《櫻井ジャーナル》

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2023.02.01
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 アメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」は今年1月、「長期戦を避ける」というタイトルの報告書を発表した。戦闘が長くなるとロシアと中国の関係を強めることになり、アメリカにとって利益よりリスクが大きくなるとしている。









 2019年に発表した「ロシア拡張」ではロシアを弱体化させるため、ウクライナへ殺傷兵器を提供、シリアのジハード傭兵に対する支援の再開、ベラルーシの体制転覆を促進、アルメニアとアゼルバイジャンの緊張を利用、中央アジアへの関心を強め、トランスニストリア(モルドバとウクライナに挟まれた地域)の孤立を強めるといったことを打ち出していた。







 シリアで政府軍と戦うアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)はアメリカ/NATOが作り上げた武装集団であり、2011年春以来、傭兵として戦ってきた。

 この傭兵はリビアとシリアに対する攻撃をほぼ同時に開始、2011年10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制を倒し、カダフィ自身を惨殺した。この段階でアル・カイダ系武装集団とNATO軍の連携が明らかになっている。

 その直後からアメリカ/NATOは兵器や戦闘員をシリアへ集中させ、支援を強化するのだが、こうしたバラク・オバマ政権の政策をアメリカ軍の情報機関DIAは危険だと考え、​ 2012年8月に報告書をホワイトハウスへ提出 ​している。

 その報告書の中で反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘、アル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだとしている)の活動を指摘している。

 それだけでなく、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになると警告していたが、オバマ大統領は無視する。この警告は2014年にダーイッシュという形で現実になった。

 その年の1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にはモスルが制圧された。その際にトヨタ製小型トラック、ハイラックスの新車を連ねたパレードを行い、その様子を撮影した写真が世界に伝えられたのだが、こうした戦闘集団の動きをアメリカの軍や情報機関は偵察衛星、無人機、通信傍受、人間による情報活動などで知っていたはず。そうしたパレードは格好の攻撃目標だが、アメリカ軍は動かなかった。

 ベラルーシや中央アジアのカザフスタンではクーデター未遂があり、アルメニアとアゼルバイジャンの緊張は高まった。つまりRANDのプランは実際に引き起こされている。

 ウクライナでの計画はロシア政府の決断によってつまずく。2022年2月22日にウラジミル・プーチン露大統領がドンバス(ドネツクやルガンスク)の独立を承認、2月24日にロシア軍はウクライナを巡航ミサイル「カリブル」などでウクライナに対する攻撃を開始した。その際、航空基地のほか、​ 生物兵器研究開発施設も破壊された ​ようだ。

 ウクライナの軍や親衛隊は住宅地に軍事拠点を築き、住民を人質にして戦うが、1カ月ほどでウクライナ側の敗北は決定的になる。そこでキエフ政権はロシア側と話し合いを始める。

 そうした立場のひとりがボロディミル・ストルクだが、3月1日に誘拐され、拷問された上で射殺された。3月5日にはロシア政府と交渉しているチームのひとり、デニス・キリーエフがキエフの路上で治安機関SBUの隊員に射殺され、3月7日にはゴストメルのユーリ・プライリプコ市長の死体が発見された。

 4月9日にはイギリスの首相だったボリス・ジョンソンがキエフへ乗り込んで交渉を止めるように命令、4月21日にはウクライナ南部ミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と国民を脅し、4月30日になるとナンシー・ペロシ米下院議長(当時)が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。

 オバマ政権やジョー・バイデン政権による挑発的な言動にもかかわらずプーチン政権は話し合いでの解決を模索していたが、昨年夏にそうした方針を中止する。

 プーチン大統領は9月21日に部分的な動員を実施すると発表、集められた兵士のうち約8万人はドンバス入りし、そのうち5万人は戦闘に参加しているという。20万人から50万人は訓練中だとされていたが、ここにきて今年2月までに約70万人をさらに集めると伝えられている。

 アメリカ統合参謀本部のマーク・ミリー議長は昨年11月、ウクライナ軍がロシア軍に勝利することはないかもしれないとニューヨークの経済クラブで発言しているが、ウクライナ軍の敗北は決定的だ。​ コンドリーサ・ライス元国務長官やロバート・ゲーツ元国防長官も戦況の見方 ​は同じだ。

 ふたりはウクライナ国内の経済が混乱状態だと指摘、何百万人もの国民が逃げ出し、インフラは破壊され、鉱物資源、産業能力、かなりの農地の多くがロシアの支配下に置かれ、ウクライナ軍の勝利は難しいとしている。

 通常なら戦争を終結する道を探ろうとするだろうが、ふたりは違う。ウクライナに対し、速やかに対する軍事物資の供給を劇的に増やすべきだというのだ。RANDは戦争の長期化がアメリカの利益に反するとしているのだが、ライスやゲーツは如何なる犠牲を払っても勝利を目指せという姿勢である。

 父方の祖父がウクライナ出身のアントニー・ブリンケン国務長官や父方の祖父母がウクライナからの移民であるビクトリア・ヌランド国務次官をはじめとするシオニストもこうした姿勢を見せている。ジェイク・サリバン国家安全保障補佐官、バラク・オバマ政権で大統領首席補佐官を務めた筋金入りの親イスラエル派であるラーム・エマニュエル駐日米国大使、ポーランド生まれのズビグネフ・ブレジンスキーを父に持つ現ボーランド駐在アメリカ大使のマーク・ブレジンスキーも同じだ。

 ロシアとの戦争に執着している人びとはNATO軍を引き出そうとしているようだが、それだけでなく東アジアに火をつけようとしている。この放火が成功した場合、アメリカ/NATOは日本を前面に出そうとするだろう。











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最終更新日  2023.02.01 00:47:30


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