ハッピー Happyラウンジ

ハッピー Happyラウンジ

December 3, 2024
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カテゴリ: マミー
病院の廊下に出た彼女は、背筋を伸ばしながらも足取りは重かった。窓から差し込む柔らかな秋の日差しは、あたたかさを感じさせるはずだったが、彼女の心には冷たい風が吹いていた。

「このままじゃいけない。」
彼女は小さくつぶやいた。医師の謝罪の言葉は確かに誠実だった。しかし、それだけでは何も変わらない。母の今の苦しみも、過去の失われた時間も、ただの言葉では埋められないのだ。

面談室のドアを背に、彼女は次の行動を考えた。病院の説明責任を問い続ける覚悟はある。だが、それだけでは母の未来を守るには足りない気がしていた。

「リハビリだ。」
彼女の頭に浮かんだのは、リハビリの現場で見た母の姿だった。ぎこちない動きで、何度も椅子から立ち上がろうとする母。手が震え、バランスを崩しては看護師に支えられる姿。それでも、母の目にはどこか必死さが宿っていた。

彼女は携帯電話を取り出し、担当のリハビリスタッフに連絡を入れることを決めた。「もっとできることがあるはず。電気刺激療法や新しいリハビリ機器、何でもいい。母が少しでも手を動かせるようになるなら、どんな提案でも受け入れる。」

携帯を握りしめ、呼び出し音が鳴るのを待つ間、ふと目の前のベンチに腰を下ろした。廊下の先で車椅子に乗った高齢の患者がゆっくりと運ばれていくのが見える。誰かの家族にとっても、あの姿は希望の象徴なのかもしれない。

電話の向こうでスタッフの声が応えた。
「お電話ありがとうございます。何かご相談でしょうか?」

彼女は呼吸を整え、できるだけ冷静な声で伝えた。「母のリハビリについて、もう少し積極的な方法を検討したいのですが、どのような選択肢がありますか?」

スタッフは一瞬間を置いて答えた。「現在のリハビリプログラムは、患者様の状態に合わせて設計されています。ただ、具体的なご要望があれば、リハビリチームで話し合うことも可能です。」

「具体的に話を聞きたいです。母が手を少しでも動かせるようになる可能性を広げたいんです。」
彼女の声には、揺るぎない決意が込められていた。

その後、リハビリスタッフとの面談の日程が決まり、彼女は電話を切った。小さな一歩だが、それが母の未来を切り開くきっかけになるかもしれない。

立ち上がると、遠くに見える母の病室を目指して歩き出した。自分がどんなに疲れても、どんなに悔しくても、母のそばにいられる限り、まだできることがある。それを胸に、彼女は強く前を見据えた。








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Last updated  December 3, 2024 09:10:08 PM
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