一汁三菜

一汁三菜

2024.01.21
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テーマ: 料理・食べ物

​四季折々の食材に感謝し、箸を使いこれをつつましやかに食する和食の伝統には、 生きとし生けるものへの優しさ が受け継がれている。

日本列島は、湿潤な温帯に属し植物の生育にきわめて適している。日光は強すぎず弱すぎず、しかも、一年を通じて適当な降雨があり、世界でもっとも農耕に適した地域の一つである。また、暖流と寒流とがぶつかり合う豊かな海に囲まれていて、魚介類にも恵まれている。

こうした恵まれた環境にあって、日本人は、その歴史のなかで、穀物や野菜、それに魚介類への依存度の高い独自の食文化を築いてきた。


日本人の食生活において、肉類が長い間広く普及しないできた背景には、さまざまな要因があるものの、日本列島の地理的環境が穀物や野菜・魚介類の供給に適していたことが大きくかかわっている。

このことは、低温・乾燥の度が強く、穀物・野菜の生産にあまり適さず、 ​牧畜・肉類に大きく依存せざるを得なかった​ 欧米の食文化とは対照的である。

わが国の歴史をさかのぼってみても、こうした食をめぐる恵まれた状況のなかで、仏教とともに伝来した殺生禁断の教えも、すなおに人びとの生活に浸透していった。

天武天皇の肉食禁止令以降、度重なる殺生禁断の戒律が国策として普及していった。また、古くから民間に伝承されていた民俗的タブーのなかにも、肉食を禁忌とするものがみられた。

もっとも、これらの禁止令やタブーは、生きものの種類によってはこれを除外し、その影響が及んだ度合いも、地域によって、時代によって、あるいは身分や階層によって一様ではなかった。

しかし、 ​全体としてみれば、肉類への依存が少ない食生活が人びとの間に広く定着していった。​

やがて、禅宗の精進料理の影響を受けて発達した懐石料理も、日本人の食文化を形づくる一つの柱となった。江戸時代になると、鎖国政策がとられたことによって、鶏肉を除いて肉食忌避の風潮が助長され、和食のもつ独自性が保ち続けられた。

​こうして、 明治に至るまでの日本人は、肉類への依存度の低い食文化を定着させ、穀物と野菜と魚介類、この三者を中心にして和食の基本形がつくられてきた。

牧畜・肉類への依存度の低い日本人の食文化の伝統は、世界的にみてもかなり珍しいものなのである。​

四季折々の食材に感謝しつつ、これをつつましやかに食する和食の伝統には、生きとし生けるものへの優しさが受け継がれている。 

もちろん、和食にも、現代の栄養学からみて改善するべき点がないわけではない。私たちが自らの食のあり方を考えるとき、生きものの命への配慮もさることながら、自らの健康・栄養への配慮が必要になる。

​こうしたなかで、考えられることは、 ひと口に「生きもの」「動物性食材」といっても、そこには、感覚(痛みなどの感受性)や感情(恐れ・悲しみなどの感受性)の有無・発達程度に応じて、さまざまな種類がある ということである。

たとえば、乳製品と卵は「感覚や感情を持たない」ものであり、また、鳥類や魚介類は、哺乳類ほど高度には、感覚や感情が発達していないものである。​

乳製品と卵は、「感覚 ( 痛みなどの感受性 ) を持たない」もの・「身体の外にある」ものであるとして、世にベジタリアンと呼ばれる人たちの大部分も、これを食することを容認している。これらの人々は、「ラクト・オボ・ベジタリアン」と呼ばれる。

また、乳製品と卵に加えて魚介類をも食する人たちは、「シーフード ( フイッシュ ) ・ベジタリアン」と呼ばれることがある。また、乳製品と卵に加えて鶏肉を食する人たちは、最近では「チキン・ベジタリアン」と呼ばれることがある。

こうしたベジタリアンおよびセミ・ベジタリアンの人たちに共通していることは、 せめて人間に近い感覚や感情を持ち、人間に近い苦痛や恐れ・悲しみを感じている高等動物=哺乳類 ( 四つ足の動物など ) を食することだけは避けようとしていること である。


ここには、日本人古来の食への思いが、今風に形を変えて生かされているといえるだろう。

牛や豚などの哺乳類は、人間に近い豊かな感情を持ち、甘えてきたり、なでてやると喜んだりもする。が、こんにちでは、単なる「肉」として過酷に扱われ、そのことに文句も言えないまま命を終える。

牛は、ほんらい 15 年ほどの寿命があるが、こんにちでは、普通 2 3 年で屠殺場に送られる。ここで順番を待つ牛は、周囲の音や臭いから死を悟り、恐怖から全身をはげしく震わせ、目には涙をためているという。

豚の場合は、普通 6 ヶ月という非常に短い命を終える。最近では、わずか二人の人間の管理の下で、年間数千頭もの豚肉を生産するオートメーション化された工場すら増えつつある。

こうした工場では、豚の命は、与えられる数キロの餌を1キロの豚肉に変えるための単なる「機械」のように扱われてしまう。

最近では、米・野菜・魚介類・鶏肉中心の食生活が、肥満や成人病を予防する健康食として、国内外の多くの人たちの関心を集めている。

​ガンジーの言葉​

私たちは、暴力という大火災のまっただ中にいる哀れな存在であり、「生きものの食べ物は生きもの」という言葉には、深慮するべき意味がある。  

『ガンジー語録』より






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最終更新日  2024.01.21 12:30:07


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