小説出ました

小説出ました

2010.08.21
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
十三

「人が死んだ後、霊体となって現れることもある。その仮の姿が蛇」
「ニホンニハソンナイイツタエガアッタノカ?」
「それだけじゃないよ。通常は神霊界と呼ばれる世界から眷属となって加護を目的にやって来る。でも時に約束を果たさなかった人間を懲らしめるために現れる」
「そして……」
「ソシテ?」
「その眷属の正体は……龍!」
「ナンダッテ?」

江戸の人々は札返しなどを張り事なきを得たということも分かった。
だが、シュウの疑問はそうした厄除けに似た方法をで蛇の祟りを撃退したという不思議さではなかった。
そもそもどうして百年に一度なのかということである。そして、大きな災害が起こった半世紀後。その理由はどう調べても分からなかった。
天保の動乱の後、伊勢神宮でお蔭参りが盛んに行われたという。
シュウはこのハッキングで過去を垣間見た。
多くの命が亡くなることへの無常さの裏で、命の尊さを重んじはじめた、その日本の歴史を知ったのである。戦国の世では考えられなかった人の命の尊さ。

その夜、ピーターとシュウは父が行きそうな場所を車で探し回った。
海岸、海の見える峰、駅前の居酒屋、母が眠る墓、すべてを探した。
「ウマレソダッタ、シマネノシンジコハ?」
「もう実家もないし、場所が分からないよ」
シュウは自分の家の過去を考えていた。
その時、あの幼馴染の顔が思い浮かんだ。
電話を掴みあわてた様子でボタンを押した。
「ピーター。京都に行ってくれる?」
「コンナジカンニカ?イクラナンデモコドモジャナインダカラダイジョウブダヨ」
「今までのことを考えたら居ても立ってもいられないよ。蛇に、龍に取り憑かれたかもしれないんだよ」
こんなに心配な顔つきはピーターすら見たことがない。
「ワカッタ」と言い放ちシュウのいう街に車を走らせたのである。

岡本史江という女性は今住んでいる場所から数分はなれた大きな屋敷にいた。シュウの幼馴染の彼女は目の大きい健康そうな肌をしたかわいらしい少女であった。
人懐っこい性格が、女の子ということを忘れさせ、友達のように気さくに接することが出来た。
シュウはとても彼女が好きだった。彼女そのものが自分を落ち着かすような作用が心地よかったのである。丁度人形を持つことで落ち着く幼児のような感じなのだろう。
彼女の父は新政府と外国人議員をつなぐ役割を担っていた。表書きは通訳ということであろうが、立派な交渉人である。語学に長けていたために各国の意見と日本の意思とを過不足なく正確に伝え合えるキーマンであった。
今回の思わぬシュウの訪問は彼が目的ではなかった。
史江の祖父についてである。
彼は民俗学および民話や伝説などを調査する学者であった。六十を過ぎてもなお現役でそうした古来の文献を調べたり、あるいはその地に赴いたりしていたのである。
そして今回の件でもそのいくつかの資料の中に史江の祖父らしき名前が見えたのであった。
直接名前を聞いたことはなかったが、彼女に「おじいちゃんは昔話をよく調べているから」と聞かされたのを偶然覚えていたのである。
「おじいさんなら何か知っているだろう」
そうピーターに告げて向かったのであった。

……霊界

「姫様、どうやら五陰のあるじが雫を手に入れたようです」
「ほう、あやつの動き、確かというわけか。ふふふ」
「では、姫様もいよいよ」
「待ちに待った復活。どうしてもたもたしていられようぞ。手はずはよいな」
「はい、丁度箱の所在もわかりました故、早速引き上げに向かわせております」
「子孫か?」
「いえ、所縁はないようですが、現世においては一番の適任者かと」
「どれ、妾が見てやろうぞ」
城の中が怪しくそして慌しくなる。
女は会話の間相変わらず天窓を眺めていたが、適任者の値踏みをすべく徐に立ち上がった。
ゆっくりと両手を広げ、頭を後ろに倒した。
乱れた髪は艶も張りも失われ下に力なく垂れ下がる。
絹でできた衣は容姿とは対照的に、それでも色あせもせず黄金や赤や紫がよほど映えていた。裙に背子、裳や紕帯などの唐風な出で立ちは女の品位を象徴していた。
それが風もないのに、ひらひらと揺らめいた。まるで水の中で浮いているような……

稜は夢の中にいた。また例の女である。だが、いつもと様子が違って見えた。
顔が露になりそうで見えない彼女は、今回ばかりは、はっきりとその容貌を見せていたのである。
彼はその顔をみてほっとした。


にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へ

にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2010.08.21 08:17:51
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: