対極をなす霊的巨人 ヒトラー vs ルドルフ・シュタイナー-5 霊的な世界と深く関わりを持ち、これほどにまでヒトラーに最も優れた人々のひとりとして挙げ称賛されたエッカルトにとってさえも、シュタイナーの存在は畏怖すべきものであったようだ。それはシュタイナーが、エッカルトやヒトラーが目指す霊的世界実現のためには、どうしても倒さなければならない対極をなす霊的巨人であるということを認識していたからである。特にシュタイナーの持つ天才的な霊的洞察力は侮れないものがあった。それも当然、シュタイナーはまだヒトラーが未だ無名であった1920年代から彼の存在に着目し、彼の活動の背後にある「トゥーレ協会」の存在、そして彼の活動の「闇の部分」まで、全てを見抜いた上でたびたび警告を発してきていたのだから。例えば、1923年11月にヒトラーは3千人の武装した男たちを率いミュンヘン市内を行進した。世にいう「ミュンヘン一揆」である。その結果は惨澹たるものとなった。ヒトラーは逮捕され、ナチ党「国家社会主義ドイツ労働者党(NSDAP)」は解散を命じられた。しかもエッカルトは、警官隊の発射した毒ガスにやられ再起不能に陥ってしまったのである。その二日後、このニュースを聞いたシュタイナーは、弟子たちに対して、当時ほとんど無名だった彼らを次のように評したのである。「もし、この組織が今後、大きな勢力を奮うことになれば、それは中部ヨーロッパに大きな不幸をもたらすでしょう!」。さらにシュタイナーは、ナチスや「トゥーレ協会(Thule-Gesellschaft)」に加えてアメリカの「KKK」など、世界には現在、民族主義を意図的に煽っている人間たちがいるが、彼らを駆り立てているのは愛国心などではなく、「純粋な破壊衝動」であり、その目的は人々を「完全な混沌」の中に追いやることにほかならないと発言していた。そして彼はまた、ナチ党のシンボルマーク「ハーケン・クロイツ」(カギ十字)に関しても、次のように言及していたのである。「今、この印を中部ヨーロッパに持ち込もうとしている人間たちがいます。彼らは自分たちのしていることを、完全に心得ています。この印には効果があるのです!」。このように、シュタイナーは全てを見通したうえで、ヒトラーのナチス・ドイツに対して常に鋭い警告を発し続けていたのです。