ハナちゃんといっしょ
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冬の空手の稽古の後の楽しみは、何といっても温泉です。最近は親友のアユミちゃんとリーくん夫婦も、稽古の後にいっしょに温泉へ行くようになりました。稽古が9時までなのに温泉館は10時に閉まってしまうので、なかなかゆっくりできません。でも、昨日はわりとゆっくりできました。湯船につかっていると、アユミちゃんが私に聞きました。「チカちゃんのお父さんって、何歳くらい?」「もうすぐ65かな」と答えると、「そっか~、うちのお父さんと同じくらいね」と言い、さらに「チカちゃん、親子喧嘩ってする?」と聞いてきました。もちろんすると答えると、あゆみちゃんは言いました。「うちのお父さん、やっしゃきるんよ」『やっしゃをきる』。たぶん、これは大分方言、それも奥豊後の方言だと思います。馴染みのない方が多いと思います。『やっしゃをきる』とは、「ちょっとしたことですぐにかんしゃくを起こし、かっかとなってわめき散らす」…こんな表現がぴったりでしょうか。『やっしゃをきる』人のことを、『やっしゃきり』と言います。アユミちゃんのお父さんは昔から『やっしゃきり』で、それも度々なのだそうです。アユミちゃんはイギリスで結婚してロンドンで暮らしていました。今回は3ヶ月間限定で、だんな様のリーくんと2人の息子を連れて帰ってきています。リーくんのお父さん(北アイルランド出身)も短気で、アユミちゃんは苦手だったそうです。でも、日本へ帰ってみれば、自分のお父さんはリーくんパパの上を行くやっしゃきり。先日もアユミちゃんがリーくんと夫婦喧嘩をしていたら、お父さんがやっしゃをきり始めたそうで、もううんざり、早くイギリスに帰りたいとぼやいていました。私はアユミちゃんに言いました。「うちのお父さんもやっしゃきりっちゃ」そうなんです、私の父もすぐにやっしゃをきるんです。ちょっとしたことでも、すぐに母にわめき散らすのです。人前で母に手を上げる真似すらしたことがあります。しかし、うちの母は強いんです。口じゃ絶対負けません。しかし、母が言い返せば言い返すほど、父はムキになってわめくんです。顔を真っ赤にして。そんなときは、私登場。「お父さん、そんなにカッカすると血管切れて倒れるよ(父は脳梗塞を持っているので)」すると母、「倒れてんいい!そんときゃ救急車なんか呼んじゃらんけん!」おぉ、怖い、怖い。ぎゃんぎゃんわめいている父も、だんだん静かになっていきます。父の悪い癖は、他人の前で必要以上に母をなじることです。これだけは私も我慢できまないので、そのときは私も父にガツンと言ってやります。娘に言われるのは嫌なんでしょうね。言い返しもしないし、黙っています。今でこそ体のためにお酒を飲まない父ですが、以前は晩酌をする度に声を荒げてやっしゃをきっていました。大晦日など、お酒の量が多いときなんてひどいもので、母や私たち姉妹をなじりはじめます。子どもの頃は大晦日がくるのが憂鬱でたまりませんでした。今でもある意味トラウマで、大晦日の夕食時にはなんだかドキドキするのです。親が年を取って大事にしたいという気持ちもあるけど、いえ、実際家のことをしたり、病気をして弱った父には優しくしているつもりです。でも父がやっしゃをきる度に、私もどこか遠くへ行ってしまいたいなんて思ってしまうのです。
2006年01月20日
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