石碑



場所は和歌山の某所。きれいな海は、さまざまな生き物で満ち溢れていました。サヨリやフグも泳いでいました。アメフラシやカニもいました。素晴らしい自然に囲まれながら、天気に恵まれながらも、人気のない海で、幸せに海の懐に抱かれながら、幸せな気分に浸っていました。

ここに至るまで、あちこち立ち寄りました。歌碑や記念碑など、いくつかの石碑も見てきました。そして、この海の磯にも、石碑が立っていました。

好奇心の強い父と私は、その石碑の立つ磯に向かって泳いでいきました。目の悪い我々親子は、随分近付かないと字が読めません。やっとのことで磯にたどり着き、海から上がって、石碑を目指して歩きました。

すると、僕より若干目のいい父の足が止まりました。口をぽかんと開けたまま…。父の視線の先をたどると、それはまぎれもなく我々親子が目指していた石碑。そしてその石碑に刻まれた文字は…、

「カイトルナ」

どう反応していいのか分からなかった私たちは、足早に、寡黙に、その場を立ち去りました。もちろんその後そのことは話題には上りませんでした。ほろ苦い夏の思い出です…


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