Episode 5 『勇気』



 申し遅れましたが、僕はFWです。うちのチームは4-4-2のフォーメーションで、僕は2トップの左側でした。王子は右FW。ちなみに僕はスタメンで、王子はサブでした。その日はリーグ戦で、朝から5試合をこなさなければならないという、とてもハードなスケジュールでした。

 初戦は引き分け。第2試合は2-0で快勝。そして事件は第3試合で起こりました。

 その日はチーム自体の調子がとてもよく、第3試合も前半だけで既に2点リードしていて、すっかり勝ちムードでした。そこで、主力組の温存ということで、僕の相方のFWがベンチに下げられました。そこで満を持して登場したのは、我らがプリンス!王子は紳士です。僕たちが防戦に回っている時も、相手チームの皆さんの邪魔になるようなことは決してしません。そんなことは、育ちが許しません。そして、僕たちの攻撃時にも、相手チームの皆さんを騙すような失礼なことも決してしません。そして、試合とはあまり関係のないスペースを縦横無尽に駆け巡って、青春を謳歌しておられました。

 前掛かりになっている相手のスペースを見つけるのは、比較的たやすいこと。戦力的には数的不利な僕らでも、スペースを見つけてボールを要求しながら走る。「これを何度か繰り返せば、必ず得点できる」と信じて、3度目のトライでした。
 ゴールに向かってドリブルで1人を振り切って、ゴール前の2人とキーパーの合計3人がいましたが、丁度ゴールに向かって隙間ができていました。
「ここしかない!」
と思って、利き足を思いっきり振りぬきました!僕は、まっすぐにゴールに向かって3人の間をすり抜けていくボールの軌跡を目で追いました。
「やった、これで決まった!」
と思い、ガッツポーズをとろうとしたその瞬間、今まで視界になかった人影が、ボールがすり抜けようとしたその僅かな隙間に走りこんできました!
「え?!」
と思った時、既に僕のシュートはその第4の影によって阻まれ、クリアーされてしまいました。
僕のシュートコースを読んで、迷い無く突進してブロック!敵ながら
「すげー!」
と感心しました。
「あんなディフェンスがうちにもいたらなー」
などと、自分のことは棚に上げて、そう思いました。
しかし、失点は免れたとは言え、利き足で思いっきり蹴ったボールがまともに当った訳ですから、無事でいられる筈がありません。自分のシュートをブロックされた悔しさよりも、ディフェンスの素晴らしさと勇気に感心し、そして、今彼が耐えているであろうその痛みに同情しながら
「痛かったやろなー」
と自陣に戻りながら、振り返ってみると、彼は今敵ゴールキーパーに助けて貰って立ち上がろうとしているところでした。

「お、王子( ゜O ゜;)!!」

そうです。僕のシュートコースに的確に走りこみ、間一髪でブロックした、その勇気あるディフェンスをし、少なからず僕を感動させてくれた、その人は、他でもない、我らが王子だったのです!!
紳士な彼は、勿論起き上がってすぐ、僕に謝意を表明してくれました。しかし、とんでもありません王子!そんなことより、僕の得点を1つフイにしたことより、僕は王子にもっともっと素晴らしいものを頂戴しました。それは、「感動」です!!僕は王子のライオンハートに感動しました。僕もいつか王子のような勇気ある男になります!!王子、その時まで僕を見守ってください。あ、でも、できればもう僕のシュートはブロックしないで下さい。


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