次回の「櫻井ジャーナルトーク」は12月20日午後7時から駒込の「東京琉球館」で開催します。12月のテーマは「トランプ政権樹立の直前、ロシアに〈宣戦布告〉した米英支配層」を予定しています。予約受付は12月1日午前9時からですので、興味のある方は東京琉球館までEメールで連絡してください。
東京琉球館
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住所:東京都豊島区駒込2-17-8
アメリカやイギリスの政府は自国のミサイル・システムをウクライナ軍がロシア深奥部に対する攻撃に使うことを許可しました。この攻撃はアメリカやイギリスによる事実上の対ロシア宣戦布告と見做されています。そこでロシア軍が極超音速の中距離弾道ミサイル「オレーシニク」でドニプロ(ドニプロペトロウシク)にあるユジュマシュの工場を攻撃しました。ウクライナの治安機関SBUは情報を機密扱いしているようですが、ユジュマシュは灰燼に帰したとする情報が現地から届き始めています。
ウクライナ軍がロシア深奥部を攻撃するのに使った兵器はアメリカが開発したATACMS(陸軍戦術ミサイル・システム)やイギリスとフランスが共同開発したストーム・シャドウ/SCALP-EG(長距離自律巡航ミサイル・システム)。こうした兵器を使うために兵器を扱える要員が必要であるだけでなく、兵器を誘導するための情報を提供する衛星、さらに目標の選定や目標に関する情報なども必要です。
つまり、こうした兵器を使うということは、兵器の供与国や情報の提供国が攻撃の主体だといことであり、今回の場合、米英がウクライナからロシア深奥部を攻撃したということになり、米英はロシアと戦争状態に入ったことを意味します。こうしたことは以前からロシアのウラジミル・プーチン大統領が繰り返し警告していました。そうした警告を無視して米英両国政府はロシア深奥部を攻撃したわけです。ATACMSやストーム・シャドウで戦局が一変することはありえませんが、ロシアから宣戦布告だと見なされるのは当然です。
アメリカは1950年代に沖縄を軍事基地化した後、イタリアやトルコに中距離核ミサイルを配備、それに対抗してソ連は1962年にキューバへミサイルと核弾頭を持ち込み、全面核戦争の寸前まで進みました。
この時はジョン・F・ケネディ大統領とソ連の最高指導者だったニキータ・フルシチョフが外交的に解決しましたが、ダニエル・エルズバーグによりますと、ソ連に対する先制核攻撃を計画していた国防総省の好戦派の間ではクーデター的な雰囲気が広がっていたといいます。
今のアメリカ政府に「ケネディ大統領」はいません。核戦争の可能性はキューバ危機当時より高いと考えられています。そうした状況について考えたいと思っています。
櫻井 春彦