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南北戦争時代にさかのぼり、アメリカ史の深部に迫った物語です。南北戦争は4年も続き、アメリカ史全体の中軸になる出来事です。その当時の庶民の暮らしぶりを知るきっかけになる本でもあります。奴隷制に反対したイリノイ州と、賛成派のミズーリ州の間には、ミシシッピ川が流れています。川を挟んで明らかに対立する思想を持った人々が、街で混在しながら暮らしていた当時の様子が、思春期の子供の目線で綴られて、興味深かったです。この大河沿いのイリノイ州の田舎町で暮らす若者達が、同じく下流沿いのルイジアナ州のニューオリンズで育った娘達に偶然出会い、展開していく物語は、興味を惹かれました。戦争や人種差別の深い傷を、歴史に忠実に綴っていて、その当時の思想の違いによる人々の壁を、ひしひしと感じさせられます。またニューオリンズに当時多く存在した自由民の黒人女性達の微妙な立場(クワドルーン・セイレンと呼ばれた人々など)の姿も、浮き彫りになります。南北戦争の傷病兵士達の扱いなど胸の痛む箇所もあり、スリリングな展開と最後の謎証し的STORYに、ちょっと意表を突かれ、読み応えのある非常に面白い本でした。
May 7, 2008
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どうやら、この子は、巣から落ちて親とはぐれてしまったらしい。ご近所の男の子が見つけ保護されましたが、お母様が今後どうすればいいか悩まれて、私の所へ相談に連れて来られました。生まれて日が浅いようで、まだ飛べないし、ヨチヨチ歩きしかできない赤ちゃん雀。残念ながら、私には文鳥を雛から育てた経験はあっても、野生のすずめを保護し育てた経験はなくて、いいアドバイスも出来ませんでした。ずっと大きな口を開けて餌をねだり続けるこの子に、お粥をすりつぶしてスポイトで食べさせて、空腹を満たしてやるだけでした。人間を怖がりもせず、手の上でひたすら餌をねだる姿は愛らしく、癒されましたが。野生の生き物に人間が手を出すのはとても難しい。この子を誰かが引き取って世話をする事も出来たかもしれないけど、それが本当に良いことなのか?この判断が、またとても難しい。悩まれた末、雀を見つけた親子は、巣があったと思われる木に返されたようです。
April 28, 2008
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苺のムースを作りました。新しいデジカメ(Panasonic LumixDMC-FX35)で、撮ってみました。愛用のデジカメが、ついに壊れました。主人から、扱いやすい好きな機種を選ぶといいと言われ、迷わず初心者向けのコンパクトデジカメを選びました。小さなバッグにも収まり、軽くて持ち運びに便利です。女性向きのデジカメです。長年愛用したFuji Fine Pixとは、これでお別れです。旅行には必ず持ち歩き、よく働いてくれた愛着のあるものだけに、ちょっと寂しさもありますね。
April 20, 2008
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読了後に、胸の奥に疼くような痛みが残りました。今年、私が読んだ本の中では、かなり高位置にランクインする作品だと感じます。著者は男性なのですが、丁寧で繊細な感情描写は、どうしても女性作家を連想させます。物静かで端正な語り口で綴られる怪奇な物語の数々が、後半、徐々にある秘密を解き明かしていきます。それが明らかにされる時、心臓を鷲づかみにされるような衝撃を受けました。緻密に計算され練りに練った構成。読者にじわじわと迫ってくるような筆致。緊張と切迫感、描かれる世界観は、独特な迫力があり、読み進めるうち止められなくなります。丁寧に描かれた力作でした。もっと、この著者の作品を読んでみたいと思います。また、未読の方には、この本に関する予備知識も得ることなく余計な先入観のない状態で、読まれることを強くお勧めします。
April 19, 2008
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高校2年生の女の子が、夏休みに書置きを残して失踪する。同級生の友人が、彼女の消息を辿る、軽快なミステリー。巧妙な罠にはまり、知らず知らずに犯罪の片棒を担がされている女子高生の姿に、冷や冷やしてしまった。所謂お嬢様校の都内私立高校に通う子が、大人のいいように利用されていることに気付かず、あまりにも行動が無防備なのだ。若い子には、(そして特に女の子には)普段のなにげない生活の中に、罠は潜み隙を狙っていることを忘れないで欲しいと思う。同じ年頃の子供を持つ親の立場で、この本を読むと色々考えさせられる箇所がある。道端で手軽に入手でき、若年者間でもじわじわと広がるドラッグ。主人公がイザと言う時に頼るのが、肉親でなく、他人なのだ。それも、ネット上で知り合ったばかりの素性もまだよく飲み込めてない相手だったり。これはなんだか、切ないと感じた。たまたま相手が良心的で運よく事件が解決して行くのだが、実際はこの物語とは程遠いものだろう。主人公の凪は、仕事で不在がちな母親や離婚して米国在住の父親は、端から当てにしていない。また、出来ないのだ。経済的にも不自由なく暮らしているし、一人で立っていける独立心旺盛な子でも、心の奥底はやっぱり寂しさを抱えている。渋谷のお洒落なバーのマスターに食事を作って貰い、癒される凪。緊迫した状況下で友人を追う時もサポートしてくれる優しく包容力のあるバーのマスターなんて、物語上は存在しても、そんな都合のいい人間は現実にはいないだろう。しかし一人では無力でも、関わる人の温かい協力を得て、真相に迫っていく過程は面白かった。少々ご都合主義的な部分を割り切って読み進めると、軽快で爽やかな筆致の青少年向けミステリとして楽しめる。
April 9, 2008
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アメデオ・モディリアーニ(1884-1920)は、パリのモンパルナスで活躍しエコール・ド・パリを代表する画家として知られています。乃木坂の国立新美術館で、彼のプリミティヴ美術の影響を色濃く示す初期のカリアティッドの作品群から、独自の様式を確立した肖像画にいたるまでの幅広い作品を紹介していたので、観に行ってきました。モディリアーニが、アフリカやオセアニア等のプリミティブ美術(原始美術)に深い関心を寄せていたことがうかがえる内容でした。彼の絵は、個性的ですね。肖像画モデルは、一様に無表情なものが多い。極端になで肩で首がすっと長い女性像を好んで描いています。初期の女性柱像(カリアテッド)のデッサンの女性らしいまろやかな曲線が、そのまま肖像画へと特徴を残し、描き継がれたようです。また、本当に気心知れた人物以外の瞳を、書き入れることはなかったようです。彼が描く独特のアーモンド形の瞳は、描かれても片目だけのものもありました。彼は、眉目秀麗の青年だったようです。生前の写真が何枚か展示されていました。幼少時から病弱で、才能をなかなか認めてもらえず、静養の為に移ったニースで数々の作品を生み出した頃、ようやく個展での手ごたえを掴みましたが、その後大きな成功を実感することなく、35歳で早すぎるその生涯を閉じました。彼が32歳の時、18歳の画学生ジャンヌ・エビュテルヌ(1898-1920)と出会い、互いの人生に大きな影響を与えます。モディリアーニに対し、「薄幸な妻」として語られることの多いジャンヌ。彼女も彼の二人目の子を宿しながらも、モディリアーニを追って亡くなります。私はやはり、彼の描いた絵の中ではジャンヌの肖像画が、一番好きですね。彼の作品にしては珍しく表情豊かで幸福感に充ちた存在感のある作品だからかな?
April 2, 2008
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「ブロークバック・マウンテン」の名匠アン・リー監督による、ヴェネチア国際映画祭グランプリ金獅子賞も受賞した作品。抗日派の女スパイと、親日派政府要人との禁断の愛の物語を、映像化。 前作「ブロークバック・マウンテン」では男性同士の禁断の愛を描き、美しく壮大な自然の中、震えるような主人公の心の疼きを見事に表現し、多くの人が感動の涙を流した。私も、この映画が好きで、観た時は強い衝撃を受け、映画やDVDで何回も見直したほど。(素晴らしい演技を見せたヒース・レジャーは年初にオーバードーズでこの世を去り、非常に残念に思う。)その監督の作品とあって、随分前から楽しみにしていた。原作のアイリーン・チャンの短編集も、映画を観る前に、新幹線の中で読んで時代背景をざっと頭に入れておいた。ストーリー 若く美しい女子学生ワンが、日本占領下の上海で抗日運動に参加する。やがて彼女は女スパイとなって、暗殺のターゲットである特殊機関の大物イーに接近。しかし2人は危険な愛に身を焦がすことに。 キャスト&スタッフ [監][製]アン・リー[原]アイリーン・チャン[音]アレキサンドラ・デスプラ[出]トニー・レオン タン・ウェイ ワン・リーホン ジョアン・チェン 制作:2007米.中.台.香/ワイズポリシー上映時間:158分・R-18アイリーン・チャンの原作は、50項しかない短編だが、流麗な文章で巧みに構成され、密度の高い作品だった。映画も、原作の持ち味を生かし、当時の上海や香港の町並みや社会風俗を見事に再現し、独特の映像美を作り上げていた。上映時間は158分でかなり長い映画だが、退屈に感じる場面はほとんど無い。女スパイの揺れ動く心理と、究極の緊張を強いられ続ける諜報機関責任者の苦悩が、交錯しながら激しくもつれ合い、愛の炎を燃やす場面に釘付けになる。大学演劇の看板女優であったウブな女学生に、白羽の矢が立ち、色恋仕掛けで親日派政府要人に迫る。対日派の強固な組織に後押しされ、後戻りも出来ない命懸けのスパイ行為。天性の美貌と抜群の演技力が、その後の運命を変えてしまう悲劇。暗殺ターゲットである要人の愛人を演じるうち、体を重ねあう毎に、徐々に情が移っていく。互いの孤独と極度の緊張のもとで、惹かれあう二人。「毒なき者、男にあらず。」を体現していたトニー・レオンの、嗅覚が研ぎ澄まされたような演技と、素顔では幼さも残しつつ、妖艶な愛人まで演じきったタン・ウェイの演技の素晴らしさに、堪能しっぱなしだった。タン・ウェイのシルクのチャイナドレス姿は、体の曲線を写し出し艶っぽく綺麗だった。巷では過激な性描写で話題をさらっているようだが、佳芝がイーの前で歌を披露する場面がある。そちらも心に残る名場面。イーがしばし緊張を解き彼女の歌に聞き惚れ、思わず涙を流す。二人の心のたがが緩み、素の心を触れ合わせる美しいシーン。私は、ここが一番好きだな。見終わって、映画タイトルは、「ラスト、コーション」よりも原作の「色|戒」の方がしっくりするように感じた。「色」は欲情を表し、「戒」は誓いの意味があるようだ。正義の誓いと自己の欲望のせめぎ合いの中で揺れる主人公の心理が、この物語のキーワードとなって見事に言い表している原作タイトルだ。カタカナより漢字タイトルの方が、日本人にはよりイメージが湧きやすい。艶っぽくスリリングでありながら胸を打ついい映画だった。渋谷Bunkamura ル・シネマで鑑賞。
March 31, 2008
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所用で東京に行きました。少し早起きして、代々木公園までゆっくり散歩しました。桜が満開で、本当に綺麗。まだ人が少なく、澄んだ空気と桜を満喫できました。
March 31, 2008
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安政4年、河内国(現在の大阪南東部)で百姓の息子として生まれた城戸熊太郎が、35歳の時、大量殺人事件「河内十人斬り」を引き起こすまでの、生い立ちと告白が綴られる。読売新聞に連載され、谷崎潤一郎賞も受賞した作品。650項を超える長編(図書館貸出し単行本で読了・文庫は850項)で、その大半は事件に至るまでの彼の内部独白が占めている為、読むのに手こずり時間が掛かった。この本を読むまで、私はこんな事件が実在したことも、これをモチーフに、河内音頭の歌詞が作られ、歌い継がれていることさえも知らなかった。町田康は、「人が人を殺す」心理を、思弁と行動が伴わない熊太郎の生き様を通して、奔放な想像力と饒舌な河内弁で解き明かしていく。人は誰しも、社会の中で平穏に過ごしていく為に、よろいを被って生きていると思う。自分の本音を隠し、建前上、職場や組織や地域社会の中で、他者と上手く折り合いながら、暮らしている。しかし、己に偽りない正直な気持ちと、立場上実際に演じなければならない役回りの溝の深さに、疲れることはないだろうか?「本当は私はこういう考えなんだけど、それは今は絶対明かせないよね。」って事は、人生のあらゆる場面で、誰もが経験することのように思うのだ。熊太郎も、自身の心の内と、実際の行動が伴わないことに、始終苦しみ続ける。思弁的な自我と劣等感から、世間と上手くコミュニケーションがとれないままに成長し、村の人間からはつまはじきにされる。しかし、社会から徐々に脱落していく彼の時々の告白は、自嘲的でどことなく明るさも感じらた。彼の愚かさに、時には笑いも込み上がる。そして、共感もする。熊太郎のように、自分の想いを人に上手く伝えられず、他者との距離が図れず困惑する姿には、現代の人間に通じる部分があると感じた。獅子舞の面を被った熊太郎が、世間を面の内側から覗く場面があるが、自分の思弁と世間一般との隔たりを巧妙に体現していたように思う。己の私欲ばかり追求する村の人々への怒りが、臨界点に達し、嵐の後の濁流のように、激しく留まることを知らない感情のうねりとなって変化していく様は、迫力があった。
March 22, 2008
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小川洋子の「ブラフマンの埋葬」を、読んだ。著者は、掴みどころがない不思議な空間を描くのが上手いと思う。私は、彼女の無国籍で独特な匂いのする世界に浸りながら、本を読むのが好きだ。軽く飲んで、半分まどろみながらベッドで本を開くと、一気にその世界に浸れる。繊細で硬質な文章も心地良く、数時間は居心地のいい読書を保証される。「薬指の標本」に出てくる洋館も、猥雑な俗世間と切り離された閑静な場所に佇み、読者の想像を様々に掻き立たせてくれた。登場人物や小道具等、設定の妙に心を奪われた。ブラフマンの埋葬も、ミステリアスな浮遊感に溢れる作品だった。ブラフマンの正体は、最後まで明かされない。ヒントは森の動物と言うことだけ。でも、彼の日常生活・生態・しぐさ・動き・感情まで、手に取るように詳しく描写され、その愛くるしくいじらしい姿に癒された。「古代墓地」と言う設定も、面白い。死者を葬る場所での恋人同士の逢瀬や、名も亡き人が遺した家族写真に想いを馳せるところ。緑色の泉、オリーブ林、ラベンダーの棺。死者と生者の境界線も曖昧な、不思議な世界にどっぷりと浸れた。心地良い時間だった。
March 19, 2008
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次女が、無事中学を卒業。努力が実り、第一志望県立高にも合格した。受験の大変さで言うと、昨年経験した大学入試の比ではなかったものの、発表までは落ち着かなかった。実力よりも上の最難関高へのチャレンジも、本人が大学進学を念頭に置き決めた進路だった。自分が定めた目標を達成した充実感を忘れないで、春からの高校生活の1日1日を大事に過ごして欲しいと思う。中学のように厳しい校則から縛られることも少なくなり、高校ではより自己管理が求められるだろう。三年後の大学受験に向かって、また新たなスタートを切ることになる。勉強ももちろん大事だけど、部活や友達との交流、今しか出来ない経験を積んで、視野を広げて欲しいと思う。高校生活は教育の総仕上げ段階に入る訳で、大学進学で自宅を離れるまでの残り三年間を、私達も楽しく温かく見守ってやりたいと思う。
March 18, 2008
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アニメと実写映像を融合したディズニー製作のファンタジー。プリンセス、王子、魔女など、アニメの世界のキャラクターが、現実のニューヨークに現れ、大騒動を繰り広げる。 ストーリー お伽の世界の中で生きるプリンセスのジゼルが、魔女にだまされて現代のニューヨークへ追放されてしまう。見た目もリアルな姿に変わり、御伽噺の常識が通用しない世界に戸惑う彼女は、夢など一切信じない現実的な弁護士ロバートと出会う。キャスト&スタッフ [監]ケビン・リマ[脚]ビル・ケリー[音]アラン・メンケン[出]エイミー・アダムス パトリック・デンプシー ジェームズ・マースデン スーザン・サランドン ディズニーのおとぎ話映画だから、小さな子供が楽しむものなんて思って観たら大間違い。これは、大人も充分に楽しめる最強のエンタテーメントでした。御伽噺の登場人物が、現代のN・Yに紛れ込んで、繰り広げる物語は奇想天外で、ディズニーの優秀なスタッフが綿密に練り上げた高度なテクニック満載の映画でした。 「美女と野獣」「アラジン」のスタッフによる美しいミュージカル・ナンバーが物語を効果的に盛り上げ、「白雪姫」「シンデレラ」「眠れる森の美女」のディズニーの古典的アニメテクニックが、きっちりと土台を固めます。加えて実写版の俳優の個性的な演技が光り、予想外の展開を見せてくれました。アニメから実写版への切り替わりの鮮やかさ、キレの良さは、お見事!細部まで気を抜かない丁寧な作りに、感心しっぱなしでした。ファンタジーお決まりの要素「願えばきっと叶う夢」「永遠の愛」等を、一旦ぶち壊してしまうことで、イメージが大きく裏返ります。夢が壊れ現実と向き合い、御伽噺の自虐ネタが活き、展開が読めなくる巧妙な構成になっていました。動物のキャラが秀逸!リスのピップの表情や動きが、たまらなく可愛い!観客すべてが魔法にかけられたような素敵な2時間でした。これは、本当にお勧めです!
March 15, 2008
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有川浩の「阪急電車」を、読みました。同じ電車にたまたま乗り合わせた乗客同志が、ひょんなことで声を掛け合い、不思議な繋がりを持っていくという話。その出会いの一つ一つが、微笑ましく愛おしく改めて人間っていいなぁと感じました。阪急の今津線は数回しか利用したことがないのですが、これを読んでなんだか無性に乗りたくなりました。阪急電車って、運賃も手頃で、小豆色の車体がレトロな感じで親しみやすいイメージがあるんですよね。通勤はJR利用でしたが、関西圏内の私用移動では、今も阪急を使うこと多いです。片道たった15分の今津線。同じ車両に様々な人生が積み込まれ、もうこれっきり二度と会うこともないかもしれないという気楽さや、反対に何度も出会ってる親しみ、共感・同情・反感・友情・愛情などいろんな感情が混ざり合い、お互いの人生に不思議な影響を与えます。電車に乗るのが楽しみになるような素敵な(そして笑える)話が、詰まっています。人をついつい興味本位で観察してしまうけど、反対に自分も人からもしっかりチェックされているんだろう。気を抜けない!と思わされました。往路編と復路編では若干の時間差があって、往路で出会った人々のその後の様子がわかるような構成で、興味そそられ最後まで楽しめました。
March 14, 2008
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米国で人気のある作家ルイス・サッカーの本を、読んでみた。初めて読む作家だが、物語の展開のうまさ、スピード感に圧倒された。児童文学の括りに収めておくのは勿体無い、大人が読んでも充分に楽しめる作品だった。茶目っ気たっぷりで肩肘張らず、リラックスして読めるのがいい。きっとこんな本なら、どんなに本嫌いの子供でも、夢中になって読んじゃうだろう。アメリカ南部独特のほら話のスパイスが効いて、ユーモラスな会話と肝冷やすようなスリリングな冒険。そして、ラブロマンスが色を添えてくれる。気がつくと、一気に読んでしまった。米社会に根付く人種差別やドラッグ問題等、避けて通れない苦い背景も織り込みながらも、読む人に、明るい希望の光を与えてくれる。この本のテーマである「人生の中で、小さな一歩を踏みしめていくことの大切さ。」が、じんわりと身にしみて感じられる。主人公アームピット(セオドア)とジニー、二人の友情が、爽やかで胸が熱くなる。子供達は純粋で、偏見と欲に眩んだ大人達が見失ってしまった大事なことを、失くさずにしっかり持っている。人を信頼し、互いに支えあえる存在があるって、素敵なことだ。アームピットは、更正施設出身で、社会から見れば少々問題ありの危険な少年なんだけど、本当は心根の優しい人間だ。混じりっ気のない目で人を見れる、ハンデのある人への本当の思いやりが何であるかを、理屈でなくわかっている聡明な子供だ。彼の親は、過去の素行から、現在の等身大の彼をきちんと計れない。親には、どうしても、こんな部分がある。自分の子供には責任があるがゆえに、力が入りすぎて本当の子供の姿が見えなくなる矛盾。この部分は、自戒を込めながら読んだ箇所だなぁ。メキシコと国境を接するテキサス州・オースティンは、古くは奴隷制の歴史があったアフリカ系アメリカ人が多く暮らす街。更正施設出所者の再犯率73%という数字に、彼らへの偏見もある中で、決して公平でない人生を、一歩一歩大地を踏みしめるように進む主人公の姿に、励まさせる若者も多いだろう。人生はいつからでも、やり直せる。ゆっくりと進めばいい。この本は、子供たちの背中をしっかりと押してくれる。金原瑞人氏&西田登氏の訳も秀逸。ノリノリのラップ、ロック歌詞のパンチが効いていた。アームピットが数々の経験を積んで、それまでの険しき人生を切り開いていく姿は、爽快!この作品は、著者の「穴」(HOLES)のスピンオフだそうで、前作の「穴」も読んでみたいと思う。ISBN 978-4-06-214040-9 SMALL STEPS Louis Sachar
March 13, 2008
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カンヌ映画祭でパルムドールに輝いたケン・ローチ監督作品。1920年代のアイルランドを舞台に、祖国の独立運動に身を投じた兄弟の愛憎を叙情的に映し出す。 ストーリー 1920年、独立を求めるアイルランドと英国の間に戦いが勃発。兄弟テディとデミアンは義勇軍に参加し、激戦に身を投じる。やがて和平交渉を迎えるが、今度は条約をめぐって、支持派と反支持派の内戦が起きる。 キャスト&スタッフ [監]ケン・ローチ[出]キリアン・マーフィ ポードリック・ディレーニー リーアム・カニンガム 緑豊かな美しい大地アイルランドで、祖国独立の夢を求め、時代の流れに翻弄された人々の苦悩と哀しみの歴史に、やりきれない気持ちになった。イギリス王国支配下で、アイルランド人への集会禁止令やその他厳しい弾圧により、命を落とす者が続出し、英国の悪徳政策の為に、領主に地代も払えず常に餓えに苦しむ農民の暮らし。人間として当然の権利を求めようとする人々が、現状打破の為にゲリラ活動に身を投じても、これを咎めることは誰にも出来ないだろう。ごく普通の庶民が簡素な平服姿で、苦労して集めた銃を手にし、武装した強固な英国軍への抵抗をはじめる姿が痛々しかった。その彼らを後方で支えるのは、女性や年端の行かぬ子供たちである。時には命懸けで、兵や銃器を家に匿い、機密情報を自転車で運び、重要な役割を果たしている。英国軍へ抵抗を行っている時は、流血も悲劇でありながらも、まだ「まし」であった。英国を相手に戦う時は、「祖国の独立と貧しい人々の解放」という明確な目的があった。本当に辛いのは、条約後の内戦に入った時である。支持派と不支持派の議論は袋小路に入り、どちらの立場にも「正論」なのだろうが、両者決裂し歪んだ道へ進まざるを得なくなる。兄弟も思想が対立し、個人の力ではどうしようもない立場に立たされる。デミアンが、密告の罪を犯した、幼き頃からの友人を処刑するシーン「人として一線を越えてしまった。」の言葉、最後の兄と交わす場面は、強く心に刻まれ印象的。キリアン・マーフィはアイルランド・コーク州出身でその生い立ちから生まれた思想と持ち前の感性の鋭さを発揮し、素晴らしい演技だったと思う。占領と支配・その後の内戦。この不幸の連鎖は、現在も世界のどこかで繰り返される。この映画は、アイルランド.英国の問題に留まらず、ケン・ローチ監督が世界へ向けた一つのメッセージなのだろう。伝統歌(アイリッシュ・トラッド)の名曲『The wind that shakes the barley』の物悲しい女性の歌声が、この映画の登場人物のやるせない思いをよく現していて、胸を打たれた。
March 9, 2008
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ひとつの心臓が引き寄せた3人の男女の運命を描いた重厚なドラマ。ある日、交通事故が起こる。その結果、全く知らない他人同士の人生が絡み合っていく様を、時間軸を交差させながら展開させていく。ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ベニチオ・デル・トロの主演3人が熱演し、全てアカデミー賞にノミネートされる。STORYクリスティーナ(ナオミ・ワッツ)は、建築家の夫と2人の幼い娘に囲まれ幸せな家庭の主婦である。ジャック(ベニチオ・デル・トロ)は、刑務所から出所してからは神を信仰し、真面目に働き2人の子供と妻を養っている。一方、大学で数学を教えるポール(ショーン・ペン)は余命1か月と宣告され心臓のドナーを待つ日々だった。ある日、クリスティーナは、夫と日常的だが幸せな内容の会話を電話で交わす。しかし、その後、思いもよらぬ悲劇が起こるのであった・・・。キャスト&スタッフ[監督]アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ [キャスト]ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ベニチオ・デル・トロバベルの映画監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの映画だけあって、凝った作りだった。時系列をいくつも飛び越えて編集され、最初は、登場人物の繋がりが見えにくかったが、絡まった紐がするすると解けていくように、徐々に解るような仕掛けになっている。臓器移植も映画の重要なテーマの一つ。脳死判定を受けた患者の家族、臓器提供を待つ家族など、立場の違いによる心情のズレが、よく描かれている。ナオミ・ワッツの迫真の演技に、事故を境に急降下する人生の儚さを観た。ベニチオ・デル・トロ演ずる信心深いジャックも、決して悪人ではないのに、ある日急に運命が狂い始める。信仰とは、一体何なんだろう?と、思う。臓器移植を受け、幸運にも命の期限を伸ばせた人は、きっと臓器提供者がどんな人物で、どんな暮らしをしていたか、知りたくなるのだろう。しかし、他人の臓器を得ても、拒絶反応や免疫抑制剤の投与など、新たな問題にも出くわす。人の臓器に頼ってまで、己の人生を繋ぐ意味とは?「運命の皮肉と命の重さ」を、ひしひしと感じた。神が与える試練の大きさ、それでも人生は続いていく意味。決して明るい映画ではないが、忘れられない作品になりそう。
March 6, 2008
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高校入試を直前に控えた娘の応援も兼ね、今年も、雛祭りの食卓をアレンジ。娘と一緒に作った、苺のムースです。ムースのまわりに飾るビスキュイが変な形になってしまって、少々失敗作。ちらし寿司・はまぐりのお吸い物・菜の花の和え物等。1月末に受けた認定試験の合格通知が、届きました。今度は、娘の第一志望校合格も、祈りたいです。
March 3, 2008
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昨年末に図書館へ予約を入れた本が、やっと回ってきました。直木賞の候補作だった事もあり、人気があり、長いこと順番待ちでした。上巻だけ入手でき、下巻はまたしても順番待ち(汗)。安城家・親子三代にわたる警察官の物語です。戦後から、高度成長期、現代へと時系列にそって話は展開します。無駄な表現が省かれた、硬質でかっちりした文体。読み進めると、周到に伏線が張られていることに気付きます。戦後復興期の社会背景を織り交ぜながら、安城清二の警察人生と彼の死を綴る一章。二章は、父の背中を見て育ち、警察官の道を選んだ民雄の物語。警察という国家組織の中で、重要な戦力として使われる、彼の苦悩が、身にしみるように感じました。本音と建前の中で、心を揺らがせ、もがく姿は痛々しかった。彼は父の死を不審に思い、真相を突き止めようと決意します。民雄の人生の途中からは、自分の記憶と重なる部分が出できて面白さが、増加します。赤軍派の強行事件など。警察官という職業を選んだ人間の誇り、苦悩、責任、組織への矛盾した思い等が混在された大河小説で、この先も目が話せません。早く、続きが読みたい。
March 2, 2008
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アカデミー賞作品賞他計5部門を受賞。 名匠ビリー・ワイルダーがサラリーマンの悲哀をペーソスたっぷりに描くハリウッド屈指の傑作コメディ。STORY保険会社で働くパディ。彼は、自分のアパートを上司の情事のために貸し出す裏稼業も行い、出世の点数稼ぎをしている。ある日、人事部長が連れ込んだのは、彼が秘かに憧れる女性フランだった……。都会派ロマンティック・コメディの傑作。 キャスト&スタッフ [監督] ビリー・ワイルダー[脚本] ビリー・ワイルダー[キャスト] ジャック・レモン シャーリー・マクレーン古い映画ですが、昔から大好きな映画の一つです。ジャック・レモン扮するバディが、とにかく愛する女性フランの味方に徹するところが、泣けます。最初は、もちろん自分の出世の点数稼ぎも計算しての行動なんですが、徐々に彼の気持ちが、別方向に動き出すところが、面白い。出世もまた男の一つの夢ではあるのですが、最終的に彼の選んだ道が、なんとも微笑ましく胸を打たれます。1960年代のアメリカ、NEWYORKの高層オフィスビルの風景、しっとりと落ち着いた佇まいのApartment、その間取りや家具等もお洒落。また、登場人物の当時のファッションも品が良く、レトロでいい味を出しています。ショートヘアのシャーリーマクレーンは、清潔感に溢れ表情豊か。昔の女優さんは、何ともいえない気品と知性がにじみ出るような感じで、好感が持てます。練りに練ったプロットと、テンポのいいカメラワーク。何回観ても楽しめる最高のコメディ。ちょっと疲れてた時に観て、元気を貰っています。
March 1, 2008
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現役医師が書き下ろしたベストセラー・ミステリー小説を映画化。大病院で仕組まれた犯罪の真相を、竹内結子と阿部寛演じる女医&役人コンビが、コミカルな掛け合いで探る。 ストーリー 成功率60%という心臓バチスタ手術。その専門集団“チーム・バチスタ”は成功手術記録を26連勝と伸ばしていた。しかし、突如、3例連続で術中死が発生。事故か?殺人か?内部調査を任された心療内科の田口医師の前に、破天荒なキレモノ役人・白鳥が、現れた.....。 キャスト&スタッフ [監]中村義洋[原]海堂尊[脚]斉藤ひろし 蒔田光治[出]竹内結子 阿部寛 吉川晃司 池内博之 玉山鉄二 井川遥 田口浩正 田中直樹 佐野史郎 野際陽子 映画の構成上、原作とは若干の相違があるが、この映画アレンジも、充分に楽しめる出来だった。原作では、男性医師・田口役を、女優の竹内結子がやるなんて、一体どんな雰囲気になるんだろう?って心配したけど、「ほんわり癒し系&しなやかで芯のある女医像」に上手くスライドさせ、彼女らしい個性を生かして、演じきっていて、好感が持てた。彼女がスクリーンに出てくると、周囲がパッと明るくなる。華がある。ちょっとした微笑みも、悔しそうな顔も、驚いた顔も。マスクをした目の表情も豊かで、愛らしく観てるだけで癒される何かがある。性別を見事に乗り超えて、適役だったと思う。「サイドカーに犬」の微妙な役どころも、きっちりこなしていたし、心に残るいい演技のできる女優さんだなあと、今回も感心した。一方、白鳥役の阿部寛は、登場から破天候でギロギロ脂っこくて、強烈な個性を発揮。阿部寛は、「トリック」でも奇人役を熱演していたが、こういう役は文句なしに上手い。バリスタ・スタッフも、はまり役が多かった。時間枠上、看護師の藤原さんや高階病院長等の年配者の味わい深い描写が略されていて残念だった。でも、その分、登場時間は短くても、野際陽子や平泉成など名優が、きっちり脇を固めていた。小説では、どうしても欠けたり補えない部分(音楽や映像)が加わると、一気に臨場感・緊迫感が高まる。バリスタ・オペシーンは、観る者も緊張して息を飲むほど。その他ロックや、ソフトボール試合光景など、原作にはないオマケもあって楽しめた。でも、作品完成度の高さは、やはり小説に軍配が上がるような....。映画と本、両方味わうと、相乗効果でより楽しめそうな気がしました。
February 27, 2008
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「チーム・バチスタの栄光」を、読んだ。STORY心臓移植の代替手術であるバチスタ手術専門外科チームで、原因不明の連続術中死が発生。医療過誤か殺人か?院長から、内部調査依頼を受けた田口医師と厚生省役人・白鳥の二人が、真相究明する為に、聞き取り調査を始めるが、.........。感想「窓際族・昼行灯」田口医師と「火喰い鳥」厚生省役人白鳥の個性が対照的で、物語の中でも際立って面白かった。中盤以降の二人のやり取りに、目が離せなくなる。ロジカル・モンスターと言われる白鳥の話は、一見筋通っていそうだがハチャメチャで、全然ついていけなかったけど。(でも、何故か憎めない。)重いテーマなのに、さほどシリアスでなく、明るくユーモラスな会話が華を添える。犯人像がなかなかつかめない巧みなプロットで、最後まで謎解きが楽しめる。スタッフ7人のキャラの書き分けも、秀逸。現役外科医ならではの専門知識満載、リアルで臨場感ある描写や、登場人物の相関関係・各人の感情の機敏など、枝葉の部分も丁寧に描かれていて、読み応えも充分に楽しめた。桐生医師も抜群に格好良かったが、陰の功労者と言える高階病院長の人柄も、魅力的。洞察力の深さ、組織トップとしての度量の広さ。若き人材を伸ばし育てる裁量。こんな上司がいると、下で働くものも幸せだろう。ストレスが多く厳しい労働条件下で、患者の命を守る為に寝食忘れて働く医師達や、コ・メディカルスタッフの実情が見えて、考えさせらた。映画も観に行くつもりなので、こちらも楽しみ!
February 27, 2008
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一般人が知りえない裁判官の実態を暴く、架空の小説。法律家と二足の草鞋を履く、覆面作家である著者の文壇デビュー作。例えばここに、ある好色な裁判官が、いたとしよう。彼が、職務中にこっそり隠れて書いている複数の交際女性宛て書簡を、暴露することで、この小説は、展開する。読者は、彼のプライバシーてんこ盛りの手紙を読むことで、裁判官という特殊な職務に就く人種の傾向と素性を、徐々につかんでいく形である。職務上、厳しく行動制限されている裁判官達の、閉鎖的で異様な生活実態が、浮き彫りになる。出世の為に、上か横しか見ない「ヒラメ裁判官」と言われる、彼らの頭の中身とは?最高裁事務当局の好む裁判をしないと、すぐさま左遷、出世コースからはじかれ、コースから外れた人間への、あからさまな給与差別や、根深いイジメが行われる世界。赴任先の裁判官官舎では、夫人同士が、夫の昇進や役職により格付けされる事情。人を裁くという特殊な職務の性質上、ストレスを抱え、心を病む裁判官が多い実態等。恐らく、脚色の為に、デフォルメした表現も、盛り込まれているのかもしれない。しかし、その部分を差し引きながら、読み進めるうちに、こみ上げて来る心境は、複雑だった。裁判所において、人が人を裁く仕事。何よりも、公明正大さが、求められる職務である。しかし、(小説では)その裏側で、国側有利の判決を外部から見えない部分で操作誘導されるなど、驚愕の事実が潜む可能性を示唆する。判決により、今後の人生が大きく左右される人間が、多くいるのに。日本には、最高裁判所裁判官国民審査があり、国民投票により裁判官を罷免できる制度があるが、国民審査で罷免が不罷免を上回らない(過半数以上)限り、罷免されることはない。よって、余程でない限り、裁判官は罷免されにくい状態になっている。情けない話だが、私は、裁判官国民審査時、発表される裁判官の名前を見ても、全くの知識不足で、どんな裁判をしどんな判決を下した人物なのかも、よくわからなかった。いい加減に「×」をつける事もできないし、公布資料を読んだりネットで調べてみるが、裁判官の過去の判決記録を見ても、素人には内容を充分に理解しがたく、これをどう判断していいかも分からなかった。仕方なく無記入で出してしまっている。(無記入は、全員信任になってしまう。)刑事訴訟では、有罪率は99.89%で、異常に高く(冤罪が絶対ないとは言い切れない)、国を相手とする住民訴訟の住民側敗訴率も、異様に高いのが、この国の現状。その裏に潜む数々の問題点を提示しつつ、著者は、国民にも司法側にも、意識変革の必要性があることを、小説でもって、教えてくれる。女性へのくどき文句が、手紙の大部分を占め、少々うざったい感じもあったが、骨の部分は、興味をそそられ、面白く読める本だった。
February 24, 2008
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麻薬王と捜査官の息詰まる実話を、デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウの名優共演で贈る犯罪サスペンス映画。「グラディエーター」でクロウと組んだリドリー・スコット監督作。 ストーリー 1970年代のNY。ギャングの運転手だったフランクは、忠誠を尽くし仕えたボスの死後、彼から学んだマフィアの知恵と独自のウハウを駆使し、ベトナムから、高純度の麻薬直送ルートを開拓し、大儲けする。一方、汚職が横行する警察を嫌う刑事リッチーは、麻薬取締局に転属。当初は捜査は難航するものの、次第に的を絞っていく。やがて、フランクに目をつける。 キャスト&スタッフ [監][製]リドリー・スコット[脚]スティーブン・ザイリアン[出]デンゼル・ワシントン ラッセル・クロウ キウェテル・イジョフォー キューバ・グッディング・ジュニア 闇の世界で大成功を収めたボスの下、運転手や秘書、危険を伴う裏仕事のような仕事を地道に積み重ねるうちに、フランクの中で、「己が成功者となる野望」が育っていったのだろう。人種差別が裏社会では根強く残る時代のこと、当然、のし上がる手腕は選べない。金儲けの一番手っ取り早い方法は、「ヤク」に決まっている。イタリアンマフィアも獲得できなかった、裏ルートを築きあげるフランク。彼の頭のキレ・経営手腕・度胸の良さ、駆け引きの旨さなどを、デンゼル・ワシントンが、惚れ惚れするほど格好良く演じていた。スーツの着こなしも、身のこなしも抜群。刑事リッチーは、仕事に熱中するあまり家庭崩壊し、見栄えも冴えない。しかし、自分の信念を曲げず、賄賂にものらない。警察内部の3/4の人間が、賄賂を受け取り麻薬売買を黙認したりという事実にも驚きだが、その中で、バカほど潔癖で、周囲から浮こうと、最後まで理念を通した彼。一匹狼の意地、捜査官としての矜持なのだろうか。実話だそうだが、こんな人間が実在したことに驚く。ラッセル・クロウは、シンデレラマン当時の引き締まったbodyはどこへやら?少々メタボな体を披露。いや、これも、妻に逃げられ自宅で一人寂しくジャンクフードに噛り付く刑事を演じる、役作りの一環だったのか?彼の低音ヴォイスと、悲しげな背中に、何故か惹かれる。哀愁の漂う孤独な一匹狼役をやらせると、彼ほどはまり役はないだろう。二人の対峙する場面、エンディングの爽快さは、圧巻。反転→後にリッチーが、検察から弁護士に転向、フランクの弁護を引き受けた事実も、清々しく後味のよい印象を残す映画だった。
February 23, 2008
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今日は通院日。長い診療の待ち時間に、昔読んだ石田衣良の「4TEEN」を読み返した。この読後感は、なんて爽やかで気持ちがいいんだろう?四人の主人公は、どこにでもいそうな中学生だが、彼らの繰り広げる世界に、中年の私が、気がつくと夢中になり惹き込まれてしまっている。仲間との友情・恋・性への目覚め・病気・暴力・死との対峙、そして未来への願望等、重要なテーマを網羅しつつも、あの年代の持つ等身大の悩みを、ごく自然にさりげないタッチで描いてくれる。自分の忘れていたあの頃を、思い出さずにいられなくなる。当時バスケ部で、まともな本も読まず、ペリーローダンのSFモノや陸奥A子の漫画を読みあさり、音楽はユーミンかビートルズのアルバムばかり偏って聞く、ちょっと自意識過剰でヘンテコな、優等生とは程遠い中学生だった。体と心のバランスがいまいち取れなくて、親や兄弟に八つ当たりしたり、でも友達関係には異様に気を使ったり、生意気盛りで手の掛かる子供だったと思う。そんな私も、今では中学生の子を持ち、あの子達を見る時、パソコンや携帯等便利なツールを器用に使いこなし、欲しい情報を何でも引き出せ、不自由なくモノに恵まれる彼らとの「世代間の隔たり」も、感じなくもない。でも、子供から大人への過渡期を、何を考え、どう乗り越えていくいくか?という、根底の部分では、今も昔も大きく変わってないように思う。家庭・学校、友達・地域。限られた狭い世界ながら、その中で、生きる自分。他者との関わり。自分の個性・適性、家庭の諸事情・経済状況も少しづつ理解しつつ、これからの人生の岐路をゆっくりと選んでいくところは、みな一緒だ。この作品に登場する4人の男の子も、自分の個性をわきまえて、自分が今どうあるべきか、何をすべきか、悩みながらも答えを出していく。その成長過程に、心揺さぶられ、思わず応援したくなる。「大華火の夜に」の、ナオトが老人のもとに一人戻っていくシーン。胸の柔らかい所を、グッとつかまれたような気がした。でも、私は、「15歳への旅」が、何といっても一番好きだ。親に内緒の、わくわくするようなツーリング!!! 自分達で企画し、仲間で協力して実行するオリジナルな旅!それこそ、胸踊るような旅!大人の世界に、足をこわごわ突っ込む彼らの姿が、愛しくてたまらなくなる。新宿の中央公園にテント貼るなんて、あの歳でないと出来ない冒険だ(笑)。ナオトの両親は、きっとゴールドカードの利用明細書で、彼らの旅の嘘を見抜くだろう。でも、多分、その事について、彼らをひどく責めたりしないんじゃないかな?私も、そんな親になりたいと思う。子供たちを、いつも温かく遠くから見守りつつも、でも、どこかで、がっちりつかまえてるような、そんな親になれたらいいなと。でも、これが、一番難しいことなんだけど。病院の待ち時間が、素敵な時間になった。
February 22, 2008
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実際にあった事件をベースに描かれた短編、四篇収録。「針」医療過誤は、あってはならない許されないもの。しかし、現実には、不運にも発生してしまい、患者も関係者も、以後の人生を大きく狂わすことになる。その医療ミスの陰には、患者の知らない所で病院側に隠される驚愕の事実が潜んでいることに気付く。医療訴訟では、責任や罪を被ること恐れ、上手く逃げきる医師もいれば、すべての罪を押し付けられる者もいるのだろう。「鏡」援助交際に走る少女。何故、自分の家に帰れなくなったか?報道記事では、読み取ることの出来ない、彼女の孤独に踏み込み、光をあてる。彼女の背景にある悲しい事実に胸が痛んだ。「スターバートマーテル」大阪の小学校で起きた児童連続殺人事件が、ベースになっている。犯人に「別れた妻への復習の為にあの犯罪をやった。」と言われた元妻の手記。事件発生当時、新聞でその発言を読み、私は、何故、その妻だけに彼がそんなに執着したのか、理由が分からなかった。今回、これを読んで、その謎が少し薄まったような気がした。(でも、私には、あの悲惨な犯行を起こした彼の動機が、未だに理解できない。)元妻の立場でこの事件を振り返ると、彼女自身も地獄のような人生の修羅場を踏んで来たはずである。死刑執行を待つ元夫に、拒絶ではなく、一時は同じ糧を共にした同士として唯一理解しようとする彼女の人間愛に、驚くとともに、胸が締めつけらた。彼女の今後の人生に、幸多いことを願いたい。「ディアローグ」柳田邦男氏の「犠牲」は、随分前に読んだ記憶がある。そこには描かれなかった事実が、詳細に描かれ、彼の苦悩の深さを改めて思い知った。妻の弟から寄せられた手紙に、涙が止まらなかった。ノンフィクション作家(この小説では劇作家として描かれるが)の悲しい性なのか、家族の内情まで暴露することに意義はあるのか?という指摘に、答えを出せず一人苦悩する作家の姿があった。執筆活動の「光」と「闇」を同時に見たような気がする。書くことは、功罪両方を含んでいるのだろう。
February 20, 2008
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「終の信託」治癒する見込みのない重度の喘息患者・江木は、長期に渡る療養生活の中で、主治医である折井綾乃との間に、深い友情と信頼を得るようになる。彼は、人生の終焉時に苦しむことのないよう、綾乃に尊厳死を託す。江木の容態が悪化し、綾乃は、約束を果たす為に、家族の了承のもと、無駄な延命治療を中止し安らかな死へ導こうとするが、予測外の出来事が発生。患者の苦しみを除去する為に、筋弛緩剤を投与するが、その行為が、後々、思わぬ方向へと進んでいく..........。安楽死と現代医療事情、それに伴う訴訟問題や責任の在り方、検察官による被疑者(医師)への取調の様子等が、リアルな情況描写により再現されている。江木と綾乃の間には、他者には入る隙のない程に厚い信頼感情が存在したと思われるのに、検察での彼女への取り調べは、冷酷極まりない。この検察官は、始終高圧的な態度で、被疑者(綾乃)を困惑・衰弱させ、精神的窮地に立たせてから、自分の仕事の有利になるように働く。それは、医療訴訟問題における真の姿を見つめる為というより、周囲から己の実務上の有能さを認めさせ、今後の出世に有利になるような私欲も、多分に含まれている。この件に関する綾乃の詳細な情況説明は、ほぼ阻止&無視され、検察官の頭で、彼の操る言葉で作られた箇条書きのような調書を作成され、巧に心理操作された後、疲労困憊した被疑者は、有無を言わず署名させられる。この検察官への、嫌悪感は読み進めるとじわじわと高まっていくのだが、それが自分の中で臨界点に達した時、私は怒りと同時に、言いようのない恐怖を感じた。これが、今の司法・警察・検察の内部実情に近いものなのだとすると、つくづく怖ろしいと。これは、小説であって、すべてが事実でないとしても、現状はかなり酷似していると思われる。もし何らかの事情で被疑者となった自分を、守ってくれるもののあまりの少なさに唖然とするだろう。ましてや、これが、自分に全く非のない冤罪だとしたら、その心理的ショックは、どれ位のものだろう?小説では、検察での取調べ&逮捕の時点で、話が終わり、その後の展開が省かれていて、物足りなかった。彼女が、今後どのように弁護され、裁きを受けるのか、続きが読みたかった。「よっくんは今」愛するがゆえに、恋人を殺めてしまった若い女性被疑者への取調べの様子を再現。若く、美人ゆえにセクハラまがいの取調べを受ける被疑者。犯罪を犯していたとしても、取調べ中の人間には、人権はないのか?と、激しい憤りを感じた。ペンネームでは判断できなかったが、これを読んで、著者は、女性だと確信した。男性取調べ官から受ける屈辱を非常に巧妙に表現していて、これは、男性にはなかなか描けない文章。非力で体力の劣る女性が、威圧感ある男性取調官と密室で過ごさないといけない時間の恐怖を、擬似体験させられ、恐れ慄いた。犯罪者扱いされる上に、性差別的侮辱まで同時に受ける可能性のある女性被疑者の立場に、様々な思いを巡らせてしまう。面白かったので、この作家の作品をもっと読んでみようと思う。話は飛ぶが、先日の鳩山法相の「冤罪と呼ぶべきではない。」発言は、全国の高検や地検の責任者を一同に集めた会議での発言だった。違法捜査によるでっち上げ、元被告達を一年近く拘留し、起訴までした検察の対応をきっぱりと問うべき立場の人間が、何故か検察に機嫌取るような格好で言い放った言葉であり、その偏見にみちた不見識さに、ほとほとあきれた。自白偏重の日本の犯罪捜査を、見直さないといけないと思う。あるべき姿の取調べとその透明化、合理的な科学的捜査、旧体制を引きずる法制度の見直しを進めない限り、今後も、この国から冤罪はなくならないだろう。
February 18, 2008
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この作品は、既に映画化されているが、未だ観ていない。図書館の棚の隅にぽつんとあり何故か目に付いたので、興味本位で読んでみた。初めて読む作家(劇団主宰者で戯曲作家らしい)なので、先入観無しに読み始めた。まず、驚いたのは、異様に濃すぎる情景描写と話の展開が見えない、もたつきがちな出だし。書き慣れた小説家なら、無駄な表現を省き、最も簡潔で効果的な言い回しで、読者の想像力を湧き立たせ、一気にstoryに引っ張り込むが、そんな事は一切念頭に置いてないような文章だった。しばらく読んで、これは戯曲風というか、劇作家風の書き方なんだと気がついた。役者の表情演技、舞台美術や小道具等、すべて頭に浮かぶイメージを文字にしてしまってる感じと言うか。少々肩凝りながらも我慢して読み進めると、だんだんそのペースに慣れてくる。50ページ程読んで、ようやく面白くなってきた。自分の才能を信じて疑わない自意識過剰な女優志望の姉と、その姉を冷酷に見つめる屈折した性格の妹、家族を守りきることしか眼中になく不器用で世間知らずな兄、生まれつき幸薄く不思議な思考回路を持つ兄嫁、片田舎に住む家族の崩壊する様を描いている。皆、キャラが濃厚で息苦しい。登場人物の行動や視野が狭すぎて、閉塞感がある。小説では、ブラックユーモアで乗り切る作風でもなかった。映画ではこの辺りを、どんな風に処理しているのだろう?作中、過去に受けた屈辱を晴らす為に、姉が妹に復習する場面がある。お風呂に熱湯を注ぎ、妹が茹りながらも必死で耐えるシーン。取りようによっては戦慄の場面なのだが、違和感というか不思議に感じた。「手元にある風呂の栓を、妹が自分で抜いたらいいのに?」と思ってしまったのは、私だけだろうか?個性的な作りで、全体的には面白く読んだけど、登場人物には少々感情移入しにくかった。情景の切り取り方や表現法では、感心するところも多い。夜中の台所で、テーブルの下に身を隠す妹の目線で、姉の足と兄の足が交錯するシーン等、視覚的に捉え、読者が見えない部分の想像を掻き立てられて、面白く読めた。若い作家なので、今後の作品にも期待したい。この作品は小説として読むより、きっと芝居や映画で観た方がより楽しめるのだろう。暇があったら、DVDレンタルで観てみよう。
February 16, 2008
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父の1周忌を目前に控えたある日、家庭では異様に厳格だった父の不貞を知り、狼狽する三きょうだいとその母。亡くなった父の生い立ちや秘められた心の内・本来の姿を見つける為に、出身地である佐渡島への旅に出る。父親のしつけの呪縛をいまだに引きずり、それぞれの胸に葛藤を持つ主人公と兄・妹。性格や生活信条、父親との対峙の仕方等、三きょうだいの個性の書き分けが巧妙で、面白くぐいぐい惹きこまれた。表現力豊かで、会話もユーモラス。何より、文章がさばけている感じ。家庭では極めて厳格な父の浮気発覚で、混乱する姉妹というstoryは、なんとなく向田邦子の「阿修羅のごとく」を連想させた。この作品は、今風の恋愛事情も絡めながら、男性・女性側両方の心理描写が巧み(恋人・達郎のキャラも魅力的)で、抜け目なく読ませてくれる。向田作品は三姉妹だったけど、本作は「兄」が一人混じっているので、息子からの父親の行動&心理フォローの部分も補えており、また、不倫相手の女性の手紙が添えられたりして、説得力がある。佐渡島に渡ってからの物語が、一気に盛り上がり面白かった。「教育は、三代前から。」とよく言われる。人には、両親、祖父母の代にさかのぼって、調べないと理解できない隠された心理があるという。亡き父の過去を、今更蒸し返すのは、怖いような、でも、覗いてみたいような。あまりにも近すぎて、見えなかった肉親の本当の気持ち。父に囚われている自分から、自分の弱点までも父のせいにしてるのではないかという気付きに成長する過程。「いつかパラソルの下で」という果たせない夢に、主人公の亡き父への愛執がこもり、胸の奥がキュンとなった。主人公が、佐渡島の旅で見つけたものが清々しく、心地よい余韻を残してくれた。
February 15, 2008
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トンデモ精神科医・伊良部シリーズ第二弾。文庫化したので購入。一作目の「イン・ザ・プール」より、登場人物の彫りが深くなって面白い。こんな医者が自分の主治医だったら絶対戸惑うと思うけど、ナンダカンダ言っても患者の病状は見事に回復していくし、案外名医なのかも?伊良部のように、人目なんか全く気にせず肩肘張らずに天真爛漫に生きる人に、憧れを感じる。現代人の抱える様々な精神的不安を上手く捉えて、親近感を抱くキャラクターを描き出し、平易な文章ながらも巧妙に笑いに引っ張っていく手腕は、さすが。会話のつっこみも冴え、テンポも良く、本作も読者の期待を裏切らない。マユミさんの意外な一面を、変化球で投げてくる。「義父のヅラ」が一番良かった。人様のヅラを取りたくなる衝動って、誰にでもあるんですよね~。「金王神社前」や「大井一丁目」看板見たら、きっと抑えきれない衝動にかられそう......。
February 15, 2008
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京都文化博物館で開催中の、川端康成と東山魁夷展を鑑賞しました。ノーベル文学賞作家・川端康成と日本画家・東山魁夷の間で交わされた手紙や、魁夷作品、康成の美術所蔵コレクション等の展示がありました。東山魁夷の絵を見ると、いつも心の中の雑念やわだかまりがすっと取れるような気がします。美しい色調、豊かな自然の深遠を謳歌する絵に、時を忘れ、惹き込まれるにじっと見入ってしまいます。色彩の変化や構図のバランスが絶妙で、静寂の中に凛とした強さがあります。また、柔らかな曲線が描く日本の原風景や四季折々の姿は、観る人の心をしっかり捉えて離しません。京洛四季のコーナーも設けてあり、魁夷が四季折々の京を描いた絵画に多くの人々が集っていました。京洛の四季では、なんといっても「花明かり」が素晴らしかった。円山公園の枝垂桜を描いたこの作品は、「一期一会」という言葉の重みを感じます。「年暮る」も、しんしんと音もなく降る雪に包まれる京の街を描き印象的だった。移り変わり消えゆくものへの愛惜が込められた秀作。「樹根」は老木に宿る生命力の力強さを感じました。絵の具にラメ素材が入っているのか、見る角度により絵がきらきら輝きます。二人の手紙は保存状態が良く、汚れも痛みも殆どない状態で展示されていました。二人が、お互いの手紙を大切に保管されていたことの証ですね。魁夷の筆は流れるような見事な筆の運びで、その時々の素直な思いを綴っていました。川端康成は力強く、墨の濃淡のはっきりした筆跡です。年下の画家魁夷を思いやるような文章を残し、文面には二人の美意識の高さが滲み出ていました。康成の入院中、お見舞いに魁夷が描いて送った絵画や、二人の合作であるニ曲屏風なども展示。美術収集好きな康成が、胆石で東大病院入院中に、外出して骨董店で見つけ、すぐ買い求めそのまま病院に連れて帰ったという聖徳太子像もありました。柔和な曲線が美しくて、病室で毎日その姿を眺めていたというエピソードは微笑ましく思えました。絵画と文学、表現する世界は違っても、心で通じるものが多かった二人の交流を覗けて、とても面白かったです。
February 13, 2008
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三十三間堂を出て、向かった先は、筋向いにある国立博物館。こちらで、開催中の憧れのヨーロッパ陶磁展を観てきました。博物館の建物自体が重要文化財。フランスのドリック様式の重厚な洋館の建物で、美しく見応えがあります。噴水のある庭園もヨーロッパ調。ゆったりとした伸びやかな空間が、人々を優しく温かく迎えてくれるような気がします。防寒対策でロングブーツを履いてきた私。寺院拝観は、その都度靴の脱ぎ履きが必要ですが、これが結構面倒。でも、博物館はその必要がなく楽ですね。世界の伝統的陶磁工芸を支えてきた窯元の誇る名品が、数多く展示されていて、見応えがありました。マイセン磁器のテーブルセッティングのコーナーも三箇所設けてあり、美しい装飾を施した陶磁器が銀カトラリーやカットグラスと共に、食卓を飾っていました。食事をすると、少しづつ姿を現してくる白鳥のレリーフ皿なんて、ため息がでるような華麗さです。写真撮影も模写も一切お断りだったので、しっかり脳裏に刻んでおくことにしました。伝統工芸は、多くの職人の努力や知恵の積み重ねの賜物。どの作品にも、経験の重みと永年の歴史を感じます。繊細な細工を施した磁器も素晴らしいし、欧州から日本へ運搬途中、不運にも座礁して海底から引き上げられたものと見られる磁器など、スリリングなエピソードも添えられて、想像を掻き立てられました。常設展示も鑑賞。日本の名刀・高台寺蒔絵などの展示があり、こちらも堪能しました。漆器に豪華な金細工を施した蒔絵は、艶やかでその時代の繁栄を物語っています。秀吉と北の政所(ねね)の所蔵品も多く、贅沢な骨董を間近に愛でることが出来ます。日本の伝統工芸も、欧州に負けず劣らず、素晴らしい!外に出ると、結構な雪が積もっていてビックリしました。停留所でカサもなく(持参するの忘れた)バスを待っていると、何人かの方がさりげなく見ず知らずの私に「どうぞ」と傘をかざしてくださるという優しい志に触れて、感動。私も、自然にこういう所作の出る人になりたいと思いました。
February 11, 2008
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所用で、京都へ出掛けました。如月の京は、一年でも特に冷え込みが厳しい時季。盆地特有の底冷えと雪に見舞われ、震えながらでしたが、時間の許す限りあちこち散策してきました。短い滞在でしたが、心安らぐいい旅になりました。早朝の特急に乗り、京都着が8時過ぎ。まず、国宝の蓮華王院三十三間堂へ向かいます。この頃から雪が降り始め、冷気で身が一気に引き締まるように感じました。平安時代末期、後白河天皇によって定められた観音巡礼。長らく途絶えていましたが、平成15年に洛陽三十三所観音巡礼として再興され、コアなファンの間で、観音菩薩巡りが密かな人気を呼んでいます。これは、古都巡礼は、お寺の佇まいや庭園を鑑賞するだけでなく、ご本尊である仏像をじっくり拝見してこそ、お寺本来の姿に触れることが出来るという考え方によるもので、京の観音様を順に巡ることにより、人々の平安や幸せを願う旅です。また、仏像は悟りを開いたお釈迦様の姿をする「如来」と、悟りを開く前の釈迦王子を現す「菩薩」と、二つの釈迦像があります。仏さまの格で言うと、如来が一番高く、菩薩はその次の位。観音菩薩は、より私たち人間に近い存在であり、「かんのんさま」と呼ばれ、皆から親しまれるのはその為なんですね。今回、私には時間がなく、三十三所すべての観音巡礼は諦め、蓮華王院に絞り、観音像を観てきました。蓮華王院三十三間堂には、合計1001体のご本尊があり、その姿と数の多さに圧倒されます。千体の観音様は皆顔姿が異なり、その中に必ず似た人を見つけることが出来ると言われています。私も、知人に良く似た観音様をいくつか見つけ、微笑ましく思いました。若いときは、お寺の巡礼なんて興味が薄かったのですが、最近は古の文化・建造物・美術や工芸品等、もし機会があるなら、自分の目で見みたい・触れたいと思うようになりました。これも歳のせいでしょうか。(笑)
February 10, 2008
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アカデミー賞助演男優賞・脚本賞受賞、米国サンダンス映画祭で喝采を浴びた、家族の絆の再生を描くロードムービー。MTV出身のディレクター夫婦、デイトン&ファリスの劇場デビュー作。ストーリー 美少女コンテスト優勝を夢見るオリーヴに、決勝大会出場の知らせが届く。彼女と両親、家族嫌いで無口の兄、自殺願望のある伯父、薬物中毒の祖父の6人家族は、険悪なムードのままミニバスに乗りこみ、会場へと向かう。 キャスト&スタッフ [監]ジョナサン・デイトン バレリー・ファリス[脚]マイケル・アーント[出]グレッグ・キニア トニ・コレット スティーブ・カレル アビゲイル・ブレスリン 家族をテーマに描かれた、心温まるロードストーリーだった。ミスコンをめざす、お茶目で少々太めな妹オリーブが、キュートで愛らしい。彼女をミスコンテストに出場させる為に、バラバラ家族が喧嘩しながら、ワゴン車に乗り込んで、カリフォルニアを目指して走る。その珍道中が見もの。困難にぶちあたりながらも、乗り越えていく様子が、清々しく爽快になる。あまり期待しないで見た分、余計に面白く楽しめた。この家族は、皆が何かに挫折していて、「負け犬」の香りが、始終ぷんぷん漂っている。でも、その格好の悪さや、不仲家族のアクの強さ・身勝手さ加減も、リアルで自然に共感できる。きっと、世間の一般的家族って、こんな感じなんじゃないだろうか?世代も考え方も違う家人が、身を寄せ合って一箇所に暮らすと、意見が分かれて当然。この辺りの描き方も上手いと思う。訳有り人生を送ってきたっぽいお爺ちゃんのユニークなキャラが、ドラマを盛り上げる。老人ホームを追放された不良のエロ爺さんだけど、言動ともになんだか憎めない。自殺未遂したゲイの叔父さん・独自の成功論を唱え悦に入る父親、ぶっきらぼうで全く喋らない兄、皆を必死でまとめようと奮闘する母親の姿等、その人物造形が、ユニークで面白い。ゲイの叔父さん役、スティーブ・カレルの演技が、特に良かった。前半は家族の身勝手さに苛立ちを感じるが、後半からは、情況が変化して、予想を覆される。いざとなると普段いがみ合っている家族同士が心を通わし、一致団結するところに、不意に胸を突かれて、心が揺れてしまう。微笑ましく、温かく、元気が出る映画だった。
February 8, 2008
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久しぶりに、野田知佑氏の本を図書館で見つけ、読んでみた。カヌーイストで、作家でもある著者の本は、ずっと以前に「日本の川を旅する」や「北極海へ」等、何冊かを好んで読んだ時期がある。ゆったりと時間を掛けて、国内や海外の川旅を楽しむ様子は、狭く何処に行っても人や車が多い日本の街暮らしとは随分かけ離れていて、羨ましく思えた。会社員のように時間や仕事に追われることなく、自分のペースでカヌーを漕ぎ、釣りを楽しみ、川を下っていく。その土地の人との交流や雄大な自然が相手で、旅の喜びと同時に苦労も多いだろうが、その体験談を読むだけで、自分もその川旅に加われたような錯覚もし、とても気分が爽やかになった。環境破壊につながる河川改修・ダム開発等へ異論を唱えたり、子供たち対象の「川ガキ養成講座」を開いたり、自分の趣味や好きなこと・やりたいことの中から、自分の行く道を見つけ行動してきた自由人だ。その野田氏の生い立ちが、この本に記されていて興味深く読んだ。幼少期から青年期まで、両親・兄弟姉妹との関係や家庭環境、少年時代の想い出や、高校時代の淡い恋や楽しみだった映画や必死でやった勉強の事等、印象深い出来事とともに綴られていた。これを読んで、この人は子供の頃から、本当に自然の中で暮らすことを好み、川遊びが心から好きだったんだなぁと思った。興味深いのは、そんな野田氏も自分の能力や本当の願望に気付かず、なんとなく世間のルールに従って就職し、結婚して、気がつくと自分が望んでない人生を送っていた時期があると言う。自分のコース修正をして、本当にやりたいことだけをやって生きるようになったのは、40歳を過ぎてからだったようだ。母は50歳を過ぎてからでも、人生は間に合うといっていた。ぼくは40歳までは何をやってもいい、それからでも遅くないと思っている。そして大人になるのは素晴らしい。自由に生きることができるのだから。と言っている。この「大人になって自由に生きる」というのは、簡単なようでとっても難しいと、私は思う。私なんて、世間のルールにそのまんま従って、ここまで来てしまった情けない代表格だ。自分のやりたいことをやって、自由に生きた上での結果は、すべて自己責任。それをすべて承知の上で、それも40代で人生の進路修正をし、やりたいことに踏み出せる勇気はあるか?と聞かれたら、尻込みしてうなぁ。私は、冒険も出来ないし、背負っているものも捨てられないし、真の自由人になれない人間だからこそ、野田氏の生き方や人生哲学に、自分に全く欠けているものを見つけ惹かれるのかもしれない。
February 6, 2008
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自分の世界から出てこようとしない孤立しがちな自我と、それを唯一理解してくれる女性との遅すぎた再会。叶わない恋への切ない思いを込めた恋愛小説だった。周囲と上手く馴染めない、また馴染もうとしない主人公の孤独な世界。一人っ子で育った少年時代の生い立ちから、常に孤独と喪失感に溢れる心の揺れを、きめ細やかく丁寧に綴っている。人生半ば、周囲から見ると充分な社会的成功を掴み、幸福な家庭生活に恵まれているはずなのに、何故か満たされない心の渇き。過去への後悔と失ってしまったモノへの執着が、日常を襲う時の言いようの無い寂寥感。手が届かないからこそ、渇望する男の夢を追う姿。この小説では、どうしても掴めない、手の届かない対象を「恋愛」として描いているが、読む人によって、対象物を他のものとして入れ替えれば(勿論、恋愛でもいい)、如何様にもとれて、面白く読めるのではないかと思う。自分が努力し、実際に人生で手に入れることの出来た成功とは裏腹に、自分が掴めなかったもの、果たせなかった夢を(他者を不幸にしてまでも)いつまでも追うのは、人間の我侭な欲だと思う。しかし、そんなみじめで格好悪く未練たらたらな人間の姿にも、何故かすごく共感できる自分がいた。手の届かないものへの未練と、自分が築き上げた日常の平凡な生活との狭間で、どう折り合っていくか、これからの人生を生きていくか? 主人公の選択も、興味深い。この小説の中の、イズミの存在は、過去の自分が未熟であるがゆえに生んだ消すことの出来ない挫折や失敗を暗喩し、また、島本さんの存在は、どんなに手を伸ばしても届かなかった夢を象徴しているように思える。私も、今、人生半ばで、自分の才能のなさや努力の足りなさ故に、手に出来なかった多くの事を後悔しながら、でも、それなりに幸せに暮らしている一人だと気付いた。
February 4, 2008
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心を病んだ医者が、友人の開業する海沿いの病院で、その家族と過ごす内に徐々に癒されてゆく情景が、朴訥な印象の語り口で綴られる。主人公に、自分の姿を投影したと思われる私小説だった。人の命を預かり、病を癒す手助けをする医者が、実はいかに無力であるかという一面を見たように思う。治る見込みの無い末期がん患者や、病む人の繊細な心理に寄り添って、治療を行っていく臨床医の重圧が、文面からずっしりと伝わってくる。最初の方で、発病の経緯を綴っているが、コントロール出来ない自分への歯痒さ、その脱力感まで吐露する作業は、辛くなかったのだろうか? 切り捨てたくなる自己と真正面に向き合おうとする姿は、痛々しい。著者の崩れそうになる繊細な精神も見てとれたが、それと同時に、作家としての彼の図太さ・逞しさも感じ取れる。友人家族も、それぞれがいろいろな悩みを抱えている。人は、生活信条や人生航路の舵取りの多くを、育った環境や家族の思想に影響されながら生きていることを改めて感じる。それを思うと、自分の子育てにも自ずと身が引き締まるような気がした。娘の千絵ちゃんとの会話が、清々しい清涼剤のよう。そのせいか読後感は、穏やかで爽やかだった。
January 31, 2008
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「薬指の標本」と「六角形の小部屋」、二編収録。繊細で緻密な描写によって浮き上がる、ミステリアスで幻想的な物語。依頼者から頼まれたあらゆるものを標本にして保管する、風変わりな標本技術士と、その仕事を手伝うことになった「わたし」。人々は、それぞれが持つ「永遠に封じ込めたいもの」を持ってやってくる。「封じ込める」という言葉自体に、時間がそこだけ踏みとどまり、化石のように堆積していくイメージが広がる。永遠に、何人にも犯されず聖域として保管しておきたいものって、私にとって何だろう?浴槽での二人の逢瀬は、背筋がぞくぞくするほど官能的。息が詰まりそうな束縛から、自ら「封じ込められること」を望んで変化していく「わたし」の心の移ろい。原作は、フランスで映画化されたようだ。映画も観てみたい。「六角形の小部屋」著者は、言葉に表現できないような繊細な心の移ろいを描写するのに、つくづく長けていると思う。以前読んだ「妊娠カレンダー」でも、独身の妹の妊婦の姉に対する心理描写は、圧巻だった。善意とも悪意とも解釈できる、頭では分かっていても心で割り切れないような微妙な心理って、人間には確かに存在する。語り小部屋になら打ち明けられる秘めたる想いも、人生を生きていくうちに埃のように堆積し、それぞれが抱え込んでいるのだろう。
January 28, 2008
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脳神経外科医が書いた本二冊、読了。多忙なのか、それとも歳のせいか良く分からないが、最近うっかり忘れ物をすることがある。友人と話していて、俳優の名前や地名・店名等を瞬間に言葉に出せないときもある。そんな時はかなり悔しく情けない。うっかりミスがないように、手帳に仕事や予定・行事等こまめに書き込み、何回か確認して抜けないように注意している。読んだ本や観た映画の詳細も、印象的なもの以外は時間とともにだんだんと忘れてしまう。このブログは、そんな健忘症気味の私の大切な備忘録となっている。(エキサイトでの料理ブログも同じだ。)最近、携帯やパソコン等の便利なツールに頼りすぎて、自分の脳を活用してないような気がしていた。この二冊では、そのような現代人の偏った脳の使い方について警告している。ついつい楽をしたがる脳を、いかに効果的に活動させるかのポイント。当たり前のようだが、生活リズムを崩さないこと。物事を言語だけでなくイメージで捉え理解する。体を動かし眼を使い耳を研ぎ澄ませて覚える。入力した情報を、自分の中で理解・消化し、人にわかりやすいように出力する経験を積む。睡眠の時間をしっかりとって頭の中を整理する。忘れてしまっても思い出す努力を最後まで怠らない。趣味でも仕事でも目標を持ち、それを達成する為のプランを組み挑戦すること。書かれていることは、極めて常識的で斬新さはないものの、納得させられる内容だった。家事、特に料理は脳を活性化させるのに有効であるとのこと。高齢でも頭も冴え充実した生活をされてる方は、私の周りでも性別を問わず料理達者な方が多い。同時に、数種類の料理を平行して作り、段取り良く仕上げていく工程は、手先も脳もフル活用しボケ防止に効果的だそうだ。使わないとどんどん衰えゆく脳と体を、これからいかにして鍛え活用させ、より楽しく充実した人生を送れるかは、個々人に委ねられている。ボケは脳の生活習慣病とも言われる。感情を豊かに、身近にいる人と温和に心穏やかに暮らす。意識して、バランスよく脳を使うように心がけたい。
January 10, 2008
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今年初めての読書は、お気に入り作家、伊坂幸太郎の最新作。首相暗殺の濡れ衣を着せられた男のスリリングな逃亡劇。500ページの長編なのに、一気に読ませてしまう迫力があった。どの章も無駄な箇所が無く、むさぼるように本を読んでしまった。スピード感があり最後まで展開が読めないので、どんどん読み進めていってしまう。周到にはられた伏線、インパクトがありちょっととぼけた会話。登場人物が個性的でそれぞれ魅力に溢れている。名前だけしか登場しなかった稲井氏までもが格好良かった!時間軸をずらしながら話が構成される(これは伊坂幸太郎が最も得意とする手だが)これ以上効果的な順序はないんじゃないかと思うくらい完璧に組み立てられている。読んでいて、ハラハラわくわくどきどきする。緊迫した展開の中、ふと笑いもこぼれるし、涙も出そうになる。時間が途切れて飛ぶ場面も、話の繋ぎがシームレスで違和感が無い。「やはり、この場面にこの話を入れてくるんだよね。納得!納得!」と読者の期待を裏切らない見事な構成力。著者の頭の良さに思わず唸ってしまう。文体は、徹頭徹尾映画を観ているような錯覚に陥る映像感がある。国家や警察権力という得体の知れない大きな組織を敵に回す恐怖感といったらない。マスコミのご都合主義的情報操作へのシニカルな批判も込められている。「人間の最大の武器は習慣と信頼だ。」登場人物の会話の中には、印象深いものも多い。読み終えたばかりだが、またすぐに彼の次作品を期待したくなる。文句なしに面白かった。
January 2, 2008
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本年もゆっくりの更新になると思いますが、よろしくお願いします。ブログを通して、いろいろな方の本や映画レビュー等拝見し刺激をいただき感謝しています。今年も、心を揺さぶられるような本や映画との出会いがありますように。今年の我が家のお節料理です。家族が勢揃いし皆元気に新年を祝うことができ、とても嬉しく思います。皆様も楽しいお正月をお過ごしください。
January 1, 2008
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今日、人間ドックに行ってきた。若くないので、体メンテナンスも大事。家族の不調時には、すぐに病院に行くように勧めるけど、自分の時はついつい通院を先延ばしにしてしまいがちだ。今日はバリウム検査も選べたが、思い切って胃カメラを飲む。胃カメラは昔から苦手なんだけど、自分でも検査中に映像を見て確認できるから状況がよく分かる。結果、胃の幽門狭窄部に鳥肌状の萎縮性胃炎とポリープが認められ、今後も定期的に検査するよう勧められる。前回の検診時には明らかになかった胃壁像で、私もあれ?と思った。この型の胃炎は、そうでない箇所と比べ、割りと高率で胃がん発生するらしく、今後も注意するようにと言われた。必要以上に憂慮することはないが、油断せず経過を追ってゆこうと思う。さて、前置きが長くなったが、ドックの待ち時間に本を一冊読んだ。森絵都の「カラフル」。以前、中学生の娘に買ってやった本だ。自分の人生を生き直す物語。さらりとした会話調でSTORYは進むが、テーマとなっていることは重厚で骨がある。十代の子供の視線で、自分に与えられた人生の意味を見つめ直す。私も子供のとき、裕福な家庭の子供が羨ましかったり、恵まれた才能・体格・容姿を持っている友を妬んだり、自分の育った家庭や家族になんとなく不満を感じたりってことがあった。人生って、生まれた時点である程度決まってしまっていて変えられないものも確かにある。生まれる国も場所も性別も環境も天性の個性なんか皆そうだ。幸運な人もそうでない人も確かにいる。若さと経験の無さ、知見の浅さからくるとても未熟で視野の狭い考え方に気付けず、独りよがりになったりもした。年を重ね、いろいろな経験を積み、人の弱さも自分の無力さも見えてきて、自分だけでなく他人も皆同じどこかしらに傷を負っているってことに気付いた時、ようやく楽になれような気がする。子供の持つパレット、彼らの思い描く世界はまだまだ幅が狭い。自分の人生を歩んでいくうちに扱える絵の具の色も増え、世界が開け見みえなかったものが見えるようになる。描ける絵の幅もおのずと広がっていくだろう。扱える色のトーンも限りなく広いことに気がつくはず。カラフルっていうタイトルもいい。大人が読んでも充分楽しめるいい話だった。
December 24, 2007
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レイモンド・カーヴァーの短編集"What We Talk About When We Talk About Love."のタイトルを意識してつけた題名だそうだ。いかにも村上春樹らしいタイトルのつけ方だ。この本には、作家としての彼独自のモノの見方・考え方、物書きでありながら何故今まで走り続けてきたか等が淡々と書いてある。「走ること」を生活に上手く組み込み日常的に継続することで、彼の創作活動をより活性化させ、彼自身の精神&肉体面を支えてきたのがよく分かる。最近、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉をよく耳にする。仕事と生活の調和を図っていくという意味の言葉であるが、この意味で、彼は仕事と生活のバランスを器用に保てる人なのだと思う。物書きの仕事で消耗したものを、走ることで補い、癒す。走ることで鍛えた集中力と持続力は、そのまま長編作品を生み出す筋力・原動力となる。仕事と趣味が、静と動が、バランスよく暮らしの中で調和し、何年もの間崩れることなく彼の生活の中で安定して組み込まれている。彼は、多くの人が認める才能にも恵まれ、時代を味方につけた幸運な作家である。でも、それだけでない。外からは見えにくい地道で継続的な努力によって、後天的に獲得した多くのものが彼を支えてきたのだろう。マラソンを走ることは、人生を走ることに似ている。山あり谷あり、楽に走れる時もあれば、目の前の大きな壁にぶつかり苦しい思いをする時もある。心強い伴走者がいる時もあれば、たった一人で苦しい坂を登らないといけない時もある。人生の後半期に入り体力的なピークを過ぎ肉体的後退感が彼を襲った時、自身の「老い」と真正面に向き合い、その先の「死」までも視野に入れるような文章も目に付いた。自分の墓碑銘に、刻んで欲しい言葉があるなんて、またその言葉自体も、やっぱり村上春樹らしい、と思った。
December 19, 2007
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来年1月末にあるステップアップ試験の勉強で、いまひとつ読書が進んでいない。夏頃から週末ごとに受験対策講座にも通い、貴重な休日の時間を費やしてきたので、出来るなら受験一回で合格したいと考えている。その日の仕事・家事を終えてから寝るまでの時間は、私にとって大切な読書の時間だが、それを今勉強に充てているので、読書が捗らないのはどうしようもないことなのだが。ちょうどこの冬、高校受験をする子も我が家にいるので、親子揃って受験モードに入れて好都合ではある。試験でもないと、根っからののんびり屋の私は真面目に勉強などしない性質なので、これも良いことなのかも?娘に時々発破を掛けつつ、自分にも同じく叱咤激励しつつの毎日を送っている。そんな中で、気分転換に、少しずつ読み進めていたものもあった。わたくし率 イン 歯ー、または世界 川上未映子わたくし率イン歯ー、または世界ラップ調の独特な韻をふんだ文章を多用し、「私とは、一体何であるか?」という己の存在を問う異色の作品端正な日本語とは一線を画する、個性的な言い回しの数々。日本語の音をリズミカルに使い、作者ならではの瑞々しい感性を込めた言葉の羅列に圧倒される。誰もが当たり前と思っていることに、疑問を持ち、異なる感覚を持ち、他者に異論を唱えるのは勇気が要ること。自分の中に育つ秘められた想い・思考を、オリジナルな方法で表現する大胆さ、チャレンジ精神に驚かされる。多分、私がこの本を書店で見かけても、買わなかっただろう。図書館でたまたま見つけ、手に取り読んでみたが、ちょっと型破りで、毒があって面白かった。規制の枠から少々はみ出し気味の私小説だが、「私、わたくし、わたし、」という自己認識を何に求めるか?何をもって自分を感じるか?を始終問い続けることで、既存の認識を問いただし考え直すきっかけを与えてくれる。これが意外にも、哲学的思考の啓発にもなり、いい気分転換になる。
December 18, 2007
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両国の江戸東京博物館で開催されていた文豪.夏目漱石展を鑑賞。日曜日だったので、多くの人々が鑑賞に訪れ、博物館も熱気に溢れ賑わっていた。漱石は1867年(慶応3年)生まれ、誕生の翌年、江戸は東京と改められ元号も明治へとうつった。つまり明治の年号と漱石自身の年齢が重なることで、展示物の表示年月も鑑賞者にとても解りやすい。(この年に漱石の年齢はいくつだったかがすぐにわかり、彼の暮らしぶりを容易に想像できる。)弟子の小宮山豊隆が、太平洋戦争の空襲による焼失を避けるため、漱石山房(漱石最期の住居)から、自ら図書館長を務めていた東北帝国大学(現・東北大学)付属図書館に移動させて、奇跡的に残った、蔵書3000冊をはじめとする漱石ゆかりの資料が展示されていた。絵画への造詣も深く、自筆の書や絵画も数多くあり興味深かった。母は昔から、好きな作家の中でも、特に漱石贔屓だった人。自宅にも漱石関連コーナーを作って大事に作品を読んできた人で、展示物の殆どは以前に見聞きしたものだったりで、そう真新しいものはなかったようだった。でも、私は漱石の学生時代、数学も得意で建築学を目指した頃もあり理系にも優れた才能を併せ持っていたことなどを展示物で初めて知り、面白く感じた。筆まめだった漱石が留学先の英国から夫人に手紙を何通も送っているのに対し、鏡子夫人からは返事が殆ど来なくて激怒したらしい。この対照的な夫婦の姿も垣間見れて、楽しい。50年ほどの短い生涯の中で、彼が何を考え、どのように暮らしてきたか、実際の足取りをたどる形での展示されていて、興味深かった。江戸東京博物館の常設展示部分もボリュームたっぷりで見応えがあり、両方を納得いくまで観るとなると、時間がいくらあっても足りような感じだった。写真は、常設展示の撮影許可場所での展示物 部活を終えて夕食合流する予定の上の子を博物館前で、かなり待たせてしまった。「築地でお寿司を食べる」と言う当初の予定を変えて、両国でちゃんこ鍋を食べて帰ることになった。
November 25, 2007
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パソコンの不具合が続き、修理に出しました。メモリー端子の一部が壊れていたようで、その部分のみの修理で済みホッとしました。前回エントリーより随分日が経ってしまいましたが、旅の思い出の続きです。代々木に会社の宿泊研修施設があり、そこに宿泊した私達は、朝の散歩がてら明治神宮に参拝。早朝、深い森の中を散歩すると、空気も澄んで身も引き締まるような気がする。愛犬との散歩やジョギングに励む人など様々。お日柄が良いのか、婚礼準備を進めるカップルにも出会い、幸せそうなお二人の姿にこちらまで清々しく晴れやかな気分になる。今回の旅は、母の希望の場所を優先して回ることにしていた。朝食後、NHKスタジオパークまで散歩がてら移動し見学。風林火山のセットや舞台裏が見れて面白かった。立体映像が楽しめる3Dスタジオなど見所も豊富。その後、上野方面へ移動し不忍池で、簡単ランチ。夕食は、毎晩のように部活を終えた上の子と合流し、腹ペコの子供に合わせてリッチな食事をしてたので、昼ご飯は簡単なもので済まそうよってことになり、池の側のベンチでお弁当を食べた。短歌を詠むのが趣味の一つである母から、所属している歌会やユニークな仲間の話を聞く。不忍池は初めて来たけど、蓮の葉がびっしりと池一面に広がり水面が見えない。蓮の花は、咲くときにポンと大きな音を立てて咲くらしい。天気も良く、昼下がりのベンチはとても気持ちよく、いい休憩時間になった。その後、両国へ移動。江戸東京博物館・文豪夏目漱石展を観る。(続く)
November 17, 2007
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今年も、下の子が出場する合唱コンクール全国大会(今年は岩手県盛岡で開催)に母と一緒に応援に行くつもりだったが、残念ながら入場券の抽選にはずれてしまった。盛岡行きを断念し、急遽予定を変更。代わりに、創立125周年記念行事で賑わう上の子の通う大学や、その周辺を回る旅を楽しんできた。JR高田馬場駅から、二人でゆっくり話をしながら徒歩で大学に向かい創立125周年記念企画展の「演劇人 坪内逍遥」を鑑賞。逍遥の文学・演劇・教育の分野など多岐にわたる業績を著書や原稿で彼の生涯をたどり、数々の愛贓品に触れる見応えのある展示を堪能した。木彫りの美しい能面に触れるコーナーで、生まれて初めて能面を顔に纏ってみた。能面から見る世界は、思ったよりも視野が広く見渡せ、意外に感じた。母は私よりも本を沢山読んでいて博識なので、鑑賞中、私の知らない様々な面白い話を横でしてくれるので、鑑賞も倍に楽しめた。その後、神楽坂の方まで移動し、赤城神社・かくれんぼ横丁・兵庫横町・毘沙門天など、見て回る。気持ちが爽快になるような天気にも恵まれ、和菓子屋さんでおやつを買ったり、ホン書き旅館として有名な若可菜さんを見たり、母との会話もはずんだ。若可菜さんは、文豪が有名な文学作品を書いた旅館。和と洋が同居するような不思議な魅力に充ちた町並や、この町を構成する小さな裏路地。美しい石畳や、微妙に上下する坂道の勾配は、創作に疲れた作家の疲れを癒し、新たな創意を生む源になったのだろう。年明けにステップアップの試験があり、その勉強で読書時間が大幅に減ってしまっています。時間を見つけ、気分転換の為にも、旅の記録等、ゆっくり綴っていこうと思います。
October 30, 2007
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13世紀半ばに着工され600年以上をかけて完成した世界遺産の大聖堂高さ157mの二つの尖塔が天にそびえ奥行き144m、幅86mを誇るゴシック建築の傑作美しいステンドグラス、10世紀のゲロの十字架、東方三博士の聖棺など夫が デュッセルドルフでの仕事を無事終え、帰ってきました。ケルンに立ち寄り世界遺産の大聖堂を見た時の写真があまりにも綺麗だったので、ブログに載せてみました。
October 8, 2007
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オダギリジョー主演の緊迫感みなぎる人間ドラマ。ある事件をきっかけに激しく揺れ動いていく兄弟の絆を、「蛇イチゴ」の西川美和監督が繊細に映し出す。 ストーリー 写真家として活躍する猛の兄で温厚な稔が、幼なじみの女性をつり橋から突き落とした容疑で逮捕された。やがて裁判が始まり、稔の意外な一面を垣間見た猛は、法廷で思いもよらないことを証言するのだった。 キャスト&スタッフ [監][脚]西川美和[出]オダギリジョー 香川照之 伊武雅刀 新井浩文 真木よう子 蟹江敬三 木村祐一 田口トモロヲ 兄弟は、同じ家庭で生まれ育ち、両親の愛情を分かち合い、時には奪い合いぶつかり合い助け合いながら、揉まれ揉まれて一人の人間として成長してゆく。その過程には、身内ゆえの気安さ、何も語らなくても通じる共通の価値観や安堵感、互いを思いやる愛情も充分に育つのだが、血縁でも違う個性差に生まれる羨望や嫉妬心等、微妙で複雑な心理も育っていくのだと思う。兄弟間に生れる「ゆれる」心理を、ろうそくの炎がかすかに揺れるほどの繊細な心の動きを微塵も逃さず、丁寧に描き出している秀作だった。オダギリジョーや香川照之の渾身の演技、派手さは無いが地に足の着いた冷静なカメラワーク・映画に添った独特の音楽で脇を固め、土台のしっかりとした見応えのある映画だと感心した。脚本も西川美和監督によるものだが、よく練れていて構成もしっかりしている。キム兄の検察官役も個性的で、ジリジリじわじわと被疑者を責めていく様子に緊迫感があり、この配役は成功。また伊武雅刀と蟹江敬三兄弟間の確執もstoryと重ね合わせて見れる作りで効果的。真木よう子は登場シーンは最初だけで少ないものの、二人の男性の前でゆれる女心をうまくつかみ演じていたと思う。「つりばし」、「ゆれる」というキーワードを効果的に生かし、最後まで事件の真相を明かさず、観る者の興味を惹きつけたままエンディングに持っていく、面白い映画だった。
October 6, 2007
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LAのハイウェイで起きた1件の自動車事故をきっかけに、様々な人々の運命が交錯してゆく群像劇。「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本で注目を浴びたポール・ハギスの初監督作。アカデミー賞作品賞受賞作。 ストーリー クリスマス間近のLAのハイウェイで交通事故に巻き込まれた刑事のグラハムは、偶然、事故現場脇で若い黒人男性の死体を発見。その前日、自動車強盗と若いカップルが、白人警官と黒人夫婦がトラブルを巻き起こしていた。 キャスト&スタッフ [監][製][脚]ポール・ハギス[製][出]ドン・チードル[出]サンドラ・ブロック マット・ディロン ブレンダン・フレイザー 人種の坩堝(るつぼ)である米社会に生きる人々の、心の闇や葛藤を描く群像劇。社会の中では、生い立ちも境遇も異なり、様々な思想・政治的理念を持っている多種多様な人々が共存していて、時にはすれ違いによる感情のぶつかり合いも生じる。そういった難しい人間関係を、様々な背景を持つ登場人物を通して、彼らの生活の一面を切り取ることで、混乱することなく鮮やかに、細やかに描き出していた。また、彼らをパズルピースを組合すように絡ませることで運命の連鎖を引き出し、各々の繊細な感情面の表裏を巧に表現していて、興味深かった。各プロット編集のバランスが取れているので、テンポも良くメリハリもある。STORYも最後まで予測できない展開になっていたのも良かったと思う。人間は、多面的な生き物だと思う。人の言動は、人種や宗教、好みや・その日の感情によっても、かなり左右されてしまう。人種差別主義者の見せる意外な偏見を超えての人間愛や、反対に一見善人そうにみえる人の意外な一面など、人の心は本当に見えなくて多面的である。もしかしたら、本人でさえも、自分の感情がこの先どう動いていくか、つかめていないのかもしれない。日本は、米国のように銃社会ではないにしろ、諸外国からの労働者とも同じ町で仕事をし近隣でも普通に暮らすようになってきている。人種間による微妙なストレスが、感情的な衝突を引き起こす可能性は高いし、時には犯罪を生むこともあるだろう。(当然同じ人種間によるトラブルもありうる。)人間の感情は、時にはハッとするような温かさも見せる反面、人を切り棄てる残酷さもはらんでいる計り知れないものだ。それを踏まえて人と付き合うことの大事さを感じた。
October 2, 2007
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深沢七郎の「楢山節考」を読んだ。図書館で見つけたかなり古い本だが、面白かった。要所で歌を効果的に挟み込み、読み手に印象深く、独特な味わいがある。信州山間のとある貧しい集落が、舞台である。痩せた土地ゆえ常に村全体が食糧難で、村民達は、収穫の無い冬を乗り越えることも、家族がこれ以上増えることも、命取りになるような厳しい暮らしをしている。この村では、高齢になると(70歳)年寄りは、食い扶ちを減らす為に、「楢山まいり」へいくことが決まりになっている。「楢山まいり」とは「姥捨て山へ、子が年寄りを棄てに行く」行為である。なんとも怖ろしい村の掟だ。最初は高齢者に厳しい物語なのかと身構えて読んだが、読み進むうち、そうでないことがわかってきた。年老いたものが、自ら身を引き、村や家族の存続のために命を絶つ覚悟をする。「おりん婆さん」も、自ら進んで山に棄てられることを望んでいて、その準備も怠らない。息子「辰平」の後妻を見つけ、家事や自分の得意な山仕事の引継ぎをし、自分亡き後の家族の幸せを心から願っている。楢山まいりに相応しい形相になる為に、自慢の健康な歯でさえ躊躇することなく、へし折る。夏は嫌だよ、道が悪いむかでながむし、やまかがし楢山まつりが三度くりゃよ、粟の種から、花が咲く村には様々な歌があり、暮らしに密着して常に歌われる。悲壮な話も歌にされ、あっけらかんとコミカルに、ある時は冷笑的に。貧しい山村の閉鎖的な制度に私は驚いたが、よく読んでみると、歌の内容も、村の掟も、痩せた土地で人々が命を繋いでいくために生み出した苦肉の策であり、先人達の生きる為の知恵が織り込まれているのだ。昔の日本にはこんな時代があったし、そうせざるを得ない集落が存在したんだ。息子の背に負われ楢山へ登る途中の風景・母子の心情が、胸に突き刺さる。年老いた母を山に残し、村へ戻る息子の断腸の思い。そんな息子の気持ちも手に取るように解っていて覚悟を決める老女。「老いる」ことは酷だな、とつくづく思う。歩いてきた人生の後ろ側には数々の想い出があり、生への執着を深めるだろう。しかし、これから先は、衰えてゆく自分との戦いが待っている。伴侶も友達もどんどんと年老いて亡くなっていく。年老いて、社会的に必要とされなくなった感じる時、人はどんな気持ちになるのだろう。おりん婆さんのように、潔く心を決めることは難しいのではないか?生に執着する気持ちは、ないのだろうか?おりん婆さんの「楢山まいり」は、理想的な死への旅立ち方かもしれないと思った。愛する息子に背負われ、神々の住む山で堂々と死に向かう姿。雪が降り出すシーンで胸が熱くなった。
September 26, 2007
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