ギロホリック

チョコレ-トパニック 1


          チョコレートパニック 


「今度こそあの女を軍曹さんから追っ払うですぅ。

この作戦なら完璧ですぅ。」


タママはクルルのラボに来ていた。

愛しいケロロからモアを引き離す作戦を持ちかけられてクルルは、別段興味

もなかったが暇つぶしに話だけは聞いてみた。

「・・って、こんな感じのクスリを大天才のクルル先輩に作っていただい

て、それをチョコかなにかに混ぜてもらえば・・・。」

「で?俺様は代わりに何をもらえるんだぁ?」

「西澤家メイド隊のプライベートライフ。」

タママはクルルの眼鏡が一瞬キラリと光ったのを見逃さなかった。

「先輩の高性能隠しカメラ、僕が部屋に取り付けるですぅ。」

「く~くく・・商談成立だな。じゃ、すぐに取り掛かるから1時間後に取りに

来な~。」

タママは茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべてラボを後にした。



既にケロロにバレンタインのチョコをあげた後なので、ケロロに渡すのに何

か口実がいる・・・。

そんなことを考えながら廊下を歩いていたら、反対からにっくきモアがやっ

てきた。

「タママさん!いらしてたんですか?」

モアがちょっと身構える。

ふん、お前がここにいられるのも、あと数日のことですぅ。

泣きながら荷造りするのを笑顔で手伝ってやるですぅ~。

おっと、ここで怪しまれるわけにいかない。そんなどす黒い思いを得意の笑

顔で隠しながらモアに話しかけた。

「軍曹さんにチョコあげたですかぁ?」

モアがポッとほほを染めながら答えた。

「はい!夏美さんに教えていただきながら作ったトリュフ、おじ様とても喜

んでくださいました。ホワイトデーには絶対お返しを下さるって・・!」

その場で嫉妬玉を食らわしたくなる気持ちと必死で闘ううちに妙案が頭に浮

かんだ。

「お返し!そう、軍曹さんならきっとおいしいのを用意してくれるですう!

うらやましいですぅ!」

モアと別れて歩きながら、タママは頭をフル回転させた。

そうだ!何もケロロに食べさせることはない。モアにやればいいのだ。

そのほうが確実で、リスクも少ない。おまけに自分から消えてくれれば

こっちの良心もさほどに痛まずに済む!!

あとはどうやってモアに渡すか・・?


考えながら歩いているうち、なんとなく日向家のリビングに来ていた。

リビングの奥、キッチンから甘い匂いが漂ってくる。

エプロン姿の夏美がこちらに背を向けて鼻歌を歌いながら、何かを作ってい

る真っ最中らしい。

そうだ、コイツにやってもらおう。絶対怪しまれずにうまくいく。

ナッチー、ボクの幸せのためにひとはだぬいでもらうですぅ・・・。

「なっちー!」

「あれ?あんた、来てたの?」

「相談があるですぅ。軍曹さん、モアさんにチョコのお礼を早く渡したいら

しいんですけどどうしても照れくさいらしいんですぅ。」

「ボケガエルが?照れる?」

「毎日会ってるから余計にそうなんじゃないですかぁ?」

「で?私にどうしろって?」

「代わりに渡して欲しいですぅ。」

「ふ~ん、構わないけど・・、なんであんたじゃだめなの?」

「そ、それは・・・・、ええーと、ラッピングもお願いしたいそうなんで

す。ボクもそういうの全然だめなんですよ~。ほ、ほら、ナッチー器用だ

し、センスいいし!」

夏美はすっかり気をよくし、笑顔で答えた。

「そういうことなら、任せなさいよ!ちょうどこれからギロっ

えっと、ついでもあるから一緒に包んでおいてあげるわ」

「じゃ、今持ってくるですぅ!」

ちょうど時間も頃合だ。小走りでリビングを出て、またクルルのラボに向か

う。


ラボではクルルができたばかりのハート型のチョコレートを持って待ってい

た。

「うまくいったぜぇ。クスリの苦味もチョコの味でまったくわからねえ。」

「先輩!ありがとうですう!」

「さっきの話、忘れるんじゃねえぞぉ~。くくっ・・」

スキップしながらリビングに戻ると、夏美がまっかな包装紙に銀色のリボン

をかけていた。

「あ、タママ、包装紙とリボン、これしかないのよ。あたしのと一緒でもい

い?」

「全然OKですぅ」

「じゃ、それ預かってあとでモアちゃんに渡しとくわね。ホワイトデーまで

待てないなんて、あいつよっぽどモアちゃんに・・・」

タママは夏美の言葉をわざと最後まで聞かず

「お願いするですぅ」

それだけ言って部屋をでた。

「行っちゃった・・。やだ、これどっちもハート型で見分けつかないじゃな

い!間違えないうちにギロロに渡さなきゃ!」

夏美は今タママから受け取ったハートのチョコも見栄えよく、ラッピングし

た。


西澤家に戻りながら、タママは笑いが止まらない。

首尾よく運べば・・あの女が今日中にあのチョコを食べれば、明日の今頃に

はボクと軍曹さんは・・!!



                     つづく


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