ビバ長崎


家の連中は、何かとイベントが好きなので、法事で九州に行った時にも、
「せっかく九州にまで行くんだったら、長崎観光も敢行しよう♪」
などという寒い親父の提案で、法事の全前日の未明に家を出て、前日は長崎観光をすることになりもした。

 さて、よくある観光ルート(なんとか邸とか、なんとか聖堂やら)を一回りして、
「そろそろお昼を食べよう!」
ということになり、
「せっかく長崎に来たんだから、ちゃんぽんを、どうせちゃんぽんを食べるなら、ちゃんぽん発祥の店で食べたい!」
というとこで、市内のあるお店に入りもした。

 ひとしきりうろうろした後だったので、御昼時と言える時間ではなくなっていましたので、お昼の営業時間ぎりぎりに滑り込んだ感じでした。

 店内はこぎれいで、店員さんも親切で、おまけにてきぱきしていて、窓から見える港の景色もなかなかで、何よりでてきたちゃんぽんの美味しいこと、美味しいこと!汁そばに揚げそばに炒めそば、どれをとっても今まで食べてきたちゃんぽんが、まるでベビースターラーメンくらい格下に思えるほどの美味しさでした!(地元の人はどういう評価なのか知りませんが…。ひょっとしたら、もっと美味しい店があるのかも知れません)とりあえず、家族全員が満足し、母親に至っては、汁そばのこってりスープをすすりながら、
「このスープはあっさりしてるから、いくらでも食べられそうよ」
などと意味の分からないことを言い出す始末…┐(-。ー;)┌

 食べ終わった後、妹と母親がトイレに行きました。僕は父親と何を話すでもなく、外の風景をぼんやり見ながら、美味しかったちゃんぽんの余韻に浸っていました。

 しばらくすると、二人が嬉しそうに戻って来ました。
「何がそんなに嬉しいんだろう…(・_・?)」
 そう思っていると、妹は、席に戻るなり開口一番
「いっぺんトイレ行ってみ!大の方やで♪あ、中に入ってみなあかんでー」

 あまり外出先でトイレに行くことが、特にレストランでは、好きではない僕は、一度は拒絶したのですが、「どうしても!」という妹の要請に結局は折れて、父親と二人で用もないトイレに行ってみることにしました。

 手洗い水が、センサーで筧を伝って流れてきて、砂利に落ちていくという凝った手洗い場にも、そこそこ感動したのですが、妹は確か
「大の方やで♪」
と言ってた筈。気が進まない父と子は、しかたなしに個室へと向かいました。そして、
「中に入ってみなあかんでー」
という言葉も思い出し、忠実に彼女に言われたとおりに行動しました。すると、便器のほうから「うぃーん…」という微かな音が聞こえました。と同時に「ほ、ほー…」という、個室の外からこちらを見ている父親の音の感嘆も聞こえました。僕は、音の聞こえた方、つまり、便器のほうを振り返ってみると、なんと、そこには、さっきまで閉まっていたはずの便器の蓋が、自動的に開いていく、サンダーバード秘密基地のようなギミック!
「こりゃー確かにすげーや!」
と思った次の瞬間、感動は強烈な後悔へと変貌しました。
「なんじゃこりゃー!」
 だから、僕は食べ物屋でトイレに行くのが嫌いなんです。おいしかったちゃんぽんの記憶など、忘却の彼方へ…。今の僕には目の前の自動的に蓋の開いたトイレの中に潜んでいた、浮遊物のことしか頭にありません。それは、
「どっか~ん!」ではなく、「もわんー…」という感じでした。それは、きっと美味しいちゃんぽんをたらふく食べて、お店に来る前からお腹の中に溜めていたものを一気に押し出したかたの残されたものなのでしょう。そして、お店のトイレがきっと、環境に配慮された節水型の水洗であった為に起こってしまった(流れきらなかった…)悲劇だったのでしょう…(T^T)

 いったい誰が悪いのか。家で用をたさないままの状態で、美味しいちゃんぽんをたらふく食べて、お店のトイレで用をたしたお客さんが悪いのか、食べ過ぎてしまうほど美味しいちゃんぽんをお客様に提供しているお店が悪いのか、環境に配慮した節水型の水洗を導入したお店が悪いのか、それともあのギミックを見せたいが為に、僕をトイレに行くよう促した妹が悪いのか、はたまたその言葉に乗せられて、のこのこと用もないのにトイレに来てしまった僕が悪いのか、それとも自分が入るのが何となく怖いから、自分は外にいて、息子に中に入らせて、こわごわこちらを覗いている父親が悪いのか…。

 いや、これはきっと神が僕にお与えになった試練なのでしょう。神様、この試練に耐えて、僕は少しでもあなたに、あなたの御許に近付くことができたのでしょうか?


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