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暖炉のあるリビング。サンタが入りやすそうだ。大きな庭にはレモンの木。平たい巨大な家。小さな子供だった俺にはそんな記憶になっているっす。
当時子供たちの間で流行っていたHotWheelってミニカーのシリーズ。近所のブラウン兄弟と遊んだりいじめられたりだったっすw
4歳の頃とはいえ、この頃の記憶は鮮烈っす。たぶん記憶の中で美化されている部分も多いとは思うっすけどねw おそらく共稼ぎのはずはないんだけど、当時となりに住んでいたアンっておばあちゃんの家ばかりにいたと思うっす。アンの作る洋ナシのパイの味はおそらく相当甘かったんだろうけど、今もその味は忘れられないっすよ。
ある日アンの家にやってきた青年ヤン。
ヤンはアンの息子?孫?または甥? それはよくわからないっす。ただ軍服を着ていたのは覚えているっす。
少年にとっては、あまりにも魅力的なかっこいい米軍の軍服をきたヤン。休暇だったんでしょうか。
やさしいお兄ちゃんみたいな感じで、ボクはすぐヤンになついたっすよ。
「やあ ブン? 今日はボクの車でおもしろい所にいくかい?」
「いいよヤン!行こうよ!ねぇアン行ってもいいでしょ?」
ヤンの車はオープンのアメ車。だったと思う。この辺は古いアメリカ映画と記憶がかぶってうまく思い出せない。
ついた場所は湖?海?たぶん湖だと思うんだけど、巨大な橋があって、なんだか戦車みたいな車や、ヤンと同じ軍服を着た人が何人かいたと思うっすよ。
ボクの記憶にはその大きな夕日と橋の映像があまりにも深く焼きついているっす。
ザザーザザーって波の音とオレンジの世界に照らされた巨大な橋。
そして戦艦のような船。こんな不思議な風景がすごく深く刻みこまれたんでしょうね。
忘れていないっすよ。
しばらく僕らは夕日を見ながら風にあたっていたっす。
「ブン? 小ガニの取り方を教えようか?」
「うんヤン 教えてよ。」
「ok じゃしっかり覚えるんだぜ?」
「覚えるよ ジョンの奴に自慢したいんだ」
「まず 波がひくだろ? その時に急いで穴を掘るんだ。」
ヤンは両手で砂を書き出し穴を掘った
「そして 波がきて 引くだろ? そうすると ほら」
波が引くと 穴の中は何匹ものカニがいた。カニと言ってもたしかザリガニに近い形状の種類だったと記憶しているっすけどね。
「次の波が来る前に、バケツの中に入れるんだ。」
そうやって、幼いボクとヤンは日が暮れるまでカニを取り続けたっすよ。
夕日が沈み、あたりは暗くなってきたんだと思うっす。
ボクはヤンの車で送ってもらったのだろうか。車の中で疲れて寝てしまったのか その後の事はもう覚えていないっす。
バケツの中の砂と水でしばらくカニを飼っていたっすよ。なんか結構汚いものだったから、お袋とかは苦笑いしてたと思うっすw でもヤンといっしょにとったカニがうれしくてたまらなくて、なんだか手柄を立てた様な気持ちでしょうかw
それから何日もたたないうちだと思ったが、アンがおお泣きしている。なんで泣いてるか一生懸命聞いたのは覚えている。
ヤンが死んだ。とアンは言ったっす。これだけは覚えているっすね。ヤンは軍人だった。戦死だったのか、訓練中だったのか、何かの事故だったのかもわからないし、今、親とかに確認するのも嫌っす。ただ、大人になってから歴史の年表を調べると、丁度ベトナム戦争中だった事は確かだ。幼いボクは死がなんなのかもわからず。ただアンの異常な悲しみが気がかりだったくらいっすね。
そして、これも鮮烈に覚えているのは、
ヤンが死んだとわかった日に
バケツの中のカニが全部 死んでいた事だけっす。