歌 と こころ と 心 の さんぽ

歌 と こころ と 心 の さんぽ

2024.11.20
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カテゴリ: 読書

♪ 歯科医師にマスク姿で口の中見られ力が入る菊門



 全くの曇天。ほとんどフラットなグレー一色の空。東海地方は気温もフラットで、悪いなりに安定した一日になりそうだ。




 せめてもの色付けに、膨らみかけたシャコバサボテンの小さな赤い蕾を飾っておきましょう。

 谷川俊太郎さんが亡くなられた。92歳という大往生はさすがです。言葉の魔術師。日本語のダイナミックレンジを最大限に押し広げて、生き生きと展開して見せてくれた。

 子どもが喜ぶ「ことばあそび」


 谷川さんの偉業を書くのはおこがましいので、これだけにしておきます。
 父の哲学者・谷川徹三は常滑市の出身で、鈴渓義塾の薫風を受けて育った偉人として、森田昭夫、平岩外四、岩田弐夫とともに常滑市の名誉市民となっている。94歳で亡くなっているので、息子の俊太郎は父をわずかに越えられなかった。それにしてもすごいものです。
 今読んでいるこの本。高橋源一郎、長島有、中島たいこ、一青窈、竹西寛子、山崎ナオコーラ、川上弘美、との対談集で物書きがどういう思いで詩や小説を書いているのかを、短歌にとどまらずエッセイや評論、書評などもこなす、今や飛ぶ鳥落とす勢いで活躍している穂村弘との対談で、独自の論を交わし合うという2008年の対談集。



 知らない作家もいるし、どうなのかなと思いつつ借りて来た。それが読んでみると何と面白いこと。面白いけど難解な内容もあってついて行けないところもあったりする。

 こういう対談を文字起こししたものは、どうしてもその場の空気とか間合い、心の動きとか微妙な揺れのようなものなどが分からない。記号としてのフラットな文字の連なりなので、微妙なニュアンスが伝わってこない。
 実際に会話している場では、息使いや間(ま)に現れる表情から、逡巡やもどかしさなどが伝わってくるでしょうが、それが無い。主語が抜けるし、阿吽の呼吸で進んでいくので、置いてけぼりを食らったような心持になる。



 それでもいろいろ参考になることがいっぱいあって、とても面白く読んだ。



 例えば山崎ナオコーラさんのエッセイに対して、穂村さんが「一見直球で言葉を投げているんだけど、直球のままでは言いたいことの伝わらないことを知っていて、だから近寄ってみると細かい変化がいっぱいついている」と。「それは山崎さんがプロだからできるわけで、たとえばネットでブログを着ている多くの人たちは、直球を投げようとすると本当にそのままの言葉になる」と。

 山崎「文章は何を書いてもフィクションになる」「書く時は絶対、自分が"ほんとだ”と感じていることを書くようにしている」
 穂村「フィクションかノンフィクションかかという分類が適用可能な領域は狭い。音楽や絵画では、フィクションもノンフィクションもない。具象画がノンフィクションで抽象画がフィクションということはないし、音楽だって同じ。
 穂村「言葉自体に運動性があって、言葉が言葉を呼ぶ。一行目が二行目を、二行目が三行目を呼ぶ。エッセイの場合は、自分がその渦を巻いている運動性の中に、自分の過去の経験や世界観を持ってざぶざぶと入っていくような・・。」

 川上弘美「最初思っても見なかったことを書いたり、予定していたものがいつの間にかみえなくなってしまったりして、初めて小説があらわれてくる」「最初から計算しているんじゃなくて、あ、この人とこの人は関係してたんだと気づくとか、途中でようやくわかってくる」
 また、「違和感が詩を生む」「善意とか好意といったポジティブな感情から発せられた言葉は、それほど力を持たない」

「今は詩的な言葉自体の息遣いが生き延びる余地がない酸欠状態」「世界がフラットになっているので、短歌もフラットになっている」「世界のシステム化による酸欠」など、いろいろ面白い話もあった。
 とに角、目から鱗まではいかないにしても、おッ!と思うことが多くて、楽しく読ませてもらった。

 それにしても穂村弘さんの読書量はハンパナイ感じ。古典から近代、現代も若い人のものまで幅が広い。上智大の文学部、それも英文科を出ているという秀才だから当然か。


 私はプロではないし、文章を書いてお金を稼ぐんてことはあり得ないこと。好きで勝手に好きなことを書いているに過ぎない。もし、好きなことを仕事になどしてしまうと、好きだということからどんどん遠ざかっていってしまうだろう。

「芸が身を助けることの不仕合わせ」なんてね。道楽で身につけたものを、生計のために役立てなければならないなんて、不幸なことだと思いますよ。

 もっと面白い文章が書けたらなぁと思うことはあります。でもそれをやっていると、時間がかかって、毎日書くことなど無理にきまっている。日記の一部でもあるし、毎日書くから意味が有ると思っている私にとってそれはできない。

 興味のあることが増えていく楽しみと、実際に文章を書く喜びが、読む人にとっても楽しいものであってほしいと思う。自己満足できる程度では終わらないようにしたいとも思っている。





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最終更新日  2024.11.23 18:35:13
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◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題しました。
◆2014年10月23日から「一日一首」と改題しました。
◆2016年5月8日より「気まぐれ短歌」と改題しました。
◆2017年10月10日より つれずれにつづる「みそひともじ」と心のさんぽに改題しました。
◆2019年6月6日より 「歌とこころと心のさんぽ」に改題しました。
「ジグソーパズル」  自作短歌百選(2006年5月~2009年2月)

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sunkyu @ Re[1]:★☆ 新聞の凋落(11/25) 七詩さんへ コメントありがとうございます…

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