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恋は時に禁忌(タブー)を犯すもの。あなたの情念が目覚める時は?第三十五帖 <若菜 下―2 わかな> あらすじ女三宮は年を経ても相変わらず幼いままなので、源氏も娘を育てるように扱っています。「死期が近づいたような気がするので女三宮に会いたい。琴もさぞかしうまくなっているだろう。」そんな朱雀院からの要望がありましたので、五十歳の祝いの時に訪問するよう、源氏は計画をたてました。女三宮の琴はまだまだ人に聞かせることはできない段階でしたので、源氏は毎日熱心に教え始めます。正月の二十日過ぎころ、源氏は六条院の女性達に合奏させる女楽(おんながく)の宴を設けました。夕霧も列席して、琴の弦を張って調律し、軽く一曲奏でます。明石の君の琵琶は名人の域、紫の上の和琴は斬新な響き、明石の女御の箏の琴は可憐で優しく。女三宮の琴も練習のかいがあって、たどたどしい様子はなく、うまく弾きこなしています。源氏は夕霧に女性達の音楽の出来をたずねます。宮廷の楽人たちの演奏に勝るとも劣らないほど皆素晴らしいと褒め、特に紫の上の和琴を賞賛する夕霧。源氏は得意になって音楽論をとうとうと語りだします。夕霧は紫の上の奏でる音色を思いながら帰路につきました。雲居の雁があまり音楽の練習をしていないことが残念ですが、それでも可愛い妻だと思いなおすのでした。源氏は東の対に行き、紫の上に女三宮が上達したことを自慢します。あなたがあれだけ教えれば当然、と応える紫の上。源氏は紫の上には教えることはあまりなかったのに、本当に素晴らしい演奏をしてくれたのを嬉しく思います。あまりにも欠点がない紫の上は今年、女の厄年である三十七歳。源氏はよく気をつけるようにさとします。「あなたはほとんど苦労せずに過ごしてこられた。女三宮のことは多少気になるかもしれませんが、私にはよりいっそう愛されるようになったことをわかっていますか。」と語る源氏。「確かにそのように世間では思われているでしょうけれど、私にはとても辛いこの世でした。厄年のこともあってやはり尼になりたいのです。」と応える紫の上。源氏は相変わらず許そうとはせず、自分の過去の女性の話などをして紛らわせます。「夕霧の母・葵上は欠けたところはありませんでしたが、真面目で賢すぎてほっとすることができなかった。六条御息所はとても情愛の深い方でしたが、会うのに気が重くなるほど気位が高く思い詰める人。恨まれた私も悪かったのだが、自然に離れてしまった。娘の秋好中宮の世話を一生懸命にしているので、きっとあの世で許してくれているでしょう。明石の君は侮りがたい、筋の通った人ですね。」一時は嫉妬を隠さなかった紫の上が、明石の君と今ではとても仲睦まじくしているのを源氏は褒め称えます。「女三宮へも上手く演奏できた祝いをお伝えしましょう。」と紫の上のもとから出かけてしまう源氏。まだ一生懸命に練習を続けていた女三宮の琴を取り上げて、二人は寝所に入りました。その夜、紫の上はにわかに胸が苦しくなり高熱を発しました。慌てて戻ってきた源氏が懸命に介抱し、祈祷をさせても一向に良くならない紫の上。二月になっても容態が変わらないので、慣れ親しんだ二条院に場所を移すことに。紫の上は何度も出家を願いますが、源氏は「私を見捨てるのですか。」と決して聞き入れません。女三宮のもとへはまったく通わなくなり、紫の上のいない六条院はすっかり寂れてしまう有り様。源氏は紫の上の性格の良さを願文に書き、いっそう祈祷に力を入れさせるのでした。あの柏木は中納言になり、帝からも厚い信頼を得るようになっていました。いまだに女三宮への思いは絶ちがたく、代わりに姉の女二宮と結婚していましたが、一段劣る更衣を母に持つ妻を重んじる気になれません。小侍従を呼んで、源氏が六条院にいない間に女三宮に逢わせるようにしつこく迫る柏木。「何をしようというのではない。ただ私を哀れとでも思っていただけたら。」小侍従は困り果てながらも、手引きをする約束をしてしまいます。四月二十日頃、小侍従は柏木を、女三宮の寝所のすぐ側に入れました。女三宮は眠っていましたが、男性の気配に源氏だと勘違い。ところが抱き上げられてその顔を見ると、まったく知らない男性ですっかり動転し、汗もしとどになる女三宮。連綿と今までの思いをうったえ続ける言葉で、前々から文を届けていた柏木であるとわかりますが、女三宮は恐くてなにも言えません。近寄りがたいと思っていた女三宮は、あまりにも可憐で美しく思われ、このまま連れ去ってしまいそうなほど惑わされてしまう柏木なのでした。ふと寝入ってしまった夢に、あの唐猫を見て驚く柏木。あまりのことにぼう然としている女三宮。「前世からの縁と思ってください。」と、柏木は御簾から猫が飛び出してきたときのことを話します。女三宮は源氏に知られることを思って、幼子のように泣くばかり。柏木の衣の袖は女三宮の涙と、自分の涙で濡れそぼってゆくのでした。恋愛セミナー381 源氏と女三宮 年を重ねても2 源氏と紫の上 この期におよんでも3 柏木と女三宮 ついに紫の上が倒れてしまい、惑乱する源氏。源氏がこれほど脆かったということが顕著にわかります。死にかけている紫の上になお取りすがり、出家を許さない源氏。瀬戸内寂聴氏は「性愛が惜しいからだ。」と断じています。脆さは危うさを産み、ついに不貞を招きます。あの春の日の、唐猫が姿を見せた日から6年の月日が流れていました。その間、柏木は女三宮の姿を心に焼き付けたまま。姉に代わりを求めてみても、そのときのイメージとは重ならず、思いはつのるばかり。女三宮のことを、源氏は実際どう思っていたのでしょう。朱雀院の思惑もあったとはいえ、女楽で教えが一段落した日も、夜離れが続いていた紫の上を置いて女三宮のところへ泊まる。6年の歳月の間に女三宮は21歳になっている。47歳の源氏は、女三宮の大人の女性として立つ年齢と幼さとのギャップに、知らぬ間に引き寄せられていたのでしょうか。紫の上を含めた女性達が、精神的にどんどん自分を追い越してゆく寂しさ。そのなかでいつまでも、源氏に頼り切っている高貴で可憐な姫宮。教え好きの本性も相まって、源氏は女三宮に自分の生きがいを見出していたのでしょう。柏木が源氏から女三宮を奪えたのは何故なのか。巨大な源氏という存在をものともせず、柏木が思い続けた6年は、夕霧が雲居の雁と離れていた期間とほぼ同じ。岩をも貫く信念で、夕霧が内大臣のひざを折らせたように、六条院が留守になるという偶然は、女三宮をあくまで女性として求め続けた柏木の情念の強さが引き寄せた必然。禁忌(タブー)を犯すことが、さらに恋の情念をかきたてる。溺れると知っていても、踏み込まずにはいられない。女三宮はさすがに源氏を狂わせた藤壷の姪、底知れぬ魅力があるようです。そして皆、いったいどこへ流れつくのでしょうか。
November 10, 2004
恋を手放した時、人は最も美しくなれる。終わりを迎えた恋を手放せない人の行きつく先。猫が結ぶ恋の縁。第三十五帖 <若菜 下―1 わかな> あらすじ柏木は女三宮の猫が欲しくてたまらなくなり、帝に「素晴らしい猫がいました。」と伝えます。早速、猫をもらい受けた帝が「よい唐猫だが私の猫も劣らないようだ。」と言うと「では私がお預かりしましょう。」といって連れ帰ってしまいました。それからは朝晩、その猫を慈しみ懐にいれて可愛がります。なついた猫が「ねうねう」と鳴いて甘えると、「寝よう寝ようなんて。」とますます愛しくなる柏木。女房達も不審に思うほどの気の入れようなのでした。髭黒の大将の元の正妻が産んだ娘・真木柱は相変わらず祖父・式部卿宮のところに留められています。玉鬘に熱心に求婚していた兵部卿宮は亡くなった美しい妻が恋しいので、思いつきで真木柱との結婚を式部卿宮に仄めかしたところ、あっさり認められてしまいました。ところが、真木柱がそれほど美しくないのを知ってあまり通わなくなってしまう兵部卿宮。もともと浮気な宮なので髭黒の大将も反対していたのですが、後の祭りです。自分がもし結婚していたらこんな風になっていただろうと思う玉鬘。義理の母としてなんとか仲を取り持とうと息子達をさりげなく宮のもとへ行かせるようにしています。式部卿宮の正妻は例によって口汚くののしるので、ますます婿の足を遠ざけるばかり。それでも真木柱はこんな夫婦もあるのだろうと慣れてしまっています。それから何年かたち、冷泉帝が重病をきっかけに位を譲ることになりました。太政大臣は辞職し、新しい帝の伯父である髭黒の大将は右大臣として最高の権力を手に入れ、夕霧は大納言に昇進しました。明石の女御の生んだ皇子が東宮になり、まだ次々に皇子が生まれています。とうとう冷泉帝の皇子は子どもがないままに終わったのを、源氏は密かに寂しく思うのでした。女三宮が嫁いで何年たっても、紫の上の威勢は一向に衰えず、源氏とも睦まじくしています。それでも、折あるごとに「出家して心静かに暮らしたい。」と言う紫の上。「私こそ残されたあなたが寂しいだろうと思ってできないのです。私が出家した後なら。」と源氏は一向に許しません。明石の女御の皇子が時代の帝になることになったので、源氏は明石の入道が住吉の神にたてた願ほどきの参詣をすることにしました。貴族の多くが列する盛大な参拝になり、世の人はこぞって見物に出かけます。明石の尼君も参加して、ただただ感激の涙にむせび、人々はその幸運にあやかろうと大変な騒ぎ。あの近江の君も双六をするときは「明石の尼君!明石の尼君!」と唱えるのでした。朱雀院は出家をしても女三宮のことが気にかかります。帝は意をくんで女三宮に二品の位(にほん 皇子・皇女に与えられる位の上から二番目。)を与えたので、さらに威光が増えることになりました。女三宮をないがしろにしていると朱雀院に伝わっているらしいと考える源氏。そのため女三宮のもとへ通う夜がだんだんと多くなってゆきます。紫の上は知らぬげにしつつ、明石の女御の産んだ女一宮を引きとって可愛がることで寂しさを紛らわせるのでした。夕霧と雲居の雁、そして藤典侍との間にもたくさんの子どもが生まれていました。花散里も藤典侍の産んだ子を一人育てています。源氏も自分の子どもは少ないながら、孫が増えているのを嬉しく思っています。髭黒の右大臣は夕霧とうちとけあって政務をこなし、六条院にも来る機会が増えました。玉鬘もすっかり妻としての貫禄がつき、かつての色恋を忘れた様子の源氏に安心してやってきて、紫の上とも親しくしているのでした。恋愛セミナー351 柏木と女三宮 狂おしい思い2 源氏と女三宮 相変わらず幼い妻3 源氏と紫の上 出家の志しを4 源氏と花散里 祖父母として5 兵部卿宮と真木柱 淡々とした夫婦女三宮に魂を奪われてしまった柏木。猫を使った、少しエロティックなシーンですね。古来、魔性のものととして扱われてきた猫は、妊娠の兆候として夢に現われるものでもあるのです。兵部卿宮の再登場、ちょっとパッとしない感じです。真木柱という玉鬘に縁の深い娘をもらったはいいけれど、血の繋がりがないだけにどうもピンとこない。それでも亡くなった妻を思い続ける兵部卿宮は案外、一途な人なのかもしれません。夫婦の修羅場を見てきている真木柱が、間遠な関係をあっさり受け入れているのも興味深いですね。さて、紫の上の出家願望が強くなってきました。冷泉帝の世が終わった無常感、明石の女御の地位が安定したこと、そしてなにより女性として生きることに限界を感じている様子。源氏の言い訳は苦しいですね。冷泉帝が位を降りたことで、真の父である彼こそ出家を遂げる理由は大きい。この世にすがってどうしても捨てられない源氏なのです。
November 9, 2004
未熟と成熟。美しい方は?恋の本命を手に入れるためには。第三十四帖 <若菜 上―3 わかな > あらすじ夕霧は女三宮が自分のものになっていたかもしれないと知り、心落ち着かない思いですが、六条院での様子を見ると軽々しく幼い女房たちばかりなので、きっと本人の人柄もそうなのだろうと察します。そんな女三宮とも仲良く、源氏からもさらに重んじられている紫の上の素晴らしさや五年も前に見た美しい姿を思う夕霧。雲居の雁とはうまくいっているのですが、平穏な生活に飽きたらず華やかな女性が集まっている六条院が羨ましいのでした。柏木は女三宮への思いが最も強く、未だにあきらめることができません。紫の上に押され、源氏にないがしろにされていると聞き憤慨する柏木。女三宮の小侍従という女房に近づき、源氏が出家したあかつきには自分が、と思っています。ある春の日、源氏は六条院の庭で蹴鞠をさせます。桜の花が降りしきるなか、夕霧や柏木も参加して技を競い合いました。夕霧が桜の枝を手にしながら庭に続く階段に腰をおろしたので、柏木はそばに寄って女三宮のいるあたりを流し目で探します。ふと、紐をつけた猫が飛び出して御簾を巻きあげてしまいました。外から見える人影の中で、ひときわ高貴で美しく見えた女性に釘付けになる柏木。気づいて御簾を下げさせた夕霧は、魂を抜き取られたような顔をしている柏木が女三宮を見たのでは、と疑います。源氏は階段に座っている二人を呼び、皆に軽食を取らせました。相変わらず心ここにあらずの柏木を見て、女三宮はやはり軽率な女性だと感じる夕霧。「昔から太政大臣には蹴鞠だけはかなわなかっただけあって、柏木もたいしたものだ。」何も知らずに褒める源氏。その立派さに気おされてしまう柏木は、ただかしこまって応じるしかないのでした。若い二人は同じ車に乗って帰ります。「源氏の君は紫の上のところばかりに行かれて女三宮はお嘆きのようですね。」こんな言葉を夕霧はいさめますが、なおも女三宮が気の毒だ、といい続ける柏木。やはり見てしまったのだ、面倒なことになったと夕霧は思い、話をそらしてしまいます。「遠くから見るだけで折ることもできない美しい花が恋しいのです。」小侍従は柏木からこんな歌を受け取りました。「あまりに熱心なので私もこのさきどんな気持ちになるかわかりませんわ。」単なる恋の歌だろうと笑って女三宮に取り次ぎます。「変なことを言わないで。」と何も考えずに文を見た女三宮ですが、古歌の「見ずもあらず見もせぬ人の恋しくは(全くみえないということはないが、はっきり見たのではない人が恋しいので。)」が引いてあります。さすがの女三宮にも柏木に姿を見られてしまったことがわかりました。「夕霧に姿を見られないように。」源氏から注意されていたのを思い出してすっかり脅えてしまい、返事などとてもできません。「歌はいったいどういうことでしょう。『見ずもあらず』なんて。手の届かない花に恋しているなど、色にもお出しにならないで。」小侍従はいつものように、自分で返事を書くのでした。恋愛セミナー361 夕霧と女三宮 かつての婿候補2 夕霧と紫の上 いまだ忘れず3 柏木と女三宮 思いはつのる若者の、危うい恋が始まります。玉鬘に思いをかけていた柏木が、今度は源氏の正妻・女三宮へ。夕霧も女三宮への思いを、ほんの少し残しています。当時は帝の妃たちの住まう後宮が、若い貴族達の恋の舞台でした。もちろん、妃本人ではなく、その周辺に集まる女房たちとのやり取りが男性たちの目当て。機知のあるやりとりのできる女房が場所にはいつも人が集まり、賑わい、面白い遊びが繰り広げられる。それがひいては、帝がその妃のもとにやってくるきっかけにもなっていたので、娘を入内させている親達は争って優秀な女性を女房にした。それが、清少納言、和泉式部、そして紫式部たち。貴族にとっては彼女たちとと対等に渡り合い気に入ってもらえれば、主人である妃を通じて帝にアピールできるという利点もありました。源氏や太政大臣たる頭の中将の若き時代は帝のお膝もとも恋の舞台になっていましたが、いまは六条院が主流のよう。六条院は源氏が狙っていたとおり、華やかな魅力ある女性たちが一堂に会するサロンであり、男性たちが集まってくる人気スポット。源氏は六条院というハーレムの主人、准太上天皇という位をいただいた帝に等しい存在です。源氏は初め、娘分の玉鬘で男性たちを引き寄せました。彼女を目当てに恋する若者が右往左往するのを喜び、自身も恋を楽しんでいた。それが玉鬘の結婚で儚く終わり、次に求めたのが若いというよりは幼い姫宮。ただしこちらは、正真正銘の妻で、人々の恋の対象にする気はさらさらない。けれど、恋をもとめて六条院をうろうろするのに慣れてしまった若者達の中には、年恰好からいっても源氏よりも自分の方が姫宮に相応しいと思う輩もいたのです。そうはいっても、やはり源氏は恐れ多い存在。侮ることなどできようもありません。ところが、姿を見るという強烈な体験をしたことが、柏木の運命を狂わせることになります。蛍で玉鬘を兵部卿宮に見せた源氏は、その効果を充分過ぎる程知っていた。その直後に偶然紫の上を夕霧に見せてしまったことも気にし続け、女三宮も見せまいと注意を怠らなかった。逢うことが結婚さえ意味するその時代、あらわに姿を見せてしまうことは決定的な出来事なのです。女三宮が姿を見られてしまったことに対して、夕霧と柏木の反応が分かれるのもおもしろいところ。夕霧ははしたないとますます侮り、柏木はその美しさのみに集中して恋焦がれる。厳密に言えば紫の上も姿を見られているのですが、普段の重んじられ方で、夕霧の評価は下がっていません。夕霧は20歳、紫の上は33歳、そして女三宮は15歳。たしなみの深さが女性を美しくするということを、ハタチの夕霧はわかっている様子です。さて、いままでも何度か出てきた女房の取次ぎの最たる存在が小侍従かもしれません。類は共をよぶ。幼稚な主人に軽率な女房。身分がそこそこの女性なら許されても、皇女、まして源氏の正妻としては論外。夕霧も周りの女房たちの雰囲気をきっちり観察し、見限っています。独立した家を構えて雲居の雁という妻を大事に据えている夕霧からみれば、妻である女性の軽率さは罪。確かに妻を留守中に他の男性に見られたら、という視点から考えると気が気ではありません。柏木には、このとき正妻はいない上に、父の家に部屋住み。それが夕霧の持つ視点に考えがおよんでいない理由なのでしょう。恋する相手があなたにふさわしい方か、冷静に判断したい時。恋の本命を冷静にみることはできなくても、その周りにいる人を観察することはできますね。将を射んと欲すればまず馬を射よ。
November 8, 2004
恋人、妻、母。一番幸せな生き方は?第三十四帖 <若菜 上―2 わかな > あらすじ朱雀院は西山の寺に入るため、俗世とはきっぱりと縁を切ることになるので、女三宮のことを源氏にいま一度頼み、紫の上にも特別に文を託します。「幼い宮を許してやって下さい。山で修業をするのに子への思いを断ち切れないでいるのです。」「どうぞ無理に思いを止めようとはなさらないように。」と紫の上は返歌します。その歌の文字の見事さに、朱雀院は女三宮がさぞ見劣りしているだろうとやるせなく思うのでした。朧月夜は後を追って髪をおろすつもりでしたが、いましばらく、と朱雀院から制されていました。それを知った源氏は再び思いが再燃し、朧月夜に文を何度も届けます。ある夜、末摘花の病気を理由に源氏は六条院を出発しました。紫の上は何となく察していますが、何も言いません。朧月夜はきっぱりと拒否しましたが、源氏は襖を開けて関係を持ってしまいます。昔からなびきやすいのだから、と少し侮る気持ちの源氏。朧月夜は源氏を受けいれてしまったことを強く後悔します。六条院に帰って、寝所に入った源氏は紫の上にことの次第をすっかり話してしまいました。「また会いたいのだが。」と語る源氏。「若返られて、あてのない私などついていけないほどですわ。」と静かに笑う紫の上。その日は心に隔てを置いた紫の上の機嫌をとり続け、女三宮のもとには行かない源氏なのでした。明石の女御(明石の姫)が懐妊して六条院に里帰りすることになり、女三宮の寝殿のそばに部屋を設けます。紫の上は女御の世話をするときに女三宮にも会うことにして、出かけてゆきました。源氏はその間に、また朧月夜のもとに行ってしまいます。女三宮に会った紫の上は、自分との縁などをやさしく話します。紫の上のやさしさに女三宮はすっかり安心し、その後はお互いに文を交わしたり、宴の席に呼び合ったりするように。世間では、二人の仲がどうなることかと取り沙汰していましたが、紫の上の穏やかな対応に悪い風評も消えてしまうのでした。十月には、源氏の四十歳の祝いを紫の上が催します。全ての準備を隅々まで行き届いて手配した紫の上に感嘆し、もし藤壺が生きていたら、自分がこのような宴を取り仕切っていたのに、と残念に思う源氏。十二月には秋好中宮が、年の暮れには冷泉帝から指示をうけた夕霧が祝いを盛大に行いました。年が明けてまだ幼い身の明石の女御の出産が近づき、源氏も周囲の人々も案じ祈祷をしています。陰陽道で占わせて方角の良い冬の町に移った女御に、祖母である尼君が近づいて明石でのことを話しました。明石で生まれたことを初めて知り、今まで自分が並びなき者と思いあがっていたと反省する明石の女御。尼君に気づいた明石の君は真実を知って沈んでいる様子を気の毒に思いますが、女御は明石に行ってみたいと歌を詠み、三人は涙にくれるのでした。明石の女御は無事、皇子を安産し、人々の喜びは大変なものです。明石の入道は全ての念願がかなったので、深い山に入る決心をし、明石の君に今生の別れとなる便りを送りました。入道が源氏との縁を結んで辛い目にあったと考えていた明石の君も、初めて父の先を見通した考えに思い至ります。夫婦として睦まじかった尼君は入道に二度と会えないことを悲しみつつ、孫娘が皇子出産という最高の幸せにも出会えたことに喜びを見出すのでした。入道のことを知った源氏は、明石の女御に改めて紫の上の恩を語り、明石の君にも、紫の上と仲良く、出過ぎず立派に女御の世話役をしているのを感謝しねぎらいました。紫の上のもとに帰ってゆく源氏を寂しく見送った明石の君。それでも女三宮の出現で、紫の上でさえ源氏との仲が思うようにならないのだから、自分の運勢は強いものなのだ、と思い至る明石の君なのでした。恋愛セミナー351 源氏と紫の上 心離れて2 源氏と朧月夜 焼けぼっくいに火3 源氏と明石の君 運命共同体この帖のあたりで、紫の上は天女のよう、あまりにも出来すぎている、と評する方も多いそうです。長年、唯一気を許せなかった明石の君とも和解を果し、手放した娘からはなおも慕われている。後からやってきて自分を越えてしまった女三宮にもやさしく接する。内面の葛藤は女三宮の存在でさらに顕著になり、朧月夜の復活に至っては、さすがの紫の上も源氏の再三の裏切りに、ついに何かを悟った様子。このころから、紫の上は源氏よりも、ひとまわりもふたまわりも大きく見えます。そんな愛妻に不安をおぼえて「つねるなりどうなりして欲しい。そんな風には育てていませんよ」という源氏。さらに、世間の風評を抑え、六条院の名誉を守るために意を決して女三宮と対面しているときに昔の女性のもとに行ってしまう。世の源氏贔屓の女性も、これにはついていけないかもしれません。さて、明石の女御が将来の帝となる皇子を生みました。すでに磐石になっている源氏の地位よりも、明石の入道の子孫の、これからの繁栄がうかがわれる出来事です。子別れに耐え、控えめな態度を貫いてきた明石の君の未来が、大きく花開いてゆく予感。自分に対して、少しは心奢りしていた紫の上の運命が変転してゆくのに比べ、並ぶもののない地位につこうとしている娘を産んだ運の強さを明石の君は噛みしめています。一族発展のための共同作業を源氏と成し遂げた満足感。妻として源氏に対するよりも、母として一族の支えとなることを選んだ明石の君は、妻の道に留まろうとした紫の上と初めて並んだ気持ちになれたことでしょう。紫の上は、その妻としての立ち場も危ういところにあります。こよなく愛される、源氏のいつも還る先。永遠の恋人という甘い言葉を、これほど苦く味わう女性もいないのでは。☆ちなみに出産した時、明石の女御はわずか13歳。数えですので今なら11、12歳くらいでしょうか。東宮もほぼそのくらい。いまなら小学六年生で親になったということになりますね。☆
November 7, 2004
恋の遍歴をくり返す方の心情とは。14歳の妻を迎える40歳の夫。真の夫婦の危機。第三十四帖 <若菜 上-1 わかな > あらすじ病気がちになった朱雀院は、出家を果そうとしていますが、心残りなのは最もかわいがっている女三宮(おんなさんのみや 三番目の皇女)のこと。東宮にも女三宮のことを頼む一方、やはり誰か頼りになる先に嫁がせるのがいいだろうと考えています。候補者は夕霧、柏木、兵部卿宮など幾人もいましたが、身分など条件が合いません。朱雀院は源氏がよいのではないかと思いつき、紫の上を引き取って理想の女性に育て上げたように、まだ幼い女三宮も慈しんではくれないだろうかと望みます。六条院に出入している者にたずねると、源氏はどうやら正妻として高貴な女性を求めているらしいとのこと。朱雀院は使者をやり、源氏に意向を伝えました。「夕霧の方がふさわしいのでは。私もこの先長くは生きられるとは限らない。」と気がないように応える源氏。使者はなおも熱心に朱雀院の悩みを訴えます。「帝はどうだろう。帝の母・藤壺の尼宮も一番後から入内して最も寵愛を集めたのだし、女三宮は藤壺の姪に当たられるからとても美しい方なのだろう。」こう言っているそばから、あの藤壺に近しい女性ということに気づいた源氏は並々ならぬ興味を持つのでした。身の振り方が決まらぬまま、女三宮は裳着を迎えます。秋好中宮は、斎宮として伊勢に下る時に朱雀院から贈られた櫛をお祝いとしました。裳着が終わって三日後、朱雀院は病気が重いままに出家を果しました。源氏は見舞いに行き、改めて朱雀院から女三宮のことを相談されます。「結婚したばかりだが、やはり夕霧がいいだろうか。」とたずねる朱雀院に「息子は未熟者ですので私がお世話します。」と源氏は応えてしまうのでした。紫の上は女三宮の噂は聞いていましたが、まさか源氏が引き受けるはずがないと信じていました。「どうしても断れなかった。」と伝える源氏に「宮様には、親しくしていただけたら嬉しい。」と応える紫の上。いつもは多少の嫉妬を見せる紫の上の穏やな反応に、源氏は不安を覚えるほどです。紫の上は「世間にも、義理の母である式部卿宮の正妻にも悩んでいるとは見られたくない。」と考えています。新年になり、源氏は四十歳の祝いを受けることになりました。まず、玉鬘が若菜を贈り、春の町で宴を取り仕切ります。久しぶりに会う源氏と玉鬘。二人の男の子も連れてきた玉鬘は、さらに美しく髭黒の大将の妻としての風格が出てきたようです。二月には女三宮が六条院に嫁いできました。春の町の寝殿(主人が住まう居間)に住まいをもうけ、輝くばかりに磨きたてて迎えます。源氏は女三宮を車から抱き下ろし、臣下として儀式を行なうのでした。結婚して三日間は宴が続き、紫の上はもてなし役を懸命につとめます。源氏もこの間はずっと通わなければなりませんが、早くも女三宮の未熟さに気づき、後悔していました。同じ年の頃でも、紫の上にはもう少し手ごたえがあった、とつい比較してしまいます。寝所に行くのを渋り悩みますので、紫の上にせかされる始末。引き止めていると思われたくないとは言え、源氏を見送る紫の上は夫婦の仲が磐石だと信じていた自分の甘さを痛感します。それでも、周りの女房がしきりに源氏の悪口を言うのを聞き苦しく思い、「六条院に相応しい女性が来てくださったので喜んでいるし、仲良くしていただきたいの。」という紫の上。源氏と関係したことのある女房までもが、紫の上の言葉に「思いやりにも程がありますわ。」と口々に言っています。待っていると思われたくないので、紫の上は一人で寝所に入ってもため息も身じろぎもできません。源氏は女三宮の寝所で紫の上の夢を見て、雪が積もる中、早々と帰ります。東の対(ひがしのたい 寝殿から渡り廊下で繋がった離れ)にいる紫の上の部屋の戸をたたく源氏。女房達はわざと気づかないふりをして、しばらくこらしめます。紫の上は衣を涙でぬらして心を開かない様子なので、源氏はその日中、そばについていました。女三宮には文をやるだけなので、紫の上はかえって迷惑がっています。返ってきた歌はとてもつたない文字で、紫の上とは比べものにもなりません。昼になってようやく女三宮のもとへゆくと、たいそう可愛らしく幼い様子です。立派な調度や衣装に埋もれるような華奢な感じを、他からみればこれもまた良いのだろうと思う源氏。それにしても、紫の上の満ち足りて欠けたところない様が思い浮かび、一日離れただけでも恋しく思う源氏なのでした。1 源氏と紫の上 決定的な裏切り2 源氏と女三宮 またも藤壷の影に惑う3 源氏と玉鬘 巣立っていった娘藤壺の幻影をいまだ捨てきれていない源氏の姿が明らかになりました。明石の姫を入内させ、母としての役を明石の君に返して、源氏との生活を大切にしようとしていた矢先のできごとです。源氏の妻として、絶対の存在であるかに見えた紫の上。春の町の女主人にみえた紫の上はその実、寝殿という主人が住まいする場所を許されてはいなかったのです。以前にも、朝顔の姫が正妻候補に上がりました。これはちょうど藤壺の尼宮が亡くなった直後で、六条院が完成する直前。もし、朝顔の姫が源氏の申し出を受けていたら、女三宮のように寝殿に入った可能性が高い。春の町の女主人はいったい誰だったのでしょうか。女三宮を迎えて、改めて紫の上の魅力に気づく源氏。玉鬘をはじめとして、女性にはある程度の手ごたえを求める源氏は、女三宮の幼さにがっかりします。内心の絶望を見せまいと健気に振舞う紫の上に対して、自分が望んでもらい受けたにもかかわらず通い渋る源氏。幼い女三宮に心を奪われていないことを伝えることで、誠意を見せているつもりの源氏は、自分が犯してしまった裏切りという罪を直視しようとはしていません。紫の上にも「ご自分の心がわからないのに、どうして私にわかるでしょう。」とまで言われています。自分をごまかし続ける源氏に、手痛いしっぺ返しが待っています。
November 6, 2004
娘を嫁がせる複雑な父親の心持ち。父親から恋のアドバイスを受ける息子。この世の栄華を極めた源氏は。美しき女性たちが巡る光源氏のものがたり、大団円。第三十三帖 <藤裏葉 ふじのうらば> あらすじ内大臣は夕霧と話す機会はないものかと思案しています。三月は大宮の亡くなった月で、法要の際に二人は顔を合わせました。雨が降りそうな空模様の中、「もうそろそろ許してくださいよ。」と夕霧の袖を引いて言う内大臣。「お許しがいただけないのでご遠慮申し上げておりました。」夕霧がこう応えるそばから急に雨が降り出し、会話はそのままになってしまいます。内大臣が何を言いたかったのか、夜もふけるまで考える夕霧なのでした。四月、内大臣は自邸に藤の花が見事に咲いたので音楽の宴を催すことにしました。内大臣は柏木を使者に、夕霧に招待の文を届けます。「私の掌中の珠、美しき藤が深く色ついたこの黄昏に春の名残をお訪ねください。」素晴らしい藤の枝につけられた歌に心ときめく夕霧。「本当に手折ってもよいのでしょうか、黄昏にまぎれた藤の花を。」柏木にこの歌をもたせて、先に帰しました。夕霧は源氏に内大臣の歌を見せます。「向こうから折れてきたのだからもう許せるだろう。早くでかけるように。」源氏はそのまま出かけようとした夕霧にとびきりの衣装を与え着替えさせました。夕霧は水際立った姿で内大臣家に迎えられました。内大臣は厚くもてなし、夕霧を酔わせようとします。夜も更けて、内大臣は酔ったふりをした夕霧を、柏木の案内で雲居の雁のもとにいざないました。帰ってきた夕霧の報告を、源氏は誇らしく思います。そして、気を許して浮気をしないように、内大臣は意外に心が狭い人だから、と忠告しました。源氏はまだとても若く見え、二人が一緒にいると美しい兄弟のようです。その年の葵祭りを、源氏は紫の上と見物に行きました。六条院の他の女性が同行を遠慮するほど、紫の上の威勢はたいしたもので人々の注目の的です。源氏は葵上と六条御息所の車争いを思い出していました。狼藉を受けた御息所の娘が中宮として誰も及ばない地位にあるのに対し、葵上の生んだ夕霧が所詮は臣下として進んでゆくしかないことに改めて無常を感じ、世を捨てたいのだが残される女性たちのことを考えると・・・などと紫の上に語ります。この祭りにはあの惟光の娘・藤典侍(とうないし)も来ていて、夕霧は文を届けます。雲居の雁のことを聞いて典侍は心が波立っていますが、夕霧とはこれからも関係を続けてゆきそうです。紫の上は明石の姫の入内に際して、実母・明石の君に付き添いを託すことを思い立ちました。明石の君も祖母の尼君も本当に喜んでこの申し出を受けます。紫の上が入内の最初の三日間の付き添いをしたのと入れ替わりに、宮廷に入る明石の君。二人は初めて顔をあわせ、お互いの美しさ、たしなみの深さは源氏に愛されるのに相応しいと認め合うのでした。四十歳になるのを前に、源氏は准太上天皇(じゅんだじょうてんのう)になり、帝の位を退いた院と同じ待遇になりました。それでも冷泉帝は、真実の父である源氏に帝の位を譲れないのを残念に思っています。内大臣は太政大臣に、夕霧は中納言に昇進。「六位なんか。」と侮った雲居の雁の乳母は恐縮しています。「こうなるとは思わなかったのだね。」と笑顔でいう夕霧。夕霧はさらに、雲居の雁と幼い日々を過ごした三条の屋敷を改修して、夫婦仲睦まじく暮らし始めます。内大臣も、この縁組は雲居の雁にとって入内するよりずっと幸せだったのだと満足しました。十月、冷泉帝が六条院に行幸し、朱雀院もやってきました。源氏が一段低い場所に座っていたのを、冷泉帝は同じ列に並ばせます。紅葉のころで、朱雀院での紅葉賀を思い出す舞楽が始まりました。青海波を頭の中将だった太政大臣と共に舞ったことが心に蘇る源氏。自分はやはり源氏とは並び立てない存在だったのだ、と改めて思う太政大臣。冷泉帝と夕霧は源氏に本当によく似ていて、いよいよ立派に美しさを増しています。夕霧が笛を吹き、内大臣の息子の弁の少将が美声を響かせる中、宴は佳境に入るのでした。恋愛セミナー331 夕霧と雲居の雁 幼なじみの恋が実る2 夕霧と藤典侍 続いていた二人夕霧と雲居の雁の仲を引き裂いてから6年、とうとう内大臣は自分から白旗をあげました。娘を藤の花にたとえて誘うあたり、艶ではありませんか。夕霧の方も、源氏に誘いにのって良いものか相談しています。正式な結婚は本人達だけでなく家同士のものでもある。まして、内大臣は源氏の申し出を断って顔に泥を塗った経緯も。夕霧も父の顔を立てることをしなくてはならなかったのでしょう。夕霧のおしゃれに気を配るシーンは恋の先達としての源氏の本領発揮です。父親にカラーコーディネイトしてもらえる息子というのも、なかなか幸せなのでは?雲居の雁のもとから帰ってきた夕霧を迎えるシーンは、源氏の父親としての愛情が感じられてほのぼのします。入内にこだわっていた内大臣は、臣下に嫁がせることが娘の幸せに繋がったことを認めました。以前、弘徽殿の女御が後からきた帝より9歳年上の前斎宮に中宮の座を奪われたので、今度は東宮より7歳年上の雲居の雁で対そうという目論見がありました。けれど明石の姫の威勢を目の当たりにしてみて、雲居の雁はやはり勝てなかっただろうと思えたのかもしれません。先に玉鬘が帝に仕えることを目されながら、髭黒の右大将のもとで運が開けたことも大きな影響を与えていることでしょう。明石の君も、ようやく娘のそばにいられることになりました。紫の上が長年育ててきた明石の姫を手放したのは、明石の君への配慮もさりながら、このままずっと宮廷に居勝ちになるよりも、源氏との生活を大切にしたいという思いがあったのでしょう。子どもにかまけて夫を置いてはおけない妻。さらに源氏が語ったように、そろそろ紫の上も余生を考え始めたのかもしれません。さて、源氏は臣下の身から王族に返り咲きます。源氏の隠れた帝位願望が実った形。冷泉帝の父への破格の志を、源氏はどのような気持ちで受けとめたのでしょうか。********************************************************この一応の大団円にて、源氏物語の第一部が終了いたしました。須磨還りとか申しまして、「須磨・明石」のあたりで頓挫される方も多いそう。読み通された方、おめでとうございます。きっとますますお美しくなられたことでしょう。よろしければこれまでで気になる登場人物がいましたらお教えいただけると嬉しいです。今まで読んでいただいて本当にありがとうございました。第二部も、どうぞお付き合いくださいませ。
November 5, 2004
子供は親の恋の過ちをくり返すのでしょうか?結婚準備にかける親心とは。春夏秋冬に合わせた雅な御香の世界もお楽しみください。第三十二帖 <梅枝 うめがえ> あらすじ明石の姫がいよいよ裳着を向かえることになりました。東宮も同じ時期に元服するので、その後すぐに入内することになりそうです。源氏は入内の準備として、古今の錦、綾を集め、調度類を調えます。唐から香木が届いたので、六条院や縁の女性たちに二種類ずつお香を調合してもらうことにしました。紫の上も源氏も、お互いの部屋に引きこもって秘伝の方法で調合しています。それぞれの香がそろう頃、六条院に兵部卿宮が訪ねてきたので源氏は判定を願います。朝顔の君は沈香(じんこう 黒色なら伽羅)の箱に瑠璃の香壷。「黒坊(くろぼう 冬の香)」が優美な香り。源氏は庭に埋めて熟成させた香。「侍従(じじゅう 秋の香)」がことに匂い立っています。紫の上は式部卿宮から伝えられた三種類の調合法。中でも「梅香(ばいか 春の香)」がとても斬新。花散里は控えめにただ一種類を届けますが、その「荷葉(かよう 夏の香)」はやさしくしっとりとしています。明石の君は「薫衣の香 (くのえのこう)」。気品高くめったにないほど素晴らしい仕上がりになりました。兵部卿宮は皆を褒めたので、源氏は「気の多い判者ですね。」と笑います。秋の町で明石の君の裳着が行なわれ、紫の上は初めて秋好中宮に会います。源氏は明石の君のことを考えましたが、世間にどのような関係なのかと思われることを考慮して、呼ぶことは控えました。入内の前に、源氏は様ざまな書の手本も集めています。兵部卿宮、夕霧、そして源氏自身も技巧を凝らして古歌などを書きました。源氏は紫の上に、仮名の上手は朧月夜、朝顔の君、そして紫の上だと言って褒めます。こうして明石の姫の入内の準備が着々とすすんでいるのをきくと、内大臣は雲居の雁と比べて味気なく思い、夕霧につらく当たったことを後悔し始めていました。内大臣の気持ちの変化を夕霧は噂で聞いていましたが、向こうが折れてくれるまでは辛抱つよく待つつもりです。源氏はなかなか結婚しない夕霧に他の姫との縁談をすすめたり、浮気をせず夫婦仲良く添い遂げることが肝心、などと忠告したり。もちろん真面目な夕霧は雲居の雁以外に心を移すことなど考えられません。内大臣は女房から「夕霧が他の姫と結婚するらしい。」と聞き、雲居の雁のところにやってきました。「源氏の君がそれとなく頼まれていたのを断ったのに、今さら折れるのは世間の笑い者になるだろうし。でもやはり向こうの気持ちを聞いてみた方がいいだろうか。」内大臣は悩みながら帰ってゆきます。情けなさに雲居の雁が涙ぐんでいる時、夕霧から歌が届きました。「ずっと一人の人を思っている私は変わっているのだろうか。」「私を忘れて世間の風になびいてしまうあなたは平凡な人よ。」と返す雲居の雁。夕霧は雲居の雁が何故怒っているのか理解できないのでした。1 夕霧と雲居の雁 幼なじみの恋は何処へ源氏の子ども達が大人になってゆきます。明石の姫11歳、夕霧は18歳、そして源氏は39歳になりました。六条院ができてから4年。秋好中宮と紫の上が初めて対面したということに驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。季節の便りをかわしつつも、住んでいる女性達が互いに顔をあわせる機会はないのです。まして、中宮は王族の一員。六条院での催しさえ格式から参加しないことの方が多い。明石の姫が中宮の秋の町で裳着を行なったのは、破格の待遇で前例がないことです。それだけ明石の姫の地位を高めようとする源氏の思いが強く、実母である明石の君を呼ばなかったのも、彼女の低い身分が明石の君に差しさわりがないようにするためなのです。明石の姫の結婚の準備についてどう思われるでしょう。男性にとってはおそらく退屈、女性にとってはワクワクすることが多いのではないでしょうか。贅を尽くした衣服や家具、貴族のたしなみである絵画や書。そして季節に合わせて用意された香を判定するシーンは、現代にも伝えられる優雅な香道を思わせますね。香の調合法は決まっていても、作った人の心の深さや心配りで微妙に変化するのを、兵部卿宮は敏感にかぎ分けています。ここに出てくる香は現代でも手に入るものもありますので、見かけた時にお手にとってみてはいかがでしょうか。香りからも登場人物の人柄がわかるかもしれません。さて、内大臣が明石の姫の入内を聞いて心弱りしていますね。後先を考えず夕霧を拒んだが、、雲居の雁の行く先はどこにもない。肝心の夕霧本人は知らん顔に見える。この物語の中には「極端に強引にことを運ばないようにして波風をたてないように。」という言葉がよく出てきます。源氏の子どもに対する教育方針でもあり、明石の姫には万遍ない教養をもち鷹揚に物事に対するようにしていました。紫の上も源氏が教育しましたが、書や琴や歌といった教養から染物などの家事一般までオールマイティにこなす女性です。内大臣の方も教養はあるのですが、どちらかというと「一芸に秀でた」子どもが多い。柏木は笛や琴、その弟は歌が大変上手、内大臣自身も和琴の名手で、蹴鞠(けまり)は源氏もかなわなかったと記されている。世の声望を集める源氏の長年のライバルとして対した内大臣は負けん気が強いせいなのか、どうも強引にことを運ぶきらいがあるようです。一方、源氏の夕霧に対して親としての忠告も、これまで数々の色恋沙汰をみてきた方には笑止な感じです。故・桐壺院も源氏には女性をぞんざいに扱わないようにさとしていましたが、実際には波風を立てていたので源氏は真面目に聞きはしませんでした。自分が踏んだ轍を子どもに踏ませないようにと思うのが親心。親と同じようなことを繰り返しがちなのが子ども。真面目な夕霧も源氏と同じ道を歩むのでしょうか?
November 4, 2004
狙った相手を確実に射落とすのは?理想の結婚相手の条件とはなんでしょう。そしてあなたを生かす場所とは。第三十一帖 <真木柱 まきばしら> あらすじ「帝がお聞きになっては恐れ多いので、このことは内密にするように。」源氏が言っても、髭黒の右大将は有頂天です。玉鬘がすっかり落ち込んでいるのだけが気がかりですが、夫になれたことに髭黒の右大将は満足し、手引きしてくれた女房には感謝してもしきれません。源氏は大将を婿として丁寧に扱い、結婚のお披露目も行ないます。内大臣は「帝の近くで宮仕えをするより玉鬘のためになるだろう。」と安堵するのでした。源氏はがっかりしていますが、身の潔白が自分にも明らかになったので紫の上には面目が立っています。大将がいない頃を見計らって玉鬘のもとに行き「私が珍しいほど安全な男だと言うことがお分かりでしょう。」と言う源氏。玉鬘は顔をあげることもできません。髭黒の右大将は早く玉鬘を自分の屋敷に引き取りたいと願っていますが、なかなか事が運びません。尚侍となった玉鬘が参内することになったのも、帝の執心を知っているだけに不安です。それでも、宮廷から退出するときにまっすぐ屋敷に連れてこようと思いついたので、部屋の修復を急がせました。髭黒の右大将の正妻はもともとは美しいのですが長年、物の怪がついていて、髪は乱れ、衣も汚れ、部屋も無残に荒れ果てたままになっています。正妻の父・式部卿宮は玉鬘のやってくる屋敷にいることはない、と実家に帰るよう伝えてきました。正妻を不憫に思う上、子どももいることで別れる気はないと話す大将。気分が落ち着いている時だったので正妻は穏やかに対します。ところが玉鬘のところに行く準備を始めた途端、正妻はいきなり香炉(衣にお香をたき染めるために使う。)の灰を頭からかけたので、大将は灰だらけに。とうとうその夜は出かけることができなくなりました。ようやく次の晩、玉鬘のもとに行って、いままでの憂さがすっかり晴れてしまう艶やかさに喜ぶ大将。玉鬘は大将が来なかったことをいっこうに気にせず、相変わらず疎んじています。正妻の物の怪はおさまらず大将も帰ってきません。式部卿宮は迎えをやり、子ども達もろとも引き取ることにしました。大将がとてもかわいがっている上の娘は13歳。父が帰ってこないかと待っていましたが、母にせかされてしまいます。「離れても、いつも背もたれていた真木柱よ、私を忘れないで。」と詠んだ桧皮色(ひわだいろ 薄茶色)の紙を柱の隙間に押し込み、二人の弟たちと一緒に出発しました。大将は家へ戻ってこの歌を詠み、泣きながら家族を迎えに行きましたが、正妻にも娘にも会うことができません。下の二人の息子たちを引き取って屋敷に戻ったあとは、再び玉鬘のもとに行ってしまいました。式部卿宮の正妻は「紫の上は大将の正妻の姉妹に当たるのに、裏で糸をひいてこんな目にあわせた。」と猛り狂い、源氏のことも激しく恨んでいます。紫の上が辛く思っているので源氏は気の毒に思い、自分達にはなんの責めもないとなぐさめます。明けて正月、玉鬘は宮廷に参内しました。大将は玉鬘の身の回りの準備を万端にしつつも、早く退出するように何度も伝えてきます。そんな中、「鳥が身を寄せ合うように仲の良いあなた方がねたましい。その鳥のさえずる声までもが。」という歌を届けたのは兵部卿宮。恥ずかしくて返事のできない玉鬘のもとに、待ちかねていた帝がやってきます。「私が一番先に思いをかけていたのに。」と玉鬘の側を離れない帝に、大将は嫉妬し、さらにうるさくせきたてます。。思っていた以上に美しい玉鬘を帰すのを残念に思いながらも、再び参代できなくなっては困ると、帝は退出を許しました。いきなり大将の屋敷に玉鬘を連れて行かれた源氏は、時がたっても恋しさがつのります。二月になって「ふるさとにいる私をあなたはどんな風にしのんでくれるでしょうか」という源氏の歌に、涙する玉鬘。それからひと月たった三月、鴨の卵を果物のように仕立てたものと一緒に再び源氏は歌を託しました。「同じ巣に孵った可愛い子が見えないのは、いったい誰の手に握られているのだろう。」大将は返事を書くのをためらっている玉鬘の代わりに、代筆をします。「巣の中に隠れていた、数えてももらえない子をいったい誰にお返しするでしょうか。」受けとった源氏は表向きは笑いつつも、心の中は煮えくり返る思いです。十一月、玉鬘は可愛い男の子を産み、大将はとても大切にしています。内大臣は玉鬘に幸運が訪れたことを喜び、柏木は「いっそ帝の皇子ならば。」と残念がりました。あの正妻の生んだ息子たちとも玉鬘は仲良くしているので、真木柱の娘はうらやみます。近江の君も年頃で、どうやら夕霧を気に入っているようです。宮廷で夕霧の姿を見かけると大騒ぎをして「まだお相手がお決まりでないなら私が側に参ります。いつまで雲居の雁のことを?」と詠みかけました。夕霧はあきれて「風にただよう私でも思ってもいない方のところには行きませんよ。」と返しました。恋愛セミナー311 髭黒の右大将と玉鬘 まさにダークホース2 玉鬘と源氏 花嫁の父に源氏にとっては青天の霹靂だったでしょう。もっとも遠いところにいたように見える髭黒の右大将が玉鬘を射止めました。男性とはこういうもの、という玉鬘の基準-源氏がスタンダード-から大きく外れた人物に通われてしまう。藤壺のときもそうですが、女房の手引きには油断がならないのです。玉鬘はますます大将を嫌うのですが、実際、夫としてはどうなのでしょうか。当時は男性が女性の実家に通うのが主流。源氏が葵上を正妻にしていた時もそうでした。その分、外歩きが多くなり、浮気をする機会も増える。外から通うということは、女性の扱いが男性の心ひとつで決まるということ。気に入らなければ、それっきりということもある。内大臣も雲居の雁の母を離縁しています。大将は正妻と物の怪がついたあとも長い間連れ添ってきました。その間、屋敷内の女房と関係していたこともあるようですが、外を出歩くこともなく正妻を守ってきたのです。内大臣に次ぐ権力のある男性としては、異例の真面目さ。さらにここに玉鬘が加わってもこの位の身分で妻を二人、自邸に据えるということは、当時はよくあること。むしろ、中途半端な後ろ立てしかない玉鬘を結婚してすぐさま迎えるのは、奇特なことかもしれません。妻の実家に通うのは、妻の父に自分の後押しをしてもらうということでもあります。玉鬘を自邸に迎えることでの政治的メリットはあまりない。それにも関らず外歩きをする心配の少なくなる夫婦同居がかなったということは、玉鬘にとって妻としての安定した地位を占める可能性が高くなるということ、大将の思いが強いということなのです。兵部卿宮が出し抜かれたのは何故なのか?彼は王家に非常に近い人物。帝が玉鬘を望んでいることを知った時点で、足踏みをしてしまったのです。髭黒の右大将も、帝の思い人だということは知っていたはず。それでも、玉鬘を欲しくて突き進み、勝利をおさめました。帝には子どもがいないということも、大きかったかもしれません。多少の不興をこうむっても、皇子がいない帝の力の先細りは見えている。さらに大将の妹は次期帝、東宮の母。帝が位を譲ってしまえば、あとはわが世の春なのです。帝は大将に強いことがいえない上に大勢の妃もいて、玉鬘を求める決定打に欠ける。兵部卿宮はそんな帝の意向さえ気にしてあきらめ、せいぜい閨を揶揄した歌を送るのが精一杯。実の父である内大臣にきちんと根回しをして足固めをし、着実にやるべきことを実行に移して、真実の力を持ちつつあるのは誰なのかを示したのは髭黒の右大将。玉鬘は、彼女を心から愛し、浮気もしない、実力もある夫を手に入れたのです。内大臣が娘の縁を喜ぶのも当然ですね。さて、源氏は政治の一線から離れてしまったことを後悔したことでしょう。夕霧や柏木という息子達のみならず、髭黒の右大将という次世代勢力が育っていたことに、少々疎かったのかもしれません。世間からみたら源氏の囲い者になるより、前途洋洋の男性の妻になる方がいいということを見ないようにしていた。なにより、玉鬘にとって幸せなのはどうすることかという視点で事をとらえることができなかった源氏は、虚しく彼女の前から去るしかないのです。流されるようでいて、どこででも花を咲かせる女性・玉鬘。彼女もだんだんと髭黒の大将の誠がわかってゆく。劇的な環境の変化の連続だった玉鬘は、終の棲家を見つけたことで大輪の華を咲かせてゆくのです。☆髭黒さんは効果的な人に可愛がられ協力してもらえた楽天の三木谷さんタイプ、堀江さんは帝タイプかしら?☆
November 3, 2004
家の事情に左右される結婚。あなたの本当に求める場所は。第三十帖 <藤袴 ふじばかま> あらすじ玉鬘は帝に心ひかれるものの、寵愛を受けることになれば父・内大臣の娘・弘徽殿の女御や秋好中宮から疎まれることになるだろうと思い悩んでいます。また、中途半端な状態で六条院にいることが世間から何と言われているだろうと考えるのも苦しく、何とかして自分の身の潔白を晴らしたいと思うのでした。源氏は内大臣に告白をしてからは以前よりもっと頻繁に迫ってくるので気を許すことができません。大宮が亡くなり、孫である玉鬘も薄い鈍色(にびいろ 薄墨色 喪服の色)の衣をまといそれがかえって美しさを引き立てています。帝の言葉を伝えに夕霧がやってきました。玉鬘よりさらに濃い鈍色を着て、手にした藤袴(紫の小さい花が咲く。秋の七草のひとつ)を御簾の中に差し入れる夕霧。受けとろうとした玉鬘は花を離していなかった夕霧に衣の袖をとられてしまいます。「この花の薄紫と同じくあなたと共に喪に服している私に情けをかけてほしい。」と歌にたくす夕霧。玉鬘は気分が悪くなったと奥へ逃げてしまい、夕霧は、恋を打ち明けたことを後悔します。夕霧は源氏のところへ行き、玉鬘が宮仕えをした時の女御や中宮の間に入ることの難しさや兵部卿宮の落胆を示唆します。「髭黒の右大将も内大臣に玉鬘と結婚できるよう頼んでいたのにと、こちらを恨めしく思っているようだ。玉鬘はしっかりしているので宮仕えにも、兵部卿宮の正妻にもふさわしいだろう。」と源氏。夕霧は源氏の気持ちをはかりかね、玉鬘を宮仕えに出すのは表向きで本当は愛人にするつもりなのだ、と内大臣が語っているらしいと伝えました。源氏は笑って否定しますが、自分の考えを見抜かれてしまったことをいまいましく思います。柏木は玉鬘が実の姉と知ってからふっつりと文を出さなくなりましたが、ある日内大臣の伝言を持って訪ねてきました。「実の姉弟だったのに恋の深い道に迷い込んでいました。」と詠む柏木。「姉弟だったことも恋の道に迷っていることも知らないであなたの文を見ていました。」と玉鬘。夕霧ほど整ってはいませんが、この柏木もとても美しく、魅力ある公達として並び立っているのでした。髭黒の右大将は柏木の上官にあたるので、何度も呼び寄せては玉鬘との取り持ちを頼み、内大臣にも熱意を伝えます。帝からも信頼されている髭黒の右大将なのですが、内大臣はやはり今まで世話をしてくれた源氏の意向に従おうとしていました。紫の上の姉にあたる式部卿宮の娘が髭黒の右大将の正妻なのを理由に源氏はこの結婚には乗り気ではないようです。参内を控えた九月のある朝、玉鬘は密かに届けられた恋文を女房に読ませています。「結婚にふさわしくないとされる九月。その九月にさえ恋に命をかけているはかない命の私。」と髭黒の右大将。「帝の愛を受けても霜のようにはかない私のこの愛は忘れないで欲しい。」と笹に霜がついたままに届けた兵部卿宮。「自分から望んで日に向かう向日葵も、朝おりた霜を自分で消しはしません。望んではいない私ならなおさら。」と返す玉鬘。その他にもたくさんの文がきましたが、玉鬘は兵部卿宮だけに返事をしたのでした。恋愛セミナー301 夕霧と玉鬘 美しい姉から従姉への思い2 柏木と玉鬘 恋の残照3 髭黒の右大将と玉鬘 無骨者が恋をすると4 兵部卿宮と玉鬘 未練残して5 源氏と玉鬘 実の父に公認されて玉鬘を取り巻く男性達の織り成す心の動きが現われる帖です。紫の上とも文を交わし、花散里ともうまくやっている玉鬘は女性にも好かれていますが、それにしても大人気。帝をはじめ、夕霧と柏木という若きエリート、内大臣に次ぐ権力者と目されている髭黒の右大将、優雅な兵部卿宮、そして源氏。恋を楽しめる女性なら、冥利につきる面々ですね。けれど玉鬘は悶々と悩み続けます。内大臣の所にいけば、その他大勢の子どもに立ち混じり、所詮は近江の君と似た出自であることが際立ってしまう。宮仕えをすれば、帝の妃たちがいる中にあとから割って入ることに。今いる六条院では、源氏が実の父でないことが世間に知れたため、好奇のまとになっているのが苦痛。彼女が求める場所は、いったい何処なのでしょうか?女性にも男性にも好かれている玉鬘はなるべく波風を立てない、誰の顔も潰さないことを求めているようです。聡明なので帝では内大臣方に、髭黒の右大将では源氏方に差し障りがあることを知っている。夕霧や柏木では役不足。姉から従姉に、またはその反対に、というややこしい事情があった以上に、源氏という美しさも趣味も権力も誰の追随も許さない大人の男性を間近にみて審美眼が格段に上がっている玉鬘には、彼らはとても恋愛対象にはならないのでしょう。この消去法によって残ったのは兵部卿宮。玉鬘は彼だけに歌を返すことで、身の振り方を自分では決められないこと、宮仕えは本意ではないことを知らしめるのです。なよなよと相手に頼り合わせることで男心を虜にした母・夕顔と、世間の風を省みずに源氏を訪ねた父・内大臣の実直さがあらわれていますね。彼女の落ち着く先は何処でしょうか。あなたならどの道を選ばれるでしょうか。
November 2, 2004
数人からのプロポーズ。何を基準にあなたは相手を選ばれるでしょうか。第二十九帖 <行幸 みゆき> あらすじ源氏は玉鬘への思いが世間にわかってしまい、内大臣に大げさに婿扱いでもされたらみっともないことになると案じています。その頃、大原野(おおはらの)への行幸(みゆき 帝が出かけること)があり、大勢の人々が繰り出すことに。六条院から玉鬘も見物に出かけることになりました。内大臣や他の多くの貴人たちを見ても、帝の端正な美しさは誰も比べることはできません。源氏とは見分けがつかないほどそっくりな帝ですが、さらに威厳があって立派です。蛍の光で惑わされた兵部卿宮の姿もみえます。髭黒の右大将もいましたが玉鬘はどうも好きになれません。玉鬘は源氏に以前から帝に仕えるようにほのめかされていましたが、あの美しい姿を見られるのなら、という気になりました。翌日、源氏は「帝をご覧になって宮仕えへお気持ちが動きましたか?」という手紙を玉鬘に届けました。宮仕えの前に裳着(もぎ 女性の成人式)を行ない、その際に内大臣に玉鬘のことを打ち明けようと源氏は準備を始めます。源氏は手紙で内大臣に裳着で腰紐を結ぶ役を頼みますが、忙しいことを理由に断られてしまいました。三条の大宮のもとに出かけて事情を話し、内大臣を呼び出してもらう源氏。夕霧と雲居の雁の結婚のことかと期待してやってきた内大臣は、源氏と久しぶりに顔を合わせて話します。このところ、二人は政治的に争うような立場にいたのですが、すっかり昔の良き友人としての親しみが戻ってきました。源氏が玉鬘のことを話すと内大臣は泣いて夕顔との恋を思い出し、裳着の役目を引き受けます。三条をあとにした内大臣は「おそらく玉鬘は源氏の愛人になっているだろうが悪いことではない。ただ、宮仕えをするのは弘徽殿の女御にとっては都合のいいことではないな。」と考えます。夕霧も、源氏の玉鬘に対する振る舞いにようやく納得がいきました。それでも自分が玉鬘に思いを寄せるのはやはり良くないことだと真面目に考えています。裳着は滞りなくすすみ、玉鬘は二人の父親を前にして胸がいっぱいです。たくさんの客人の中の柏木や弁の少将といった玉鬘の弟たちは、実の姉ができたことに複雑な思い。内大臣は今後も玉鬘のことは、源氏の意向に沿うようにするつもりです。兵部卿宮は成人した玉鬘とすぐにでも結婚したいと申し出ますが、源氏は帝から尚侍(ないしのかみ)になるよう内示があることを伝えました。玉鬘のことはぱっと広まり、あの近江の君も知ってしまいます。「新しいお父様の娘だって身分が低いのに尚侍になるなんて。私がなりたかったのに。」と柏木や弁の少将に付きまとう近江の君。「どうして私に言わないのだ。得意の歌でも作って帝にお願いしてみなさい。」内大臣はこう言ってそそのかし、すっかりその気になった近江の君をさらに笑い者にしています。内大臣は自分の恥を娘を笑うことでごまかしていると、世間に噂されているのでした。恋愛セミナー291 冷泉帝と玉鬘 源氏とそっくりの若い帝に心動く2 髭黒の右大将と玉鬘 なんのときめきもなく3 兵部卿宮と玉鬘 思いが肩すかしになる優雅な兵部卿宮、無骨で実直な髭黒の右大将、そして若く美しい冷泉帝が玉鬘の未来の可能性として並び立ちました。源氏に瓜二つの帝に一番心動かされる玉鬘。自分とそっくりな帝を見たら必ず関心を持つに違いないと踏んでいる源氏には、己の美しさへの自負と疎まれてはいないという確信が見えます。父・玄宗帝に自分の愛する楊貴妃を差し出した皇子のように、息子である冷泉帝と女性を共有しようとする源氏。秋好む中宮ではできなかった、帝の女性と関係する行為が玉鬘でなされようとしています。桐壺帝の妃・藤壺との関係からくり返される源氏のこの行動は、やはり隠れた帝位願望なのでしょう。玉鬘が、ついに実の父親と対面しました。彼女の感慨をよそに、二人の父は次の展開を冷静に模索。流れ流れる運命の玉鬘は、本来の巣に行くことはなく、源氏のもとに留められます。誰のもとに行けば、玉鬘は最も幸せになれるのでしょうか。あなたなら、誰を選ばれるでしょうか。☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします。☆☆
November 1, 2004
奔放で魅力ある人と一途で美しい人。どちらをあなたはお好みになるでしょうか。第二十八帖 <野分 のわき> あらすじ六条院に本格的な秋が訪れました。秋好む中宮の植えた秋の花も、今が盛りです。庭の見事さについ里住みが長くなる中宮は管弦の宴を催そうと計画していますが、そんな折、野分(台風)がやってきました。春の町の紫の上も野分で痛んでしまった庭の花木を、すこし外から近い場所で眺めています。源氏が明石の姫のところへ見舞いに行っているちょうどそのとき、野分の見舞いにやってきた夕霧は紫の上を垣間見てしまいました。匂うような美しさに、魂を抜かれたような心地になる夕霧。父・源氏が明石の姫には親しませても、義母にあたる紫の上にはほんの少しも会わせようとしない理由が、夕霧にはようやくわかったのです。源氏はまもなく帰ってきて、紫の上を奥に連れて行ってしまいます。なおも見続ける夕霧は、美しい二人の睦まじさに胸が締めつけられるような思いを味わいました。たった今来たばかりのように咳ばらいする夕霧に気づいた源氏は、もしかしたら紫の上を見られてしまったのではないかと疑い始めます。源氏の見舞いの言伝を持って三条の大宮のところにも行った夕霧ですが、雲居の雁のことよりも紫の上の面影が心から離れません。源氏が花散里のような女性を美しい紫の上と同じ六条院に迎えている心の広さに感服し、自分はあのような美しい女性を妻として暮らしたいと願います。六条院に戻ってきても物思いにふけっている夕霧を見て源氏は、やはり紫の上を見てしまったのでは、と思いますが、ひとまず他の女性たちの見舞いに出かけました。秋の町の中宮は気持ちが沈んでいる様子でしたので気を引き立てることをいろいろ語りかけます。冬の町では庭に女童を降ろして草木を起こしていました。琴をかき鳴らしていた明石の君は源氏の姿を見てきちんといずまいを正します。すぐに帰ってしまう源氏の冷たさに明石の君はかえって侘しさを感じるのでした。玉鬘を訪ねた源氏はまたいつものように恋を語りだしました。源氏と玉鬘がぴったりと寄り添っているのを見舞いにやってきて目の当たりにしてしまう夕霧。夕霧にも初めて見る玉鬘の艶やかさには、義理の姉あたりであれば恋心を抱きそうに感じられます。父・源氏も離れていた娘にはそんな感情になるのだろうか、となんとも嫌な気持ちになりました。源氏が花散里のところへ行くと、女房たちとたくさんの衣を作っているところでした。布を染めたり縫ったりすることは、花散里は紫の上に劣らないくらい達者です。摘んできた花で染め出した色調はとても見事で、源氏は若い夕霧に着せるようにすすめました。すっかり気分が沈んでしまった夕霧は雲居の雁に文を書こうと明石の姫の女房に紙と硯を求めます。紫の紙に歌をしたためて刈萱(かるかや イネ科)という地味な草に結びつけたため、女房から「もっと風情ある花に。」と教えられる真面目一方の夕霧。もう一通書いて、これはどちらに届けられるのでしょうか。夕霧は今日見た女性と比べてみたくなり、明石の姫をも改めて覗き見ました。紫の上は樺桜、玉鬘は山吹、そして明石の姫はまだ幼いながら藤の花にたとえ、この美しい女性たちを日頃から眺めて暮らす源氏を羨み、自分もそうありたいと思います。ようやく三条に見舞いにきた内大臣に、大宮は雲居の雁に会いたいと泣きつきます。「そのうちに。また出来の悪い娘を持ちまして。」と笑って応える内大臣。まだ夕霧とのことを許してはいない様子に大宮は情けない思いになるのでした。恋愛セミナー281 夕霧と紫の上 義理の母と息子2 夕霧と玉鬘 姉であっても心ひかれる3 源氏と夕霧 息子に初めて警戒を因果は巡るといいましょうか。源氏が紫の上を夕霧に見せないようにしていたというのがおもしろいと思いませんか。自分が行なってきたことだけに、夕霧の心の動きを非常に敏感に捉えていますね。それなのに同じ日に玉鬘と自分の仲さえ見られてしまうのは、やはり野分のしわざなのでしょうか。娘分の秋好む中宮。艶やかな玉鬘。可憐な明石の姫。やはり源氏の娘たちは、内大臣より格段に上のようですね。ここに樺桜の紫の上が加わった六条院の女性には、さすがの夕霧も心動かさずにはいられない。ただし夕霧は、義理の母を思ったり、娘を愛人のように扱う父の感情を想像するだけで恥じています。姿形は源氏に似ている夕霧ですが、性格は母の葵上似で、真面目。女性の心をとらえるテクニックも、父には到底及ばないというのが、歌ひとつ贈ることにも現われていますね。女性の心をとらえる術を知っている源氏と、美しくとも生真面目な夕霧。あなたなら、どちらをお好みになるでしょうか?☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします。☆☆
October 31, 2004
一時休戦。あなたの恋の炎を冷ますには。第二十七帖 <篝火 かがりび> あらすじ近江の君を弘徽殿の女御のもとに仕えさせ、笑い者にしている内大臣の心ない扱いを、源氏は気の毒に思っています。玉鬘も改めて、何も知らないままに内大臣のもとへ娘だと名乗りをあげていたら同じような目にあっていたかもしれないと気づきます。右近も源氏に引き取られたことの幸運を玉鬘にさとすのでした。玉鬘は、源氏の愛情が深いことをだんだんと感じ取っています。秋の夕暮れ、和琴を教えるという名目でやってくる源氏。琴を枕にして寄り添う二人に、それ以上のことは何もないのが不思議なほどです。庭に篝火を焚かせる源氏。炎に照らされた玉鬘の髪を撫で、美しさを愛でながら源氏は恋を語り続けます。「篝火から立ちのぼる煙こそ私の絶えない恋の煙。」と源氏。「煙は消えてしまうもの。恋の煙も空に紛れさせて。」と玉鬘。あまりにも長い訪問を見咎められないよう、心を残して帰る間際に、花散里のいる東の方から、夕霧や柏木が合奏する笛などの音が聞こえてきました。皆を招いて、源氏は和琴を弾き、夕霧は笛を吹きます。柏木は歌うように言われますが、玉鬘への思いがつのってなかなか声を出すことができません。代わりに弟の弁の少将が素晴らしい声で歌いました。源氏が柏木に和琴を渡すと、名人と言われる内大臣に勝るとも劣らない演奏をします。御簾(みす 貴人の屋敷で使われる目の細かいすだれ)の奥で、実の弟の琴の音を感慨深く聞く玉鬘。恋心を隠しとおせないような気持ちになりながらも、さりげなく振る舞おうとする柏木なのでした。恋愛セミナー27 1 源氏と玉鬘 父として恋人として2 玉鬘と柏木 弟の思いは募る篝火の火影に揺れ動くそれぞれの思いが、炙り出される帖です。原文はとても短いのですが、楽の音、玉鬘の髪の肌触り、篝火の煙にたくされた恋歌など、非常に研ぎ澄まされた感覚で描き出されています。蛍の御簾の中でほのかに舞う淡い光りとは対象的に、外から明々と内心のほてりを現すかのように御簾の中の暗闇を照らす篝火。自ら演出した明と暗の効果に中てられて、源氏の玉鬘への思いも、もうあとには引けないところまで来ています。思わぬ客人を招いて、いましばらく玉鬘のところに留まる源氏。実の姉に恋する柏木を見て、源氏はただ楽しんでいたのでしょうか?むしろ柏木に己の姿をうつし、恋の熱を冷まそうとしていたのかもしれません。若き日の、頭の中将たる内大臣の面影を色濃く残す柏木。夕霧と柏木は、その父親たちのように良きライバルとして競い合っています。内大臣が夕霧に辛くあたるのは、源氏の姿を見るからでしょう。巨大な存在になった父親たちは、次世代にも何か張り合う気持ちを起こさずにはいられない。それは王家対藤原一族という家同士の敵対心なのか。それとも、若さという決して取り戻せないものへの羨望なのでしょうか。後の帖で、源氏の恐ろしいまでの嫉妬がこの若きライバルに向けられてゆきます。☆「大奥」をみていましたら、御簾や几帳がよい雰囲気で配されていました。まさに後宮物語。ぜひご覧下さいませ。☆☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします。☆☆
October 30, 2004
隙のある人の、魅力。恋する相手のどこにあなたは惹かれますか?第二十六帖 <常夏 とこなつ> あらすじ六条院に柏木たちがやってきたので、源氏は内大臣と昔の縁あった女性の子供を柏木が探し出してきた、という噂の真偽を確かめます。やはり噂は本当でしたが、ずいぶんと風変わりな女の子のようです。源氏は夕霧に、同じ姉妹ならそんな落ち葉でももらったらなどとからかったり、内大臣に玉鬘のことがわかれば、きっと大切にするだろうと思ったりしています。源氏が玉鬘のもとにゆくと、夕霧や柏木たちもついてきて、庭で屋敷のうちの風情ある様子をうかがっています。玉鬘に、源氏は柏木に冷たくしないように諭したり、夕霧が内大臣に雲居の雁のことで嫌われていることを話しました。玉鬘は、ああ、そんな事情があって私という娘がいることを内大臣に伝えてもらえないのだ、とさとります。源氏は和琴をかきならしつつ、内大臣がこの楽器の名手であることを話します。源氏の美しい音色よりももっと素晴らしいという父の和琴を、いつか聞いてみたいと願う玉鬘。琴の音に引き寄せられる玉鬘の美しさに、源氏は苦しいほどの愛しさを感じています。玉鬘も、近づくだけで無体なことはしない源氏にだんだんと慣れ始めていました。いっそ玉鬘を嫁がせてしまい、夫を六条院に通わせるようにすれば、自分もこっそりと関係を持つことができるだろうかと、源氏はまた事がややこしくなることを考えています。内大臣は息子が引き取った娘のことを源氏に訊ねられたことを聞き、悔しがります。同じ田舎で育った娘でも、源氏の方は美しさで評判になっているのもいまいましくて「実の娘ではないのでは?」と疑う内大臣。夕霧がいっこうに雲居の雁とのことを仄めかさないのも可愛げがないと感じて、もっと昇進するまでは結婚を許さないと決心するのでした。内大臣は久しぶりに雲居の雁を訪ねました。薄い衣を着て、油断して眠っていた雲居の雁が驚いて起きた姿はとても可愛いらしく、内大臣はその無防備さを注意しつつ、かといってあまりにも頑なな態度も良くないが、と教えます。明石の姫がとてもおおらかに過不足なく育てられていて、次の帝への入内を期待されていることを話し、雲居の雁も入内はできなくともつまらない男性に気を許さないように、とさとしました。内大臣は迎え入れた風変わりな娘・近江の君(おうみのきみ)を宮廷で仕えさせていただけたら、少しはましになるでしょうか、と弘徽殿の女御に訊ねます。女御は「柏木の思い込みあっただけで、そんなにひどい方ではないのでしょう。」とおっとりと応えました。内大臣が近江の君に行ってみると、彼女は五節という女房と双六をして大はしゃぎ。ものすごい早口で「小賽、小賽!(しょうさい 相手が振ったサイコロに小さい目がでるようにするおまじない。)」と叫んでいます。もう少しゆっくり話したら、という内大臣に、生まれたときに祈祷をしてくれたお坊さんが早口だったのがうつったようで・・・と応える近江の君。けっして醜くはなく、生き生きとして愛嬌があり髪も美しい近江の君を見て、確かに自分に似ている・・・と認めざるをえない内大臣。身の周りの世話をしてもらったらもっと側にいてもらえるが、と言うと「お父様のそばにいられるならおまるのお掃除でも何でもしますわ!」、女御のところに行儀見習にでも、と言うと「皆さんと一緒にいられるなら水汲みもします!」すぐにでも出かけそうな近江の君に「そのつもりなら今日でも。」と伝え、内大臣は逃げ出しました。近江の君は弘徽殿の女御に妙な歌を贈って皆を当惑させます。「筥崎の松(はこざきのまつ)」とある返歌をもらって「松って書いてあるから待つってことよ!」と大乗り気。衣にむせかえるほど香をたき染めて、訪ねる準備をするのでした。恋愛セミナー26 1 源氏と玉鬘 馴れ合う二人。2 夕霧と雲居の雁 いまだ進展なく。3 内大臣と近江の君 昔のつけが今ここに。不自然な状態にも、だんだんと順応してしまっている玉鬘。源氏も耐えてはいるのですが、玉鬘がほんの少しでも親しんでくると自制心が緩みます。適当な婿を迎えて、玉鬘との関係を進めようと考える。いつまでも、恋の現役でいる源氏なのですね。後半は、内大臣の娘たちです。頼りなくも可愛らしい雲居の雁。おっとりと優雅な弘徽殿の女御。早口で愛嬌者の近江の君。末摘花、源典侍に続く、楽しいキャラクター近江の君を玉鬘と並べた紫式部は、本当に巧みです。息詰まる源氏と玉鬘とのやり取りの中に、ふとこんな女性が紛れ込んでいるのも一興。近江の君のファンは、結構いらっしゃるようです。「あはれ」一辺倒じゃないわ、「をかし」も書けるのよ、という作者の気概が表れていますね。「をかし」の覇者・清少納言への挑戦状かも。当時の雅な宮廷では、きっとこんな滑稽味が求められたのでしょう。雲居の雁と夕霧が引き裂かれて三年あまり。まだ17歳と15歳の二人は先が長いとはいえ、いったいどうなってゆくのでしょう。雲居の雁のように、油断して眠っていた女性の美しさは、玉鬘も演じています。一部の隙もない人よりも、こんな警戒心のない姿を好ましく思う気持ち、きっとどなたにもあることでしょう。内大臣も、しっかりしているようでちょっとうっかりさん。やはりこの娘たちの親ですね。こんな隙があるときに、その人の飾らない、真の魅力があらわれるのかもしれません。☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします。☆☆
October 29, 2004
夫婦が寝室を共にしないのは愛が冷めたから?それとも?第二十五帖 <蛍 ほたる> あらすじ玉鬘は世間的には父である源氏に言い寄られていることを悩み続けています。打ち明けたことで源氏も悩み深くなっていますが、周りに人がいるのであからさまにはできません。女房がいない時は源氏は直情的に迫りますが、玉鬘は美しくこぼれるばかりの愛想のよさで相手の気分を害さないようにふるまっています。兵部卿宮が玉鬘に真剣になり、なんとか近くで思いを伝えたい、という文を送ってきました。源氏はその様子を見たいと、玉鬘に返事を書かせます。結婚したら源氏から逃れられるのかしら、という考えも玉鬘に浮かぶのでした。源氏が張り切って兵部卿宮を迎えるのを、周囲は父親としての振る舞いと思い、感心しています。新月に雲がかかる中の、恋に悩む兵部卿宮の艶やかな美しさ。几帳(きちょう 布を垂らした仕切り)ごしに玉鬘のいるあたりから漂う香り。さらに源氏の衣にたき染めた匂いが相まって、いよいよ心惹かれた宮が恋を連綿と語る雰囲気は並の人とはやはり違います。様子を観察しながら、源氏はもっと宮の側に寄るようにすすめますが、玉鬘はためらっています。源氏は玉鬘へ近づくと、ふいに几帳の中で蛍を放しました。蛍の光に浮かび上がる艶やかな玉鬘。兵部卿宮はすっかり心を奪われてしまいます。五月の節句には、宮廷で競射が行なわれ、参加者の多くがそのまま六条院の花散里の町にやってくることになりました。夕霧をはじめとした公達(きんだち 貴族の子息)や、たくさんの親王も足を運び、様々な遊びを楽しみ、女性達は見物をします。源氏はそのまま泊まり、昼間見た親王たちの噂を花散里と交わしました。「兵部卿宮はどうでしたか?」という源氏の問いに花散里は「あなたの弟君なのにもっと老けてみえました。」と応えます。花散里は自分の町で晴れやかな催しが行なわれたことをとても嬉しく思っています。そんな花散里を愛しく思い、心和む源氏。それでも眠るとき源氏との間に几帳をたてた花散里は、夫婦として寝所を共にすることなど、もう似合わないと思っています。源氏は夕霧を紫の上には近づけないようにする一方、明石の姫には馴染ませていました。夕霧は明石の姫と人形遊びなどをするたびに、雲居の雁のことを思い出しますが、内大臣の息子たちの前では自分の気持ちを悟られないようにしています。柏木の方は玉鬘との仲立ちを頼みますが、夕霧は聞こうとはしません。内大臣は娘・弘徽殿の女御が中宮になれずじまい、雲居の雁も東宮に嫁がせることができないので、源氏が玉鬘を見つけ出してきたのを羨んでいます。夕顔の娘のことを思い出し、息子達にも気をつけて探すように伝えたり、夢占いをさせて「お子様が誰かに育てられています。」と言われたり。過去の奔放な女性関係を思い出しては気にかけているのでした。恋愛セミナー251 源氏と玉鬘 ますます怪しく2 兵部卿宮と玉鬘 蛍の光で深まる思い3 源氏と花散里 夫婦別床蛍の光りに浮かぶ、美しい玉鬘。物語の白眉のひとつです。書物でなく女性を見るためにこんな趣向を考えるのは、源氏ならでは、ですね。成人した高貴な女性が男性に姿を見せることは、この時代はかなりの衝撃。女性の姿を見たために思い詰めてしまうのは、後の帖で夕霧も柏木も経験します。この帖では几帳がとても重要なアイテムですね。布を垂らした向こう側は、別の部屋と同じこと。物理的には簡単に乗り越えることができても、心理的には戸を隔てた感覚。暗いガラス戸の向こう側に突然明かりが点いて、中にいた女性の姿が見えてときめく男性、続きの和室で、夫と自分の間のふすまを閉めて眠る妻、そんな感じでしょうか。花散里と源氏の夫婦としてのあり方はどうでしょう。おっとりしているように見えて、花散里はなかなか辛らつな意見を言っていますね。なびくように見えて、どこか手ごたえのある女性。やはり花散里も、源氏の好みに見合っているのです。源氏は花散里に夕霧と玉鬘の世話を頼んでいますし、夏の町では度々催しを開いています。どちらも、しっかりとした見識を持っていないとできないこと。二人はお互いに信頼しなくなって、寝室を別にしてしまうのではない。尊重し合った上で、あえて枕を交わさないのです。さて、いよいよ内大臣が動き出しそうな気配ですね。自分にゆかりの娘探しで、内大臣が得るものは・・・。次の帖をどうぞお楽しみに。☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 28, 2004
子どもに恋する親の心情とは?親子ほど年の離れた人に恋してしまったら。第二十四帖 <胡蝶 こちょう> あらすじ源氏は春の盛りを楽しもうと、六条院の池に船を浮かべて、その上で宮廷の楽人たちに音楽を演奏させました。たくさんの貴人がやってきて、玉鬘のことを気にかけています。玉鬘が姉であることを知らない内大臣の息子・柏木の中将もその一人。また、正妻を亡くして三年たつ兵部卿宮(ひょうぶきょうのみや)も心そぞろ。源氏は弟である兵部卿宮が結婚を望んでいるのを知って、盃を何度も空けさせるのでした。夕霧は弟として真面目に対していますが、玉鬘は心苦しいばかり。一方で実の弟に恋文をもらうのが情けない思いですが、はやく父・内大臣に伝えて欲しい、とは言いません。源氏を頼りにしている様子が母・夕顔に似ていて、そのうえに内大臣の才能のきらめきも見えます。源氏は玉鬘への恋文が増えたのを喜んで、何度もやってきます。兵部卿宮の文を見ておもしろがったり、柏木の文字の見事さに誰なのかをたずねたり。「人を選ばなくてはいけない。兵部卿宮と髭黒右大将(ひげくろのうだいしょう)二人には返事をするように。」女房の右近にはこんな意見をしました。源氏はそのあとで「兵部卿宮は浮気で何人もの愛人がいる。髭黒右大将は正妻が嫌になったのであなたと結婚したがっている。あなたの本当の気持ちは出しにくいだろうが私を親と思って。」と玉鬘には言います。「親はいませんでしたのでよくわかりませんの。」という返事に「では養父の私を本当の親として、この深い気持をわかってください。」と源氏は隠れた恋情を伝えますが玉鬘は気づいていないようで、がっかりしています。源氏は紫の上に「玉鬘は頭もよくて人から好かれる娘だ。」と話しました。「頭はよい方でも、あなたに心を許すなんて。私の時のことを思い出しますわ。」と紫の上。気持ちを見透かされてしまったので源氏は口をつぐんでしまいます。ある雨の降った日の夕暮れ、また源氏が玉鬘のもとをたずねました。急な訪れに油断していた玉鬘をみて、その美しさに夕顔を思い出して涙する源氏。ついに手をとって恋心を打ち明けてしまい、自分の衣をすべり落として困惑する玉鬘の横に添い寝しました。あまりに長い訪問を女房たちにどう思われるかと、玉鬘は情けなく思います。「他の人には気づかれないようにしなさい。」と告げて、源氏は帰りました。ただの添い寝ではあるものの、玉鬘は男性がこれより近づくことがあるとは思えません。源氏からの歌には「なぜ何かあったような顔をしているのでしょう。」とあり、憎らしいのですが返事を出さない訳にはいかないので「拝見しました。気分が悪いのでお返事は失礼します。」とだけ書きました。その後は源氏はもっと頻繁にやってきて何度も迫るので、玉鬘は寝込んでしまいそうです。世間や父・内大臣にわかったらどう思われるかと悩みはつきません。兵部卿宮、髭黒右大将、そして柏木も恋文を書き続け、思いを募らせるのでした。1 源氏と玉鬘 養父、娘分に恋を打ち明ける。2 柏木と玉鬘 実の姉弟3 兵部卿宮と玉鬘 見ぬ相手に思いをかける。娘に恋する気持ちは父親には多少なりともあるでしょう。まして血の繋がりのない娘分が昔の恋人の忘れ形見だったらなおさら。妻、あるいは恋人が、より若く美しく、やや年を経た自分の前に何も知らぬげにあらわれる。これは心迷う対象になりそうです。さらに源氏は、自分の庇護のもとに囲った娘で男性たちの気を引き、あたふたする様を高見から楽しんでいます。いくら政務が暇になったとはいえ、かなり悪趣味。源氏にとっては、壮麗な六条院の娯楽のひとつなのでしょう。そのうえで、皆の前にぶら下げた、自分の言いなりになるしかない娘に迫って困らせ、案外手ごたえがあると思って喜んでいるとは。添い寝をしただけで、それ以上すすまなかった源氏は、今ならまだ引き返せる、その微妙なバランスを楽しんでいるようです。源氏が紫の上を引き取って育て始めた頃も、よく寝所で一緒になっていました。その時に感じた、親として愛しい娘に対した甘やかな記憶。自分がいなければ命さえおぼつかないほどの完全な庇護の対象。与えるもの全てを唯一絶対のものとして受けとめる存在。紫の上を妻にしてしまったことで、彼女を女性として愛せる喜びと同時に永遠に失ってしまったこの親としての絶対性。源氏が紫の上に語った「何も考えずに妻に・・・。」という言葉には失ったものへのノスタルジーもあるのでしょう。愛する子どもをみも知らぬ相手に渡さねばならない親。紫の上によって手放す役と受けとる役を同時に経験したことは、源氏にとって心地良い体験だったのかもしれません。父親と恋人の狭間に立つ源氏の玉鬘に対する行動は、これからどんどんエスカレートしてゆきます。☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします。☆☆
October 27, 2004
恋人が誰にでもやさしい八方美人だったら。第二十三帖 <初音 はつね>新年をむかえ、六条院はさらに美しいたたずまいです。とりわけ春の町は梅の香りが屋敷内の薫物(たきもの お香)と相まってあたかも天上のよう。源氏と紫の上は新年の歌を幸せに満ちて交わしています。明石の君から贈り物と歌が明石の姫に届けられました。「年月を重ねて待ち続ける私にどうか鶯の初音をお聞かせください。」源氏は明石の姫本人に、母への返歌をさせました。源氏はそれぞれの町の女性たちを訪ねます。夏の町の花散里は落ち着いた様子で静かに過ごしていました。年の暮れに贈った衣は地味で、髪もすっかり少なくなっています。「かもじ(かつら)でも使ったらいいのだが、この人を世話できるのが私はうれしいのだから。」男女の関係はなくとも、これもまた理想の夫婦の形だと源氏は満足しています。玉鬘は移って間もないながら、感じよく住まいを整えています。鮮やかな衣がよく似合い、源氏は見惚れながら父親としての本分を越えてしまいそうな危うい気持ちに。玉鬘もどこか気をゆるすことができないままで、そこがさらに源氏の気を引くのでした。夕暮れ時の冬の町はとりわけ気品高いものでした。明石の君の姿は見えず、異国の錦の敷物に琴を、そして香のにおいが漂っています。紙には「古巣を訪ねてくれた鶯よ。」と美しい字で歌が。源氏も筆をとったところ、白い高雅な衣をまとった明石の君があらわれました。髪も優雅に衣に映えていて、心動かされた源氏は紫の上を気にしながらも明石の君のもとに泊まります。夜が明けないうちに源氏が帰るのを明石の君は切なく見送りました。機嫌をとっても言葉を交わそうとしない紫の上。源氏は寝所に入って眠ったふりをし、起きてからも目を合わせないようにしています。やがてたくさんの人々が身なりを念入りに整えて年賀にやってきましたが誰もが源氏の輝きの前では圧倒されてしまいます。数日してから源氏は二条の東の院に女性たちを訪ねました。末摘花は美しかった髪もすっかり白く薄くなってしまい、柳の衣も似合わず鼻をさらに赤くして寒そうにしています。源氏は蔵を開けて織物をたくさん贈り、あたたかくするように世話をやきます。空蝉は慎ましやかに仏道修行をしていました。世を捨て尼になってから、源氏の庇護を受けるのはやはり深い縁があったからなのでしょう。その年は男踏歌(おとことうか 足を踏み鳴らして歌いながら宮廷や大臣家を回る)があり、六条院にも気鋭の若者たちがやってきました。源氏は女性たちに春の町で見物するように伝え、玉鬘は初めて紫の上と明石の姫に対面しました。夕霧や内大臣の息子たちが特に際立っていて、源氏は夕霧を愛しく思います。源氏は六条院でも女楽(おんながく 女性が楽器を奏でる宴)を開こうと計画し、女性たちは心の準備をするのでした。恋愛セミナー231 源氏とそれぞれの女性たち 仲睦まじいなかにもいろいろな思いが。明石の君が、娘に歌を贈るシーンです。同じ屋敷のうちにいながら、会うことはできない親子。明石の姫は「お母さまを忘れてはいません。」と幼いながらに歌を返します。このとき明石の姫、8歳。親子が別れてから4年の月日が流れていました。紫の上に気兼ねしつつ、源氏が明石の君のもとに新年早々泊まったのは、いたわりの気持ちもあったでしょう。この身がふたつあったら、紫の上の方に子どもが生まれていたら、というジレンマの中で。源氏の女性たちへの気くばりぶりはどうでしょうか。もう恋人とも言えない仲の女性も引き取って、安楽な生活を送れるようにしています。源氏自身の性格や器の大きさもありますが、色恋抜きの関係を受け入れる女性の度量も必要。世話をしてもらうことへの自分のプライドの揺るぎと闘った女性もいたのではないでしょうか。さて、紫の上は初めて玉鬘に会います。源氏の娘分なら紫の上にとってもそう。ただし、源氏のことですから油断はできません。源氏が玉鬘の衣装を選んだとき「内大臣に似て顔立ちは整っているらしい。でも優雅さはなさそう。」と踏んだとおりだったのか、いかにも源氏が好みそうな女性だと思ったのか。男踏歌で、玉鬘は内大臣の息子、実の弟たちを見たことでしょう。本当は声を掛け合える仲なのに、いるべき場所を違えている玉鬘に、姉とは知らずに弟たちは恋心を抱くことになるのです。☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 26, 2004
あなたに似合う色を恋人に選んでもらったことはありますか?第二十二帖 <玉鬘 たまかずら > あらすじはかなく亡くなった夕顔のことを源氏はいまだに忘れることはありません。夕顔の女房・右近は紫の上に仕えていましたが、夕顔が生きていたらきっと六条院に住んでいたと思うと、とても残念です。実は、夕顔の残した幼い姫・玉鬘が筑紫にいたのです。玉鬘の乳母の夫が筑紫に赴任することになり、玉鬘もそれに伴なわれていました。成人した玉鬘は乳母が丹精こめて育てたのでたいそう美しく、周辺からは結婚の申込みが相次ぎます。乳母たちは内大臣(もとの頭の中将)の娘である玉鬘を埋もれさせるなんてとんでもない、と断り続けています。【玉鬘】その中で大夫の監(だいふのげん)という土地の有力者が強引に玉鬘をもらい受けようとしました。乳母の三人の息子のうち、次男と三男を味方につけ、明日にも迎えにこようとしています。彼にさからったらどんな目にあうかわからないので、乳母と長男の豊後の介(ぶんごのすけ)は船で京へ向かう決心をします。命からがら京に着いた一行は、なんとか内大臣に会おうと石清水八幡宮へ願かけに。そこで、ちょうど夕顔の姫に会いたいという願を長年かけ続けてきた右近に出会い、一同は喜びの涙にくれます。右近は早速、源氏に再会を報告。源氏は「内大臣のところに行くことはない。私が親として世話をしよう。」と言います。玉鬘は、本当の父である内大臣のところに行きたいと願いますが、源氏のもとに行けると有頂天になっている周囲の流れは止められません。源氏は夏の町に玉鬘を移すことをきめ、花散里にも世話を頼みます。紫の上にも初めて夕顔のことを打ち明け、生きていたら明石の君ほどの扱いはしただろうと語る源氏。明石の君と同じはずはないわ、と紫の上は思いますが明石の姫のかわいらしさに、なんとか心を納得させようと努めるのでした。玉鬘が六条院に移り、源氏はいそいそと会いにゆきました。思ったよりもずっと美しいので、源氏は父親としての気持ちと色めかしい気持ちで苦しいほど。紫の上にも玉鬘の美しいことを話し「何も考えずにあなたを妻にしてしまったのは残念だった。あなたの時は若い姫を目当てに屋敷にやってくる男たちの気を引くことができなかったから、今度は玉鬘で試してみよう。」と言います。玉鬘がいることを源氏から聞いた夕霧は真面目に弟として接します。豊後の介は家司(けいし 大臣などの屋敷の世話をする執事)に取り立てられました。【瀬戸内寂聴 源氏物語】年の暮れ、新年のためのたくさんの衣ができあがりました。紫の上は源氏に、それぞれの女性たちに似合う衣を選んで欲しいといいます。ぶどう色と紅の衣装は紫の上に、桜かさねと薄紅の衣は明石の姫に。地味な薄藍色に濃い紅は花散里に、深紅に山吹の鮮やかな黄色は玉鬘に。末摘花には柳色に唐草模様、異国的な模様の白い衣装に濃い紫は明石の君に。そして空蝉には尼君にふさわしく青鈍色(あおにびいろ うすい藍 喪服の色)に薄紫を選びます。紫の上は源氏の選ぶ衣の色合いを見て、女性たちの容貌を想像するのでした。 1 源氏と玉鬘 忘れ形見に心乱れる実に、18年越しの夕顔への思いです。源氏35歳、玉鬘21歳。これから続く玉鬘の変遷は、「玉鬘十帖」と呼ばれます。玉鬘はダイナミックな人生を歩んでいますね。身分高い父の子として生まれるも母は生霊に取り殺される。京から遥か離れた土地で育つも、略奪されそうになるのを危うく逃れ、京で一気に上流社会へ返り咲く。けれど立場は微妙なまま。父ではない男性に庇護される身となる玉鬘はこれからも運命に翻弄されてゆきます。紫の上を玉鬘のように、男たちを虜にする存在にしてみたかった、という源氏。父のもとに行けるはずの娘を自分の屋敷に連れてくるという状況は紫の上も玉鬘も同じです。玉鬘は紫の上のようになってゆくのか、ちがう道をたどるのか。そんな視点でも見ていってくださいね。さて、源氏が女性たちの衣装を選ぶシーンはなかなかの見どころです。装いは人柄をもあらわすもの。艶やかさ、華やかさ、可愛らしさ、高雅さ、親しみやすさ。ご自分にお似合いの色を把握している方は、キレイの強力なアイテムを手にしていることになります。美しいと思える方や感度の高い恋人に似合う色をお聞きになってみるとあなたはご自身では気づかなかった魅力に出会われるかもしれませんね。☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 25, 2004
幼なじみとの恋を経験されたことはありますか。第二十一帖 <乙女 おとめ> あらすじ朝顔の君への源氏の思いは尽きることがありません。それでも源氏は女五の宮へも便りを欠かさないようにして、無理に事を運ぼうとはしないのでした。葵上が残した源氏の息子・夕霧(ゆうぎり)が12歳になり、元服の時を迎えます。夕霧は故・太政大臣の三条の屋敷で育ったので、元服式もここで行いました。源氏の息子であるということで、世間は四位にはなるだろうと(地方長官である受領は五位。)思われていましたが、源氏は夕霧を六位にして、大学寮で勉強させることにしました。夕霧は不服ですが、とにかく一生懸命勉強して早く出世しようと思います。毎日、部屋に篭って勉強にはげみ、源氏が落ちぶれていた優秀な人材を家庭教師にしたおかげもあって、大学寮の試験にとても良い成績で受かりました。そのころ、冷泉帝の中宮に、斎宮の女御が立ちました。源氏は太政大臣になり、もとの頭の中将は内大臣に。(秋に思いをかける中宮のことを以降「秋好中宮(あきこのむちゅうぐう)」と言います。)内大臣は娘・弘徽殿の女御が中宮になれなかったことが悔しくてなりません。そこでもう一人、王族の血を引く娘・雲井の雁(くもいのかり)が三条の屋敷で大宮に育てられているのを次の帝となる東宮に嫁がせようと急に思い立ちました。三条の屋敷に出かけ改めて会ってみると、雲井の雁はとても可愛らしく、東宮にも相応しいようです。そこへ、夕霧がやってきました。実は夕霧は雲井の雁とは幼なじみ。ずっと一緒に三条の屋敷で大宮に育てられたいとこ同士です。内大臣は夕霧を見ると、雲井の雁に会わせないようにしてしまいます。その日、内大臣は以前から関係を持っていた三条の屋敷の女房の部屋で、雲居の雁は夕霧を相手にしていたので宮廷に嫁ぐことはできない、という噂話を耳にします。怒った内大臣は大宮を責め、雲井の雁を自分の屋敷に引き取ると宣言します。とうとう雲居の雁が内大臣の屋敷に行くことになり、夕霧は決死の思いで会いにきます。「会える時にもっと会っておけばよかった。」と嘆く夕霧。「私も同じ気持ちよ。」と応える雲井の雁。幼いながらもお互いを恋しいと思い合う二人を見咎めて、雲井の雁の乳母は「いくら立派な人でも六位なんかではね。」などと嫌味を言うのでした。そのころ、宮廷に五節の舞姫を出すことになり、源氏からは部下である惟光(これみつ)の娘が選ばれました。雲井の雁のことで気落ちしていた夕霧は、控え室にいる娘を見てその美しさに心ひかれ「以前から思っていました。」と歌をよみかけます。娘は典侍として宮廷に仕えることになっていたので会えなくなる前にと、夕霧は娘の兄に手紙を託します。父である惟光はその手紙を見つけて怒りますが、相手が夕霧ときくと機嫌を直し「私も明石の入道のようになれるかもしれない。」と期待をかけています。夕霧はその後も雲居の雁にも惟光の娘にもなかなか会えないまま勉学に励みました。花散里は夕霧の世話を大宮のかわりにと源氏から頼まれ、心をこめて尽くします。夕霧はあまり美しくない花散里を父・源氏が大切にしていることを不思議に思いながらも、性質のやさしさを尊んでいるのだろうと思ったり、顔を見ないようにしているのではなどと想像したりして、大人びた考えを身につけてゆくのでした。二月二十日頃、朱雀院の住まいへ帝と源氏が招かれました。帝と源氏は同じ赤の衣を着ていたので瓜二つに見えます。朱雀院もさらに美しくなっています。夕暮れ、庭の池に船を浮かべ、そこで式部省での試験に出る漢詩を作ることになり、夕霧も乗り込みました。「春鶯囀(しゅんおうてん)」が舞われるなか、朱雀院と源氏は桐壺帝の花の宴を思い歌を交わしあいます。夕霧は素晴らしい漢詩を作って試験に合格、文章の生(もんじょうのしょう)になり、位も従五位に上がりました。源氏はかつての六条御息所の屋敷のあったあたりに広大な住まいを作ります。六条院と呼ばれるその住まいを四つの町に区切り、それぞれに女主を配しました。西南の町は秋好中宮の里にして秋の風情を楽しめる場所に。東南は源氏と紫の上の住まいで春の草木をふんだんに。東北は花散里と夕霧のために、馬場と涼しそうな泉がある夏のたたずまい。西北には明石の君、たくさん植えた松に積もった雪で冬の風景を。それぞれの町に住む女性達は文や贈り物を交わして仲良く付き合っています。明石の君も、全ての女性が移り住んでからひっそりと冬の町にやってきました。源氏の娘を生んだということで、とても丁重な扱いを受けています。恋愛セミナー211 夕霧と雲居の雁 幼き恋源氏の次の世代に、だんだんと移ってゆく予感です。夕霧と雲居の雁の幼いロマンス。ただし、さすが源氏の子。会えないとなると美しい娘をすぐに見つけています。12歳で花散里と源氏の夫婦関係に対してもなかなか鋭い見方をしていますね。さて、源氏の部下・惟光は、世間の人が明石の君や入道をどのように見ていたかわかるおもしろい発言をしていますね。世間の人にとってはいわゆる玉の輿にうまくのった娘とその父。須磨・明石の流浪の旅について行き、自分と同じような身分の女性が源氏の子どもを産んでどうなっていったかを目の当たりにしてきた惟光ならではの発言。望みは高く果てしなく持つもの。世俗の欲があからさまなので、入道のように遁世はしないかもしれませんが。朧月夜と源氏が出会ったちょうど同じ季節に、朱雀院としみじみと昔を語り合う源氏。自分の二の舞をさせたくない、との思いから真面目に勉学に励むようにさせた源氏。春鶯囀を見ながら、若き日の自分の姿を思い出していたことでしょう。さて、源氏はまるで後宮のような六条院を作り上げます。愛した女性たちが、自分を中心に仲むつまじくしている贅を尽くした住まい。権力を握った男性が持つ可能性のある夢のひとつなのでしょうか。源氏の帝位への願望が現われているとも言えます。しかしながら、完成されたものにはすぐ飽きてしまうもの。恋のハンターたる源氏には、もっと刺激が必要なよう。次の帖では、そんな源氏の新たなる情熱が展開されてゆきます。☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 24, 2004
友人でいたい人から恋の告白をされてしまったら。第二十帖 <朝顔 あさがお>朝顔の君は父・式部卿宮が亡くなったため賀茂の斎院を辞することになります。源氏は京を追われた頃も、斎院という神に仕える身になってからも歌を交わし続けた朝顔の君への思いが再びつのるのでした。朝顔の君の叔母は女五の宮といって、源氏の義父・故太政大臣の正妻・大宮の妹に当たり、朝顔の君と同じ屋敷に住んでいます。まだまだ美しい大宮に比べるとすっかり老けてしまった女五の宮ですが、源氏はまずこちらに挨拶していたわり、すっかり味方につけてしまいます。けれど、肝心の朝顔の君は源氏の情熱を受け止めようとはしません。がっかりして帰った源氏は「美しい朝顔の盛りはもう過ぎてしまったのでしょうか」という歌を贈ります。「そのとおり。あるかなきかにしおれてしまった朝顔の花が私です。」と返す朝顔の君。源氏の思いはますます募り、世間でも「源氏の君の正妻に、朝顔の君がなるのでは。」と噂されるようになりました。紫の上が源氏の様子を観察しても、やはり心落ち着かない様子。もし結婚することになれば同じ宮家の出とはいえ、斎院までつとめた朝顔の君よりも自分は軽い扱いをされるかもしれない、と紫の上は悲しくなるのでした。【朝顔(塗りケース+スティック18本+香立て】源氏がまた、女五の宮のもとを訪れるという口実を作ってでかけようとします。紫の上には「いつも私がいたら飽きてしまうでしょう。」と言い訳。「飽きるのは本当に嫌なことね。」と背中を向ける紫の上。気になりながらも、源氏は朝顔の君の屋敷へ向かいます。女五の宮は昔話を繰り返しながら、源氏の前で鼾をかいて眠ってしまいます。源氏がやれやれと朝顔の君のもとに行こうとすると、かつて源氏と関係のあったあの源典侍が声をかけてきました。彼女は今は出家して女五の宮のもとにいたのです。すっかり老いつつも相変わらず源氏に色目をつかう源典侍。藤壺をはじめとした桐壺に仕えた女御・更衣は亡くなったり落ちぶれてしまった人も多いのに・・・と源氏は感慨深く思います。朝顔の君は手ひどく突き放すわけでもなく、隙をみせることもないので、源氏の心はますます乱れます。それでも、若い頃のように無鉄砲なことはできない源氏。周りの女房たちは源氏を気の毒に思いますが「文を交わすだけの関係でいよう。」と決心している朝顔の君。またも拒まれた源氏は屋敷に帰り、すっかり気落ちしている紫の上の髪をかきやって機嫌を取ります。雪が積もった夕暮れに、源氏は屋敷の庭で女童(めのわらわ 屋敷に仕える幼い女の子)たちに雪の玉を作らせました。かつて、藤壺が宮廷の庭に雪の山を作らせたことを紫の上に伝え「あの方は本当に素晴らしい方だった。あなたはあの方によく似ていますが嫉妬深くて気の強いのが玉にキズですね。」と。朝顔の君は「文を交せる気遣いをし合う相手」、朧月夜は「美しさの見本となる人」、明石の君は「身分は低いけれど物事がよくわかっている女性」、花散里は「昔と変わらず控えめな人。」と評します。その夜、源氏の夢の中に藤壺が現われ「誰にも話さないと約束したのに。」と責めました。隣で眠っていた紫の上は脅えている様子に心配しますが、源氏は藤壺を久しぶりに見たことに心を奪われてしまうのでした。恋愛セミナー 201 源氏と朝顔の君 昔からの思い人2 源氏と紫の上 夫婦としての信頼が揺らぐ源氏は老人キラーですね。口当たりやさしくいたわってくれるのでお目当ての女性本人よりも親や周りの人間たちが先に篭絡されてしまう。女性のもとに手引きしてもらうにはこの周囲を巻き込む能力が必須条件。それでも、さすがに朝顔の君へ手引きをする者はいないようです。すっかり安心していた紫の上に、あらたな脅威が発生します。明石の君も、他のどの女性も、身分という点では紫の上に劣っていた。ところが今回は、通常なら内親王(帝の皇女)がつとめる賀茂の斎院だった女性に、世間も源氏の正式な相手として納得している。紫の上は改めて、正式な結婚のお披露目をしていない自分が、世間には「正妻」として認められていないということを思い知るのです。【篝火】源氏は紫の上の機嫌をとるために、自分と関係のある女性のことを話すという手を度々使っています。こんなことを話すのは、あなただけだよ、という訳。現代の男性も、この術を使うこともあるようですが、さあその効果はどうでしょうか?大勢の中の一番として重んじれば満足するだろうと思う男性と、唯一の存在になりたい女性との間にはふかい谷間がありそうですね。そんな女性たちと同時に話され、藤壺が源氏の夢枕に立ちます。紫の上が眠っている側に現われるのは、彼女が初めて見せる嫉妬心にもとれますね。出家を果し、源氏に感謝して往ったはずの藤壺。同じく出家して逝った六条御息所も、後の帖で再び姿を現します。この高貴な二人の女性は、源氏というこの世の妄執を仏と縁を結ぶことでも断ち切ることはできなかったのでしょう。源氏の思いを拒み通す朝顔の君。朝顔の君の名前は物語の当初、源氏が空蝉と関係する直前からあらわれていて、少なくとも15年におよぶ古い関係です。彼女は源氏がたどってきた様ざまな恋のほとんどを見ているでしょうし、自分と同じく王家に繋がる御息所や末摘花がどのように扱われたかも知っているはず。源氏の行動を自分に照らし合わせてみると、結婚したらどのようになるかは予想がついていたのでしょう。【大倉陶園 1客カップ&ソーサー花源氏 朝顔】源氏とはずっと文を交わすだけだった朝顔の君。それでも、女性との関係がうまくいっているとき、苦しいとき、恋の始まりや終わりによって、源氏の心の色模様の移り変わりが手にとるようにわかっていたのではないでしょうか。長年見続けてきた、季節や風物にたくした言葉の中に隠された源氏の心象。その良い部分も悪い部分も全て見通し、愛し受け入れた上で、彼女はこれまで通り、言葉だけの関係を選択するのです。源氏の熱情に身をまかせ、死しても恋情を断ち切れない藤壷や御息所。生身の女性として源氏に対峙しないことを決めた朝顔の君。恋の前哨戦、友人とも恋人ともいえない曖昧な、でも最も楽しい期間。結論を出さないこの居心地の良いときをもっと味わっていたかったのに、と朝顔の君は源氏の求婚を残念に思っていたに違いありません。あなたならどんな選択をされるでしょうか。☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 23, 2004
あなたはどんなタイミングで新しい恋を求めたくなりますか?恋の情熱が再燃するのは、どんなときでしょう。第十九帖 <薄雲 うすぐも> あらすじ明石の君は二条の屋敷へ移るようにうながされますがなかなかその気になりません。ついに源氏は「幼い姫は紫の上に育てさせる。」ことを告げます。明石の君は予想していたこととはいえ心乱れますが、祖母である尼君は「姫の将来のために。」源氏に任せるようさとします。陰陽道でみてもやはり引き取られた方が運勢が開けると出ていました。雪が降るころ、源氏は姫を迎えにやってきました。車に乗り込んだ幼い姫は「おかあさまもお乗りなさい。」と明石の君の袖を引っ張ります。明石の君は号泣し、源氏も気の毒に思いますが車を出しました。【ボヘミアガラス冷酒グラスコレクション薄雲(うすぐも)】二条の屋敷に着き、幼い姫は紫の上とお菓子を食べていましたが、母のいないことに気づいて泣きはじめました。源氏は明石の君の寂しさも思い、また紫の上に子どもが生まれないことを残念がります。姫は紫の上にたいそう可愛がられたので、しばらくするとすっかりなついてしまうように。袴着(はかまぎ)というお祝いの儀式も行なわれ、姫はますます可愛らしくなりました。新しい年になり、源氏はおしゃれをして明石の君のもとに出かけようとします。紫の上は姫がいるので、以前よりは源氏のことを大目に見るようになっていました。明石の君は逢うたびに美しくなっています。琵琶を弾かせても非常に上手で態度も申し分ありません。源氏にとても大切に扱われるので、明石の君は姫がいなくなった寂しさはあるのですが、なんとか気持ちを納得させるようになりました。明石の入道も様子を聞いて、悲しんだり喜んだりしているようです。太政大臣が亡くなり、帝は心細く思います。天候も異常になり、陰陽道でみても不吉な兆候が現われています。源氏はそのことに思い当たるふしがあるのでした。さらに三十七歳の厄年にあたる藤壺の尼宮も危篤になりました。帝に最後の別れをしますが、秘められた事情を話すことはできません。ようやく源氏には感謝の気持ちを伝え、ついに亡くなってしまいました。源氏は悲しさのあまりに、ずっと泣き続け、部屋にこもりきりになり、人が怪しいと思うほどです。藤壺の四十九日が終わるころ、帝は徳の高い僧から出生の秘密を聞いてしまいました。帝は悩み、父である源氏に位を譲ることも考えるように。源氏は固く拒否し、帝が秘密を知ってしまったのではと思い当たります。唯一、このことを知っている王命婦に訊ねても、藤壺は決して話してはいないという返事。源氏は藤壺を恋しく思い出すのでした。秋になったころ、斎宮の女御が二条の屋敷に里下がり(さとさがり 親元に帰ること)しました。源氏は訪ねてゆき、六条御息所の思い出話しをしつつ、自分の切ない思いを訴えます。すっかり困ってしまう斎宮の女御に、源氏はそれ以上迫ることはせず、幼い姫の将来を頼んだりして紛らわせ、春と秋ではどちらがお好みか、と質問します。「母・御息所が亡くなった秋の夕べがことに。」と答える女御。「秋の夕べのように、この私も好きになって欲しい。」と歌に託す源氏。ようやく気持ちを抑え、衣にたきしめた香りを残して去る源氏を、女御は疎ましく思います。紫の上のいる西の部屋に戻っても、源氏は自分の中に、無茶な恋をする思いがまだあるのだということに思い至るのでした。恋愛セミナー191 源氏と明石の君 子を介し、子を手放すことで絆を深める。2 源氏と紫の上 子を手に入れた妻は。2 源氏と藤壺 遂に思いを告げ、去ってゆく。3 源氏と斎宮の女御 愛する者を失ったときに。 涙さそう子別れのシーンです。幼い少女が泣きながらも、すぐに環境になじんでゆくのは、かつての紫の上を彷彿とさせます。自分の姿にも重ね合わせて、紫の上は姫を慈しんだことでしょう。姫を手放した明石の君。離れた直後は後悔し、嘆きますがだんだんとその状況を受け入れてゆきます。姫に会いにくるためだけに源氏が訪れていたのではなく、女としての自分そのものが愛されていることがわかってきたせいもあるでしょう。かつて、源氏がまだ幼い紫の上と初めて関係を持ったのは、葵上の四十九日が終わった直後でした。精進潔斎し、篭っていたあとに新たな女性を手に入れたくなる。特に藤壺は源氏の永遠の憧れの存在。彼女の代わりになるのは、源氏にとってやはり高貴な斎宮の女御しかいないのでしょう。【草木染扇子・手拭い(月の囁き:緑セット)】このとき、源氏32歳、女御23歳。そして息子である帝は14歳。秘められた過去を重く受け止めて悩む若い帝と、過去の証人が去った途端に軽々しい振る舞いをする源氏。母・御息所への扱いをも思い出し女御が源氏を心底、嫌に思うのも無理はありませんね。それぞれ前後9歳ずつ離れた相手。女御は源氏に老醜さえ、見てしまったかもしれません。いつも繰りかえす恋のパターン。もしあなたが、同じ場所でぐるぐる周り続けているのなら恋に陥りやすいときの心理状態を意識してみてはいかがでしょうか。
October 22, 2004
別れることが幸せと知って愛する人を見送ったことがありますか。二度と逢えない大切な人、いらっしゃるでしょうか。第十八帖 <松風 ・まつかぜ> あらすじ源氏の二条の屋敷の修復が完成し、早速、花散里が移ってきました。明石の君にも京へ上るように何度もすすめていますが、大勢の女性の中に混じって気苦労が増えることを考え、なかなかやってこようとはしません。明石の入道は嵯峨の大堰(おおい)川のあたりに土地と別荘をもっていたので明石の君のために改築を始めます。そこは偶然にも源氏が作っている寺に近く再会するには絶好の場所で、源氏にもそのことを伝えました。いよいよ明石を離れる日がやってきました。明石の入道は残りますが、長年連れ添ってきた妻の尼君(あまぎみ)や明石の君の生んだ姫と二度と会えなくなる覚悟。京から明石に下ったのも、源氏と明石の君との縁を結ぶためだったと己に言い聞かせ、生まれた姫の幸運を祈り続けることを誓います。一行は大堰に着きました。明石の君が離れた明石の様子を思いながら源氏と交わした琴を弾くと、松を通り抜ける風が音色にあわせて鳴ります。源氏は明石の君のもとへ行こうとしていましたが紫の上に気兼ねしてなかなか出かけることができません。数日して、嵯峨の寺・桂の院の様子を見に行くという口実を作りますが、紫の上は「寺を作ったのも明石の君を迎えるためだったのだ。」と思い憤慨していますので、その機嫌をとっているうちに時間がたってしまいます。夕方になって源氏はようやく大堰の明石の君に会うことができました。久しぶりに会った源氏の美しさに明石の君も哀しみがまぎれる気持ちに。源氏は初めてあう幼い姫の可愛らしさを喜び、美しく成熟した明石の君をはやく二条の屋敷に連れてゆきたくなります。尼君にもやさしく声をかける源氏なのでした。源氏が宮廷に来ないので帝は嵯峨に使者を送ります。ちょうど桂の院の様子をみていた源氏は歓迎の宴を始めます。帝の使者への祝儀を明石の君に頼みますが、大勢の人がいるので明石の君のもとに戻ることができません。明石の君は桂の院でのざわめきを遠くに聞いています。結局、明石の君に便りもできないまま源氏は二条の屋敷へ戻りました。源氏は大堰の話をし「取るに足らない者のことは気にしなくてよい。」と話しますが紫の上はご機嫌斜めです。日が暮れてから明石の君へ便りをするのも気に入りません。源氏はにこにこと笑いながら側に寄り添い「実はとても可愛い姫がいて、あなたに引き取ってもらってここで育ててもらいたい。」と言うと、紫の上は子どもが大好きなので喜びます。源氏はそれからもなかなか大堰に行くことができないので、明石の君はせつなく待つ身となるのでした。恋愛セミナー181 源氏と明石の君 再会をはたす二人運命の輪が周りはじめました。世捨て人だった明石の入道の願いが、これからかなってゆきます。それは、人の親としてはうれしくもあり辛くもあること。第一の子別れがここにあります。会えなくなることと引きかえに、子の栄達をみることができる。手放すことで、子孫がいまの状況から大きく飛躍することになる。姫は紫の上に育てられることで、王家に繋がる身分を得るのです。明石の君は、姫を生んだことで源氏をさらに引きつけることができました。身分高き人に嫁ぐようにとは、父・入道から幼い頃より言い聞かせられてきたこと。そのため気位を保ち、教養を高めてきた彼女が源氏と結ばれたのは望んだとおりのこと。でも、その味のなんとほろ苦いことでしょうか。源氏の近くにいても、思うように逢えない炒られるような日々。しかも唯一のよりどころである幼い姫とも、別れることを余儀なくされる予感。将来の栄達と引き換えに明石の君が支払うべきものは大きいのです。愛する者の幸せが見えたとき、あなたは身を引くことができるでしょうか?☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 21, 2004
恋する人が他の人のものになってしまったら。第十七帖 <絵合・えあわせ> あらすじ藤壺の尼宮の催促もあって、亡き六条の御息所の忘れ形見、斎宮がいよいよ冷泉帝の女御になることが決まりました。朱雀院はとても残念に思い、入内の日にすばらしい贈り物と歌を届けます。源氏はその歌を見て気の毒に思い、返歌をするよう斎宮にうながしました。朱雀院は女性にしたいほど美しく年も斎宮につり合うのですが、冷泉帝はまだ13歳。斎宮は9歳年上です。藤壺の尼宮もこの日は宮廷に参内し、冷泉帝に大人びた対応をするようにさとしました。元の頭の中将である権大納言の娘がすでに弘徽殿に(弘徽殿や藤壺は帝の妃が住まう場所の名前)女御として入っていて、帝とは年も近く仲が良いとはいえ、昼間の遊び相手。斎宮が後から入ってきて弘徽殿の女御と争うことになったことに、権中納言は気を揉んでいます。紫の上の父、兵部卿宮も娘を入内させたがっていますが、源氏と権中納言の間に割って入ることがなかなかできません。冷泉帝は絵が好きで、描くことも得意でした。二人の女御のもとに平等に通っていましたが、斎宮の女御も絵を描くことが得意と知ってからはついこちらに足が向いてしまいます。権中納言は負けまいと絵の上手な人を集めてたくさん描かせ、弘徽殿に持ち込みました。絵を気に入った帝は斎宮の女御に見せたいと思いますが、権中納言は貸そうとしません。源氏は権中納言の大人気なさを笑い、屋敷の蔵にある秘蔵の絵をたくさん斎宮の女御のもとに届けます。権中納言もますます絵を描かせたので、宮廷にはたくさんの絵が集まりました。この争いに決着をつけようと、斎宮方と弘徽殿方に分かれ、絵の品評会・絵合が行なわれることになります。お互いに一歩もゆずらない争いになりましたが、最後に源氏が描いた須磨と明石の流浪の絵が人々の涙をさそい、勝負が決まります。源氏はこの絵を藤壺の尼宮に贈りました。こんな風に源氏の復活した宮廷は華やかに栄えていますが、源氏は心の中で冷泉帝がもっと大人びたら出家しようと考え、静かな土地に御堂を作って準備を始めました。それでもまだ幼い子ども達がいるため、なかなかそんな日はきそうもありません。恋愛セミナー17 1 斎宮の女御と朱雀院 昔の思い、いつまでも。2 斎宮の女御と冷泉帝 13歳の男の子と21歳の女性の結婚3 源氏と藤壺の尼宮 かつて恋仲の二人は。時は移ろいます。あの弘徽殿の大后の代わりに、姪にあたる新しい女御の時代になり、源氏も人の親代わりとして斎宮の女御を後押ししています。藤壺もすっかり冷泉帝の後見として政治家ぶりを発揮していますね。自分の息子に大人の女性をめあわせるあたり、恐いほどです。一方朱雀帝はどうでしょう。帝位どころか、思い人まで冷泉帝に譲ってしまうことに。それでも、斎宮に入内の日には祝いを贈り、絵合のために絵も贈っているのです。新しい弘徽殿の女御はいとこに当たることもあり、完全に敵に塩を送る形。政治家にはなれない人なのです。でも、こんな男性もなかなか魅力的だと思いませんか?あのじゃじゃ馬の朧月夜も、朱雀帝についてともに暮らしていますね。源氏さえ、本当に愛した藤壺と添い遂げることは夢のまた夢。侮られているように見える朱雀帝と源氏との差は、本当の意味での恋の充足感といった意味ではあまりないのかもしれません。あの須磨・明石の日々を描いた絵を、待って耐えていた紫の上ではなく藤壺に贈る源氏。その直後に源氏の出家の意志が現われます。やはり藤壺と同じ立場に立ちたいということなのでしょうか?☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 20, 2004
支えになる存在を失って初めてあなたの本当の強さがわかるのかもしれません。真の美しさが立ち現われる時、人はどんな行動をとるのでしょうか?第十六帖 関屋<せきや> あらすじ源氏を拒み通したあの空蝉の夫は常陸の介(ひたちのすけ)となり、任地に妻を伴なっていました。 源氏が京に帰ってきた翌年、空蝉も夫と帰京します。石山寺に願ほどきに出かけた源氏は偶然、任地から帰る途中の常陸の介一行に逢坂の関で出くわしました。田舎帰りにもかかわらず、洗練された女車(おんなぐるま)の中に空蝉がいると知り、源氏はかつて小君といった空蝉の弟、右衛門の佐(うえもんのすけ)を呼び寄せます。源氏からの伝言を受け取った空蝉は昔の思いが蘇りますが、ことさらな返事もできません。昔、空蝉の弟ということで、とり立ててもらった右衛門の佐でしたが、源氏が京を追われた時に供はせず、常陸に下ったことを申し訳なく思っています。源氏はそのことは色にも出さず、屋敷に参上した右衛門の佐に再び空蝉あての歌を届けさせました。昔と変わらぬ源氏の態度に感動した右衛門の佐は、姉に返歌を強くうながします。「逢うという名の関所なのに嘆きの茂みの中に分けられてしまった二人なのですね。」源氏はその後も便りを送りづづけました。しばらくして、常陸の介は亡くなってしまいました。義理の息子である河内の介は空蝉に以前から思いをかけていて、ここぞとばかり近づこうとします。空蝉は疎ましく思い、誰にも相談しないで出家してしまうのでした。恋愛セミナー16 1 源氏と空蝉 昔の思いは変わらず昔の女性が、また現われましたね。空蝉という、美しくも、身分高くもない女性。彼女が源氏の心をとらえ続けるのは何故なのでしょうか。なびかぬ風をふかせようとする源氏。それでも、昔の焦燥感はなく、年齢を重ねた男の余裕を見せています。何も言わずに出家してしまった空蝉。かつて、衣をすべり落として源氏から逃れたように、憂い多いこの世をあっさりと捨て去るのです。義母に恋する義理の息子という関係はどこかで見ましたね。藤壺と源氏です。身分という点では比べることもできませんが、この関係が二度も出てくるということはこの時代にはあり得ることなのではないでしょうか。特に、経済的に窮乏するであろう空蝉のような女性が、義理の息子の隠れた愛人になる可能性は高かったのでしょう。空蝉は古今、作者の紫式部がモデルと言われていると以前お伝えしました。もしかしたら、夫を亡くした紫式部自身が、未亡人に対する世間の扱いを意趣返しに描写してみたのかも。源氏のモデルの一人で、紫式部の愛人と言われる藤原道長へのあてつけもあったかもしれませんね。紫式部の夫・藤原宣孝は当時評判の伊達男。空蝉の夫・常陸の介も、さりげなく端正な容貌と描写されています。紫式部も彼女の描き出す空蝉も、夫と親子ほども年が離れていますが、父親にいだかれる娘のような甘える妻であると同時に、世間が思う以上に夫を愛する恋女房だったのでしょう。源氏の物語を誰よりも自慢していたのは夫・藤原宣孝だったとか。紫式部は物語の著述が一段落した時に出家したと言われています。義理の息子どころか、源氏の庇護も自分からは求めようとしない、後先を考えない気位の高さ。空蝉もまた、己のライフスタイルを貫く女性と言えるでしょう。先に手放した方が、相手の心に強く、美しく残る。Catch and Rereaseをまず実践したのは、他ならぬ紫式部自身だったのかもしれません。☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 19, 2004
一途な思いが通じて、恋する人が戻ってきたら。第十五帖 <蓬生・よもぎう> あらすじ源氏が京に戻ってきても、再び訪れてもらえない女性は何人もいました。あの赤鼻の末摘花もその一人です。源氏が通ったおかげで、末摘花と彼女をとりまく人々は、貧しい生活の苦労から開放されていました。ところが源氏がいなくなったことで、もともとの侘しい暮らしに戻ったことが、かえって以前よりつらく感じられるようになり、人々は次々に去っていったのです。末摘花の住む故・常陸宮邸は草が生い茂り、牛飼いが放牧をするようなありさま。屋敷を買おうとする者もいましたが末摘花は耳を貸さず、由緒正しい品々を売ることもせず、ひたすら源氏を待つのでした。最も親密な侍従(じじゅう)という女房は、末摘花の叔母の屋敷にも仕えていました。叔母は王族の身でありながら身分の劣る受領(ずりょう・地方の役人)に嫁いだため、一族から見下されていると思っています。そこで夫が大宰府(だざいふ)の役人になったのを機会に、なんとか落ちぶれた末摘花を自分の娘の女房の一人に加えたいと、荒れ果てた故・常陸宮邸にやってきます。叔母は美しい衣装などを持ち込んで末摘花を説得しましたが、聞き入れられないため、かわりに侍従を連れて行く、と言い放ちます。自分の美しい髪を集めたかもじ(かつら)と宮家に伝わる薫衣香(くのえのこう・お香のひとつ)を侍従に持たせ、泣き崩れる末摘花。誰も訪れる者もいないまま、年も暮れてゆくのでした。翌年の四月、花散里のもとに出かけようとしていた源氏は、荒れ果てた屋敷に目をとめ、末摘花の住まいであることに気づきました。もう誰も住んではいないかもしれないけれど、もしかしてあの女性ならという思いがして、供の惟光(これみつ)に様子を見に行かせると、末摘花が源氏を待ち焦がれていたと知ります。背丈ほどもある草深い庭を通って会いにゆく源氏。末摘花のまわりに残っていた人々はあの叔母の残した衣装に着替えさせ、源氏をむかえるのでした。末摘花が心変わりせずに待っていたことに源氏は感動し、それからはまた、暮らし向きの面倒をすべてみることにしました。よそに行ってしまった人々も戻ってきて、屋敷もすっかり修復されます。二年ほど後に、末摘花は源氏の二条の屋敷の東側の建物に引き取られ、安楽に暮らしました。侍従も、叔母も驚き、悔しい思いをしたということです。【本格ひな人形】親王飾り東宮雛千年の恋恋愛セミナー151 源氏と末摘花 一途に信じるということ。この生き方しかできない、という信条をつらぬいた女性の勝利でしょうか。源氏はこの後、末摘花と関係を結ぶことはないのですが、王族の姫として丁重に扱い続けます。源氏の相手は王族か、それに準ずる女性が多いですね。藤壺、六条御息所、紫の上、花散里、朝顔の君、斎宮、葵の上も母が皇女です。違うのは空蝉と夕顔、そして明石の君ですが、空蝉には「宮廷に入内する予定だった」ことを聞いて興味を持ちました。明石の君を表現する言葉も「皇女に劣らない気位の高さ」といった表現が出てきます。藤壺にあれほどまでに執着したのも、生霊にまでなった御息所を捨てられなかったのも、源氏が皇子の身で臣下に下ったことを考えると、つり合うのは王族、という意識があったためでしょう。帝位願望が、ここにも潜んでいるといえるかもしれません。それにしても末摘花の、一途にライフスタイルを守り抜く姿には心うたれます。須磨に行ったことで、世の中の無常を思い知った源氏にも深く響いたでしょう。容姿も歌も財力も今ひとつ、ということは当時は恋にとって致命的。そんな世間の流れには一切身を任せず誇り高く己を持する末摘花は、最後に心穏やかな生活を手に入れるのです。今宵こそ、の思いはいつまでも保ち続けながら。―深紅の御花の 末摘む花よ 無常の世間に 忘れられ でもその年の 卯の花咲く頃 光源氏は 言いました 暗き無常の 世の中に あなたの花は 照り輝いている いつも泣いていた 末摘む花は 今宵こそはと 喜びました☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 18, 2004
あらゆる恋のパターンを知っておくとあなたの恋は徐々に大人の知性ある恋愛にスパイラル・アップできます。日本の大恋愛小説で恋と人生について学んでみませんか?*************************************************あなたはパートナーに振り回されていませんか?それともコントロールする方でしょうか。第十四帖 澪標<みおつくし> あらすじ源氏を京に戻して、帝の眼病はすっかりよくなりました。帝位を退く意思は変わらず、源氏を追い落とそうとしていた弘徽殿の皇后は無念に思います。朧月夜の尚侍は源氏に思いを残しつつ帝についてゆく決心をしました。帝は朱雀院(すざくいん)となり、藤壺の生んだ東宮が帝の位を継ぎました。新しい帝の後見として源氏は引退していた故・葵の上の父・左大臣を太政大臣(だじょうだいじん)に返り咲かせます。息子である源氏のライバル頭の中将も権中納言(ごんちゅうなごん)に。葵の上の生んだ息子・夕霧(ゆうぎり)も大きくなり宮廷に童殿上(わらわてんじょう・高貴な子どもが宮廷で奉仕すること)を始めます。【松栄堂製 源氏かおり抄『澪標』】源氏が二条の屋敷の東にある建物に花散里や明石の君を迎えようと改築をさせていたところ、明石から「女の子が生まれた。」との報告が入ります。以前源氏は「子どもは三人。帝、后、そして太政大臣になる。」という占い師の言葉をうけていて、それが現実になってゆく予感がし始めました。早速、明石の君の生んだ女の子の養育のため京から乳母を明石に送ります。明石の上について話す源氏に、紫の上は嫉妬を見せますが、源氏にはその様子も愛しく思うのでした。源氏は花散里のもとに久しぶりに出かけます。やさしく迎える花散里に、源氏はどんな女性にも捨てがたいものがある、と改めて思います。一方、朧月夜の尚侍のことも諦められませんが、朱雀院と静かな生活をしている中には入ってゆけません。その頃、明石の君は住吉神社に毎年恒例の参詣をしていました。ところがちょうど源氏一行も、京に復帰できたことのお礼参りに来ていたのです。きらびやかな源氏の様子にいたたまれない明石の君。源氏も明石の君に気づきますが会うことはできません。京への誘いも、源氏との身分違いをひしひしと感じて思い切れなくなる明石の君なのでした。新しい帝の世の中になったことで、伊勢に下っていた斎宮と六条御息所が京に帰ってきました。御息所は間もなく病気になり、出家してしまいます。源氏は慌てて駆けつけ、変わらない思いを伝えます。娘の斎宮のことを御息所は源氏に託しますが「決して、源氏の愛人の一人に加えないこと。」を約束させ、死出の旅にでるのでした。源氏は斎宮に思いがありましたが、御息所の遺言を守るために帝の女御にすることを考えます。ところが朱雀院も斎宮に密かな恋慕を抱いていることを知り、源氏は帝の母である藤壺の尼宮に相談をすると「院の意向には気づかないふりをして、斎宮を帝に。」という返事。すでに帝の女御になっている権中納言の娘はまだ幼いので、もっと大人の女性が必要だというのです。源氏の意志は固まり、紫の上にも斎宮の親代わりを頼み、入内(じゅだい・宮廷にはいること)の準備を進めるのでした。恋愛セミナー14 1 源氏と紫の上 気持ちはすれ違いつつ、夫婦としての共同作業が増えてゆく。2 源氏と明石の君 女の子を産んだことで、より重要な存在に。3 源氏と藤壺 恋愛の対象から、政治的同士へ。4 源氏と六条御息所 死ぬ前に強烈なお返しを。5 源氏と斎宮 思いを寄せた女性が娘分に。源氏の京での政治的活躍が顕著になります。弘徽殿一派は去り、源氏一族はわが世の春を迎えました。源氏は身分もあって出歩くことが少なくなり、二条の屋敷にいままで思いをかけた女性を集めることに着手します。ちょうど藤壺の生んだ自分の息子が帝になったこともあり、皇子として生まれながら臣下に下った源氏の、隠れた後宮(帝に嫁いだ女性の住まう場所)願望なのかもしれません。源氏の子どもを生んだ明石の君は二条の屋敷に移ること、擬似後宮に加わることに、なかなかイエス、と言いません。気後れしていることもありますが、彼女の気位の高さが他の女性と暮らすこと、同列に扱われることに抵抗しているのです。六条御息所がついに亡くなります。源氏の気持ちを見透かすように「娘を私のような目にあわせないで。」との言葉を残して。以後、源氏は娘分に恋慕するいう倒錯した感情を自制しつつ味わうことになります。朱雀院へ斎宮を嫁がせないのは、政治的見解もありますが、朧月夜に対する意趣がえしでもあるでしょう。【澪標(みおつくし)(紋織額)】藤壺の変貌ぶりはどうでしょうか。息子を帝にしたことで、弘徽殿も真っ青の政治家になっていますね。源氏は斎宮を娘として帝に送り込み、後見をすることで、他の女御たちの親に対抗することができるのです。もとの頭の中将の娘も入内しており、一歩遅れをとっていた源氏は一気に挽回します。御息所と藤壺。源氏に翻弄されていた二人が、出家を果したことで源氏を制御する立場になっています。色恋を手放すことで源氏の上に立った二人。これは女として哀しいことなのでしょうか?それともひとつの理想といえるでしょうか?☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします。☆☆
October 17, 2004
相手が満足していると思い込んですれ違いの原因になっていたことはありませんか?または遠距離恋愛中に他の人に心を奪われてしまったことは?今日は、平安時代に離れて暮らすカップルの体験です。第十三帖 <明石 あかし> あらすじ荒れ狂う嵐の中、源氏の屋敷には雷さえ落ち、人々は生きた心地もしません。そんな夜、源氏の夢の中に桐壺院が現われます。「住吉の神に従って、船出しなさい。私はこれから帝に申し上げることがあるから京へ上る。」源氏は連れて行って欲しいと願いますが、夢から覚めてしまいました。次の朝、明石の入道(あかしのにゅうどう)が源氏のもとに船でやってきました。夢で嵐がやんだら船出せよ、というお告げをうけ、船を出すとまっすぐ源氏のもとに着いたというのです。源氏は自分の夢と重ね合わせ、明石の入道についていくことにしました。【宮人水香(源氏物語シリーズ) 明石】明石は入道がかつて治めていた風光明媚な土地で、非常に立派で贅沢な屋敷に源氏は迎えられました。入道は源氏に懸命に仕えます。入道は娘・明石の君(あかしのきみ)を高貴な人物に嫁がせたいという長年の宿願があり、ぜひ源氏に娘を、という思いを伝えます。初めは戸惑っていた源氏でしたが、ついに明石の君に歌を届けました。明石の君はあまりの身分の違いに返事をすることができず、見かねて父である明石の入道が返します。父親の代筆にあきれつつも再び歌を返す源氏に、明石の君がようやく返した歌は京のどの女性にも劣らない美しく素晴らしいものでした。源氏と明石の君は関係を持ち、紫の上に源氏は自分でそのことを伝えます。「波が松を越えることがあるなんて。」と紫の上は返します。そのころ、京では帝が目を患っていました。夢で桐壺院に睨みつけられて以来のことです。弘徽殿の皇后も病気になり、右大臣も亡くなってしまうことに。帝は位を藤壺の生んだ東宮に譲り、源氏を京に戻すことを決めます。明石の君はますます源氏に愛され、子どもを身ごもっていました。京へ帰ることになった源氏は明石の君と琴を合奏します。琴を交換し合い「琴の調子が狂わないうちに会おう。」という言葉を残して源氏は京へ向かいます。明石の君は嘆き悲しみ、明石の入道は「子どもが生まれるのだから。」と言いながらも力を落としてしまうのでした。源氏は京へ戻り、さらに美しくなった紫の上に再会し、残してきた明石の君のことを全て話します。源氏は権大納言(ごんだいなごん)に昇進し、帝と和解しました。東宮や尼宮(あまみや)になった藤壺にも会い、積もる話をするのでした。明石の君のことは忘れずに手紙を交わし続けています。恋愛セミナー 131 源氏と明石の君 夢で結ばれた二人2 源氏と明石の入道 娘に託した夢3 源氏と紫の上 信じ合っていた二人故・桐壺院が大活躍です。帝に睨みをきかせ、源氏と明石の君を会わせて次の時代をつくるために奔走。藤壺の生んだ東宮も、帝になれそうです。それにしても、源氏は左大臣に続いて明石の入道にも単なる婿以上に身を入れて奉仕されています。高貴の出とはいえ、罪人に近い源氏に掌中の珠である娘を差し出す入道。源氏は、男性にも贔屓されるようですね。良い縁に出会えなかったら、海に身を投げなさい、とまで言われて育った明石の君。この縁が、後に入道の思い描いたとおりの展開になってゆくのです。明石の君は、身分の低い出ながら(とはいえ、入道のもとの役職は現在の知事クラスの位。)初めから源氏と対等に渡り合う気位の高さを持っています。それは源氏に六条御息所を思い出させるほど。それでも明石の君が源氏にとってなくてはならない存在になってゆくのは子どもを生んだこともさることながら、源氏の全てを奪おうとはしなかったことが大きいでしょう。身分の低さもありますが、己を律する聡明さを明石の君は非常に強く持っていて、後に大きく花開くのです。紫の上は、明石で夢をみてしまった源氏におそらく最初の失望を抱きます。罪を負い、会えなくなっても、夫婦一対一の関係になれたことを信じ、安らいでいた紫の上。大勢の女人のうちの一番にすることで、紫の上が満ち足りていると思い込もうとする源氏。二人のすれちがいは、物語がすすむにつれて、顕著になってゆきます。あなたの大切なパートナーとの関係を、見つめなおしてみませんか?☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします。☆☆
October 16, 2004
恋人が逆境のとき、あなたはどうふるまうでしょう。あるいは友人が世間から取り残されてしまったら?離れてしまう。ひたすら嘆く。信じ続ける。試されているのは、誰でしょうか。第十二帖 <須磨 すま> あらすじ源氏はいよいよ京にいることができなくなり、流罪になる前に自ら須磨へ身を移すことにします。女性はひとりも連れずに何人かの側近のみを伴なうことにし、二条の屋敷はすべて紫の上(むらさきのうえ・若紫)に託します。源氏との別れ際、紫の上は「鏡にあなたの姿が残るものなら一日中ながめていましょう。」、花散里は「月が曇るようにいまほんの少しだけあなたの境遇に影がさしているのを嘆かないで。」、朧月夜は「水の泡のように、私はあなたの帰りをまちきれずに消えてしまうでしょう。」、そして藤壺は「院との別れでこの世の憂さは味わい尽くしたと思っていたのに、今またさらに。」と、それぞれ歌を返しました。須磨で源氏は、海辺にほど近い質素な住まいで明け暮れ神仏に祈る日々をおくります。しばらくは京からの手紙にもなぐさめられていましたが、それを知った弘徽殿の皇后が怒り、誰も源氏と係わろうとはしなくなっていまいました。そんな中、宰相(さいしょう)という位に昇進した頭の中将が須磨を訪ねてきました。二人は親交をあたため、世を嘆きます。源氏は周囲の勧めで海辺で禊ぎ(みそぎ)をすることにしました。ところが「八百の神も何の罪も犯していない私を思いやってくださるだろう。」という歌をよむと、たちまち嵐になってしまいます。【松栄堂製 源氏かおり抄 須磨かほり貝桶】住まいに戻っても嵐はやむことなく、源氏は読経し続けます。夜が明けるころ夢に海の龍王の使いらしき者があらわれました。「なぜ呼んでいるのに、龍王のもとにやってこないのか。」と源氏を探しています。源氏は須磨にいることにすっかり嫌気がさしてしまうのでした。恋愛セミナー121 源氏と紫の上 信頼しあうパートナーになりつつある二人。2 源氏と花散里 源氏の復活を信じる女性。3 源氏と朧月夜 須磨行きの元になった関係。4 源氏と藤壺 身を捨てて守ろうとした存在が去る。5 源氏と頭の中将 逆境にいるライバルにいかに係われるか。6 帝と朧月夜 他の男性を思う女性を受け入れること。結婚した紫の上の成長ぶりがわかります。家屋敷、蔵の中にある財宝、そして源氏に仕えていた人々すべてを取り仕切れるまでに、幼かった女の子はしっかりとした女性になったのです。花散里は、唯一、源氏の帰京を信じる歌を読んでいます。須磨に行ってからは「梅雨で塀が壊れてしまって・・・。」とさりげなく知らせて直してもらうなど現実的な面があるのですが、それも源氏の力を信じているから。こんな逆境にあるからこそ、頼りにされることは生きがいを最も感じることではないでしょうか?花散里が源氏にとって大切な存在になってゆくのはこの「のせ上手」さゆえもあるでしょう。【ボヘミアグラス 須磨(すま)桐箱入り】このころ、帝は朧月夜を許し、宮廷に戻しています。朧月夜は女御にはなれなくても帝から一番寵愛を受ける存在に。帝は、朧月夜がいまだに源氏のことを思っていることに気づいていて、絡み嘆きながらも許し愛している。自分が女の立場だったら無理もない、という視点で帝は源氏の存在を受け入れ、自分の力のなさで須磨に追いやってしまったことを気にかけています。一方、頭の中将はライバルをおいて昇進してしまったのを期に、危険をおかして直接会いに来ます。逆境にいるときの、ライバルの訪問。中将の器量が現われるシーンです。彼もまた、源氏の復活を信じ待っている。源氏が復活を遂げたとき、出し抜いた、器量のせまい男にはみられたくない、堂々と対峙したいという思いもあるでしょう。源氏は歌をよみ、絵を描き、念仏三昧に過ごします。そばにいる男たちが京にいるときよりもかえって側にいられる機会が増えた、とよろこぶほどの美しさ。ところが、京にいたときの自分の奢りを反省しつつも「私にはなんの罪もない。」と神に唱えたとたん、嵐をよんでしまいます。この三人の男性のうちあなたが惹かれる、またはあなたに近いのはどのキャストでしょう。また、女性陣では?よろしかったらご自身にかさね合わせてみてくださいね。☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 15, 2004
恋人に音信不通にされた後、もしその人が戻ってきたらあなたはどのように迎えますか?もうひとりじゃないの、と伝える。心のシャッターを下ろす。相手をなじり続ける。さて、光る源氏はどんな風に扱われるでしょう。第十一帖 <花散里 はなちるさと> あらすじ麗景殿(れいけいでん)の女御は亡き桐壺院の女性のひとりでしたが、いまは寂しく暮らしています。その妹姫・花散里(はなちるさと)と源氏は宮廷で逢瀬を持ち、その後は長い間会っていませんでした。このところ、おもしろくないことが続いていた源氏は、ふと花散里を思い出して久しぶりに訪ねることにします。その途中、中川というところで、源氏は一度だけ関係を持ったことのある女の家の前を通りかかります。試しに歌をよみかけてみましたが、もう別の男性が通っている様子です。源氏はこの位の身分なら、筑紫に行ってしまった五節の舞姫もよかったなあと思い出しています。【松栄堂製 源氏かおり抄『花散里』】久しぶりの訪れを花散里はやさしくあたたかく迎えました。源氏は優れた人柄の女性だと感動。どんな女性にもどこか良いところがあると考えて源氏は細々とでも関係を続けているのですが、そんな源氏に飽き足らない人もいて、中川の女性は離れてしまったのでした。恋愛セミナー11源氏の境遇が激変する、嵐の前の静けさです。1 源氏と花散里 身分はやや高いが一度きりの関係だった。2 源氏と中川の女 夕顔や空蝉クラスか、それ以下の中流の女性との一度だけの逢瀬。3 源氏と五節の舞姫 一度きりの関係三つめ。華やかにときめいていた人が逆境になると、じっくり自分と向き合う機会が増えるからでしょう、すっかり忘れていた一度きりの関係の数々を思い出す、そんな場面です。モテモテだった色男があっさり袖にされてしまうことも。源氏嫌いさんは溜飲を下げるところでしょうか?花散里は美しくもなく、一見すると才気があるようには感じません。けれど、ほんとうに久しぶりだったにもかかわらず源氏をうらんでいるところはみせないのですずっと通っているならともかく、源氏の気がひけるほど放っておかれたのにゆったりとやさしく迎える。嫉妬も責めもない、そんな居心地の良さを、源氏はめったに味わうことがなかったのでしょう。【宮人水香(源氏物語シリーズ)花散里】 花散里の帖はとても短いのですが、この後、彼女は源氏にとってかなり重要な位置を占める存在になってゆきます。花散里の世話女房とでもいうべき役どころは、朧月夜と対極にあるかもしれません。女としてNo.1にはなれないけれど、とても重要なパートナー。あなたは、そんな存在にも、なれますか?「世界にひとりだけの花散里」☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 14, 2004
恋人との別れを、あなたならどう演じますか?より美しく、相手の心に残るように?それとも二度と会いたくないと思わせるように?二つの別れをご紹介しましょう。第十帖 < 賢木 さかき > あらすじ六条御息所が娘の斎宮と一緒に伊勢へ下ることになり、源氏は嵯峨野の野宮(ののみや)を訪ねます。斎宮が精進している場所での再会にためらいを覚えながらも、二人は逢瀬を遂げました。御息所は源氏を別れる決心を固め、伊勢への出発の儀式のため、斎宮と宮廷に参代します。帝は美しい斎宮を見て心動かされ、源氏は幼いときに会っておきたかった、と悔やみます。とうとう桐壺院が崩御しました。いままで表舞台にでられなかった右大臣の一族がここぞとばかり左大臣一族をないがしろにし始めます。左大臣は引退し、源氏、頭の中将、そして藤壺の中宮の周辺もすっかり寂れてしまいます。【松栄堂製 源氏かおり抄『賢木(さかき)』四方の水(よものみず)】桐壺院の喪のため賀茂の斎院が交代し、朝顔の君が新しい斎院になりました。源氏は神に仕える身の朝顔の斎院といまだ手紙を交わしている上に、朧月夜の尚侍とも宮廷で逢瀬をしていることが右大臣一族の耳に入ってしまいます。さらに源氏は兄・兵部卿宮のいる里宮に帰った藤壺に無理な逢瀬を強いることに。藤壺がつれなくすると源氏は屋敷に引きこもって参代をしなくなってしまいます。東宮を守るために源氏にしか頼ることのできない藤壺。源氏のよこしまな思いを封じるためにとうとう藤壺は出家を遂げるのでした。そのころ朧月夜が病気を理由に父・右大臣の屋敷に戻ったので、源氏は毎晩通い続けました。ある雷の鳴った明け方、朧月夜のもとに人がたくさん集まってきたため源氏は帰ることができなくなります。そこに右大臣がやってきて、朧月夜の衣の裾に男帯がまとわりついているのを見つけ、源氏がいることを知ってしまいました。右大臣の話を聞いた弘徽殿は怒り狂い、源氏を徹底的に追い落とそうと考え始めます。恋愛セミナー10二つの恋の関係が終わります。1 源氏と六条御息所 会えないとわかると会いたくなる。2 源氏と伊勢の斎宮 母と同じく美しいはずの娘に心寄せる。3 帝と伊勢の斎宮 神に仕える身への密かな思い。4 源氏と朝顔の斎院 神に仕える身と逆境の男5 源氏と朧月夜 危険な状況ほど情熱的になる二人。「野宮詣(ののみやもうで)」と言われるほど京からも訪問者が絶えないくらい、六条御息所のいる野宮はとても趣味のよい場所になっています。六条にある屋敷も貴人がつどうサロン。源氏に執着している御息所ですが、その一方、取り巻きに囲まれた華やかな女王的存在。ほかにも幾人かの恋人がいたのかもしれません。源氏が藤壺を追い続けたように、魂が抜け出るほど源氏を求めた御息所。二人はやはり、似たもの同士なのでしょう。そんな彼女が伊勢へ去ることで、先に相手を手放そうとします。releaseされる立場になると、相手を失うことが惜しくなるのはいままでご覧になってきたとおり。源氏はあれほど避けていた御息所のもとを訪れ、かえって彼女の決心をうながすことになるのです。恋の綱引きここに極まれり、ですね。もう一人のreleaseを遂げたキャストは藤壺。俗世から離れ、女としての立場を捨てることで、息子の東宮をも、源氏本人をも救おうとする藤壺。彼女は以後、政治家として大きな成長を遂げてゆきます。別れを自ら選びとった女性二人は、芯がとおり、力強く、はっきり自分の考えを言うようになります。待つだけ、翻弄されるだけの立場ではなくなったのですから。一方、残された源氏はどう変わったのでしょうか?神に仕える娘に二人までも関心を寄せる。政敵の娘ととわざと危険な場所で会う。どんどん自分を追い込んでゆく源氏。この頃の源氏には相手の立場を全く考えない幼稚さが目につきます。父・桐壺院が亡くなり、自分自身の無力さを思い知ったことが心外で、ますますわがままなだだっ子根性を剥き出しにする源氏。堕ちることも時に必要なのは、自分の無力さをとことん知るため。すべてを捨てたところから自分自身の本当の力を身につけるためなのでしょう。☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 13, 2004
恋する相手がとても移り気な人だったら。そしてその相手への思いがずっと続いてしまったら。今日は美しい女性が魔物になってしまう様をご覧いただきましょう。彼女に鏡を見るような思いを抱く方、かなりいらっしゃると思います。第九帖 <葵 あおい> あらすじ桐壺の帝は皇太子に位をゆずって桐壺院(きりつぼいん)になり、藤壺の生んだ皇子を東宮(とうぐう・皇太子)にしました。弘徽殿の女御は皇后になりましたが、水も漏らさぬ桐壺院と藤壺の関係がおもしろくありません。新しい帝の誕生により、六条御息所の娘が新しい伊勢の斎宮(さいぐう)に決まりました。御息所は源氏のつれなさに耐えかねて娘と一緒に伊勢に下ろうとします。源氏は桐壺院から叱責をうけますが、葵上が懐妊したのでさらに足が遠のいてしまいました。同じ頃、弘徽殿の女三宮(おんなさんのみや 三番目の皇女)が新しい斎院になるため、賀茂の祭りが華やかに行なわれることになりました。源氏もその列に加わるので、つわりで悩む葵上も周りのすすめで見物に行くことにします。ところがすでに車を置く場所がありません。葵上の従者はむりやりある車を追い払いますが、それには六条御息所が乗っていたのです。源氏はその争いの話を聞いて御息所のもとを訪ねますが、彼女は会おうとしません。源氏はあまり気にすることなく、そのまま若紫と祭り見物にでかけてしまいました。見物する場所はあの源の典侍が譲ってくれたので二人は歌を交わします。祭りの後、葵上は物の怪にとりつかれ、祈祷をしても回復しないうちに急に産気いてしまいます。皆が動揺するなか、今までどうしても出てこなかった物の怪が源氏を呼びました。それが六条御息所の生霊だったので源氏は驚愕。葵上はそのあとすぐ男の子・夕霧(ゆうぎり)を産み、人々はやっと安堵します。誕生の祝いが盛大に行われ、葵上と源氏はようやくお互い素直に愛情を表せるように。ところが源氏が宮廷に参代中、葵上は容態が急変し亡くなってしまいました。人々が悲しむ中、あちこちから弔問の手紙が届き、御息所からも歌がもたらされます。源氏は生霊のことをほのめかす歌を返し、御息所は打ちのめされます。源氏が葵上の死を非常に嘆いているのが、兄・頭の中将は意外でしたが「本当は正妻として妹を大切に考えていたのだ。」と感じます。源氏は喪中でなれない独り寝を続けるなか、式部卿宮(しきぶきょうのみや)の娘・朝顔の君(あさがおのきみ)と思いやり深い歌を交わします。源氏はしばらく二条の屋敷に帰ることができませんでしたが、久しぶりに会った若紫はとても大人びて美しくなっていました。初めて関係を持った朝、若紫はなかなか寝所から出てきません。若紫の父・兵部卿宮にも結婚したことを知らせますが、若紫はすねて源氏をすっかり嫌っています。源氏にはそれもいとおしく感じるのでした。右大臣は・葵上が亡くなったので、娘・朧月夜を后にできないならばいっそ源氏の正妻にと願いますが弘徽殿は反対します。源氏は朧月夜を忘れられませんが、いまは若紫に夢中であるうえに、御息所のことを踏まえてこれ以上女性の恨みをかうことはしないでおこうと思うのでした。恋愛セミナー9恋と結婚に関する学びが存分に表現されている帖です。1 源氏と葵上 やっと巡ってきた春もたちまち霧散してしまう二人。2 源氏と六条御息所 執着が逃げるほどに強く。3 源氏と朝顔の君 手紙だけを交わす仲。4 源氏と若紫 ようやく大人の関係へ。5 源氏と朧月夜 夫婦にはなれない二人。源氏に会えない御息所の怨念は、いままで葵上に直接は発揮されていませんでした。葵上も源氏にないがしろにされているというある種の仲間意識があったためでしょう。ところが子どもを宿したことで葵上のもとへ源氏の足が向いた途端、御息所のすさまじい嫉妬が膨れ上がり、車の争いで爆発するのです。夕顔が亡くなる前に、源氏は心の中で御息所を夕顔と比べてしまいましたが、その直後に生霊がやってきます。夕顔をとり殺したのもやはり御息所。訪れが間遠になった源氏、六条に来る途中で夕顔のいる五条に足止めされてしまう源氏の周りをまとわりついた御息所の魂が、自分をおとしめる源氏の思いに反応してしまったのではないでしょうか?【源氏物語(巻2)新装版】二人までも、嫉妬の炎で殺してしまった御息所。そのことで殺した相手を源氏にとってかえって忘れがたい存在にし、自身を疎ましく恐ろしい魔物に押しやってしまうのです。恋する相手を思い通りにしたい思い。これは相手と自分の境がなくなってしまっていること。与えることは限りなくできても、奪うことは決してできない。御息所の聡明さはそのことに気づいているのですが、心をコントロールすることができないのです。やっと寄りそうことのできた源氏を葵上は死によって手放さなければなりません。Rereaseすることで源氏の心に強く残りはするのですが・・・。さて、他の女性からの嫉妬と産褥で亡くなってしまうのは、以前にも例がありますね。桐壺の更衣と若紫の母です。浮気をした当人ではなく、その相手を責めることは古今よくあります。当人を責めることは最初に選んでしまった自分の過ちを認め、当人と境のない自分自身を責めるということ。このことに落ち着きのなさを感じるためなのでしょうか?弘徽殿の皇后も桐壺院ではなく、桐壺の更衣に、そしてその息子である源氏に生霊とみまがう執念を向けますし、若紫の父宮の正妻も若紫をののしり続けます。共通しているのは、はじめこの義母たちは夫に「母代わり」を頼まれていたこと。母代わりになって子ども(源氏・若紫)を思い通りに育てようとしていたのに、出鼻をくじかれているのです。葵上がなくなったことで正妻候補となった御息所と朧月夜。のちに朝顔の君も候補と目されます。源氏がこれらの女性を正妻にしなかったこと、子どもである夕霧を託すことをほのめかしさえしないのは賢明だと言えます。葵上が亡くなった直後に、源氏が若紫と結婚したことはとても象徴的です。今までの全ての関係を清算したい、心から寄り添う関係を結びたいという強い思いの表れでしょう。若紫という女性ただ一人を大切にできれば、源氏のこれから後の苦悩はないかもしれないのに。源氏の愛を求め続ける御息所と理想の愛を探し続ける源氏。御息所と源氏は、相手を思いどおりにしたいという強い欲望において、似たもの同士。決して実現することのない自分の考えと寸分たがわぬ存在、自分の影との愛を求めるかのように二人の終わりない彷徨は続くのです。あなたの求める愛は、どんな形をしているでしょうか?☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 12, 2004
恋を欲しいままにする条件とは何でしょう?美しく才能もあり実家はハイソサィエティ。今日はそんな絵に描いたようなセレブな女性が登場します。第八帖 <花宴 はなのえん> あらすじ 宮廷の花の宴で、源氏は「春」の文字を与えられ、素晴らしい漢詩を作り絶賛されました。さらに源氏は春鶯囀(しゅうおうてん・はるのうぐいすさえずる)を、頭の中将は柳花苑(りゅうかえん)という舞を披露しました。その夜、宮廷に泊まった源氏は藤壺の中宮のいるあたりをさまよいますが、入る隙がありません。そのまま弘徽殿の近くを通りかかると戸が開いています。覗いてみると「朧月夜に似るものぞなき。」という若く美しい声が聞こえてきました。源氏はその声の主を抱きかかえ、戸を閉めて関係を持ってしまいます。【花宴(はなのえん) 懐中時計】別れ際に二人は扇を交わしますが、女性は名を教えようとはしません。とても美しい人だったので源氏はそれが誰だったのかを探り始め、どうやら弘徽殿の女御の妹の一人ではないかと思い当たります。ある日、源氏は弘徽殿の女御の父である右大臣から藤の宴の誘いを受けます。あの美しい人が誰かを確かめるために、政敵である右大臣家に源氏は出かけてゆき、とうとうそれが東宮(とうぐう 皇太子)に嫁ぐ予定の右大臣の六の君・朧月夜(おぼろつきよ)であることを知るのでした。恋愛セミナー 81 源氏と朧月夜 美しく奔放な同士が呼び寄せあったのか。さあ、恋の手だれ、朧月夜の登場です。彼女ほど、恋を欲しいままにしたキャストはいないのではないでしょうか?非常に美しく、華やかな女性。源氏とのスキャンダルがあったにもかかわらず皇太子、のちの帝に深く愛される。しかも源氏との関係はほとんど生涯続くのです。最高の地位を持った誠実な夫と当代最高のいい男。この二人を同時進行で味わう、宮廷の女官としては最高の地位にあるキャリアウーマン。現代のドラマにもなりそうな設定ですね。恋を獲得するのに、彼女はとても貪欲だったと思います。深窓のお姫さまが、ひとりで、外から近い位置で歌を口ずさんでいる。周りを常に人々に取り囲まれ、男性には顔を見せない、声も聞かせないのが常識の時代に。朧月夜は、昼間、源氏が舞うのを姉である弘徽殿の女御と見ていたはずです。東宮と源氏を宮廷で比べてみたら「源氏の君の方が素敵。」と思ったのかもしれません。だから自分から出会いをセッティングした、とは考えられないでしょうか?首尾よく源氏と関係したあとは、朧月夜は安売りしません。「本当に私との関係を続けたいのなら、探しだせるはずね。」と余韻を残して別れます。当時は着ているものや話す言葉から、どんな身分の女性なのかは推測がかなり正確にできる。まして、出会った場所と状況を考えれば、ちゃんと見つけ出せるはず。源氏が手に入れることが難しい相手の方が熱心になるということも知っていたでしょう。【日本美アルバム 花宴】朧月夜は源氏と関係を持ったために女御として宮廷に入ることはできず、女官のトップである尚侍(ないしのかみ)となります。尚侍も皇子を産めば后になる道もあるのですが、作者である紫式部は朧月夜に出産をさせていません。母として子どもの成長と栄光を見守るよりも、恋とキャリアを重ねる人生を朧月夜は歩むのです。あなたは彼女のような人生を選んでみたいでしょうか?☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 11, 2004
相手を間近に見られること、話せること、振り回されることそのものも楽しめる、そんな心境はいかがでしょう?今回は恋を楽しむ平安時代のキャリアウーマンが登場します。キレイをキープするために若く美しい恋人を持つことを存分に楽しむ。恋は悩むもの?楽しむもの?第七帖 <紅葉賀 もみじのが> あらすじ桐壺の帝は妊娠している藤壺のために宮廷で舞楽を催しました。源氏は頭の中将とともに青海波を舞い、藤壺へ思いを馳せます。あまりの美しさに藤壺は心動き、いつも読み捨てる源氏の歌に返歌します。桐壺の帝は源氏が鬼神に魅入られないよう祈祷をさせますが、弘徽殿の女御はそれがおもしろくありません。二条の源氏の屋敷で正月を迎えた若紫はすっかり源氏に馴染んでいます。ひとつ歳をとった若紫は源氏が自分の夫であるということにも気づき始めましたが、いまだに人形遊びをする幼さも残しています。源氏は娘を育てるような気持ちで琴や書などを教えるのでした。【松栄堂製 源氏かおり抄『紅葉賀』】正妻の 葵の上は若紫のうわさを聞き、ますます心を閉ざします。葵の上のもとにめったに足を運ばない源氏を残念に思いながらも左大臣は心をこめて世話をします。桐壺の帝はそんな源氏をいさめつつよほど気に入らないのか、と理解もしています。ふた月遅れてようやく藤壺に皇子が誕生します。あまりにも源氏に似ているので藤壺は恐ろしくなりますが、桐壺の帝は「幼いうちはみな似るのだろうか。」とただ喜びをみせます。源氏は心中、恐ろしい気持ちとうれしい気持ちが複雑に混ざり合います。そのころ宮廷に仕えて尊敬もされている一方、かなり年配なのに非常に色好みな女性、源典侍がいました。源氏は興味を覚えて関係を持ちましたが、それに対抗して頭の中将までが典侍に言い寄りました。ある夜二人は典侍のもとで鉢合わせをし、ふざけて帯や袖などを引っ張りあって格闘。翌日、お互いすまして宮廷の仕事をこなしているのをおかしく思い合います。桐壺の帝は、藤壺を中宮(ちゅうぐう)という高い位に上げることを決めます。皇太子を生んでいる弘徽殿の女御は心おだやかになれませんが「あなたは皇后になれるのだから。」と桐壺の帝はなだめます。藤壺はさらに手が届かない存在になる一方、皇子はますます源氏に似てくるのでした。恋愛セミナー71 源氏と藤壺 皇子が生まれたことでますます苦悩する二人。2 源氏と桐壺の帝 皇子をはさみ、喜ぶ側と複雑な側。息子の行状をいさめる父。3 桐壺の帝と藤壺 皇子誕生をひたすら喜ぶ夫と悩む妻。4 葵の上と源氏 ますます離れてゆく夫婦。5 源氏と左大臣 娘夫婦をなんとかとりもとうとする父。6 若紫と源氏 だんだんと成長しつつある娘にも妻にもとれる存在と見守り育てる男。7 源典侍と源氏 やぶれかぶれの息抜き?8 源氏と頭の中将 青海波の舞、源典侍との関係などよくもわるくもライバル。父の妻である義母と関係し子ども誕生が誕生する。深い縁がある女性との子どもを育てられない源氏が、若紫の教育に熱心になるのはおもしろい心理です。藤壺が苦悩するほど源氏が悩んでいないのは、藤壺を桐壺の更衣の身代わりとして愛している父よりも、自分の方がより強く思っているという自負があるせいかもしれません。また、非常に優れている源氏を皇太子にできず、臣下にしたという桐壺の帝の感じている負い目を源氏は敏感に感じていて「何をしても許される。」という奢りもあるのでしょう。源氏の葵上の扱いに対するいさめも、父・桐壺の帝が他の女性の恨みを買って桐壺の更衣を死なせていること比べれば、という思いも。【紅葉賀(塗りケース+スティック18本+香立て)】藤壺が源氏と関係を持ったのは、彼女自身が引き寄せた面もあります。まわりの取次ぎがあったとはいえ、二人は何度か会っています。桐壺の帝が求める更衣の面影をいつも意識しなくてはならない藤壷は、真摯に自分そのものを愛してくれるようにみえる源氏を心の底では受け入れています。藤壺は10代始めに桐壺の帝のもとにきました。若紫もそう。源氏はみごとに父と同じことをしているのですね。葵の上に対しては「いつかはなんとかなる。」という正妻であることの信頼も源氏の中にはあるのです。ただ、後の帖で源氏は桐壺の帝が桐壺の更衣で踏んでしまった轍と同じような報いを受けることになります。さて、源典侍は末摘花と同じく、ユーモラスな存在。年の頃は50代後半とされているのですが、18歳の源氏と立派に渡りあっています。対抗意識からとはいえ頭の中将まで引き寄せ「でも本命は源氏の君よ。」というあたり、二人が争う修羅場も場慣れしているところ、源氏がつれなくなったという恋の悩みを持つことそのものも、なんだかとてもうれしそう。人生を存分に楽しんでいるという感じです。経済的に自立しているという点も大きいかもしれませんね。恋の悩みも修羅場も楽しむために。源典侍は見過ごすことのできない教養と自分を美しく見せる方法を駆使し、自信に満ちています。自分が大好きと高らかに宣言しているよう。彼女から学ぶことはとてもたくさんあります。物語の本流は「父の妻を奪い生まれた不義の子が後継者に」という息詰まる深刻なものに。ここに末摘花、源典侍という息抜き役を配した紫式部。心にくいと思いませんか?恋にもこの、遊びの部分が大切なのかもしれません。☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 10, 2004
美も恋もチャンスも呼び込む美相になるためには「名作といわれる文学を読み、言葉や教養を蓄積し使うこと。」が必須条件なのだそうです。世の成功した人々は、そんな美相の相手を見つけると必ずコンタクトをとり、大切にするのだとか。あなたのキレイのアイテムの一つに、世界中どこに行っても通用する不朽の名作、源氏物語を加えてみませんか?何層にもわたる人間模様、恋の様々なパターン、日本に今も伝わる重ねの色目、香道、絵巻物など、あなたの内なる財産がさらに増えますよ。***********************************************************************************恋に縁遠いように見える人。いえいえ、案外に、その方たちは幸せを味わっているのかもしれません。なびかぬ相手に夢中になる方は多いもの。手ごたえのなさを、情熱をかきたてる糧にする人もいますね。ライバルがいるとさらに燃え上がること、そしてお付き合いしてみると、実際以上によく見えていたというご経験はありませんか?第六帖 <末摘花 すえつむはな> あらすじ夕顔を忘れられない源氏は、どこかに代わりになる女性がいないかと探し続けています。源氏の別の乳母の娘・大輔の命婦(たいふのみょうぶ)から故・常陸宮(ひたちのみや)の荒れ果てた屋敷に住む姫・末摘花(すえつむはな)のことを聞き、こころひかれた源氏は訪ねることにしました。末摘花のかき鳴らす琴の音を聴き、近づこうとする源氏。そこへやってきたのが後をつけてきた頭の中将。二人はけん制しあいながら結局末摘花の屋敷を後にし、左大臣家へ向います。二人が笛を吹いていると左大臣も一緒に合わせ、女房たちにも楽器を弾かせます。琵琶の上手な女房中務の君(なかつかさのきみ)は頭の中将にも言い寄られていましたが、源氏の方を選び、それが左大臣の北の方(妻)・大宮にも知られ居辛くなっています。それでも源氏に会えなくなることに思い切りがつきません。【金襴ランチョンマット - 末摘花】源氏は大輔の命婦を通じて末摘花に何度も手紙を渡しますが、いっこうに返事がきません。再び荒れ果てた屋敷を訪れた源氏は今度は強引に関係を持ってしまいます。ところが、あまりにも手ごたえのない女性で源氏は失望。末摘花は身分が高いのでぞんざいに扱うこともできませんが、そのあとめったに通わなくなってしまいます。ある雪の朝、源氏は末摘花の姿をまざまざと見てしまいます。胴長で、象のように長い鼻の先は垂れ下がって赤く、顔もひどく長い上に体は痩せすぎています。ただ、髪はとても長く美しい。古くなったみすぼらしい衣装の上に黒貂の皮衣(ふるきのかわぎぬ)を着ていました。源氏は驚愕しますが、かえって見捨てられなくなり、生活の細かい世話までみることにします。二条の屋敷に行くとまだ幼い若紫がほんとうに美しい様子で絵を描いています。その頬の美しさを、同じ赤でもこんなに違うのかと源氏は思います。一緒に絵を描きわざと鼻を赤く染めた源氏を笑い、色が落ちなかったらと心配する若紫。こんな人がいるのになぜまた自分は・・・、と源氏はため息をつくのでした。恋愛セミナー その6深刻な舞台での幕間狂言のような帖です。1、源氏と末摘花 夕顔の身代わりを求めて失望。2、源氏と中務の君 葵上のもとに行ったときのみの関係。3、源氏と若紫 手ごたえのある少女ここでも源氏は身代わりをもとめています。荒れ果てた屋敷に住まい、ひたすら頼りきる女性。葵の上や六条の御息所のように、気位と教養が高い、くつろげない女性ではなく、夕顔のようになにも知らげぬげな、やすらげる存在を末摘花に期待します。けれど夕顔はご紹介した歌をみてもわかるように、意外に手ごたえのある存在だったのです。ただそれを振りかざさない、本当に賢しい女性。見せない部分でも、男性を魅惑していたといえるでしょう。【大倉陶園 カップ&ソーサー花源氏 末摘花】源氏は末摘花に大失敗した、と感じていますが何度か関係を持ってからようやく気づくというのは、現代でもよくあること。初めはよく見えていても後で失望したり、よくわからないままに付き合って知らなかった姿にある日気づいて驚いたり。真実の愛はそこから始まるのかもしれません。末摘花は古今、侮られがちなのですが、案外この物語の中でも幸せなキャストであると思います。彼女は人からどうみられようと、自分のライフスタイルを貫く誇り高い女性。源氏に対しても末摘花なりのやり方で素直に思いを表すのです。後の帖で、末摘花の一途さがさらに明らかになってゆきます。次から次へと理想を求めて飛び移る人。思い定めて信じ続けることのできる人。幸せとキレイはどちらの手に?☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 9, 2004
つれない恋に身代わりを求めたことはありますか?蝶のように花から花へと移り続ける方があなたの周りにもいらっしゃるかもしれませんね。相手の若さ、才能、やさしさ、美しさ、そして愛されることを求めて、ひらりひらりと。その方たちは、幸せで美しいと思われますか?第五帖 <若紫 わかむらさき> あらすじ源氏は病気になり、祈祷でなおしてもらうため北山に行き、その近くで思いがけず父帝の妃・藤壺の女御にそっくりな10歳くらいの少女・若紫をみかけます。そのあまりの美しさに驚きたずねてみると、その少女は藤壺の兄・兵部卿宮(ひょうぶきょうのみや)の娘で、藤壷の姪にあたることがわかりました。和風髪飾りリボン【若紫】若紫の母親は兵部卿宮の正妻に対する気苦労から亡くなっていました。源氏はぜひとも自分が引き取り育てたい、と若紫の祖母である尼君(あまぎみ)に申し出ますが「歳を間違っておられませんか?」と制されます。ただ、尼君も病気がちなので、若紫がもう少し成長してからとも言うのですが、源氏は待ちきれない思いでいます。病気が治った源氏が宮廷に参代すると桐壺の帝も左大臣も喜んで迎えました。なかなかやってこない源氏を左大臣は娘である源氏の正妻・葵上のもとに連れてゆきます。久しぶりに会ってもよそよそしい葵上。二人の仲はしっくりきません。そのころ、藤壺が里に下がっていると聞き、源氏は強引におつきの王命婦(おうのみょうぶ)に手引きさせ、関係を持ちます。源氏はそのあと奇妙な夢を見ました。占わせると「帝王の父になる。その前に謹慎しなくてはならない。」と言われ、驚愕します。やはり藤壺は懐妊していたのでした。懐妊を喜ぶ桐壺の帝といたたまれない思いの藤壺と源氏。【はな帯・杜若紫】とうとう尼君が亡くなり、若紫は父親の兵部卿宮に引き取られることになります。そこで源氏は若紫を連れ出してしまい、二条の美しい自邸に住まわせます。最初はおびえていた若紫でしたが、源氏や同じ年頃の少女が周りにいる環境にしだいに慣れ親しんでゆくのでした。恋愛セミナー その5前回に続き、ダイナミックな帖ですね。1、源氏と若紫 身代わりとはまだ気づいていない幼い娘。2、源氏と藤壺 理想の女性とそれをもとめる男。3、源氏と葵上 夫婦。夫が他に気を取られているのに気づいている妻。4、桐壺の帝と源氏 コキュになっても息子を可愛がる父。5、桐壺の帝と藤壺 苦悩する妻と大切にあがめる夫。6、左大臣と源氏 娘と義理の息子をなんとか取り持とうとする父。7、兵部卿宮と源氏 妹も娘も知らずに奪われている。身代わりの連鎖にお気づきでしょうか?藤壺の身代わりは若紫。少女の頃から育てれば思い通りの妻になる。若紫はまた、思い通りにいかない妻・葵上の身代わりでもあります。葵上との関係の代わりに、藤壺との関係を強行したとも言えます。葵上としっくりいっていたら源氏が藤壺に対してこれほど思いつめることはなかったかもしれません。子どもを育てれば自分の思い通りになる、という源氏の思いが別の意味で通じたのか、源氏は父親になります。桐壺の子どもである源氏自身が、桐壺の思い通りになどなっていないことには気づいていないままに。前回の伊予の介に対する空蝉との関係と同じように、桐壺の帝に対して、藤壺と源氏の関係があります。妻を奪われた夫とその相手。しかも相手は桐壺帝にとって最愛の息子。桐壺はこのことに気づいていたのでしょうか?気づいていて、自分も藤壷を身代わりの連鎖に投げ入れたことの代償として受け止めていたのでしょうか?例え子どもができたとしても、源氏にとって藤壺は手に入れることができない存在。幼くして身代わりになった若紫で、源氏はこの先、本当に満たされてゆくのか注目してみてくださいね。☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 8, 2004
恋で両天秤にかけられたことがありますか?またはご自分でかけてしまったことは?そのことに気づいたとき、あなたはどうされたでしょう。ゆめゆめ、魂が抜け出るまで思い詰められませんように。どうぞお美しいままでいてください。第四帖 <夕顔 ゆうがお> あらすじ源氏は六条の御息所(ろくじょうのみやすどころ)という身分高く、美しい女性のところに通い始めました。六条へ通う途中の五条には源氏の乳母の家があり、病気になったと聞いて立ち寄ることに。その乳母の家の隣の粗末な家に、白い夕顔の花が咲いていたのを目にとめたところから、源氏とその家の女主・夕顔(ゆうがお)との付き合いが始まります。「宮人水香(源氏物語シリーズ) 夕顔」どうやら夕顔は頭の中将が「雨夜の品定め(第二帖 帚木)」で話していた中流階級の女性のよう。源氏が身分を隠し、顔も覆面をして通っているのを不審に思いながらも夕顔はやさしくむかえます。頼りなげなその姿に源氏は狂おしいまでに惹かれ、六条へはめったに通わなくなってしまいました。源氏は二条にある自分の住まいに夕顔を迎えたいと、手始めに近くにある荒れ果てた屋敷に夕顔を連れ出します。そこで源氏は生霊が夕顔に手をかける夢をありありとみてしまうことに。驚いて起きた源氏は夕顔が本当に亡くなってしまったのを知り、悲しみにくれるのでした。「【棗】10代認得斎好写 夕顔蒔絵大棗」しばらく寝込んでしまった源氏に、夕顔はやはり頭の中将の話していた女性だったと女房の右近は伝えます。夕顔には小さな女の子どもがいると聞き源氏は引き取ろうとするのですが、五条の家にはすでに誰もいなくなっていました。その頃、空蝉の夫・伊予の介が任地から京に帰り、源氏に挨拶に来たおりに「娘(軒端の荻)は結婚させ妻は伊予に連れてゆく。」と話しました。源氏は伊予へ向う空蝉にたくさんの贈り物をし、あの衣を歌とともに返しました。 光ありと見し夕顔の上露はたそかれどきのそら目なりけり(夕顔)恋愛セミナー その4誘拐あり、生霊ありと、極彩色の帖です。1 源氏と六条の御息所 一方は冷め、一方は執着している。2 源氏と夕顔 どうしようもなく女に惹かれてしまう男。3 源氏と空蝉 関係がひとつめの結末をむかえる。 4 伊予の介と空蝉 年の離れた夫婦。5 源氏と伊予の介 主従関係。女性によるお誘い。白い花に興味を持った源氏に「あなたはもしかして光る源氏の君?」という歌を詠みかけたのが五条での交際のきっかけ。夕顔は頼りなげに見えて非常に魅惑的な女ですね。ここに載せた歌は覆面をとった源氏が「わたしの顔、どう?」ときいたときに「たいしたことないわ。」とさらっと返したものです。源氏と頭の中将という物語の中でもっともいい男を二人までも虜にした夕顔の魅力。しかも桐壺の更衣と同じく、この世をたち去ってしまう。印象は強烈。娘という取りに戻れない置き土産もあります。「源氏物語ミュージアム シャンタンハンカチ 夕顔」一方、身分高く美しい六条の御息所は、すっかりないがしろにされてしまいます。手に入れた途端、冷めてしまった源氏。身分が高くなければ軒端の荻のように捨ててしまったかもしれません。物語がすすむにつれ、生霊が誰なのかも明らかに。もちろん御息所ですね。なよなよと風にゆれるようになびきながらも、ゆるく静かに男ごころを絡みとる夕顔。悶々とした思いのたけを、渾身の力をこめて恋がたきの首に巻きつける御息所。強く、美しいのは果たしてどちらでしょう。「ヌーベル・ジャポネ<オーガンジー> 最高級アンブレラ 夕顔」ところで、伊予の介と空蝉、留守のあいだの妻の変化に夫は気づいたのでしょうか?伊予の介はやや老けているとはいえ、意外に端正な男。源氏は浮気相手の夫を前にいたたまれない気持ちになります。この瞬間、主従の力関係は逆転しているようにみえます。さて、空蝉の置き土産である衣を手放すことで、関係にひとつの区切りをつけることのできた若き日の源氏。たくさんの恋愛の中で、数少ない源氏からのRerease。このことでかえって空蝉は源氏に対して心をひらくのです。ずっと後の巻で、夕顔の忘れ形見である成長した娘に、壮年になった源氏は非常に執着します。手放すことを忘れてしまったとき、幸せなのか美しいのか、このヒーローをじっくり観察してみてください。実は、空蝉は作者である紫式部自身がモデルだと言われています。美しくも身分高くもない女性が貴公子と真っ向勝負する。藤原道長の恋人でもあったとされる彼女は空蝉のように、時の権力者を天の羽衣を残すように袖にしたのでしょうか?それとも、翻弄されてしまった悔しさを物語に昇華させたのでしょうか?恋の空蝉(ぬけがら)を手繰り寄せるか手放すかは、あなた次第。☆藤原道長・・・この世をばわが世とぞ思ふ望月のかけたることもなしと思へば 娘を三人までも天皇の妃にしました。源氏のモデルの一人と言われていますね。☆☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 7, 2004
恋しても、きっと報われることはないとわかっているとき、あなたはどうしてこられたでしょう。手放した、わかっていても進んだ、翻弄された・・・。その恋が終わったとき、あなたは以前より美しくなり相手の心に残ったでしょうか。まずはこの女性のとった行動をみてくださいね。第三帖 <空蝉 うつせみ> あらすじ空蝉をあきらめられない源氏は小君の手引きで紀伊の守の屋敷に忍び込みます。隠れて見ていると、空蝉と義理の娘・軒端の荻(のきばのおぎ)が碁を打っていました。軒端の荻は目鼻立ちがくっきりとした美人、空蝉は目鼻立ちのぼんやりした顔立ちです。源氏は初めてはっきりと空蝉の姿を見たのですが、外からよく見える場所ではしゃぐ軒端の荻よりもつつしみ深い空蝉のほうに、より心ひかれるのでした。その夜、源氏は空蝉の寝室へ忍んでゆきます。源氏がやってきたことに気づいた空蝉は体にかけていた衣をそっとすべり落とし、部屋から抜け出します。「源氏物語ミュージアム- シャンタンハンカチ 空蝉-ピンク」残されたのは一緒に寝ていた軒端の荻。源氏は空蝉と思って軒端の荻を起こしてしまいます。源氏はすぐに空蝉でないことがわかりますが、目の前の軒端の荻とそのまま関係を結んでしまいます。空蝉が残された衣を持ち帰った源氏。小君に愚痴をこぼしつつ、衣をひいて眠り、空蝉のことを思います。空蝉も衣が源氏のもとにあると知り、とまどいながらも源氏に思いをはせるのでした。 空蝉の羽におく露の木がくれてしのびしのびに濡るる袖かな (空蝉)恋愛セミナー その3義理の親娘と源氏が結ばれてゆきます。1 源氏と空蝉 ますます強まる思慕。2 源氏と軒端の荻 空蝉の身代わり。空蝉が衣を残してゆくのは、源氏物語の中でも印象深いシーンです。ケンカして出て行った恋人が忘れ物をわざと残してゆく、という状況のルーツのような感じがしますね。相手が追いかけてこなかったときに、部屋に戻れる口実になるのが忘れ物。ただ、空蝉は取りに戻ってはいません。いったいどちらが相手の心に残るでしょうか?宮人水香(源氏物語シリーズ)「空蝉」また、空蝉も軒端の荻も源氏とはただ一度の関係です。。「いつでもあえるな。」と思われている軒端の荻といつも逃げられてしまう空蝉。どちらが源氏の心をとらえ続けるでしょうか?あなたが演じていらっしゃるのはどちらに近いでしょうか?さて、源氏がこのとき、初めてはっきりと顔を見た、ということに驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか?この時代、女性への思いは主に「噂話」によって高められていました。女性の周りにいる世話係の「女房(にょうぼう)」と呼ばれる女性達が「うちの姫はとってもキレイ」「歌がお上手」「琴の名人よ。」とせっせと情報を他のお屋敷の女房に流し、それが男性達の耳に入ってゆく。まだ見ぬ女性に対して男性はこの「口コミ」で想像を膨らませ歌を添えた手紙を書く。5.7.5.7.7の形で恋ごころを表現するのです。【簡単 香道具】今すぐ聞香できる「香道具セット空蝉」会ったこともない人に恋するなんて・・・。とお思いになりますか?いえいえ、ネット文化のただ中にいらっしゃる現代の方のほうがこの感覚がよくお分かりになるのではないでしょうか?歌は文字数からいっても「携帯メール」がそれに近いでしょうね。ほとんど知らない方とメールを交わすうちにだんだんと思いがつのっていった経験のある方、きっといらしゃるでしょう?歌を交わすのは相手と自分を見極めないと火傷をすることになる。空蝉がなかなか手紙に返事をしないのも夫ある身であることもさりながら文字のもつ力を充分に知っていたから。自分の思いを文字にすることで、曖昧な自分の源氏への思いが形になってしまうのを恐れたからなのでしょう。☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 6, 2004
未熟な恋を重ねていたとき、恋に破れたとき、逃げたとき、そしてどうしても自分と向き合わねばならないとき、その時どきで源氏物語を読み、その度に印象が変わり、受けとるものが違っていきました。皆さまもきっと、そんなご自分の重ねた経験とともにある作品をお持ちでしょう。1000年間読み継がれ、戦火の中も人々が命懸けで守り、生き残ってきた作品。日本が世界に誇る最古の長編物語、最大の恋愛小説はあなたのキレイを引き出してくれますよ。**********************************************************************************第二帖 <帚木 ははきぎ> あらすじ 17歳になった源氏の君はすでに、藤壺や幾人かの女性と関係を持っています。左大臣の息子で葵上の兄の頭の中将(とうのちゅうじょう)や仲間たちはそのことを詳しく知りません。恋について語らない源氏を不満に思いながら、いつしか「雨夜の品定め(あまよのしなさだめ)」がはじまります。「ボヘミアガラス 冷酒グラスコレクション帚木(ははきぎ)」それは源氏より低い身分の中流階級の女性たちの品評会で、とても賢い妻や嫉妬深い世話女房などなかなかおもしろい話が続きます。源氏のライバルである頭の中将も夕顔(ゆうがお)という中流階級の恋人がいたと告白しました。正妻におどされ、なにも告げずにいなくなってしまったこの恋人を中将はいまだに忘れることができないのでした。源氏は次の夜、正妻の葵上を訪ねますが、方角が悪いと左大臣に教えられ、家来筋である中流階級の紀伊の守(きのかみ)の屋敷に方違えを(陰陽道で外出先が悪い方角だとわかったとき出直すこと。)します。紀伊の守は伊予の介(いよのすけ)の息子で、任地にいる父が留守のあいだ父の後妻・空蝉(うつせみ)を世話していますが、源氏はその空蝉をむりやり襲ってしまいます。【松栄堂製 お香】源氏かおり抄『帚木』源氏はその後も関係を持とうとしますが、空蝉は決して受け入れようとしません。空蝉の弟・小君(こぎみ)をやとって手紙でアプローチしても、つき返されてしまいます。源氏は小君に「おまえはわたしを見捨てないでくれよ。」とそばに寝かせるのでした。恋愛セミナー その2 ちょっと刺激的なおはなしがいくつかでてきましたね。 1 源氏と頭の中将 ライバルであり、親友同士。 2 頭の中将と夕顔 恋人同士だったが別れている。中将は未練たっぷり。 3 源氏と空蝉 一度きりの関係だが、源氏にはとても未練がある。 4 紀伊の守と空蝉 年の近い義母に紀伊の守は恋慕している。 5 源氏と小君 姉との橋渡しのために主従関係から深い関係に。 この巻には二人もCatch and Rereaseできているキャストがいますね。そう、「夕顔」と「空蝉」です。この二人の特徴は相手に二度と会わないようにすること。会えないことで源氏も頭の中将も、かえって思いが強く残っています。会い続けていたら、いつでも会えると思われていたら中途半端な扱いしかされないとわかっていたのでしょう。「夕顔」と「空蝉」はこの後の帖にも何度かでてきます。ともに中流階級の、源氏や頭の中将からみれば身分低き女性がどれほど長い間彼らの心をとらえ続けるか、見ていてくださいね。ところで、最後に出てきた小君と源氏はどうなったか、気になりませんか?きっちり関係を結んでおります。源氏も物語のなかで「女に見たてて愛したい。」と男性陣に思われる場面がよく出てきますので美しい男性が恋愛対象になるのは一般的な感覚なのでしょう。特に源氏は、紫式部という女性が描いたひとつの理想の男性像でもあるので女性の目からみて「恋する相手はこうあって欲しい」という面をたくさん持っています。多分に女性的な、面倒見のよさや言葉での慰撫のうまさ、こまやかな思いやりなど。これらは今の世にもてはやされる女性的な男性、女性にもてる男性が持つ特徴でもありますね。物語が進むにつれて、お好みのキャスト、そしてご自分に近いキャストが出てくると思います。彼らがどんな風になってゆくのか、辿ってみてください。☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでよろしくお願いいたします。☆☆
October 5, 2004
恋を失うのはこわいもの。失うくらいなら恋なんてしたくない。でも、どうして失うのがこわいのでしょう?本当は、恋によって失うものは何もないのです。 でも、あなたが失うように思っているものはいったい何なのでしょうか?そんなものがどこにもないとわかったら、あなたはますますキレイに幸せになれます。バス・フィッシングが趣味の恋人がいた方、「キャッチアンドリリース」ということばがありますよね。「自分がどのくらいの大きさの魚を釣ったか確認したら放すこと。」放すのは惜しくないんです。このことば、そのまま恋の終わりにあてはめてみてください。恋を味わいつくしたら、手放すのをおそれないこと。でも、恋に満足していないのに終わりが来てしまうこと、ありますよね。あなたが満足するために欲しいものは、「恋人との楽しい時間」でしょうか?「あなたを甘えさせてくれる存在」でしょうか?それがずっと続いたらいいのに・・・。やっぱり失うのはこわいですか?むかしから、恋を失うのがこわい人たちがいました。そして恋を失ったあともっと美しくなった人たちもいました。そんな人たちをみごとに描ききったのが千年前にできた源氏物語。恋もお金も地位も名誉も全て持っているヒーローと彼をとりまくヒロインたちのものがたりです。あらゆる恋がちりばめられている源氏物語ですが、その恋の全てに、終わりがやってきます。そしてその恋の終わりにCatch and Releaseをあてはめてみると、いったい誰が幸せで美しいかがわかるのです。そう、「自分の恋を味わいつくしたら手放すのをおそれない」ひとが一番幸せで美しく描かれているのです。恋はかならず終わるもの。そして美と幸せを残して去るもの。ご一緒に物語を読み進めてみませんか? ************************************************************************************************第一帖 <桐壺 きりつぼ> あらすじ いつのころか、宮廷で桐壺の帝(きりつぼのみかど)にとても愛された桐壺の更衣(きりつぼのこうい)という女性がいました。更衣は身分が低かったので正妻の弘徽殿の女御(こきでんのにょうご)をはじめとする同僚の女性達からさまざまないじめにあっていました。更衣は帝の愛のみを頼りにしていましたが、皇子を産んだあと、亡くなってしまいます。「農家の特選お茶(煎茶)「桐壺」2缶セット」 皇子を宮廷にに引きとってかわいがる帝をみて、弘徽殿は「死んだあとも憎いおんな。」と思います。この皇子は美しさと賢さを生まれながらに光るほどに持っているので、すでに第一皇子を産んでいる弘徽殿は「次の帝にこの皇子がなるのでは?」と心おだやかになれませんが、王子のあまりの美しさに心ひかれもするのでした。 桐壺の帝はうらない師からこの皇子の行く末をきき、「帝になれば国が乱れる。臣下としてならまた別の道が開ける」という言葉を受けます。 そこで皇子に源氏という姓を与え、臣下の身分にしました。(この皇子を以後「源氏の君(げんじのきみ)」または「源氏」と呼びます。)【松栄堂製お香】源氏かおり抄『桐壺』 しばらくして、桐壺の帝は亡き桐壺の更衣に似た皇女を藤壺の女御(ふじつぼのにょうご)として宮廷に迎えます。源氏の君はこの若く美しい藤壷を母としたい、淡い恋心をもいだくのでした。12歳になった源氏の君は大人になるための儀式をし、そのあとは藤壺に直接会うことができなくなります。 源氏の君は左大臣の娘、葵上(あおいのうえ)を妻にしますがなかなか打ちとけることができず、藤壺への思いはますます強くなってゆくのでした。恋愛セミナー その1 たくさんの人間もようがでてきましたね。 1 桐壺の更衣と桐壺の帝 まわりのやっかみも心配もかえりみず突き進む二人。2 桐壺の帝と弘徴殿の女御 心変わりに周囲に当り散らす妻とそれをもてあます夫。 3 桐壺の帝と藤壺の女御 妻のおもかげを追う夫と身代わりだと気づいている新妻。 4 源氏の君と藤壺の女御 母に似た人を愛するというマザコンの典型。. 5 源氏の君と葵上 お互いが気に入らない関係。 6 源氏の君と弘徽殿の女御 息子のライバル、藤壺という新たな母出現のためさらに仲は険悪。 7 源氏の君と桐壺の帝 忘れ形見を溺愛する父と、何をしても許されると思っている息子。 8 弘徽殿の女御と桐壺の更衣 恋がたき、身分の低い方がより愛されたのでいじめ抜いた。 9 弘徽殿の女御と藤壺の女御 恋がたき、身分が上の藤壺に弘徽殿は今のところ手が出せない。 10 藤壺の女御と桐壺の更衣 恋がたき、更衣は亡くなっているので藤壺は永久に勝てない。 あなたの周囲にもこんな関係をきっと目にされているでしょう。もしかすると、いま、あなた自身がこのうちのどれかを演じているかもしれませんね。ものがたりがすすむにつれて、キャストがどんな運命をたどるのか見ていてください。「心の本棚 聴いて味わう日本の三大古典」さて、この巻ですでにCatch and Rerease(C&R)を実行しているキャストがいます。誰でしょうか?答えは「桐壺の更衣」です。更衣は亡くなるという悲しい形で桐壺の帝を手放しました。残された桐壺の帝の更衣への思いはどうなったか?いじめ殺した弘徽殿よりもさらに身分の高い藤壷をも超えているのです。「ツバル発行『源氏物語』6種シート」人生を謳歌するあなたは、更衣のようにこの世を去ることなく、美しくたち去る方法をどうぞ考えてみてください。もちろん、このあとの帖にはどんどん美しい別れ、たち去り方がでてきますのでお楽しみに!ぜひあなたのお考えになった方法と比べてみて下さいね。「源氏物語ミュージアム 色鮮やかな古都の世界金襴ランチョンマット - 桐壺 」 Catch and Rerease ・・・「その場からたち去って恋を手放すこと。」☆☆おかげさまで現在セミナーは56まで進むことができました。皆さまのコメントがとても励みになっています。今日初めて読んでくださった方も、改めて読んでくださった方も、よろしかったらコメントをいただけるとうれしいです。必ずお返事させていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします。☆☆
October 4, 2004
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