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誰も楽しみにしていないだろう、久しぶりの連載シリーズ、音楽遍歴その13。バンドのキャラクターを方向付ける重要アイテムの整備にとりかかる。
The AcceleratorSは無事に始動したが、我々にはどうしても必要なマテリアルがあった。60s Beat Bandの必需品、揃いのモッズスーツである。
60sを演るのだ。そこいらのアンちゃんのようにTシャツとジーンズでステージに上がるような無粋な真似はできない。幾度かの練習を重ねたある日、新宿JAMにほど近いマクドナルドで4人は話し合った。
バンマスKさんはバンドが立ち上がるちょっと前、既にモッズスーツを仕立てていた。その情報は私には事前に知らされており、東京は梅ヶ丘にある洋服の並木という店だという。
とある練習日、バンマスは見本としてスーツを持参した。そして練習後のマクドナルドで我々はバンマスに願い出たのだ。「着てみせてくださいよ」と。仕方ないなあとバンマスKさんはマクドナルドのトイレに入った。
ほどなくトイレから出てきたバンマスは見事なモッズスーツを着用。真っ黒に見えたが、じつはかなり濃い目のダークブラウンだという。裏地は真っ赤、ボタンはすべて同じ生地でくるんである。
我々も決断した。同じものを作る。日を改め、新宿JAMでの練習後、私の車に4人は乗り込み、一路世田谷の梅ヶ丘を目指した。駅前のコインパークに駐車し、「並木」へと向かった。
思いの外小さな店だ。町の仕立屋さんといった雰囲気。店の中は生地が大量に、それも雑然と山積みになっていた。店主は飄々とした雰囲気の、なんだか怪しい、やけに馴れ馴れしいオヤジだ。
我々はバンマスのスーツを見せ、3人とも同じものを仕立てていただきたいと店主に頼み込んだ。
早速採寸が始まった。生地は全く同じものが既になく、極力風合いの似たものを選んだ。ベースのT君は裏地にも凝って、たしか虎かなにかの刺繍を入れたような・・高校時代の不良の学ラン気分である。値段は大変リーズナブルで、3~4万だった気がする。
1ヶ月程時は経過し、我々は再び梅ヶ丘へ訪れた。「はいはい、出来てるよ」と店主。一人一人試着することとなった。
私は試着して第一声「これキツイですよ」。
店主「いやそれがいいんですよ。その食い込み感が。だんだん快感に変わりますよ」。
かなりピチピチである。とくにズボン。しかしこのぴったり加減が細身でスタイリッシュなMODSのイメージに大事なのだ。バンマスも言っていた。The Beatlesも昔はよくケツが裂けていたらしいと。本当か?
こうして揃いのスーツは仕上がった。ワイシャツはダーク色、ネクタイ着用、サングラスも着用することで意思統一が図られた。バンマスと私は職場の生協に出入りしている業者を活用し、ワイシャツのセミオーダーを注文した。
業者のお姉ちゃんはかなり怪しんでいた。サラリーマンが絶対着用しないようなガラの生地をあえて選ぶ私達に質問した。
女性店員「演芸会か何かでしょうか」。
私&バンマス「まあ、そんなもんです」。
続く

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