《櫻井ジャーナル》

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2011.04.23
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 中東/北アフリカで支配体制が揺れている。その根底には独裁体制に対する反発という共通した要因はあるのだろうが、それで全てを説明できるわけでもない。チュニジアから始まってエジプトやバーレーンなどへ波及していった波は民主化運動という傾向が強いのに対し、リビアやシリアの場合は権力抗争という側面が色濃い。

 そうした違いはネオコン(アメリカの親イスラエル派)の反応にも現れている。エジプトの体制転換に強く反対していたのに対し、リビアやシリアに対する態度は全く違う。リビアの内乱では軍事介入を強く求め、シリアは以前から敵視していた国で、体制転覆を望んでいる。

 シリアの反体制派にアメリカ国務省が資金を提供していたことは本コラムでも指摘した通り。 WikiLeaksが公表した米外交文書 によると、ロンドンを拠点とする衛星放送「バラダTV」へ2006年から2009年までの期間(ジョージ・W・ブッシュ政権)だけで600万ドルを提供したという。

 このテレビ局は2009年4月以来、バシャール・アル・アサド体制を倒すためのキャンペーンを続けている。そのほか、「MEPI(中東協力イニシアティブ)」や「民主主義会議」なる組織を通して米国務省はシリアの反体制派へ資金を提供している。シリアとの関係修復を目論んでいたバラク・オバマ政権としては頭の痛い問題になっているようだ。

 シリアの反体制派にもいくつかの勢力が存在している。例えば、バシャールの伯父にあたるリファート・アル・アサドを中心とするグループ、あるいは父親の政権で要職にあった人物で今はパリを拠点にしているアブドゥル・ハリム・カーダムを中心とする勢力などだ。

 4月に入り、 シリアでは反政府活動が激しくなっている のだが、その背景ではサウジアラビア王室の思惑が働いているとも言われている。民主化運動の盛り上がりを利用し、イラン、レバノン、そしてシリアで体制転覆を謀っているというのだ。サウジアラビアにはアメリカ、ヨルダン、そしてイスラエルが協力しているともされている。「民主化」というキーワードを使い、アメリカのバラク・オバマ政権を引きずり込みたいという考えもあるのだろう。

4月22日の金曜日にもシリアで抗議行動があり、治安当局によって88名以上が殺されたとも報道されている のだが、その一方で 消防車が反政府派に襲撃されて隊員が重傷を負うという出来事 もあったようだ。チュニジア、エジプト、バーレーンなどとは違い、シリアでもリビアのような「武装闘争」の雰囲気が漂い始めた。ネオコンにとっては好ましいことなのかもしれないが、現地の人々だけでなく、アメリカにとっては悪い方向だ。

 リビアの場合、「飛行禁止空域」の設定が空爆に変化、それでもムアンマル・アル・カダフィ政権を倒せないため、 イギリス フランス、そしてイタリア はそれぞれ10名程度の将校を「軍事顧問」として派遣すると伝えられている。つまり軍事介入の度合いを強め、泥沼の中へと突き進んでいる。

 もっとも、すでに アメリカのCIAだけでなく、イギリスのMI6(情報機関)やSAS(特殊部隊)も秘密工作を展開中だとも報道 されている。今回の「顧問団派遣」の表明は軍事介入に本腰を入れるという宣言だと理解すべきかもしれない。


 アメリカの場合、ネオコンとは違い、リビア内戦への介入に抵抗している勢力が存在している。アフガニスタンやイラクでも手に余る状態なわけで、リビアでも泥沼へ足を踏み入れることは避けたいということだ。無人機での攻撃を打ち出したのも、そうした思惑が働いたのかもしれないが、それでも内乱に引きずり込まれようとしている。「国家存亡の危機」にアメリカは直面している。

 ところで、リビアの反政府勢力には、元内務大臣のアブデルファター・ユニス将軍をはじめとする軍からの離反組、サヌーシ教団の影響を受けているというベンガジの分離独立派も存在する。石油が生み出す富を国の西部地域が独占していると不満を持っているのだという。東西の対立は歴史的なもので、イギリスは東部と関係が深い。この地域にはサヌーシー教団の影響もある。

 ちなみに、サヌーシ教団とはイスラム系の宗派で、1837年(1840年とする説もある)にサイード・ムハンマド・イブン・アリ・アッサヌーシーが創設したという。第1次世界大戦の頃、この教団を指導していたのがムハンマド・イドリースで、1951年にリビアが独立する際には、この人物が国王(イドリース1世)に選ばれた。この王制を1969年に倒したのがカダフィだ。

 リビアの反政府派で中心的な存在だとされているのがNCLO(リビア反体制国民会議)で、その傘下にはNFSL(リビア救済国民戦線)が存在している。NFSLは西側諸国や中央アメリカ諸国でイスラエルやアメリカの訓練を受けてきたとも言われ、CIAの下でカダフィ体制の打倒を目指してきた。この武装組織に所属する約2000名がチャド軍に拘束されたこともある。1984年5月にはカダフィ暗殺を試みて失敗している。

 現在、最も注目されている組織がLIFG(リビア・イスラム戦闘団)。1995年に創設された武装グループだが、それ以前にはアフガニスタンでソ連軍と戦っていた。MI6(イギリスの情報機関)と関係があるとする情報もあるが、2004年2月にはジョージ・テネットCIA長官(当時)、もLIFGをアルカイダにつながる危険な存在だと上院情報委員会で証言している。米英仏伊はアルカイダと手を組んでいるようにも見える。





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最終更新日  2011.04.23 14:43:22


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