わたしのブログ

わたしのブログ

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

墓前用の造花を購入 New! roseydaysさん

まーくん、楽天ゴー… New! 粗忽のたかびーさん

みかんの季節がやっ… New! ハピハピハートさん

猫すごろく ねこす… ちゃろりーなさん
行政書士・渡辺のよ… ととtろ2304さん

Profile

怱々

怱々

Calendar

Comments

藻緯羅 @ Re:消費税8%について(10/02) 借金を返さないと国債が償還されない時が…
龍5777 @ Re:消費税8%について(10/02) 昨夜から冷え込んで来ました。今朝は曇天…
怱々 @ Re[1]:虐待(09/25) メッセージ有難う。お子さんと一緒に暮ら…
なると・たると @ Re:虐待(09/25) しつけわ 親なら先生なら 大事なコトな…
怱々 @ Re[1]:沖縄戦で従軍した少女看護士(08/20) UAパソコン教室さん >戦争のない世の中に…

Freepage List

2023年02月13日
XML
テーマ: 戦争と人間(179)
カテゴリ: 世界の
 彼はいつも不安そうな表情を抱えていた。怯えている様にも孤独な物思いに耽っているようにも見えた。自信なさそうな足取りに、彼の苦悩が見え隠れした。私は、孤独な影を引きずる彼に、何故か心魅かれた。私が今迄出会ったことのない種類の人間だったから興味を覚えたのかもしれない。
 平凡なサラリーマン家庭に育ち、裕福とは言えないが、愛情に包まれて育った僕は、自由で楽観的な未来を想像していた。特別なドラマはなかった。日常がステロタイプされ家族との生活が僕のすべてだった。
 ある日、駅で偶然彼の姿を見つけた。駅の大黒柱の円柱に彼はもたれかかり、物憂げに前方を見詰めていた。彼とは話したことがない。不思議な気がする。何度も彼とすれ違ったり、挨拶も交わすのに一度も話したことがなかった。しかし、彼を決して悪意で見たことはない。彼は、僕の前では決して立ち止まらない。自然なすれ違いをしているだけだった。
 「君とはよく出くわすね。」
 彼は、一瞬驚いたように僕を見詰めた。そして、僕が親しそうに声を掛けたことが理解できず不思議そうな表情に変わった。
 「ああ・・・」
 どう答えていいのか迷って、曖昧な音を発した。
 僕は出来るだけ愛想いい笑顔で彼を見詰めた。
 「いや・・僕は、こんな風に声を掛けられることがないので・・」
 僕の笑顔に戸惑いながら、口ごもり彼は口を開いた。
 僕には自然でも彼には唐突な事なのだろう。僕達は少し黙った。すると彼が話し掛けて来た。
「君は僕のことをどう思うかもしれないが・・話すのが苦手なんだ・・」
 その時僕は気が付いた。彼には軽い吃音が感じ取れた。善意で僕は人と接するが、善意も時には悪意に取られるのかもしれない。一瞬そう思った。
 僕は彼が本を手に持っているのに気付いた。僕の視線に彼は気が付いた。
「ああ・・これ・・何か手に持っていないと落ち着かないんだ。」
 少し顔を赤らめながら小さな声で言った。僕が本を手にするときは少しカッコづけが有った。何か自分が他の人と違うんだと、純粋でない虚栄心が働いた。
「まだ、名前言ってなかったね?・・」
「沢田君だろう・・沢田武志君・・」
「えっ、どうして?・・まあ、いいや。君の名前は?」
「菊池明です。」
 菊池はハッキリと言った。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2023年02月13日 11時09分26秒
コメント(0) | コメントを書く
[世界の] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: