の事なのですがせめて明日にしてくれればいいのに。私は不満タラタラでした。体中の気力が抜ける様な溜息ばかりです。義両親は8時頃に到着しました。2人とも疲れ切った顔をしていて特に姑は涙ぐみながら、何度も「迷惑を掛けて」と謝り通しでした。私も社交辞令で「こちらこそ、すみません」と言いましたが、内心ではこんな風に謝る必要なんて何も無いのにと思っていました。「あなたの息子は、犯罪者では無いんです。逮捕だって何かの間違いです。私達が信じて旦那を待っていなければ、訳も分らずに逮捕された旦那が可哀想です」そうやって叱咤激励出来れば、どんなに良いでしょう。私は小さな姑を見て、何とも言えない淋しい複雑な気分になりました。義両親にお茶を出し、並んで座る2人の前に、私はまるで面接を受ける生徒の様に座って、朝に話した事を3度説明する事になりました。旦那は成人向け漫画、いわゆるエロ漫画を描いていたこと。その出版社の社長と編集長と共に、旦那が10月1日に逮捕されたこと。身柄がどの様になるのか、もう2~3日しなければ分らないこと。逮捕の理由は、猥褻図画頒布罪であること。舅は私の言葉を逐一メモに残しています。間違った事を言ってしまったら、取り返しがつかない。そんな雰囲気すら感じられて、私は極力丁寧に言葉を選びました。私はここで、2つ嘘をつきました。1つめは、旦那がエロ漫画を描いている事について知らないと言ったこと。2つ目は、旦那の問題になった作品は全て押収されて、手元には1冊も本が残っていないと言ったこと。勿論我が身可愛さもありますが、旦那が帰って来たら、きちんと説明をしなければならないし、2人で頭を下げる事になるとも思っていました。それならば、私から手元の情報を全て出す事も無いと考えました。余計な情報を与えて、更にショックを受けられても困るし逆に私に言われても困る様な話をされても、対処出来ないからです。ましてや事件の今後は見えませんが、松文館から出版されている雑誌や旦那の単行本の情報は、本当に少し調べれば分る事でしたから後は義両親の判断に任せようと思ったのです。今でもこの判断自体は悪いものでは無かったと思っているのですが後に別の人が旦那親族にもたらした情報によって、私と彼等の間で一悶着起きる事になりました。
Aug 14, 2005
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松文館からの連絡が、お昼前後に来ました。今後の窓口になって下さる社員さんからの連絡でした。一通りの挨拶をした後、こんな事態になってしまったのでお見舞金を渡しに行くと言ってくれたのです。お金は困っていないし、貯えもあるから大丈夫ですと1度は断りましたが確か社長夫人がお見舞金についてを強く申し出て下さったと言う事なので有り難く、ご厚意を受ける事にしました。もし会社の対応が遅かったとしたら、私は状況が分らないのでどんな逆恨みの感情を抱いたことでしょう。混乱のさなかで松文館が最大限の配慮をして下さった事は、嬉しいことでした。Iさんは、午後のまだ早い時間に来てくれました。手には大きな買物袋が、2つも下げられています。夕飯用におでんの具を買込んで来てくれたのでした。甘栗のおまけもあったので、早速お茶と一緒に食べながら一体、何が起こっているのかを話します。漫画家では旦那だけが逮捕されたので、問題になった部分は誰かの名誉毀損にも引っ掛かったのではないかとか匿名のタレ込みが別出版社からの可能性があるのだろうかとか素人考えの範疇で意見を出し合いました。その場にいなかったIさんは、まだ信じられないという風です。編集の若い男性の来宅は、夕方4時頃だったでしょうか。領収書を書きながら、会社がどの様な状態なのかを聞きました。その時に初めて、編集長と社長が逮捕された事を知ります。会社の方にも警察が来て混乱しているので、これからどうなるのか全然分りませんと、その方は少し疲れた様に言いました。不謹慎な話しですが、逮捕されたのが旦那だけじゃないと言うことに少しホッとしてしまいました。タクシーを下に待たせていたので、その人はすぐに帰られました。ビニール傘が、今にも風でひっくり返されそうになりながらタクシーに乗り込むのを見届けて部屋に入ります。台風も、松文館も、旦那も、私も。何もかもが大変でした。旦那がすぐに帰って来れないとしたら、一体どうなるのか。お見舞金を手にして、私は具体的な事に初めて考えが行きました。生活だけを考えるならば、無収入でも1年以上は問題ありません。でも弁護士費用はどうか。必要になった時に保釈金は用意出来るか。そして最大の悩みは、具体的な問題を一体誰に相談すればいいか。考えなければいけない事が結構あるんだと、ようやく自覚します。逮捕された旦那も大変だけれど、残された方もそれはそれで大変でした。
Aug 1, 2005
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その日は、戦後史上最大級の大型台風が午後にも上陸するといので朝からニュースは台風一色でした。上陸予想時刻を天気予報で聞きながら旦那が前回、任意事情聴取を受けた代々木まで連れて行かれるとしても午後の早い時間には着くだろうから、台風の影響を受ける事は無さそうだと妙なところで安心します。少しして友人達に連絡しようと思い立ちます。数日前に会って話したアシスタントのIさんへ、まっ先に電話をしました。仕事明けすぐだったのか、Iさんは眠そうな声です。私は挨拶をした後、旦那が逮捕されちゃったと言いました。Iさんは眠気もふっとんだ様で、ええっ、と大きな声を出して慌てました。私は何とも言えない感覚を覚えて、笑い出しそうになります。予想通りの反応に満足したというのか、面白くなったというのか。先に落着いていたので、優越感も含んだ感じでした。状況を一通り聞いた後、Iさんは「そっちに行くよ」と言ってくれます。「何が出来る訳でもないけど、こんな時、独りでいるよりはいいと思うしやっぱり心配だから、迷惑でなかったら行くよ」思いも掛けない申し出でした。正直、事態がどうなるかの予測が全くつかない上に、ましてや自分に、逮捕された経験がある訳でもありません。何かの拍子にひどく取り乱して、大きなミスをしてしまう気がしたので一緒に考えてくれる友人が近くにいてくれるのは、心強いことです。Iさんは男性でしたが、有り難くお願いしました。台風が来ているから、無理をしないでと付け加えて電話を切ります。一つやるべき事を済ませると、現実逃避の様にぼんやりします。感情の起伏が無くても、恐らく気持はひどく動揺していたのでしょう。考える事は飛躍し、脈絡の無い独り連想ゲームが続きます。ふと「ドナドナ」が頭に浮かび、私は外を見ながら口ずさみました。旦那が追い込まれた後に見せる強さは、普段から想像出来ません。仕事でも何でも、修羅場の中で淡々とし続ける事が出来る人だから今回も辛いだろうけど、開き直ってやって行けるだろうと思いました。命まで取られる訳では無いのだから、屠殺場に行く子牛よりも幾分マシという気分で、ドナドナを何度も繰返し歌い続けたのです。おかしな事に、この時の独り連想ゲームの単語を幾つか覚えています。「牛タンスモーク」「向田邦子」「グリーン・グリーン」「ハンプティ.ダンプティ」「火曜日のごちそうはヒキガエル」ドナドナの裏で脈絡無く、色々な言葉が頭の中を躍り続けるのです。私は窓際のソファーに座って、強風で荒れる外を見ながら歌い犬2匹は傍らで、寄り添って眠っていました。事態とは不釣り合いな、のどかな光景です。
Jul 31, 2005
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ある意味、お金よりも切実な選択を迫られる大問題に直面しました。今回の警察沙汰を、彼の実家に伝えるかどうかと言うことです。2~3日で帰ってくるのなら問題は無いのでしょうが、長引くとしたら、黙っているのは良く無いだろうとIさんは言いなるべく早く連絡する事を強く勧めました。私の親は、旦那の仕事を知っています。旦那が仕事を引き受ける時に迷った様に、私自身も止めた方がいいかを迷った時期が少しあって、その時に電話をして事情を話していたのです。私達が一番苦労していると思って、両親は気を遣ってくれたのでしょう。違法行為をしている訳ではないし、どんな内容の物でも仕事は仕事だから今は我慢して、いつか自分のやりたい仕事を出来るように頑張ればいいと理解を示してくれました。その上、知人に有名な官能小説家を持つ人がいたらしく儲かってるみたいよと、変な話までしてくれました。深刻さと笑いが絶妙なバランスで同居する、自慢の両親です。でも、彼の実家は違います。とても堅い職種に就いている人達だし絵を描く仕事についても不安要素が多いから、まずは定職について副業として絵を続ければいいのではないかと、提案された事もあります。今回の様な漫画を描いて逮捕されたと知ったら、事情を話す前に「そんな物を描いているから捕まるんだ」と怒られそうだと、思いました。まして彼の姓を名乗っているとは言え、彼の家族は所詮他人です。私が自分の家族に置くのと同じ信頼を寄せているかと言えば、否なのです。その辺りは、未婚でしかも性別も違うIさんには理解出来ない事です。私は言葉を濁し、会社と弁護士の話しを聞いてから考えるとだけ言って答えを保留しました。色々とお世話になり、Iさんには本当に頭が上がらないのですが唯一、実家に関しての話しはことごとく意見が合わずその後も幾度か衝突して、私は随分とイライラしました。そんな会話が一段落した後、夕方か夜だったか忘れましたが、私は関西のTさんに電話しました。事情を話すとTさんは「嘘だろ~?」と、大きな声で言って、絶句したのを覚えています。やっぱり皆、そう思うんだよなぁ。何で旦那が逮捕されたんだろう。同人編集長のAさんや、HPを一緒に運営していたHOW氏にも連絡します。人と話すにつけ、私は益々、旦那逮捕に対して不思議な気持になりました。Tさんは前と同じように、何時でも電話して構わないと言ってくれます。Aさんも弁護士が必要だったら、知合いを紹介すると言ってくれましたしHOW氏もネット上での混乱を避ける為に、HPの変更をすぐにしてくれました。親身になってくれる人がいるのは、本当に心強く有り難い事でした。正確に言えば、旦那の人望の厚さのお陰で、心の広い旦那の友人達が私を助けてくれたのです。
Aug 3, 2005
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旦那が日曜日の夕方、私よりも少し遅れて帰って来ました。実家でどういう事を言われたのか、それについて一言も触れようとしなかった事が一方的に責められた事を物語っていて、結局は事実を知ろうと言うよりもむしろ、社会道徳に反する恥ずべき仕事をしていると説教目的だったこと、そして私の反抗的な態度について一言文句を言っただろう事が容易に想像出来ました。そして弁の立つ人では無い旦那は迷惑を掛けたという負い目もあって、ただ黙って聞いていただけだろうと思うと、更に腹が立ちました。私の気持が軋み始めます。面倒な事を旦那が全部済ませてくれたのだから、もう落着くんだと安心する反面、私のお願いを聞かずに実家へ行った旦那に対して、どうしても信用出来ない気持が生まれて不安定になります。そして段々と旦那実家の反応が、世間一般の反応に思えてしまい私は日中、人目が気になって外へ出られなくなります。みんな旦那の逮捕を知っていて、陰から見ている様な不安に襲われました。出かけるのは夜中近く。深夜1時まで営業しているスーパーで買物をしてご近所の人と決して会わない様にしました。それでも徐々に深夜の外出も苦しくなり、とうとう1人での外出が無理になります。裁判の傍聴へは這うようにして出るものの、それ以外は全く引きこもり状態です。そして大きな誤算がありました。旦那が実家へ行った後も、実家からの電話は間を置かずに掛かって来たし手紙やハガキが届き、時には何の連絡も無く来訪される事もありました。次々と送られて来る野菜、ひさしの声だけ聞ければ安心するから1人で外出した時にでも、こっちへ電話をくれというハガキの文面。大抵は旦那の母親からでした。息子の事が心配で心配で仕方が無いので自分に出来る事をとにかくして上げたかったのでしょう。でも私はその気持を汲むことが出来ません。半狂乱で当り散らしました。「お前も、お前の両親も、私の事なんかこれっぽっちも考えてないし自分の息子にだけ会えればいいと言うなら、離婚してやる。独立して一家の主になった自覚もない、お前も同罪だマザコン男!母親の元へ帰れ、バカ野郎!藤原姓なんて、くそくらえ!お前に送られた野菜なんか、誰が触るもんか!」こんな言葉を自分が疲れるまで全力で叫び続けまがら、物を投げ付けあちこちの物を蹴り飛ばし、滅茶苦茶に泣きわめくのを想像して下さい。旦那実家からの接触があった時だけでなく、旦那との会話の流れで直接でも間接でも実家を連想するとスイッチが入ります。発作の様に怒ると、今度は反動で力が抜けて何も出来ません。夜も苦しくて眠れないし、旦那といても腹が立つし、そのくせ淋しいし何をどうしていいのか、さっぱり分らなくて自分を制御することが全然出来ませんでした。今から思うと、神経症だったのでしょう。自分もカウンセリングを受ければ楽になるのでは、と少し思ったのですが人に会うどころか、外に出られなくなったので、どうにも身動きが取れませんでした。私が壊れた時期は、元凶になった自分が消えてしまえばいいのにと思ったと言っていました。
Oct 9, 2005
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