「思考と直覚」二元論の一体化(百二) 人間のみが精神と物体を別々の実体として振り分けて共に持つ二元論を、それをただ一つの実体の「思考」と「延長」という二つの属性であって、徹底した「一元論」体系を展開する哲学及び神学に堪能な人物が十七世紀のオランダに生を受けます。彼の名はバールーフ・デ・スピノザ(Baruch De Spinoza/1632- 1677)と言い、此のただ一つの実体を彼は「神、即ち自然」と呼称し説いています。スピノザの此の主張を、神に重きを置くか、自然に重きを置くかによって哲学史家に論争があります。一方は彼の出自や職柄から考えても汎神論的観念論者と解釈し、片や自然を神と同等に置き、神格性を冒涜する唯物論者と解釈し教会からも批判されます。スピノザは職柄や時代の制約から汎神論的言語を多用していますが、思考的には自然哲学者と観想出来得るし、また、プラトン以来の観念論的実在論者とも解釈出来ますが、其れとは真っ向反対に本質的には唯物論者だと決めつけることも可能と考察する哲学史家も見受けられます。唯物思想からスピノザの説く体系を眺めれば、神に関しては異論はあるにしても、人間の心(思考)と人間の身体(延長)は一つの実体(*此処でいう実体は「有」という意味合いではありません。)の二つの属性から成り立っているのだから、心と身体に対応一致があるのが当然だということになります。此のことは今どきの高次神経活動の観点からは心身関係が同一だとするのは裏付けされたと捉える向きも無きにしも非ずですが、スピノザの神の定義に関してみれば「絶対存在」即ち形而上の観念が浮上します。特に彼の主著「エチカ(Ethica)」の思考方法は「思考と直覚」が捉えようとする「直覚霊知」には其の手法は大いに参考になります。