ハナちゃんといっしょ

ハナちゃんといっしょ

アメリカ旅行記・その3



アメリカ滞在も残すところあと2日となった。ラスベガスから帰ったばかりのマーガレットは、新しい仕事の面接へ。私たちが帰国した後、無事に仕事に就いたと知らせを受けた。

午後になり、ハリウッドサインを間近で見たいがためにグリフィス・パークへ行く。以前はハリウッドサインの側まで行けたそうだが、そのサインの上から飛び降り自殺があって以来行くことはできないのだそうだ。よく見えるところがあるらしいのだけど、車で上のほうまで上ることができずに断念。しかし、途中で見たL.A.の景色はすごくきれいだった。

それから、マーガレットに行きたいとお願いしていた全米日系人博物館(Japanese American National Museum)へ連れて行ってもらった。中学生の頃にNHKの大河ドラマ『山河燃ゆ』(松本幸四郎主演)を見て興味を持ち、大学生の頃に山崎豊子原作の『二つの祖国』を読んで以来、なんとなく自分の中で気になっていたことだった。日系人だけではなくアメリカに移民したベトナム人の友人もいて、彼の話を聴いているうちにアメリカに移民した外国人の歴史にとても興味をもつようになったのだ。このことは 2月7日の日記 に書いてある。

中に入ると広々としていて割りと新しい。職員も日系人ばかりだ。胸につけてある名札の名前でわかる。最初は英語で対応していたけど、私たちが日本から来たとわかると片言の日本語で話し掛けてくれた。若い世代になって日本語を話せなくなる人が多い中、同世代くらいの人が日本語を話しているのを見るとなんだかうれしい。

ここでは移民の最初の歴史から日系人たちの苦難、成功など歴史を知ることができる。移民してきた時のトランクが山積みになって展示されていたり、移民当時の民家が再現されていた。特に充実してたのは第2次世界大戦中の展示物。収容所に入らなければならなくなるまでの経緯、そこでの生活、没収されたものや生活用品が展示されていた。驚いたのは、日系人を助けようとした白人のアメリカ人の数が少なくないこと、それを見てマーガレットは喜んでいた。きっと彼女もその時代に生きていたら、彼らを助けた一人だと思う。

ショップで日系人に関する歴史の本を買いたかった。マーガレットに一緒に見てもらって、読みやすいものを選んでもらった。マーガレットもとても興味を持って、この博物館へ来てよかったと言った。彼のモンティもフィリピンからの移民、きっと展示物を見ながら彼を重ねていたに違いない。今の私にならその気持ちもわかる。

夕食はなんだか和食が食べたくなり、リトル・トーキョーにある食堂に入った。概観も中も、まるで日本の食堂だ。ハロウィンの飾り付けになんだか違和感を感じる。英語と日本語でかかれたメニューに、壁には北島三郎のポスター。私はうどんを食べるが、味は日本のものそのものだった。やっぱり日本食はおいしい。

お店を切り盛りしていた女性はヤスコさんという鹿児島出身の初老の女性。この店の本当の持ち主は彼女の姪御さん。私よりも若く、元気な女性だった。ヤスコさんは九州から来たノリコさんと私、住んでいたマーガレットに会って喜んでくれた。マーガレットも覚えている片言の日本語を使って話していた。ヤスコさんはもう日本へ帰らないのだろうか。L.A.で生きていくのだろうか。3人で博物館とその食堂の話をしながら帰途についたのだった。

全米日系人博物館 Japanese American National Museum
www.janm.org

●不覚!●

アメリカ最後の日なのになんという不覚!財布をなくしてしまう。財布といってもただの小銭入れで普通の財布ではない。それでも40ドルほど入っていたと思う。ホステル内で落としたに違いない。どこかに置き忘れたか、ポケットからポロリと落ちたかだ。今まで国内外いろんなところを旅してきたけど、こんなミスはしたことない。1年住んだニュージーランドですらこんなことはなかったのに。本当、バカ!軽く凹んでしまったけど、カジノですったと思えばいいやってすぐに立ち直る。アメリカなんで見つかりっこないし。

ノリコさんは私以上に心配してくれた。お昼に残り物のカップめんのしょぼい食事をしようとキッチンへ降りる。お湯を沸かしているとノリコさん、
「カップラーメン、作ってあげようか?」
と私に言う。きっと私が落ち込んでいると思って優しい言葉を掛けてくれたのだろうけど、私はなんだかカチンときて、
「同情せんでもいいよ」
って言ってしまう。ノリコさんもそれにカチンときたみたいで、
「あのね、チカちゃん、私そういうつもりで言ったんじゃないよ。私なりに精一杯気を遣ってきたつもりだよ、この数日間…」
彼女にいやな思いをさせたから私は素直に謝ったけど、その後なんだか嫌~な雰囲気。町に出てもなんだか無口。ああ、女同士ってメンドクサイって思ってしまった。ごめんね、ノリコさん。

昼からマーガレットが迎えに来てくれて、午後からは彼女のうちでのんびり過ごす。そうこうしているうちにノリコさんともいつもどおりに戻った。R.E.M.のビデオを見たり、ジャッコ・ランターンを作ったり、カボチャの種をオーブンで焼いてつまみにしたり…。そう、この日はハロウィーンだった。夕方買い物を済ませ、ハロウィーンの準備に取り掛かる。前日の晩に買ってきたマスクやメイクでそれぞれの仮装をし、お菓子を用意して子どもたちを待つ。

ジャッコ・ランターンを火を灯してドアの前に置いていたものの、ドアの前にマーガレットとモンティのアパートは奥のほうにあったので通行人にはわかりにくい。モンティが通りまで出て子どもたちに手招きをしていた。ほんの数組だったけど、子どもたちがおうちの人と一緒にトリック・オア・トリートに来る。コスチュームがとてもかわいかった。もっと子どもたちを待っていたかったけど、私たちにはウエスト・ハリウッドでのハロウィーン・パレードが待っていたのだった。

●ハロウィーン・パレード●

ハロウィーン・パレードに参加するために、仮装をしてマーガレット、モンティ、ノリコさんとウエスト・ハリウッドに繰り出した。マーガレットとモンティはモンスターのマスクをし、口の周りに化け物のようなメイクをする。ただし、モンティはマスクのみ。ノリコさんは変な顔のマスク、私は海賊の格好をした。ありあわせの物とちょっとした小物を勝って身につけただけだけど、上出来!途中で蜘蛛女の格好をしたマリスを拾い、夕食を取りにスティンキー・ローズへと向かう。

スティンキー・ローズとはニンニクのこと。ニンニクをたくさん使った料理が食べられるのだ。ここでジェニー、セーラとその婚約者のジェームズ(日系人)、そして初対面のジョアンナと待ち合わせをする。ジョアンナはすごく魅力的な子だった。ハロウィーンの夜なので込んでいたが、変な仮装をしているお客なんていなかった。私たちはちょっとした注目を浴びた。しかも、レストランのトイレでジェニーが相撲取りの格好をして出てきたので、私たちのテーブルは変人ぞろい。

食事を終えて店を出ると、激しく雨が降っていた。パレードに行くのを中止するかどうかっていう井戸端会議が始まり、ボーリングに行ってホラー映画を見に行くなんて案が出た。ホラー映画なんてごめんだ。翌日のフライトは朝が早いのに、そんなもの見たら眠れなくなる。ノリコさんと私はタクシーで帰ると言ったが、マーガレットが許してくれない。雨がだんだん小降りになってきたことだし、パレードに行くことにした。

さて、パレードの会場に近づくにつれて変な格好をしている人たちが増えてきた。空ではヘリコプターが飛び回り、事故、事件が起こらないようにちゃんと監視しているのだ。ミニスカートの消防士の格好をした3人の男性が駆け寄ってきておもちゃの消化器から私たちに向かって煙を出したり、ものすごく変な世界だ。会場はそれを上回っていた。どの人もみんな楽しそう。写真撮影にも気軽に応じてくれた。でも、うちのチームのジェニーもかなり注目の的だ。アメリカ人てクレイジーだけど、楽しむ時はとことん楽しむ。下品なのもOKだし、ゲイのカップルもたくさん、フレンドリーな人たち。こんな体験、友だちと一緒じゃなきゃできなかった。

こうしてノリコさんと私のアメリカ最後の夜はふけていったのだった。

●おいしいアメリカ●

さて、旅の楽しみといえば…もちろん食べること!といっても、私は旅行に出るとあまり食べない。異国にいるってだけで興奮状態になり、食べることを忘れてしまうのだ。だから、帰国した時はいつもスマートになっている。こんなのはたちまち元に戻るんだけど…。今回はよく食べたほうだ。しかし、そのぶん歩いたので無問題!食べたものを覚えている限りで書いてみよう!

チキンサラダ
1日目、私たちが着いたとき、マーガレットが作ってくれた夕食。ただし、チキンには下味がついており、それを焼いただけ。でもモンティが久々に肉が食える~と喜んでいた一品だ。
★★★★☆(さすが、お惣菜系)

ゲッティ・センターで食べたランチ
2日目のランチ。豆好きの私はブリトスと野菜サラダを食べた。ビュッフェ・スタイルで好きなものを取った後に清算。もう、めちゃうま!美術館のカフェでこんなおいしい食事に行き渡るだなんて。
★★★★★

サブウェィのシーザーサラダ
2日目の晩御飯。腹の調子が悪かったのでシーザーサラダのみ。味なんて覚えていない。ただのサラダだ。
★★☆☆☆

ピザ
3日目の夕食。ハリウッドのチャイニーズシアターの向かいにあるピザや。サイズ、生地の堅さ、トッピングが選べるが、店のオヤジがせっかち。ノリコさん、早くしろって怒られてたし。これで味は半減だぞ!
★★★☆☆

トルコ料理
4日目の夕食。サンタモニカ・プラザで。まあ、ここには世界中の料理のスタンドが立ち並ぶ。全部試したかった。私はケバブが好きなのでトルコ料理を選んだが、シシカバブを食べる。まあ、長い串にでっかい肉、野菜が刺さっていてボリューム満点!
★★★★☆

中華料理
5日目のランチ。モンティのおごり。人のおごりほどうまいもんはない。一人一品ずつ頼んでそれをつつきあう。豆腐やチャーハン、おいしかった!
★★★★★

イタリアン軽食
6日目の夜、ラスベガスにて。昼はマクドナルドだったからまともなもんを食べたかった。味なんざ覚えていない。それより店の前に止まった映画で見るような長い高級車に見入っていた。だれかセレブでも乗ってたのだろうか。
★★★☆☆

7ドルステーキ
7日目の夕食。泊り先のホテルにて。エセ・ベジタリアンのマーガレットがもう半年も肉食ってないっていうから行くことになった。さすが7ドル!肉がかたいのなんの!
★★☆☆☆

クラッカー
8日目のランチ。ラスベガスからL.A.に帰る途中スーパーに寄った。クラッカーにチーズやサラミをはさんで食べるセットを買う。これだけ?よるもバーガーキング。ジャンクな1日だったわ。
★☆☆☆☆

メキシコ料理
9日目のランチ。ノリコさんとハリウッドでたまたま入ったのだけど、これがバカうま。7ドルでボリュームたっぷり。豆好きの私、またもブリトス。ノリコさん、チップ払わずに店出ちゃったし。
★★★★★

日本食
9日目の夕食。リトル・トーキョーにて。うどんの味は日本の味そのまんまだった。やっぱり、日本食って落ち着くわ~。
★★★★☆

トマトスパゲティ
10日目のランチ。マーガレット作。ソースは缶詰なのでパスタをゆがいただけ。その夜のハロウィーン・ディナーで、
「何がいちばんおいしかったって、それはマーガレットの作ったパスタよ。缶詰だけど。ガハハ!」
とノリコさん。それを聞いたマーガレットが、
「ノリコ、あんたが友だちじゃなかったらぶっ飛ばしてるわよ」…
周りは笑いの渦。
★★★☆☆

Silence of Lamb Shank
10日目の夕食。ハロウィーンの夜、スティンキー・ローズで。名前の通り子羊を使った料理。腹の弱い私はラムが大好き。名前もしゃれている。添えていたマッシュポテトがとてもおいしかった。来月はマーティンがここへつれてきてくれるらしい。楽しみだ。
★★★★★

世界各国のいろんな味が楽しめるロサンゼルス、最高!

●アメリカ旅行記総まとめ●

2003年11月1日、10日間に渡るアメリカ珍道中もこれでおしまい。笑いあり、涙ありの充実した10日間だった。こんなに楽しい旅行は今まであっただろうかってくらい楽しかった。これも一緒に旅をしてきた親友のノリコさんとマーガレットのおかげだ。旅行記で散々マーガレットのこと性格の悪い暴力女みたいに書いてきたけど、本当は正義感が強くて、涙もろくてとても優しい女の子なのだ(一応フォローしとかなきゃ!)。それからモンティにマーガレットの素敵な友人たち!

思えば、この旅以前の私はアメリカなんて興味がなかった。最初は友だちがいるから行っただけのことだった。私にとってのアメリカのイメージは傲慢で物欲主義、自分中心でアメリカがナンバー・ワンだって思う人がゴロゴロいる国だというイメージしかなかったのだ。

確かに日本でできたアメリカ人の友人たちもいた。マーガレットもその一人だし、モンティ、ダニエル、ジェシカ、アマンダ、シンディ、アレン、ハ、マンディ、マット、マーティン、ベン…。彼らは今でも私にとって忘れがたいいい友だちばかり。それに私が持っていたイメージはアメリカ人だけに当てはまるものでもない。もちろん、当てはまる人もいたけど、でも、それは自分自身にもある部分だったのだ。誰にでも平等だと思っていた、しかし自分の中に気付かないうちにこんな偏見があったのだと気づかされた。

西海岸だけしか行ってないけれども、アメリカは広かった。いろんな人種、民族、国籍の人たちがともに暮らす国。差別は確かに存在するし、いろんな意味で病んでいる国だと思うけどものすごく居心地がよかった。旅行者だからそう感じるだけかもしれない。住んでいる人にとっては、いいことばかりじゃないことはわかっているつもりだ。ロンドンでも同じことを感じた。

旅行記に書かなかったけど忘れられなかったこと。

想像通りにでかくてファッションセンスのない人たち。これほどイメージどおりだったことはない。

鼻歌を歌い、体全体でリズムを取りながら仕事をするトレッドヘアの郵便局のお姉さん。その隣で一言もしゃべらず黙々と仕事をするおじさん。対照的で見ていておもしろかった。

大都会なのにリスが道路を横切って走ったりなんかしているのを見て大感激!日本じゃ地方都市でもありえない。

夜中に鳴り響くポリスカーのサイレン、ハリウッドのいたるところに立つ警察官たち。

トレーダー・ジョーズという健康食品を取り扱っている系のスーパーマーケット。カリフォルニアワインがたったの2ドルの上、おいしいのにびっくり。酒類を買うときパスポートを見せまくり。私の顔と生年月日を何回か交互に見ていた店員さん。アジア人は若く見えるんだよ!

以上!思い出したら追加しよう。

朝早くから空港まで送ってくれたマーガレット、アメリカの魅力に取り付かれた私はまた帰ってくると約束をする。しかしマーガレットはもうカリフォルニアにはいない。この2ヵ月後、ワシントンDCで仕事に就いたモンティを追っていき、去年の春にモンティと故郷のワシントン州スポーケンで結婚式を挙げ、今はDC近郊、バージニア州に住んで看護学校に通っている。

ノリコさんはこの後帰国、そして私はカナダのバンクーバーに飛んで旅を続けるのだった。

アメリカ旅行記 おしまい♪


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