《櫻井ジャーナル》

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2016.01.14
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 1月12日にバラク・オバマ米大統領は 最後の一般教書演説 を行った。自分の業績を自画自賛するものだったが、嘘の羅列で、その中から真実を探し出すことは難しい。

 その演説が行われる数時間前、 ペルシャ湾でイラン領海へ侵入したアメリカ軍の艦船に乗っていた10名のアメリカ兵をイラン軍が拘束 した。兵士が携帯していたGPSで領海の侵犯は確認されたが、ミスだったとしてすぐに解放されている。この出来事のため、オバマ大統領の演説は影が薄くなった。

 領海を侵犯した艦船を拿捕、乗組員を拘束したことをアメリカのメディアは非難、共和党の大統領候補でイラン・コントラ事件にも関係していたジェブ・ブッシュはオバマを弱腰だと攻撃したという。

 昨年11月24日にトルコ軍のF-16戦闘機が領空を侵犯したわけでないロシア軍のSu-24爆撃機を待ち伏せ攻撃で撃墜したが、そのときにアメリカの政府やメディアはトルコの肩を持った。今回、イラン軍は領海を侵犯したアメリカの艦船を拿捕、アメリカからの攻撃にそなえてミサイルをアメリカ軍の空母に向けて発射する態勢に入ったようだが、発射した場合に文句を言う権利をアメリカは放棄していたことになる。

 昔からアメリカのメディアは支配層のプロパガンダ機関にすぎず、第2次世界大戦後にはモッキンバードという情報操作プロジェクトが存在していたことは本ブログで何度も書いた通り。そのプロジェクトで中心的な役割を果たしたひとりはワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハム。

 フィリップの死後、社主を引き継いだのは妻のキャサリン。世界銀行の初代総裁、ユージン・メイアーの娘で、ウォーターゲート事件でリチャード・ニクソンを辞任に追い込んだことで知られている。日本では「言論」の象徴であるかのように言われているが、彼女は1988年にCIAの新人に対して次のように語ったと言われている:

 「我々は汚く危険な世界に生きている。一般大衆の知る必要がなく、知ってはならない情報がある。政府が合法的に秘密を維持することができ、新聞が知っている事実のうち何を報道するかを決めることができるとき、民主主義が花開くと私は信じている。」

 ウォーターゲート事件を追いかけいたのはふたりの若手記者、つまりボブ・ウッドワードとカール・バーンスタインだ。ウッドワードはエール大学の出身で、1965年に卒業してから海軍へ入り、69年から70年にかけてトーマス・モーラー海軍作戦部長(後に統合参謀本部議長)とアレキサンダー・ヘイグとの連絡係を務めていた。当時、ヘイグはヘンリー・キッシンジャー大統領補佐官の軍事顧問だった。

 ウッドワードがワシントン・ポスト紙の記者になるのは1971年。その際、元海軍長官で同紙のポール・イグナチウス社長の口添えがあったという。つまりコネ入社。1年間の編集を経て記者になるが、その時に上司だったベンジャミン・ブラドリーは大戦中、海軍情報部に所属していた

 ウォーターゲート事件では「ディープ・スロート」なる情報源が登場する。その情報源とつながっていたのはウッドワードだが、実際の取材はバーンスタインが行ったと言われている。そのバーンスタインは1977年にワシントン・ポスト紙を辞めた。

 その直後、彼はローリング・ストーン誌に「CIAとメディア」という記事を書き、CIAとジャーナリズムの世界との関係を暴露する。それによると、まだメディアの統制が今ほど厳しくなかった当時でも400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)

 こうした背景を持つアメリカの有力メディアは軍事的な緊張を高める方向へ世論を誘導しようとしてきた。ネオコン/シオニストをはじめとするアメリカの好戦派、つまり安倍晋三政権が服従している勢力は外交が嫌いで、全てを軍事力で解決しようとしている。イランの問題も例外ではない。オバマ大統領がイランと話し合いで核問題を解決しようとする方向へ舵を切って以来、好戦派はその流れを変えようとしてきた。

 イランを敵視、アメリカ軍を使って破壊しようと目論んできたのはネオコン以外にも存在する。イスラエル、サウジアラビア、トルコなどだ。このうちサウジアラビアのサルマン・ビン・アブドルアジズ・アル・サウド国王とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が会談した数日後、1月2日にサウジアラビアは同国でシーア派の指導的立場にあったニムル・バキル・アル・ニムル師を処刑してシーア派を挑発した。

 処刑の後、シーア派の信徒は各地で抗議活動を展開し、イランの首都テヘランのサウジアラビア大使館やメシェドのサウジアラビア領事館へは数十本の火炎瓶が投げ込まれる。建物の一部が焼失する事態に発展、サウジアラビア外相はイランとの外交関係の断絶を宣言したが、イラン政府の対応は冷静で、挑発には乗っていない。

 こうした流れの中、アメリカ軍の艦船は「絶妙のタイミング」イランの領海を侵犯したと言える。今後、軍事的な緊張を高めるショッキングな出来事が「偶然」、どこかで引き起こされるかもしれない。





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最終更新日  2016.01.15 04:21:06


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