連作障害対策としての輪作

  

連作障害対策としての輪作



「日記」で取り上げた問題を初めとして「耕す生活」の中で浮かび上がって来た問題を、
より深く掘り下げていく目的で、いろいろな問題を取り上げる。実践的な必要に応じて、
また自分の勉強のため、というのが主要な方針だ。 自分の 覚書ノート だが、それを公開する目的は、 1.同じ問題を抱える人の参考になればよい 2.同じ問題に対するいろいろな知見・批判を求める 3.全体としての百姓文化の向上を期待する、などのためである。

農のある風景 」「 講読の部屋 」「 百姓の智恵袋 」などを公開しているが、そのすべて
に共通する僕の基本的立場は、この三点に要約される。これをひと言で表せば 切磋琢磨を
求める
、ということだ。 連作/輪作の中でも触れたことがあるが、大根の連作障害(萎黄病)に対する対策のひと
つとしての「輪作」は、一般論としては普及所などから、時に推奨されてきた。 しかし具体的に、大根の連作障害対策として、どういう輪作体系が効果があるのか、現
実に連作障害が発生して後に大根を主要作物として組み入れた「輪作体系」には、問題を
先送りする以上の本質的な意味があるのか、等の問題は、研究レベルではいざ知らず、現
場レベルでは真正面からは取り組まれていない。

「作物の連作障害」(平野暁、農文協、1980/8刊)には、「多くの種類に対して共通的に、
かつ、経済的に利用できる連作障害を除去または軽減する方法は、いまのところほとんど
分かっていない。 個々の作物についてみると、連作障害を軽減する方法は2、3存在するが、予想に反し
て極めて少ない」 「連作障害を除去しようとする試みは古くから行われ、おびただしい数の報告がある。
しかしながら、費やされた長い年月と多くの努力にもかかわらず、それによって得られた
障害除去の実用的方法に関する知識はあまりに貧弱である」(212-213.p)と書かれている。 ところで「連作をする必要性」と題して、次のように書いている。 「アレロパシー的観点からすれば、同種の作物を連作しても生育や収量が劣らない場合、
または却って促進する場合がある。しかし、病害虫の多発や土壌養分の不均衡なども考慮
すると、大多数の作物については、連作すると不利な場合のほうが多いことは衆知のこと
である。それにもかかわらず、一般の農家において連作が依然として行われているのは、
産業上または経営上の必要性があってのことであろう」(同書、216.p) *「アレロパシー」は、他感作用とも訳されているが、生化学的な作用によって他の植物や微生物に働きかけて、
その生長を促進したり阻害したりする働き

自分の狭い見聞かぎりのことだが、実際には「連作をすると不利な場合が多い」とは、
決して「衆知」ではない。むしろ、この点が曖昧で、いろいろな対症療法で「連作障害」
の抑制が可能であるかのような意識的・無意識的な期待のほうが強いように見える。 引き続き、こんなことを書いている。「経済的に見て適作物の少ない特殊地帯における
特定の作物の連作障害対策としては、輪作によって連作害が起こらないよう注意するより
も、連作害の除去または連作害がおこらないよう連作技術(たとえば初作から堆肥を連用
したり病害虫の防除を徹底する)の工夫によっていっそうの努力をすべきであろう。しか
し、この地帯においても、長期にわたる経営的観点に立てば、輪作体系中に牧草作を定期
的に組み込み、畜産を導入することによって農業経営を永続的に安定化することは重要で
ある」(同書、217.p) 経済的に 利用可能な「連作障害を除去または軽減する方法」はない 。 「適作物の少ない特殊地帯」では 輪作よりも「連作技術の工夫」をすべき である。 長期の経営的観点からは「輪作体系中に牧草作を定期的に組み込」む べきである、云々。 長期の安定経営のためには輪作が必要だが、短期的には連作の工夫が大事だというんです
かね。何が云いたいのか、どこに重点があるんだかサッパリ分からない、 実践的には ああで
ないこうでないという、単なる言い逃れとしか見えない。 以上は、20余年前に書かれたものだが、その後、本質的な進歩があったとは見えない。 僕の入植している開発農地は、「適作物の少ない特殊地帯」の典型的な地域である。消
費地から遠く離れている上に、厳しい気象条件・土壌条件など、かなり適作物が制限され
ている。「連作技術の工夫」という点では、県農業試験場を中心に大根の栽培試験が繰り
返されてきた。しかし、その「工夫」が足りなかったのか、そうこうする内に百姓の経営は
ますますジリ貧に陥っていき、十数年にして大根産地から消えた。

03年4月に刊行された「土壌学概論」(犬伏・安西編著、朝倉書店)には、こう書いて
ある。「野菜の連作障害を回避する対策として、従来は薬剤散布や土壌消毒などの化学的
対策、苗の接木や抵抗性品種の導入など耕種的対策が中心であったが、最近では環境問題
とも関連して、 連作障害回避の基本である輪作が見直され つつある。具体的には、従来休
耕していた真夏にソルゴーやギニアグラス、冬にエンバクやライ麦を栽培して、それらを
緑肥として鋤きこむ技術である。このような緑肥の導入は単なる野菜の輪作体系の確立だ
けではなく、養分が蓄積した土壌環境の改善と自然環境に対する負荷軽減に役立つ」(163
-164.p)

この二冊の本を読み比べてみると、もち論、扱っている対象は違うが、薬剤散布・土壌
消毒、抵抗性品種などの回り道を通って、結局は本道に戻ってきた、との感じを受ける。
最近、ハウス栽培(開発農地は別として、この地域の農業の中心はホウレン草のハウス栽培
だ)で、何分の一かのハウスを休ませて牧草を植えるように指導したり、堆肥を強調してい
るのは、この流れのひとつなのだろう。 こういう回り道をしている間に、あれこれの連作障害対策に振り回されてきた百姓はも
ち論、土壌もまた疲弊してしまい、新たな輪作体系に取り組む体力も意欲も失ってしまっ
ているかのように見える。願わくば、僕の狭い見聞にのみ止まって欲しいものだ。 連作障害の原因 について、「図解土壌の基礎知識」(前田正男・松尾嘉郎、農文協、93
年2月刊)に、次のようにまとめている。 「連作障害の原因はまだ解明されていない点が多いが、推定をまじえて、まとめてみよ
う。 1.陸稲はケイ酸吸収が強いし、キャベツはカリ吸収が強い、またある作物はカルシウムの
吸収が強いなど、各作物によって各養分の吸収の強さが違っているので、同一作物を連作
すると特殊な養分が不足してくる。 2.石灰を多く吸収する作物や、根酸の分泌の多い作物を連作すると土壌が酸性化する。 3.普通の作物を作ると耕起作業や、かん水によって土壌団粒が壊される。輪作体系にマメ
科作物や牧草を入れると土壌構造をよくする。 4.作物にはそれぞれその作物につきやすい土壌センチュウや病菌があるので、連作すると
それらの密度が高くなる。 5.根から分泌される毒物、例えば、フェルラ酸、パラクマール酸、バリニン酸、アプシン
チン、アミグダリンなどに自家中毒を起こす。 6.作物体から有毒物ができる。例えば、ナスの葉を刻んで土壌に入れ、ナスを植えつける
と生育が悪くなる。 7.ある作物を栽培するとその作物に関係のある微生物が多くなる。その微生物がその作物
に有益な場合は良いが、その作物に有害な微生物も集積する。そのことも連作障害の原因
だろうといわれている」 「実際の障害はこれらの原因が単独ではなく、それらが重なり合って起こっているため、
原因究明を難しくしている。( ...連作すると収量が減ってくるため、肥料を多くして
取り戻そうとするため)化学肥料の多肥による土壌悪化が重なり、連作が地力低下を著しい
ものにしている」(110-113.p)

(続く)


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