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Dec 25, 2004
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カテゴリ: カテゴリ未分類
少年はおがくずの中に
トカゲを入れてやった
――冬眠させてあげよう
ほんとうに少年はそう
思ったのだが。

春になって おがくずの中を
さぐったら トカゲは時を刻んで
すでにミイラになっていた
        みなわ ひとし
贈り物贈り物
恋文横丁の細い路地をぬけると、
間口の狭い地鶏屋「田代」がある。

(こんにちは)
「あら、いらっしゃい」
コロコロふとって愛想のいい
おかみさんが出てくる。
「いらっしゃい。ご注文の品届いてますよ」
おかみさんがのれんをくぐって
奥に引っ込んだ。

まあ、いいお天気だこと
冬の日差しとはいえ
まぶしいくらいで、
思わず目をほそめてしまう。

リンリン、チリリーン、
自転車のベルの音。
なあんだ、元さんだ。

「やあ、どうもどうも」
(こんにちは。
今日も、お仕事?)
袈裟姿の出で立ちを見て言うと、
「この商売、盆暮れなしの
過酷さ、ですよ」
と、しかめっつらをしてみせる。
「でも、もうフリーですから」

「お待たせしました」
地鶏屋のおかみさんが、
包みをもって、表に出てきた。
「お代はいただいていますから。
脂がのっておいしいですよ」
と手渡してくれる。
あらっと、元を見とめて
「先日は、お世話になりまして」
と頭をさげる。
「いやいや。それにしても
お寂しくなりましたね」
と重々しく、元。
(私、存知あげなくて。
どなたか?)
おかみさんが、違うと首を振って、
「いえね、うちの犬、老衰で
ついこないだ逝っちゃたんですよ」
(まあ)
いつも表につながれて、
うずくまるようにしていた
黒いおとなしい犬のことが
浮かんできた。

「ボクがお経をあげたんで」
「成仏できましたよ、きっと。
アタシ、あの時、お経を
きいていたら、
すっきりしましてね、
有難かったですよ」
おかみさんは、
割烹着の端で、目をこすった。

(近頃は、ペットも
お葬式とかするの?)
「うん、わりに多いよ
略式だけどね」
自転車を押す元さんと
路地から表のほうに
歩いていくと、
「ひまつぶし」の店先で、
しのぶさんが、掃き掃除をしている。

「お茶飲んでいかれません?
ちょうど一休みしようと
思ってたところなんです」
しのぶさん、元さんにも
どうぞ、と手招きする。

「でもって、こないだなんて、
カエルにお経あげたんですから」
元さん、出されたお茶を
いっきに飲んでしまう。
(ヤケドしない?)
と猫舌の私は、心配になる。
「カエル?」
しのぶさんが、手かごに
干し柿をいれて
出してくださる。
「ほら、うちの寺、保育園やってるから」
元さん、干し柿のヘタを器用にとって、
むしゃむしゃ。
(保育園の子たちのために?)
「そう。あそこの庭のすみなんか、
カマボコ板の墓だらけ」
「フフ、でも、いいことですよ」
としのぶさん。

(あのね、ふっと思ったんだけど、
お寺って、クリスマスやるの?)
「ローストチキンも、ケーキも、
なんでもありですよ」
「そんなもんですか」
と、しのぶさん、不思議そう。

「もちろん、目立たないように、
こっそり、ってやつですけど」
(ステーキとかも?)
「オーケイ、です。
今の住職なんか、
ステーキ大好き人間ですよ」
(なんだか、変な感じ)
しのぶさんと私が
顔を見合わせて笑ってしまう。

「もちろん、宗派によっては、
キビシイところもある」
(いろいろ、なのね)
そう、なんでも決めつけちゃ
いけないよね。
最初はぎょっとしたけど、
あの赤い車だって、
このヒトにとっては、
既成概念に対する、
ひそかな反抗かもしれないし、ね。
そんなこと、ぼーっと考えていると、
「ちょっと、ちょっと、昼間っから
ぼけないでほしいね」
元さんが、私の目の前で
手をひらひらさせている。

「さっきから気になっていたんだけど」
と、元さんがそばに置いた包みを
指差す。
(あ、これ? イノシシの肉なの)
「まあ、珍しいこと」
しのぶさんも、興味を持った様子。
(うちの父って変なの。
毎年クリスマスのころになると、
しし鍋が、食べたいって言い出すの。
だから、うちでは、
クリスマスにしし鍋、なの。
変でしょ)
「そりゃあ、いい」
ハハハ、愉快そうに元さんが笑い出した。

もしかしたら、
父も理由なき反抗を
しているのかしら、ね。
         楠田レモン





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最終更新日  Dec 26, 2004 03:42:14 AM
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