「霊魂論」エチカ詳解97 スピノザが自らの思考の集大成と目論んだ「エチカ」の近世の時代背景には、至高の審判者が信教のみに押し止められ、思想上の思考からは徐々に其の影響力を失いつつある時代でした。此のスピノザの存した時代に、そうした時代背景を代表する二つの近代世界のイマージュ(image)であり、象徴でもある二つの小説が発表されています。一つは「ドン・キホーテ」(Don Quijote or Don Quixote)です。 セルバンテスの長編小説(1605-1615年刊、1605年に前編を、16 15年に後編を刊行)であり、誇大妄想に取り憑かれ、愛馬ロシナンテに乗って騎士修行に出かけたドン=キホーテと、従者サンチョ=パンサが現実に直面して引き起こす滑稽な冒険の数々を描く。夢想的に自己の理想に突進する実行型の人間の姿を風刺し、世俗に流布した騎士道物語を批判したものです。中世世界に没入したドン・キホーテが、自らを伝説の騎士に思いの儘に成り切り、彼の世界である此の世に真の愛と正義を見い出すべく遍歴の旅に出るも、彼の冒険はいたるところで複雑に入り込む現実の網の目に捕らわれ挫折していきます。近世世界が、もはや過去世界ほど現実が解り易くないことを描写しています。理想と現実との相克などのテーマを織り込んだ、近代文学の先駆的作品ですが教会権威の衰退と政治的思考論の谷間に湧いた傑作であることは間違いはありません。スピノザが自らの思考の集大成と目論んだ「エチカ」登場のの世情を理解する上で参考になります。