ハッピーな日常

ハッピーな日常

2009.10.04
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頻発するトルコの「娘殺し」

「家族は遺体すら引き取らない。われわれ女性だけでひつぎを運び、スコップで墓穴を掘った」
トルコ南東部ディヤルバクルで、家庭内暴力の被害女性らの救援活動に当たるサージダさん(42)は、2003年11月13日に死亡したカドリエさん=当時(18)=の葬儀の様子を振り返った。
サージダさんらの女性団体の報告書によると、カドリエさんは親類の男にレイプされ、妊娠6カ月になったとき、兄に自宅から連れ出され殺害された。頭部は石をぶつけられて陥没し、刃物による傷も。しかし警察に連行された兄は、犯罪を悔いるどころか、誇らしげだったという。

サージダさんらは同年6月にも、肉親らに石を投げられ死亡したシャミセーさん=当時(35)=の遺体を引き取った。
この女性は、当局に届け出る公式の婚姻ではないものの、聖職者の立ち会いのもとトルコ国内で広く行われている「宗教的結婚」をし、相手の男性とともに“新天地”へ逃れようとして、肉親らに捕まった。
二人の女性の葬儀に参列したハイリエさん(40)は「女性だけで葬儀が行われると、さすがに近所の男性たちは恥ずかしいようだ。カドリエさんのときは約500人の参列者に男性も10人ほど交じっていた。この種の殺人の問題について社会も認識し始めた」と指摘する。

EUなどからの圧力を受け、トルコ政府は2004年の刑法改正で、これまで「名誉を守るための殺人」には寛大だった刑期を、通常の殺人と同等に引き上げた。
だが、肉親による殺人が「自殺」などとして扱われるケースが多いとみられ、女性の被害の実態はつかめない。
「国内で1日平均2,3人が犠牲になっているとの推測もある。」とハイリエさん。ディヤルバクル中心部のぼちを管理する男性は、彼らの仲間内で流れる情報なのか「カドリエさんのような死者は毎日4,5人いる」と漏らした。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、トルコ女性の少なくとも3分の1が殴打やレイプからの殺害や自殺強要まで、さまざまな家庭内暴力の犠牲になっているとの推測をまとめた。一方で、アンカラの大学の世論調査によれば、トルコ女性の39%が、夫と言い争ったり性交渉を拒んだりした場合に受ける暴力を、仕方ないと考えている。
女性団体の積極的な活動もあって“娘殺し”の問題が大きく取り上げられるディヤルバクル周辺は、もともとクルド人など少数民族の多い地域。「家父長制」的な「部族の伝統」と事件を関連させる見方も根強い。

また、少女の8人に1人が学校に通っていないとされる女性の就学・就職率の低さにも表れたトルコ女性の「抑圧」を、「4人まで妻を持ちうる」などとするイスラム教の教えに結びつける人々も少なくない。
この点、国民の99%がイスラム教徒であるとるこの宗教担当の高官は、「名誉を守るための殺人」について「イスラムの教えでも有罪だ」と強調する。
しかし、世俗派のイスラム教徒で、アンカラで女性議員などの人数を増やす運動を続けるネビンさん(48)は「女性が男性の所有物であるという伝統的な価値観に基づくもの。同じような殺人は中南米にもあるから宗教だけが原因ではないが、部分的には宗教も関係がある」と主張する。

トルコは1923年の共和国宣言以来、西欧の制度を導入し世俗化を推進。スカーフ着用は、90年代半ばのイスラム政党の勢力伸長に対する世俗主義側の“防護壁”の形で、97年に大学で禁止された。
2004年に大学を卒業し、アンカラの法律事務所で働くヌールさん(22)は「スカーフはイスラムの義務だと思ってきたのに、大学の教官から外すように言われ、ショックだった」と打ち明ける。彼女は、将来のトルコのEU加盟によって、むしろ国内の女性問題の改善を期待するが、今のトルコには「西欧の価値観の押し付け」を懸念する声も広がっている。

スカーフの禁止は、宗教上の理由で着用している女性たちから教育を受ける機会を奪っており、人権団体から「権利の侵害」と指摘される。
一方で「何らかの形でスカーフ着用強制されるような環境で暮らしたくない」とする前出のネビンさんら世俗派女性の将来への不安も小さくない。トルコの「世俗」と「宗教」は微妙なせめぎ合いを続けている。  2005年1月1日 中日新聞より






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最終更新日  2009.10.26 22:10:39


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