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2006.01.29
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カテゴリ: 芸能・テレビ
おかしな男渥美清  現在は新潮文庫に収められているが、新潮社の単行本で読んだ。2000年4月15日発行。
 渥美清に気に入られ、アパートに遊びに行ったり、訪ねてこられたりする仲だった著者が、自分が直接知る渥美清について書いたもの。
 著者との関わりが中心なので、とうぜん、著者自身を語ることにもなっている。
 思い入れたっぷりというわけではなく、距離を置いて観察していたようなところがある。
 記憶だけに頼っているわけではない。著者は、詳細な日記をつけているという話は何かで読んだ記憶があるが、気になることについては記録しておくことにしているらしい。
 たとえば、「渥美清からの電話はこなくなった。あるいは、ぼくも忙しく、書きとめなかっただけなのか。」(p241)という文章でわかる。
 それまでは、電話があると、そのことを書きとめておいたわけだ。

 もちろん、何もかも記録しているわけではないので、あやふやなところもある。
 「たしか「不知道《フチイダオ》」といったその作品のことは殆ど忘れている」(p78)という文章もある。「不」は「フウ」ではなく「プウ」だが、それはそれとして、ドラマの内容に驚いた。
 なんと、渥美清は劉連仁を演じたことがあったのだ!

 すでに故人である渥美清を懐かしみ、持ち上げるという本ではない。
 冷静に、正直に書いている。
 たとえば、「谷幹一は善人であった。一方、渥美清は、まちがっても善人ではない。」(p28)と言い切る。同じページには「自分にとって必要な人とのみ付き合っていた」ともある。
 エゴイストで、用心深い性格なのだ。
 渥美清が友人として付き合ったのは、関敬六と谷幹一だけらしい。
 著者とは仕事のつきあいはほとんどない。だからこそ渥美清は親しくしたようだ。
 もちろん、著者自身も渥美清が気に入っていたのである。ただし、その理由の一つには、渥美清が上野生まれの東京者だということがあるだろう。
 おそらく、渥美清が地方出身者だったら、ここまでは関わろうとしなかったのではないかと思う。
 渥美清、というより田所康雄の経歴については、ほとんど知らない。本人から聞いたことが書いてあるが、それが本当のことかどうかわからない。
 ただ、アルファベットが読めなかったというのは、その経歴の一端を伺わせるエピソードだ。著者は「太平洋戦争中でも、日本の中学では英語を教えていた。」(p32)と書いている。敵性語として排除していた、というのが嘘であることは、高島俊男も書いている。

 「 日本の喜劇人 」の頃とは違って、たいていのコメディアンは鬼籍に入っているので、婉曲な表現はしない。
 渥美清が、伴淳三郎にいやがらせをされていたこと、ハナ肇を「第二の伴淳三郎になると思う」「植木等の方が人気があるけど、それでも、ハナの方が政治家だ」(p68)という批評など、当人の存命中には書けなかったろう。
 著者自身もハナ肇にはあまりいい印象を持っていない。
 「演技の才能、ドラマーとしての才能はないのだが、きわめて日本的な〈ふところの深い〉統率者として振るまおうとしているのが、ぼくにはわかった。才能の不足を人徳で補う利口者というべきか。」(p124)という評価が辛辣だ。

 錦之助の「 沓掛時次郎 遊侠一匹 」に出たのは、錦之助の希望だったというのには驚いた。
 この映画、画面は風景で、台詞だけが聞こえてきて、その声が渥美清そっくりだなあと思っていると、渥美清なのでびっくりした記憶がある。
 そういうことだったのか。錦之助は、スターとして持ち上げられながらも、東映以外にも広く目を向け、世界を広げようとしていたのだ。さすがだ。

 評伝でもなく追悼でもなく、渥美清を語っているような著者自身を語っているような不思議な本なのだが、一気に読んでしまった。
 その書きぶりをどう表現すればいいのか。
 と思いながら、別冊付録になっている小沢昭一と著者の対談を読み、小沢昭一の表現に感心した。
 こう述べている。
「渥美ちゃんは幸せですよ。こうやって、ねちっこく書いていただいて。」
 そう、ねちっこいのである。しかし、それがぜんぜん嫌みではない。

 表記には特徴がある。
 引用は必ず〈〉でくくる。そしてそれがしょっちゅう出てくる。
 そのため、「〈芸の筋がよ〉いタレントを」(p279)という表記があったりする。厳密なのだ。

 「でずっぱり」は漢字を使って書くと「出突っ張り」だとはじめて知った。(p21)
 「捲土重来」に《けんどじゅうらい》とルビを付けている。(p144)誤りではないが、わざわざルビを付けているところをみると「けんどちょうらい」とは言わない人らしい。

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Last updated  2008.07.04 23:59:03
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