Tough Boy-World of cap_hiro(Subtitle:sense of wonder)

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2022年05月15日
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カテゴリ: 絶対存在論
神の存否-410
 定理二二 いかなる徳もこれ(すなわち自己保存の努力)よりさきに考えられることができない。
 証明 自己保存の努力は物の本質そのものである(第三部定理七おのおのの物が自己の有に固執しようと努める努力はその物の現実的本質にほかならない。により)。そこでもし何らかの徳がこれ、すなわちこの努力よりさきに考えられうるとしたら、その結果(この部第四部の定義八徳と能力とを同一のものと私は解する。言いかえれば第三部定理七(おのおのの物が自己の有に固執しようと努める努力はその物の現実的本質にほかならない。)により、人間について言われる徳とは、人間が自己の本性の法則のみによって理解されるようなあることをなす能力を有する限りにおいて、人間の本質ないし本性そのもののことである。により)、物の本質がその本質自身よりもさきに考えられることになるであろう。このことは(それ自体で明らかなように)不条理である。ゆえにいかなる徳も云々。Q・E・D・=此れが証明すべきことであった。
 系 自己保存の努力は徳の第一かつ唯一の基礎である。なぜならこの原理よりさきには他のいかなる原理も考えられることができず(前定理二一 何びとも、生存し行動しかつ生活すること、言いかえれば現実に存在することを欲することなしには幸福に生存し善く行動しかつ善く生活することを欲することができない。により)、また、この原理なしにはいかなる徳も考えられえないからである。
 記:徳とは哲学・宗教の中心的課題の一つであり、世俗的な意味でも重要な概念です。一般的にいえば,人間が単なる動物的存在から脱して、動物的でもあるが同時に理性的でもあるという真の人間らしさ、人間としての優秀性を体得している状態が徳であると言えますが、スピノザの徳の概念は此れとは相当に離れたところにあるように思えます。ギリシァ三哲の祖ソクラテスによれば、「人間の徳(アレテー)」とは魂をできるだけよいものにすること、即ち魂への配慮であると考えます。また、自分の魂を優れたものにするためには、何が善であり何が悪であるか、何が美しくて何が醜いかについての正しい「知」(真相知識)が必要であるとし、この「知」を他の「知」より重視します。ソクラテスは魂をすぐれたものにするためには、善悪についての「知」が必要であるが、逆に善悪についての「知」を実現すれば魂は優れたたものになり、徳は実現されると考えました。このことを「知徳合一」とか「徳は知である」といいます。つまり、善悪を判断できる「知」を持つことが、「徳」を持つことだと考えたのです。ソクラテスの知徳合一の立場で考えると、「悪い」ということを知りながら悪いことをする人はおらず、悪いことをするのは本当の意味でそれを「悪いこと」だと知らないからだということになります。またソクラテスは、善悪を判断する「知」を持つということは善く生きられること、すなわち、正しく徳を知っていれば正しく行動することができる(知行合一)とし、こうした徳を持つことは人間としての幸福につながる(福徳一致)と考えます。然し乍ら、スピノザの徳の概念は単純化されます。一言「自己保存の努力」だというのです。此れは驚くべき発言です。然し乍ら、其の奥底にはスピノザの民族に対する問題への苦悩と宗教問題への救済への道への模索が読み取れます。



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最終更新日  2022年05月15日 06時06分52秒
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