お茶の歳時記

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Jan 11, 2006
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テーマ: お勧めの本(8053)
カテゴリ: 本のこと
あなたの子どもを加害者にしないために
あなたの子どもを加害者にしないために

本書は、あの「酒鬼薔薇聖斗」を名乗り、世を震撼させた幼児殺害事件の犯人である「少年A」の心理を紐解き、いわゆる少年犯罪の背景にあるものを探るための作業をするための良書です。
以下は本文冒頭の「はじめに」の引用ですが


わが子の姿に親の姿が現れているのです。


よく世間では「ゲームばっかりやっているから現実感が薄くなって命を大切に思えないのでは?」と言った様なことがまことしやかに語られます。
この手の「今時のメディアが悪い」という言い回しは、要するに自分の理解できないものに責任を押し付けて、自分は悪くない・自分は関係ないと安心する為の詭弁に過ぎません。
って言うのは持論だと思っていたのですが、本書でも「自分と切り離すことで責任回避をしている」という表現でなされています。

少年Aは、ごく普通と思われる家庭でも育つ。
彼のみならず、今までセンセーショナルな報道をなされてきた事件の加害者たちは、皆そう。
それが良くわかる一冊です。

タブーの優先順位の付け方は決して間違ってはならない事なのです。命に関わること以上のタブーは絶対にありえません。また、命に関わること以外で「これだけは絶対にやってはならない」ということもまずありません。人間、愛されて育てたれれば、そういうことを言わずとも真っ当に育つからです。

本文ではこの後、それでも他のタブーを強調しすぎれば、それ以外のタブーの度合いを相対的に低下させてしまうと語っていますが、 みんなのためのルールブック を毎日子どもの読み聞かせるだなんて行為は、はっきり言ってものすごく危険ではないかと思います。
あの本はタブーが多すぎて、通常の家庭で育っている幼児には却ってプレッシャーにしかならないと思いますよ。
この本の使い方を誤ったせいで、「他人の命を犯してはならない」という最大のタブーが幼いお子さんの意識の中で薄まってしまわないことを心の底から祈ります。

いずれにせよ、母親の関心はAの気持ちを聴くことではなく、Aをどのようにしつける(コントロールする)かにありました。母親は、Aを無意識のうちに支配と被支配の関係の中に置いたのです。

この前後の文を読んで、私の中にあった不安がはっきりとした姿を現しました。
私も、Aのような加害者になっていたかもしれないのです。
Aの家庭環境とは大分ズレがあるものの(私の母は躾けに厳しい人ではなかったので)、私は常に母と同じ感覚・感性・考え方であるよう求められ続けてきましたから。
Aと同様、自分が自分であり続けることを許してもらえなかったという重大な共通点が私と少年A(今はもう少年ではありませんが)の間にはあります。

本当に、紙一重で私は加害者にならなかっただけだと、自分自身の過去を振り返ると慄然としてしまいます。

この「母親が子ども(特に娘に)に対し、自分と同じ感覚でいる事を要求する姿勢」って、わりとどの家庭にでも見られると思います。
余程強く「親子といえども他人である」という信念を持っている人でなければ、この呪縛(と言ってもいいでしょう)から逃れるのは容易ではないと思いますよ。

家の中でまで敬語を使っていたAにとって、家の中に安息の地はなかったのです。家の中がしつけをはじめとして自分を追い立てることばかりで針のむしろだったのです。こんな環境では生きていくことが楽しくなくなるのは当然でしょう。

弟たちに自分の事を名前で呼ばれ、怒られるときだけ「お兄ちゃんなのに」と言われ、自分の存在を軽く扱われていたA。
その後、Aはあらゆる方法でSOSを発するのですが、両親はそれに全く気付かず、最悪なことに小学校に提出した作文の『ぼくもお母さんがいなかったらな』というくだりの文を、教師の勝手な判断で削除されてしまいます。

子どもの世界はただでさえ狭いというのに、習い事をしていなければ唯一と言えるかもしれない「世間」である学校にまで、彼の叫びは無かった事にされたのです。
当然、削除された一文を彼の両親は知る由もありません。

改めて、子どもと関わる大人の一人として、ぞっとしました。

子どものサインを見逃す、見落とす。

その連続が、彼に「自分の両親は自分の事を理解してくれない」と絶望させ、それでも自分が無視されたまま死んでいく(生きているという喜びはなかったでしょうから)のは耐えられない。
ではどうすれば良いのか?
ありのままの自分を認知してくれる存在が必要だ。

・・・彼の心の中に「酒鬼薔薇聖斗」が誕生した流れはこういう経路であろうと本書は書き綴っています。

子どもに限らず、人間って大人でも自分の気持ちを汲んでもらいたがる所がありますよね。
というか、もうそういう生き物なんじゃないのかな人間って。

愚痴を言いたいときに正論を返されると辛くなる・・・女性の多く在沖するインターネットの掲示板は、そういう部分に気を使って運営しているところがとても多いのです。
勿論、女性に限ったことではないと思いますが、大人の集まる場所でさえそうなのですから、子どもならもっともっと「自分の気持ちをわかってよ!」って叫んで当たり前でしょう。

その叫びを無視し続け、子どもを自分の都合の良いようにコントロールする(親は自分では真面目にしつけていると勘違い)。

けれど、この勘違いは誰でも犯しがちではないでしょうか?
母親だけが育児に関わっている場合、見落としがあったり視野も狭くなったりはあたりまえでしょう。
父親が一緒に参加しても、似たような事は起こりうる。
だから子どもは地域社会に触れさせ、いろんな視点から見守る必要がある。

本書はそんなような流れに沿って、進み、第七章の「社会が家族を追いつめている」までに至ります。

つくづく、母親一人だけで一人の人間を育て上げようだなんて考えてはいけないなと思い知らされます。
そして、自分の子供を見ているだけでは何にもなりません。

けれど現実は悲しいかな「自分の子さえ良ければ」的視点の大人が多く、子どものいない人は「何で自分が他人の子どもを?関係ない」という感覚がまかり通っています。
相手が子どもでいる間は確かに「他人」ですが、成長して一人歩きするようになれば、もう完全に「他人事」でいる事は実際難しいはずです。

だって、私たちの世代(私は30代)が老後に差し掛かる頃、社会を担う大人はその子どもたちの年代です。
誰も彼もが他人事ではないという自覚を持たなくては。

少年犯罪は、決して他人事ではありません。

(異論・反論はご随意に)





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Last updated  Jan 11, 2006 11:13:40 PM
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