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1
6月のある日、ぼくはトリガーをひいた。それは特別大きな傷を誰かに負わせるほどの衝撃は起こさなかった。 灰色の雲が覆う空には太陽は存在しないように思われる。蒸し暑く、薄暗く、雨が降る前兆で、水分を孕んだ鼻に付く青い匂いがあちこちから香っていた。教室や廊下を照らす白熱蛍光灯のほうがよっぽど太陽に似て白々しく光っていた。それに辟易したぼくは級友たちよりいち早く逃げるように下駄箱前に到達した。ぼくの名前を呼ぶアズサの声に振り向いた。アズサは少し長い前髪を気にしながらこちらに走ってくる。「まって、」ぼくは聞こえないふりをする訳ではなかったけど返事をしたくない気がしたので何も応えずに土足に手を伸ばした。「待ってよ、」アズサはぼくのすぐ背後に来て、さっきより幾分はっきりと言った。それでもぼくがうつむいて自分の土足に履き替えているとアズサはより声を張って言った。ぼくしかいなかった下足室は人が増えたので狭く見える。「部活は、来ないのか、」「・・・いきたくないんだ、」ぼくは返事をするかどうか迷って言い澱んだが、アズサの表情を伺った際、目が合ってしまってすぐに目を逸らしたことが決まりが悪くて応えた。上履きを片付けてアズサの隣を抜けようと思った。人が増えていて息苦しかった。「どうして、」アズサは早足で歩くぼくを走って追いかけてきた。アズサが掴んだところが生ぬるかった。アズサとは小学校に通う頃から友達だった。何度か家へ招かれたこともあるが、特別仲のいいというわけでもなかった。お互い別々に親しい人がいたが、中学へあがると同じ部活に入り、家が近いことも幸いして自然と親交が密になった。
2009.01.30
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