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「Hey, diddle, diddle! The cat and the fiddle…」なんていう風に韻を踏むことが多い英語ですが、Orangeと言う単語が他のどの語とも韻を踏まないことは有名です。詩人にとっては頭の痛いこの単語ですが、私もつい最近までは、たまたま韻を踏まないんだろう、くらいに思っていました。それがなぜか今日、急にひらめいたんです。オレンジが韻を踏めないのにはちゃんとわけがある。まず、Orangeと言う語を見ると、綴り的にはStrangeやArrangeに似ている。発音に気をつけなければ、一見韻を踏んでいるように見えるかもしれない。でも、いったん口に出してみれば違いは一目瞭然。StrangeやArrangeがストレインジ、アレインジと、rangeの部分にアクセントがあるのに対し、Orangeはオーリンジ。最初のoにアクセントが来る。アクセントの場所が違うと言うことは、英語ではとても大きな意味を持つ。最初のoにアクセントが来るだけじゃなく、次のranは弱くなり、アクセントのないニュートラルな音に変わってしまう。日本語で書きあらわすのにも限度があるけれど、Strangeのレインジと、Orangeのリンジは絶対に韻は踏まないんです。もう一つ気づいたことがあります。どうしてOrangeの発音が珍しいかと言うと、rangeではなくoにアクセントがあるから。では、そもそもどうしてそれが珍しいかと言うと、Orangeの発音がラテン語系言語の原則に反しているからなんです。ラテン語系の諸言語には「Weight-to-Stress Principle」と呼ばれるアクセントの原則があり、英語もそれを守っています。簡単に言うと、「重音節にアクセントを置く」と言うもの。重音節と言うのは軽音節に対して「重い」シラブルの形のことで、核となる母音の後に要素があるものを言います。二重母音だったり、ンだったり、長母音だったり。日本語で言うとカンとかキャーとかタイなんていうシラブルがこれに当たります。おなじ一シラブルなのに、カとかパに比べて重いというのが分かると思います。英語も基本的にこの原則に則っているので、重音節がある場合はほぼ確実にそこにアクセントが来ると思っていい。(複合語や、いくつかの要素が合わさって出来た語には例外もありますが。)Orangeはoとrangeという二つのシラブルに分けられますが、軽音節のoに対してrangeと言うのは母音の後に二つも要素がくっついた超重音節と呼ばれるこれ以上なく重たいシラブル。普通だったらこっちにアクセントが来ないはずはないんです。rangeがアクセントを引きつけて、オレインジとなるはずだった。それがどうしてか、この単語だけ、原則に逆らってオーリンジになってしまった。どうしてそんなことになったのか、その理由までは分かりませんが、オレンジというのがそんな特別な発音を持つ、いかにも例外的な単語だということが分かりました。この単語が英語に入ってきた歴史的な過程に理由があるのかもしれませんが、ちょっとした間違いだったんでしょう。修論を書かないといけないのに、こんな、およそどうでもいいことばかり考えている今日この頃です・・・
Jul 28, 2006
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