2004年02月05日
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 冬は亡くなる人が多いので、よくお葬式のお花の注文が入る。この間は、全部で10万円ぐらいになる葬儀の花を担当した。私はちょうど、葬儀の前の日が休みだったので、花をアレンジすることはできなかったが、打ち合わせ担当が私の仕事だった。お店にいらした小柄な品のいいおばあさん、葬儀の花を注文する時点でもう泣いていた。胸がせつなくなる。ウィーンから駆けつけてくれた背の高い感じのいい息子さんが、おばあさんを慰めている様子を見ると、こちらが泣きそうな気分になってしまう。お葬儀の花のアルバムを見せながら、どんな感じのアレンジにするか決める。日本の葬儀のお花に誰が注文したか札を立てるように、スイスでも葬儀の花に大きなリボンをつけることが多い。花の色に合うように、リボンの色を決めて、そこにプリントする字を決める。スイスでは、そこに、名前のほかに、愛を込めてとか、メッセージを入れることもできる。今回の注文は、ロンドンや外国にいる親戚からのものも多かった。打ち合わせを終えて、「まっすぐ、おうちにお帰りになりますか?よかったら、バラを一本どうぞ。」と聞くと、家にはお花がいっぱいで、これ以上増えたら悲しみが増すだけだから、また今度に・・・と、おばあさんは涙を浮かべて、私の手をぎゅっと握って、「でもその気持ち、ありがとう。」と言って、帰っていった。私は、同僚に詳しく花の内容を伝えて、同僚も素晴らしいアレンジたちを作ってくれた。そして、葬儀の日の夕方、おばあさんと息子さんはご丁寧に再度来店してくださって、泣きながら「本当に素敵なお花をありがとう。」と言ってくださった。「彼女が作ったんです。」と同僚を紹介した。そして、私をハグしながら、おばあさんは泣いてしまった。息子さんがこれから、ウィーンに帰るのだそうだ。バラ1本のプレゼントは、次回へ持ち越された。すぐそばに住んでいるから、また来るわと言って。さみしい時には、花屋に遊びにきてほしいなぁと思う。うちの花屋の横が老人ホームなので、お年寄りに接する機会がスイスへ来てぐっと増えたように思う。こっちで仕事をはじめたばっかりの頃は、慣れないドイツ語に苦労したけれど、お年寄りは時間がいっぱいあるから(笑)イライラせずに私の話を聞いてくれたし、ゆっくり話してくれるから、こっちもわかりやすくて嬉しかった。これが町の中の本店だったら、こんなにはおっとりしていられないのだろうけど。
 そして、今日はお友達のショッキちゃんの家族からも、お葬式のお花のオーダーを受けていた。お花につけるリボンは特別な会社にオーダーするので、明日の午前中の配達に間に合うように、急いで手配した。電話でオーダーするのだけど、私のこの発音では、かなり不安。間違いが許されないので、ほんとにドキドキしながら、スペルを伝える。日本語の名前もきっと初めてだと思うので、間違いがないように、何度も大げさなくらいに発音して伝えた。向こうはプロだから、すぐにわかってくれて、無事オーダー終了。物が届いてスペルを確認するまでは、安心できないぞ。そうこうしているうちに、また新たなお客さんが来て、葬儀のお花の注文をしていってくださった。これにもリボンをつけるのだけど、これが思わぬ問題をもたらした。...。(汗、汗、汗、汗)その人が注文した花につけるリボンには、夫婦の名前と息子の名前を入れるのだけど、旦那さんと奥さんの名前の間に、+というマークをつけたのだ。私は、ここは「,(コンマ)じゃないんですか?」と確認したら、「+だよ」というので、私は了解した。私の中で+マークはプラス、足し算のマークだ。でも、これがドイツ語では&(アンド)の意味をあらわすらしい。そんなことも知らずに、またまたリボン会社へ電話。「追加でリボンを注文したいのですけど」と言って、またメッセージや、名前を伝えたとき、この+が問題になった。「+?計算に使う+ですか?」「はい、そうです。」、「&じゃなくて?」、「いいえ、違います。計算に使う+をお願いします。」、「見た目があんまりきれいじゃないけど、いいの?」、「いいです。お客さんに確認取りましたから」。ということで、オーダーは終わったけれど、+の事が、すっごく引っかかったので、同僚に聴いてみると、+は、きっと&だよという応え。これは、ドイツ語を使う人なら、あたりまえの事なのだそうだ。&ってかけない人が多いらしい。(何じゃそりゃ!)またまた、折り返しリボン会社に電話。「度々失礼します...さっきオーダーした分、まだプリントがされていなければ、+を、&にしてください。すみません...」はー、やっと問題解決。また一つ新たなことを学んだぞ。(汗、汗、汗、汗)そして、ここで次の問題発生!2月でうちの配達人がやめてしまったので、このリボンを引き取りにいく人がいないのと、明日の朝1番でこのアレンジを配達する人がいないことだ...。あぁ、、、。またしても...。(涙)そこらじゅうに電話をかけまくって、他の支店で働いている男性人にヘルプを頼む。やっとの事で、今度うちの店長になる男性が、その両方をやってくれることになった。お昼過ぎに、リボンが無事到着し、スペルを確認!合ってるー!(涙!!)それから、アレンジを作成。スイスの葬儀の花は、亡くなった方のイメージにあわせて作るので、カラフルなことが多い。私は春の花をいっぱい使って、アレンジした。オーダーしてくれたのが、ショッキちゃんなので、和のイメージも入るように、枝物も入れたりして。。。やっと出来上がったのはいいけれど、なかなか気に入らない。もっと素敵にしたいのに...と思いながら、キーパーの前を通るたびに、「もうちょっとチューリップ追加しよう。」とか、「あぁ、もう少し動きを出したいなぁ。アイビーたしてみよう。」とか、5回ぐらいも手直しして、やっとこれでよし!と思える作品が出来上がった。リボンもつけて、完成!配達をしてくれることになった男性も、「これ、君が作ったの?すごくきれいにできましたね。」と誉めてくれたので、心から、ホッとした。後は、これを無事時間どおりに配達するだけ。明日、お葬儀の会場で、みんなが満足してくれますように...。日本では哀しみの花は、白と決まっている。昔は菊だけだった。でも、15年ぐらい前、私の母は葬儀の花にカサブランカやデルフィニュームなどの、洋花を入れることを思いついた。デルフィはブルーだし、最初は結婚式みたい、色物を入れるなんてと不評だったけれど、やっぱりきれいなお花に送られるのはすばらしいことで、理解してくださるお客さんが増え、たくさんの注文が入るようになった。母の作る葬儀の花は、特別きれいで、美しく、しかもでかい。だから配達するのは本当に大変な作業だった。葬儀屋の作るアレンジは、キーパーの中に、誰かが亡くなるのを待っていたかのように作られた何の思いもこもっていないつまらないデザインのアレンジたち。ぜーんぶ同じ形。でも、うちの母が作るアレンジは、すべて違うデザインのもの。孫一同からのは、淡い黄色のガーベラを入れたりして、かわいらしく。おばあさんがなくなったら、ルレーブという、ほんのりピンクのユリを入れたりした。おじいさんがなくなったら、ブルーをさし色にして。どんなにたくさんの注文がきても、母は身長148cmの小さな体で、どでかいアレンジを精魂込めて、デザインしたものだ。そして、その後の大仕事は、アレンジに立てる札を、母が、習字で書く!ということ。当時、みんな機械でコピーした物を使っていた。何の温かみもないものだ。だけど、母は字がうまかったから(!)すべて、習字でダイナミックに書いたものだ。だから葬儀の注文がたくさん入った日の夜は、自宅に札を持ち込んで、母が書く!父がドライヤーで字を乾かす!というのが続けられた。家の床は、札でいっぱいになったものだ。配達日の朝、雨が振っていれば、札をすべてセロファンで巻くという仕事もついてきた。何もかもめんどくさいけれど、うちの花がいつも1番素敵で、どこへ言っても恥ずかしくなかったし、札も立派だったと思う。私の住んでいる田舎では、まず花かごを自宅に配達、(部屋に死人と父と私だけの時なんて、ざらだ。)日本の家はとにかく狭いのに、母のデザインした花はドデカく、しかも重い。布団に寝かされた亡くなった方につまずかないように(!)神経を集中させ、父と一緒に配達に出かけたものだ。一度、コニーも日本に滞在中、葬儀の配達に行って、日本の家の小ささと、いちいち靴を脱いだり履いたりしながら運ぶことにも驚いていたし、花の重さも、母のデザインした花が他を寄せ付けないほど美しかったことも、素人のコニーの目にもよくわかったらしい。そして、葬儀の前に、お寺や葬儀場にまたまた、花を移動、葬儀が終わるとみんなが花を持って帰って家の仏様にあげられるように、それを抜いて、花束にして配るということまでもが、葬儀の花の仕事に含まれていた。どっかの花屋が、一度はじめたサービスが、他の花屋にまで、それをさせるようになっていた。とてもじゃないけど、やってられない。うちの花はきれいだったから、葬儀の後、また自宅に飾りたいからと言って、また転送することもざらだった。葬儀の花を抜く時は、洋花がたくさん入ったうちの花がいいからと言って、花を抜いている最中からうちの花の前だけ、列ができた。いつかの葬式では、うちの花が素敵だからといって、勝手に札を変えられ、葬儀屋の作ったアレンジに私達のお客様の札を立てられて、大変なことになったこともある。(←まったくもって、信じられない!!)
 お葬儀の花のことを書き始めると、止まらないけれど...(汗)たくさんの思い出の中で、大切な人を失った人たちが少しでも癒される美しい花で、故人を送ってあげられたらいいなぁというのが、花を作る私たちの願い。またまた、熱くなって、ながい日記になっちゃった☆





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最終更新日  2004年02月11日 21時29分49秒


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