めざせ!社会復帰

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2020.04.10
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カテゴリ: ラジオ・メディア
転載元: 東洋経済オンライン 4/10(金) 16:01




映画「コンテイジョン」が今ヒットする理由


Netflix、Amazon プライム・ビデオ、Huluなど、気づけば世の中にあふれているネット動画配信サービス。時流に乗って利用してみたいけれど、「何を見たらいいかわからない」「配信のオリジナル番組は本当に面白いの?」という読者も多いのではないでしょうか。本記事ではそんな迷える読者のために、テレビ業界に詳しい長谷川朋子氏が「今見るべきネット動画」とその魅力を解説します。

■9年前の映画がランキングトップに

 ここのところNetflixの人気映画ランキング「今日のTOP 10リスト」の1位を走り続けている作品があります。

 「恐怖は、ウイルスより早く感染する」がキャッチフレーズのアメリカ映画『コンテイジョン』です。BBCの人気映画コーナー「BBC Talking Movies」でも特集が組まれ、2011年公開映画が日本のみならず世界で再注目されています。

 映画『コンテイジョン』が話題を呼んでいる理由は「予言していたのかと思うくらいリアル」だからです。そんな感想がSNS上にあふれています。日本国内でも新型コロナウイルス感染症に対する危機感が高まりつつあるなかで、「今だからこそ見てほしい作品」と薦める声が増えています。

 映画の中で描かれる新型ウイルスも決して目には見えないものですが、ウイルスを含んだ飛沫が付着していることを可視化したかのような描写は脳裏に焼き付くほど印象的。学校閉鎖や恐怖が先行して買い占めに走るシーンなど今、現実でまさに起こっていることが描かれています。

 映画では香港出張からアメリカに帰国したベス(グウィネス・パルトロウ)が体調を崩し、2日後に亡くなるシーンから始まります。そして、ベスの夫ミッチ(マット・デイモン)が悲しみに暮れる間もなく息子も息絶えてしまいます。

 同時に香港、ロンドン、東京でも突然倒れていく人々も描かれ、死因が新型のウイルスであることがわかった頃には時すでに遅し。驚異的な速度で全世界に広がっていきます。

 そんな中、動き出したのがアメリカ疾病対策センター(CDC)のエリス・チーヴァー博士(ローレンス・フィッシュバーン)。クラスターを確定させるために感染症調査官のエリン(ケイト・ウィンスレット)を感染地区に送り込みます。

 また世界保健機関(WHO)ではスタッフで医師のレオノーラ(マリオン・コティヤール)が香港でウイルスの起源を突き止めようとします。

 次々と医療現場最前線で戦う登場人物が増えていく中、世の中の混乱をあおる役割として過激派ブロガー、アラン(ジュード・ロウ)が現れます。ネットを通じて、政府批判や陰謀論を拡散、それに惑わされた人々はパニック状態。社会が崩壊していくことが最も恐ろしいことである、そんなメッセージが伝わってきます。

 監督はアカデミー賞受賞監督のスティーブン・ソダーバーグ。日本でもよく知られる俳優陣がそろい、老若男女を問わずターゲット層が広いパニック・スリラーものですが、2011年公開当時の日本の興行成績は5億円にも満たない結果。

 ダスティン・ホフマン主演で1995年に公開された『アウトブレイク』や、同じ年に公開されたテリー・ギリアム監督『12モンキーズ』といった「ウイルス拡散」をテーマに大ヒットした作品もありますが、それらと比べると『コンテイジョン』は医療現場の現実により焦点を当てたかたち。地味な印象の映画と言われがちだったのかもしれません。

 でもそんな映画が今、日の目を見ることになった理由は皮肉にも世界が直面している危機と重ね合わせることができるほどのリアリズム作品だったからなのです。

■マット・デイモンらがコロナ対策を呼びかけている


 マット・デイモンら出演者陣が新型コロナウイルス対策を呼びかける新たなメッセージビデオがYouTube上で3月末から公開され、さらに話題を集めています。「コンテイジョンは映画だったが、コロナウイルスは現実だ」と前置きながら、マット・デイモンは感染リスクを抑える「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)」を啓蒙しています。

 「他人と約1.8メートルの距離を取る、グループで集まらない、部屋の中にいることがいかに今、命を救うことにつながる」と強調しました。まさに映画の中で演じたシーンとも結びつく行動です。

 また、映画の中で「人は1日に2000~3000回も顔を触り、起きているときには1分間に3~5回顔に触る」と畳みかける台詞を発したケイト・ウィンスレットは動画で手洗いを実践しながら「自分の命が懸かっていると思って、水と石鹸を使って手を洗って」と呼びかけています。ローレンス・フィッシュバーン、マリオン・コティヤール、ジェニファー・イーリーもそれぞれの役柄に合わせた切り口で対策を語りかけています。

 このビデオメッセージに協力したコロンビア大学のチームこそ、映画で医療監修を務めた裏方の主役でもありました。医療現場の助言に基づいて作られている事実も相まって、『コンテイジョン』の話題はまだまだ広がっていきそうな勢いです。

 動画配信サービスではNetflix、U-NEXT、Amazon プライム・ビデオなどで視聴可能です(4月9日現在。それぞれ配信期間が異なるため視聴の際は確認のうえご覧ください)。U-NEXTでは1月末から急激に伸びているとのこと。洋画ランキング1位(4月9日現在)を獲得しています。

■ウイルスを扱った作品が注目を集めている

 Netflixでは今年2020年1月22日から配信開始されたドキュメンタリーシリーズ『パンデミック~知られざるインフルエンザの脅威~』も世界的に注目を集めています。インフルエンザ治療の最前線に立つ人々を紹介し、過去に起こった反ワクチン運動なども追った6話で構成されるドキュメンタリーです。

 その中でワクチン開発に従事する女性が「次のパンデミックはもうすぐかもしれない。死者は数億人に上るかもしれない」と話す言葉を今の状況で聞くと、身につまされる思いにならざるをえません。

 日本での公開は未定の作品ですが、カナダやフランス、ロシアではウイルスを扱った連続ドラマシリーズがヒットしていることが3月30日から4月2日まで開催されていたカンヌ発MIPTVオンラインイベントで発表されました。ロシアの『The Outbreak』は2019年11月にVOD展開から先行し、2020年4月から現地で地上波放送も始まったところ。11カ国語で翻訳されたベストセラー小説『Vongozero』を原作にした作品です。

 2017年のカンヌ国際映画祭で「審査員賞」を受賞したアンドレイ・ズヴィャギンツェフ監督の映画『ラブレス』で主役を演じたマリアナ・スピヴァクが出演し、ウイルスによって死者の街へと変わったモスクワを舞台にした家族ドラマが描かれています。

 時代に応じた作品が話題になることは世の常。今回の作品は過去の教訓から警鐘を鳴らして作られたものですが、今、世界中で起こっている危機的状況を見つめながら新たに作られる作品も今後世に出てくるでしょう。各国で中止されてしまっている制作体制が再び整えられたとき、見る者の行動を見直すきっかけになる作品がまた生まれることを期待しています。

長谷川 朋子 :コラムニスト





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最終更新日  2020.04.10 21:51:35
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